企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)について
簡単に言えば企業の社会的責任(CSR)とは、事業運営や利害関係者たちとの関係のなかで生じる社会的、環境的問題を企業が考慮すること、です。
2001年、欧州委員会はグリーンペーパー(政策提案書)を発表して企業の社会的責任(CSR)を巡る議論をヨーロッパ全土で開始し、2002年には白書を発表しました。また欧州労働安全衛生機構は、委員会のこのグリーンペーパーを受け、「CSRと労働衛生」に関する欧州セミナーを行いました。
欧州レベルで実施されたこれらのイニシアチブは、CSRがヨーロッパの企業と政策立案者の両方にとって戦略的に重要であることを浮き彫りにし、職場での安全衛生がCSRの概念にとって不可欠であることを強調しました。
CSRとは何ですか?
「CSRとは、事業運営や利害関係者たちとの関係のなかで生じる社会的、環境的問題を、企業が自発的に考慮すること」です。社会的責任とは、人的資本や、環境、利害関係者との関係に、法律の規定を上回る投資を行うことを意味します。これは自発的に行われるものですが、確実に実行しないかぎり利害関係者とのあいだに信頼と信用をはぐくむことはできません。
人−地球−利益。グローバリゼーションが進展し、環境意識や社会意識が高まり、コミュニケーションの効率も高まるにつれ、企業の責任という概念は、単なる法的責任や利益上の責任のほかにも、新たな意味合いを持ち始めています。つまり企業は、人間や地球や利益に対して責任ある行動をとっている、と世間から見られる必要が出てきたのです。
なぜCSRが重要なのですか?
- 取引先も顧客も、その会社が社会や環境分野でどのような評判を得ているかに影響を受ける。
- 雇用市場は競争が激しく、優秀な人材は社会や環境を配慮する企業で働きたがる。
- 倫理的投資の市場が急速に拡大するなか、投資家の意思決定に企業の社会的成果が及ぼす影響は強まってきている。
- CSRにより、社会および環境分野の内的リスクと外的リスクを戦略的に管理できるようになる。
- 現在行っている社会的に責任のある活動が、以前よりも目立つようになり、世間にも認知されるようになってきている。
- 企業が社会的および環境的に責任ある行動をとれば、経営費を節減できることが証明されている。
では、CSRと労働安全衛生はどう調和するのでしょうか?
CSRとは、EUや国内の法律が規定する最低水準の労働者保護を上回る目標や行動に取り組む自発的なイニシアチブです。企業が社会的に責任のあるイニシアチブを導入しなければならないのは、それが結果的には企業の長期的な利益につながるからです。企業の利害関係者たちを重視するCSRは、労働者のニーズと社会的ニーズという社内外両方のニーズを尊重します。労働安全衛生の観点から見れば、これは、労働安全衛生を基準に下請け業者の選択やマーケティングを行うというように、労働者の安全衛生を法律の規定以上に保護しながら外的な影響も考慮する、ということを意味します。
CSRによって、労働安全衛生は、次のような重要な問題にも関わってくる可能性があります。
- 人的資源
- 仕事と生活のバランス
- 職場でのその他の基本的権利
- 環境問題
- 公衆の安全と健康(製品安全を含む)
- 収益性と生産性
CSRは企業に、労働安全衛生への取り組みを強化する機会を与えます。それは、これまでの労働安全衛生の成果をさらに積み重ね、経営上の新たな優先事項が現れてもその落とし穴に落ちないように慎重に歩んでいくことを意味します。
イニシアチブ
イニシアチブの目的は以下の通りです:
- 識を高める、報奨や倫理的イニシアチブ
- 知識の交換:最良の実践例、ネットワーク、パイロットプロジェクト
- 準化と認証
- 革新的なパートナーシップ、NGO − 公共/民間
- 報告(外部に対する)とコミュニケーション
- 取引の倫理的イニシアチブ(フェアトレード)
- 金融部門の関与や経済的インセンテイブ
イニシアチブの例を参照
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