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市場調査における試験機関の役割
Involvement of Testing Bodies in Market Surveillance

資料出所:KOMMISSION ARBEITSSCHUTZ UND NORMUNG
(KAN−ドイツ労働基準委員会)発行
KANBRIEF」2003年第2号

(仮訳 国際安全衛生センター)
原文はこちら



 ドイツ連邦各州は、各州の市場調査当局をサポートするための機器検定センター(equipment-inspection centres)と呼ばれる各種の試験機関を運営している。各種の標準規格は市場調査において、特に製品安全試験において中枢的な役割を果たしている。ドイツの全ての労働安全衛生団体を代表するKANは、機器検定センターの調査結果が標準規格化に効率的に組み込まれるよう支援している。

 ドイツには11連邦州に機器検定センターがあり、それぞれ7人以内の職員を擁し、ドイツ機器安全法第7条の3(Section 7, Sub-section 3 of the German Equipment Safety Act)に基づき市場調査当局の業務遂行をサポートしている。経験交流及び互いの検定結果の実証は、センター業務の重要な部分となっている。連邦州機器検定センターの専門調査会(タスクフォース)は、その目的のために設置されているもので、年に2回会合を開いている。少し見ただけでは分からないが、ある状況下ではより重大な結果となるような安全上の欠陥がある場合等に、試験結果及び経験にもとづいて、市場調査当局は連邦経済労働省(Federal Ministry of Economics and Labour)を通じて禁止命令を発行しセーフガード条項手続を開始することができる。すると、その製品の自由移動がドイツ全土で禁止され、ICSMS情報システム(ICSMS information system)を通じて禁止情報が早急に報告される。その製品が単一市場指令の範囲内にある場合、市場調査当局はこの手順を用いて、欧州委員会が最終決定を行なうまで、一時的に商品の自由移動を制限する。

標準規格の弱点部分

 DIN VDE 0620 (1992) に基づいて作られたソケット内の導体断面及び接触圧力が非常に小さすぎたため、永久接続(splicing)が起きた例がみつかった。また、標準規格が不適切な材質を承認していたことが、試験により判明した。そのため適合性の根拠としての標準規格が撤回され、低電圧規則(Low Voltage Ordinance)のリストには含まれなくなった。新しいDIN VDE 0620-1 (2002) は、こうした問題のためにリストに加えられなかった。
 試験は、EC指令の基本安全要件およびそれを補足する標準規格(指令を正しく補足できる限りにおいて)に基づいて実施される。標準規格が果たす重要な役割を考慮し、機器検定センターの専門家は、いくつかの標準機関で活動し、意見書を作り標準規格の弱点部分をなくそうとしている。
 KANは、これらの意見書のいくつかに関係してきた。あるケースでは、マイターソーの歯(mitre-saw blades)が停止するのに時間がかかりすぎる事案を処理した(PrEN 61029-2-9(2001))。KANは、ドイツOHS部門(German OH&S sector)の全体意見として、ドイツミラー委員会(German mirror committee)にこの意見書を提出した。その結果、今後鋸歯(mitre-saw blades)を停止する時間を10秒に制限することの決定がなされた。別の事例としては、携帯型コンパクト電子加熱器の表面の熱さに関するものであった(DIN EN 60335-2-9(2002))。この事例では、KANは市場調査当局及び連邦経済労働省に標準規格に対する反対意見を公式に作成する上で手助けした。この結果、欧州委員会は、接触可能な熱い表面の問題に関する一般的標準規格を作成することをCENELECに勧告したのであった。

公式の反対意見

 公式の反対意見によって、欧州委員会は、関連するEC指令への適合性を推定する根拠となる統一標準規格の一部分あるいは全部を取り消すことになる場合がある。このことは標準規格委員会が安全上の欠陥を早く取り除くためのあらゆる努力を即座に実施しなければならないことを意味している。たとえ、これが実現できない、あるいは即座に実現できなくても、不適切な標準規格要件は、もはや不安全な製品に対する言い訳として使用することはできない。このことで、市場調査当局が技術的にも法的にもこのような事案を立証することがかなり容易になっている。
 もしこの新しいアプローチが機能するとすれば、単一市場指令の基本的要件違反だけでなく、統一欧州標準規格の間違った適用もまた、セーフガード条項手続きの理由として使用されるということは重要である。また、統一欧州標準規格の欠陥についても証明し、必要な対策を取ることが出来るように認可国内機関及び欧州機関に報告しなければならない。
このために、機器検定センターの業務は、財源が限られているという既知の事実にも関わらず、欠かせないものとなっている。


DIN −−−Deutsches Institut für Normung / Deutsche Normen(ドイツ規格協会)。
または発行するDIN規格(Deutsche Industrie-Norm:ドイツ工業規格)のヘッダ名。

VDE−−−Verband Deutscher Electrotechniker (ドイツ電気技術者協会)