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安全装置の無効化(バイパス)- 基準作成団体による対策の必要性
Bypassing of protective devices - a need for action by standardization bodies?

資料出所:KOMMISSION ARBEITSSCHUTZ UND NORMUNG
(KAN−ドイツ労働基準委員会)発行
KANBRIEF」2003年第4号

(仮訳 国際安全衛生センター)
原文はこちら



 工場訪問の際、安全衛生専門家は、セーフティドアのポジションスイッチがバイパス(bypass: 無効化)され、機械が不適切な状況で操作されているのをよく目にする。この種のバイパス行為は、悲惨な事故を繰り返す原因となっており、時には死亡災害に結びついている。一般的には、機能をバイパスした人の側に責任があるとみなされる。しかしながら、多くの安全衛生専門家の見解では、この責任の定義は十分に役立っていない。

 通常、ポジションがモニターされているセーフティドアが「開(オープン)」になっていると、機械は危険な部分の動作を停止させる。しかしながら、もしもポジションをモニターする装置がバイパスされていれば、コントロールシステムに登録されている事実がなくてもドアは開けられてしまう。もちろん、安全装置が作動しなくなるようにすることは禁止されている。いずれにせよ、工場内の責任者や製造業者は、安全装置が無効化される背景となっているそもそもの理由について十分に考えなければならない。

 バイパスをする理由は、機械自体の設計にあるのかもしれない。工程が見えにくいこと、誤作動で何度も生産作業が中断されること、操作を再開するまでに時間がかかりすぎることなどが原因として考えられる。場合によっては、機械に要求されている仕事を完成させるための作業モード(オペレーティング・モード)が備えられていないこともある。その他の理由として、危険な個所でのスイッチに簡単にアクセスできたり、取り外すことができたりすることがある。その上に、従業員が起こり得る危険についての説明を十分に受けていないことや、工場内でバイパスが容認されている場合などがある。関係者の手で作られたものであれ、市販のものであれ、バイパスのための代替アクチュエーター(substitute actuator)の乱用が、"誤った"慣行として広く浸透してしまっている。

 この状況にてらして、KANは、機械工学および金属加工業における法定の災害保険と災害防止の研究機関から、問題に関する意見を集約し、法律基準(スタンダード)を作成するプロジェクト内で解決策を提案することを要請された。KANによって招集されたワーキンググループは、基準作成の活動と安全衛生の調査の提案書を作成した。KANは、バイパスを避けるための最も重要なステップは、設計段階から、機器の操作や防護にユーザー志向とエルゴノミクスの概念を盛り込むことだと考える。このようなコンセプトは、その後の操作段階でバイパスをしようとする動機を払拭するはずである。安全衛生に関わる各種研究機関は、バランスのとれたコンセプトづくりにおいて、製造業者と作業者とともに貴重な役割を演ずることになる。

 この段階に引き続いて、バイパスが更に難しくなるような技術的解決法を開発する必要がある。これに対し、ワーキンググループはISO14119/EN1088「ガードと連動するインタロック装置(interlocking devices associated with guards)」を採用すべきであると推奨した。この一般的なタイプB規格は、解決法を提供することを目的としたもので、その中にはスイッチの取り付け位置なども含まれ、機械別の標準にあわせて選ぶことができる。これによって機械と状況を考慮した適切な防護レベルを設置することが可能となる。技術的解決法は、現バージョンの規格のセクション5.7に大部分が含まれており、バイパスの可能性を減らすための方法(例えば、スイッチに覆いを取り付けるなど)に関するものである。しかし、従来の多くのタイプC規格に含まれていたようなISO14119/EN1088の参照は一般的すぎるので、参照が容易になるように構造を改善する必要がある。2003年10月初めに行われた全体会議において、責任機関であるISO/TC199「機械の安全(Safety of machinery)」は、規格5.7の修正を求めるドイツの陳情を受け入れた。KANが作成した案を元に、修正案が作成される。

 作業者に課された責任が軽減されるべきではないが、設計者もまた、一般的な規格に含まれる、バイパスを避けたり難しくするための方法を記したガイドラインに従うことが重要である。その一つとして、設計者はリスクアセスメントに「使用目的(intended use)」に加えて「合理的に予想可能な誤使用(reasonably foreseeable misuse)」をも含める必要がある。作業者が機械に対して行う全ての作業もまた、適切な安全レベルを守りながら行うことが可能でなければならない。標準化の観点に立って言えば、これは現在のタイプC規格の見直しが必要なことを意味しており、必要であれば、バイパスの防止のための防護、操作の概念やそれに含まれる技術的対策の実際的な適用を考慮して改善することも必要となる。


訳注

TC(technical committees)--- ISOの標準作成を行う専門委員会。TC199はその中のSafety of machinery(機械の安全)を専門とする委員会。


 機械の安全に関する規格の作成を円滑にするためにISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)が共同で作成した安全規格制定のための指針「ISO/IECガイド51」では、機械安全の国際規格は、「基本安全規格」のタイプA規格(A STANDARDS)、「グループ安全規格」のタイプB規格(B STANDARDS)、「個別の製品規格」のタイプC規格(C STANDARDS)という三つに分類された階層化構成になっており、下位規格は上位規格に準拠する体系になっています。