このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > ドイツ 医療機器のエルゴノミクスガイドライン

医療機器のエルゴノミクスガイドライン
Ergonomics Guidelines for Medical Devices

資料出所:KOMMISSION ARBEITSSCHUTZ UND NORMUNG
(KAN−ドイツ労働基準委員会)発行
KANBRIEF」2003年第2号

(仮訳 国際安全衛生センター)
原文はこちら


 医療機器関連の事故を耳にしたとき、我々は、被害を受けたのは患者だと思いがちである。しかし、労働安全衛生においては、医療機器といえばそれらを使用する側の安全衛生に着目しなければならない。この分野の重要点は、エルゴノミクス的製品デザインである。KANの主導で策定された一連のガイドラインは、電気災害のような通常の明らかなハザードに加えて、エルゴノミクスの観点から注目すべき問題点についても検討している。

法的枠組み

 医療機器は、主に医療目的のために使用され、薬とは違い薬理的な手段によってではなく、人体の内外に主に効果をもたらす。ヨーロッパ単一市場において、製品指令90/385/EEC(能動型埋め込み医療機器: Active implantable medical devices)、93/42/EEC(医療機器: Medical devices)、そして、98/79/EC(体外診断医療機器: Invitro diagnostic medical devices)は、医療機器の仕様を定めている。ドイツでは、これらの指令は、医療機器法(Medical Devices Act)によって実施されており、この法は、「衛生並びに、患者、使用者(ユーザ)、及び第三者の保護」を目的としている。医療機器の使用者とは、たとえば、看護スタッフ、医師ばかりでなく保守技術員も含まれる。整合規格に従って製造された製品は、指令の必須条件に適合しているものとみなされる。

医療機器デザイン分野における標準化

 医療機器の規格は、主に国際的水準で作成される。DIN EN ISO 14971「医療機器-医療機器に対するリスクマネジメントの適用(Medical devices - Application of risk management to medical devices)」は、リスクマネジメント分野における重要な基本的規格である。医療電子機器の安全性に関する基本的な規格には、DIN EN IEC 60601-1 「医療電子機器-パート1:安全性に関する一般要求事項(Medical electrical equipment - Part 1: General requirements for safety)」というものがある。

規格におけるエルゴノミクス的要件

 労働安全衛生の観点から、規格は、安全性の要件のみならずエルゴノミクス的デザインに関する情報も含むべきである。基本的な規格は、エルゴノミクスに対応しておらず、医療機器の目的への適合性に関係しているのは、付帯規格CD IEC 60601-1-6 のみである。このような理由から、この分野におけるデザイナーを支援するためにガイドラインが策定された。このガイドラインは、prEN 13861「機械の安全-機械のデザインにおけるエルゴノミクス規格の適用のためのガイドライン(Safety of machinery - Guidance for the application of ergonomics standards in the design of machinery)」、さらにDIN EN IEC 60601-1 およびDIN EN ISO 14971 に基づいて策定された。

ガイドライン - 結果

 このガイドラインの目的は、電子医療機器に限定されている。ガイドラインは、使用の概念、リスク分析システム、医療機器の評価と管理を明確に紹介している。ガイドラインに関する作業によると、エルゴノミクスデザインの原理を考慮していないために起きた傷害、ニアミス事故に関する十分な経験上のデータがないことが判明した。そのため、リスクマネジメントを実施する際、関連リスク(relevant risk)と重大リスク(significant risk)を見分けることは不可能である。電子医療機器のデザインにおけるエルゴノミクス上の欠陥は、使用目的への適合性の欠陥でもある場合が多い。
ガイドライン策定チームは、デザイナーのために以下の3点を作成した。

  • 製品を使用して起こりうる安全衛生上のリスクや、一般的な安全上の重要な問題について、DIN EN ISO 14971 に基づき、デザイナーが認識するのを支援するための質問リスト

  • 医療機器デザインにおいて、エルゴノミクスの原則がおろそかにされた場合に起こるリスクを測定するための、DIN EN 1050 「機械安全(Safety of machinery)」に基づいた比較表

  • リスク分析を行った後で、デザイナーがエルゴノミクスに基づき医療機器をデザインするのを支援することを目的とした、選りすぐりのエルゴノミクス規格の詳細をまとめたリスト

 ガイドラインに基づいた、実践者のための簡潔なガイドが計画されている。ガイドラインは、2003年7月現在、「KAN Report 31(ドイツ語)」という印刷物として発行される予定。その後、 www.kan.deにて英語版も掲載される。



国際規格
ISO −−− 国際標準化機構(International Organization for Standardization)。非電気分野の国際標準化機関。
IEC −−− 国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)。電気分野における国際標準化機関。
CD −−−

Committee Draft(委員会原案)。


欧州規格
EC指令 −−− EU加盟国で通用する共通の規格・基準。
EN規格 −−− CENとCENELECとによって制定された欧州統一規格。
CEN−−−欧州標準化委員会(European Committee for Standardization)。欧州規格(EN)の非電気分野を担当
CENELEC−−− 欧州電気技術標準化委員会(European Committee for Electrotechnical Standardization)。欧州規格(EN)の電気分野を担当
prEN−−−EN規格の草案。

ドイツ国家規格
DIN −−− ドイツ規格協会(Deutsches Institut für Normung. / Deutsche Normen)。又は発行するDIN規格(ドイツ連邦規格)のヘッダ名。
欧州各国は、原則として欧州規格(EN)そのものを自国規格として採用する。 ドイツでは、DIN−ENとして発行する。