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カシおよびブナ材の木材粉じんの
発がん性について

資料出所:Asociación para la Prevencón de Accidentes発行
「Boletin PREVENCIÓN express」2001年5月号
(訳 国際安全衛生センター)


木材粉じんは気管の炎症やアレルギーの原因となるばかりでなく、長期にわたってさらされることにより、より深刻な疾病を引き起こす可能性のあることが今日までの研究で明らかになっている。とりわけブナやカシ材の木材粉じんに継続的に暴露していると鼻腔がんに冒される可能性がある。近年こうした疾病のケースが増えていることから、予防策をとることが必要となってきている。

1967年、イギリスの耳鼻咽喉医、ハドフィールドとマクベスの研究以来、木材粉じんとがんの発生の因果関係が疑われ始めた。その後両医師の説はヨーロッパとアメリカでおこなわれた研究によって実証された。マツなどのやわらかい木材でがんに冒されることはないが、ブナやカシなどの硬い木材が鼻腔がんの原因となることが確認されている。

木材粉じんは、のこぎりや穿孔機、鉋、フライス、のみなどの工具を用いた製材の工程でもっとも多く発生する。木材を取り扱う建設作業の際にも多く発生し、大工や床張り工、階段を作る作業に従事する労働者に害を及ぼす。

木材粉じんは呼吸する際に鼻道から入り、鼻腔に蓄積されるが、そのがんを引き起こすメカニズムはまだ解明されていない。しかし次の要因が何らかの役割を果たしていると考えられる。

  1. 鼻道の炎症

  2. 木材に含まれる天然物質

  3. 製材過程で発生する、粉じんに付着した化学物質

  4. 木材粉じんには付着していないが同時に吸入され、木材粉じんとともに鼻腔に蓄積されると考えられるその他の化学物質

いわゆる鼻腔の腺がんは、徐々に進行する。

  1. 初期症状としては通常、鼻道が詰まり鼻汁や鼻血がひんぱんに出る。

  2. がんは鼻腔の中央部に発生して徐々に周辺の組織を冒していき、眼窩や上鼻道、頭蓋底を経て脳にいたる。

  3. 非常に進行して治療が不可能な段階にいたると、リンパ節の腫瘍や、血液を通じたがん細胞の転移といった症状がみられる。

ドイツでは「危険物取扱法」で、こうした木材粉じんに暴露しないように定めている。同法ではまず、密閉状態の建物内で木材を取り扱う際の規定や、適切な呼吸用保護具の配備に関する規定を設けている。空気中の木材粉じんの量が規定値の2mg/m3を超える場合には、呼吸用保護具の着用が義務付けられている。

木材粉じんの吸引を防ぐために適した呼吸用保護具は次のとおりである。 

  • P2フィルター付き半面型、または小型マスク

  • 微粒子FFP2用フィルター付き半面型マスク

  • TM1Pフィルターと電動ファン付き粉じん用呼吸保護具

  • TH2Pフィルターと電動ファン付き粉じん用呼吸保護具およびヘルメット

継続的にカシ材やブナ材にさらされる人員を対象に、医師による予防検診の実施が義務付けられなければならない。検診の対象となるのは、これらの木材の取扱量が木材全体の年間取扱い量の10%を超える製材所で働く労働者である。検査は企業の保健医に指定されている耳鼻咽喉科医が実施する。

検診によって鼻腔がんが早期発見された場合には、完治する可能性が非常に高い。早い段階でがんの初期症状が疑われる場合、最も成功率が高く費用が安い治療法は、手術である。臨時労働者の場合、木材粉じんに暴露する原因となる作業をやめてからも引き続き健康診断を受けなければならない。

ドイツでは、1984年以降に少なくとも2年以上カシやブナを取り扱う業務に従事していたすべての労働者を対象に、健康診断をおこなうことを義務付けている。


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