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作業場所を適切に整理する運動の推進について
−香港における5s活動−

アリス ホーメロン ナーダース (雅麗氏何妙齢那打素)
病院調理マネージャー 王漢明


資料出所:香港職業安全健康局発行「緑十字」2000年1月号
(訳 国際安全衛生センター)


1998年の香港における、飲食・ホテル業・卸売業・小売業での不慮の事故に関する分析によれば、最も多いのは、滑って転倒・引っかかって転倒・衝突・物を踏みつける、および、物を落とすことであり、その比率は37%を占めた。これら不慮の事故の原因は、実はすべて作業場所の整理が行き届いていないために引き起こされたものである。

「アリスホーメロン ナーダース」病院は香港にて既に112年の歴史を持つが、ひとすじに慈愛の精神を守ってきた。たゆまず高水準の医療を提供する以外にも、人こそが重要であるとの認識のもと、職員と、病院から影響を受ける人々の安全と健康の確保に尽力している。

病院の調理部は5つのSを実践している。すなわち作業所の整理整頓運動である。部門内には安全と品質管理改善グループを置き、5Sを管理システムの基盤とし、現場での管理を強調し、各職員に徹底させようと考えている。その目的は、厨房の職員のため安全で快適な作業環境を作りあげ、互いの意思疎通 を図り、生産効率を高め、更に団結力を高めることである。

過去の経験によれば、5Sによる安全と品質管理を推し進めるに当たっては、特別 高価な器材を導入する必要がないばかりか、特別にコストもかからず、しかも顕著に生産力を改善することができるのである。


安全管理=資源を増やす

安全及び品質の管理を高めるのに最も良い方法は、作業場所を適切に整理することである。整理、整頓、清掃、清潔、修養の5Sを実行していくと、職員の作業環境に対する意識が高まり、自発的に安全性を改善するべく行動するようになる。

作業場所をよく整理するには、もちろん適当なハードとソフトの組み合わせが必要で、これで従来の半分の努力で効果 も高まるというものである。厨房の生産作業中のハード面では、適切な厨房設備・作業の流れ・空間の利用・適切な照明・滑りにくい床・効率的な人的資源の活用・安全装置付きの機器の使用・操作の簡単な用具・機器の操作指示が見やすいこと・各種保護用の設備と用具などがあげられる。

ソフト面では5Sの整理、整頓、清掃、清潔、修養の実践と、他にも「適切に整理されたシステム」と「適切に整理された意識のあり方」が必要である。

「適切に整理されたシステム」には、確定した目標及び政策、目的にあった組織と執行措置、監察検討改善措置、徹底した訓練、機器の補修及び補修計画、分かりやすい作業手順、危機管理、適切なマニュアルと体系的なコントロールが含まれる。

「適切に整理された意識のあり方」には、各職員の作業手順の徹底、各人の自己管理とグループの規律、自発的な職責意識、危機管理訓練が含まれる。


全ては“作業場所を適切に整理する”ことから始まる

99年12月17日、調理部は職業安全健康局主催の香港全土をあげての工場一斉整理デーに参加した。当日の朝、われわれは非常に意欲的な同僚たちに整理デーの標語を貼って示し、それから作業を開始した。作業は多忙を極めたが、各人の作業所の整理に対する熱意とその要求は疑うべくもなく、皆事前の5S作業グループの立てた原則に沿って、円滑に作業を進めた。その原則とは、以下の通 りである。

  1. 常に整理: 職員は、特に火のそばの通路をはじめとしたすべての通路をきちんと整頓しておくことによって、不慮の事故を防止する。同時に不必要なものには、赤い紙を張って示し、倉庫に戻すようにする。厨房内の清潔を保つ。

  2. 常に整頓: 職員は、食品庫内の物や、出されてある食品トレーを整頓しておき、これに見やすくラベルをつけておく。これで探しやすくなり、時間を無駄 にすることなく作業能率を高めることになる。また、最多と最少の在庫量 を見やすく書いておき、物を高く積み上げすぎて不意に倒れてくるのを防ぐ。他にも作業領域を黄線にて区分けして、衝突を減らす。ドキュメントの保存に付いては、斜線と数字による通 し番号(漢数字ではなくローマ数字)を使い、職員が閲覧しやすいようにする。

  3. 常に清掃: 掃除の作業時間割を作成し、職員が、決められた時間で実行できるように便宜を図り、厨房の清潔と整頓、安全を確保した。同時にごみ箱の体積を制限した。これにより、ごみの積め込み過ぎで重くなったものを持ち上げて、腰を痛めるなどのけががないようにした。床は油や水で汚さないようにし、適時清掃することにより、転倒を防ぐこととした。

  4. 常に清潔: 厨房内の乾燥と完璧な清潔さを確保し、機器のメンテナンス時間割表も作成した。例えば、換気扇であるが、油煙と騒音が作業環境に影響を与えないようにしている。また、厨房はできる限り透明な箱やふたで覆って仕上げ、目視管理を徹底している。

  5. 常に修養: 安全性に対して自発的な意識を保ち、安全改善の習慣を持続させるように職員を指導し、主体性を高めさせる。職員各人の健康及びその仕事を適切に保守点検させる。例えば、使用後の機器は必ずもとの位 置に戻させる、機器清掃の際には必ず機械が正常に作動するか確認する、漏電や水漏れがないか確認する。また厨房内の刃物は使用後には刃物用箱に戻す。

作業場所を適切に整理することによって、作業環境の安全および健康を改善することができる。さらに企業にも以下の利点をもたらす。

  1. 質と生産力の向上
    食料品生産工程には、食料品の手配、調理、施設と用具の保存など、皆それぞれ規範がある。整然として乱れなく、厨房内には適切かつシステマティックに物と用具を置くことによって、作業時の過ちを少なくしたり、作業効率や士気を高めたりできるのである。

  2. 健康な作業環境の設立
    厨房と作業場所には清潔整頓を徹底し、その通路にはそれぞれの規則を設け、不慮の事故の発生を少なくする。

  3. 故障の減少
    清掃時に各設備と用具が正常に動作するか確認することにより、設備の故障と補修回数や事故、生産停止などを減らすことができる。

  4. 良い作業安全文化を養う
    そこで、作業場所の整理整頓を今日から開始しようではないか。 付表は作業場所を適切に整理するための良好な作業場所整理計画のフローチャートである。

調理部 作業場所を適切に整理するための計画の流れ