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飲食業の安全 - 滑り防止タイルと機械保護

資料出所:香港職業安全健康局発行「緑十字」2004年1/2月号
(仮訳 国際安全衛生センター)



前文

 香港の厨房に入ってみたら、床は濡れているし、通路にはいろんな雑物が置いてあって、厨房内では用心深く行動しなければならず、一度の誤りが一生の痛恨事となることもありうる。大げさではなく、「滑って」「つまずいて」転ぶ事故は従来から飲食業事故の上から3番目を占めている。労工処2002年度の飲食業突発事故の統計によれば、滑り、つまずいての事故は1,454件で、業界全体の事故の14%を占めている。これは問題の普遍性を十分に説明している。この問題の徹底的な解決を図るためには、工場内の整理から着手しなければならない。また、適切に滑り止めタイルを選んで使用することも問題の改善に役立つ。本文では滑り止めタイルの適切な選び方のポイントと注意事項を紹介すると同時に、機械安全カバーの使用ポイントについても紹介する。


 毎年同僚が運転中の機械に触れ怪我をする数は上述の数よりは低いが、機械での事故は人の指、手のひら或いは腕の切断を招くことが多く、永久的な身体障害の被害をももたらす。だから業界の機械安全カバーとその安全操作方法に対する認識を強める必要がある。


滑り止めタイルを選ぶポイント

 滑り止めタイルを選ぶ前に、そのタイルの滑り止めの特性、および今後の手入れの手順などを調べる必要がある。一番目の条件として、実際のニーズ合って、その場所内で作業する人に滑りを防止する効果があることを考えなければならない。しかし、摩擦に耐える機能及び防水機能はタイルの寿命と密接な関係がある。そのほか、買主は供給業者から手入れの正確な方法を習い、それに従う適切な掃除マニュアルを作り、掃除担当の従業員に正確な訓練を行い、床の清潔を保つことを通じて適切な手入れをしなければならない。  

 「工場及び工業経営規則」の第39条では、工場(食堂と食品製造工場)のすべてのフロアの表面を表示しなければならないし、フロアの表面は平らで滑ってはならないとしてある。フロア面には何人もぶつかって転びやすい障害物或いは危険物を置いてはいけない。また、食品環境衛生部の食堂許可証申請の指針の付録には、厨房、食べ物調合室及び洗い場のフロアは、つるつるして吸水しない薄い色の材料かタイルを使用し、滑り止めのタイルはもう一種の材料である。だから、タイルの購入は適当な選択をしなければならない。


滑り止めの基準

 アメリカ国家基準(ANSI AI264.2)は床の摩擦係数(Coefficient of Friction)は0.5と同じか大きくなければ、従業員に安全作業の床として提供できないと提案している。

 イギリスのHSE(Health and Safety Executive)は摩擦係数が0.36より高い床は、一般的な滑り止め機能を提供できるとしている。

滑り止め原理

 滑り止めの基本原理は床と靴底の摩擦力が、人が歩くときの推進力に耐えられる程度で、両者の間に滑る現象がないようにすることである。両者の力には多くの要素が影響しているが、これは床の汚れ度、靴底の素材、床の粗さの状況などが含まれる。

 もちろん、清潔で乾燥している床で滑り、倒れる事故は少ない。それは清潔で乾燥している床と靴底の接触は安定的で、人が歩く際、充分に支える力を提供しているからである。多くの滑り・転倒事故は、濡れて汚い床で起こる。それは雑物が靴底と床の間に薄い膜を作り、靴底と床と直接接触することを防ぎ、両者の摩擦力を大きく減少させ、靴底と床に滑りが生じやすくなり、事故が起こる。

 同じように、デコボコのある靴底は床との薄い膜を有効的に貫くことができ、靴底と床を直接接触させる。つまり、デコボコの床も靴底が濡れた場合に接触力を強め、滑りにくくなる。

注意事項と日常の手入れ

 事故は清潔でない作業場で起こりやすい。だから管理者は実行可能な掃除制度を作り、作業場の床を常に清潔に保ち、事故の発生する機会を減少させるべきである。
次は注意事項及び床の日常手入れの要点である。

 前述の通り、床の汚れは摩擦力を低下させる最大の要因である。汚れの多くは容器からこぼれた液体、料理をするとき火力が大きすぎでこぼれた汁、お皿などの洗い場の水、床の油、ごみ、雑物などである。

 食堂は必ず有効的な方法を取り、ごみを少なくし、事故の発生を防がなければならない。例えば、液体がこぼれた場所をすぐ拭いたり、定期的に調理道具を検査し、こぼれを防いだり、厨房に入る前に靴底を洗ったり、排水溝を設置したり、風通しをよくすること等である。滑り止めタイルの表面は平らでなく、模様が入ったりして、抵抗力を強めているが、その反面ごみが溜まりやすくなる。だから定期的に床を清潔に手入れする必要がある。管理者はタイルの販売所から正確な手入れ方法を把握し、タイルの本来の滑り止め機能を十分に保持しなければならない。

 床の滑り止め機能が十分でない場合、床に粘着材を貼り、床の摩擦力を高めることができる。タイルがすり減って滑り止め機能が低下したら、タイルを張替え、作業場の安全を確保し、危険を避けなければならない。以上の提案は床と靴底の間の摩擦力の強化をめぐっての話で、これは滑り止めの基本要素である。

 それ以外に、仕事の性質も滑り事故の重要要素のひとつである。厨房内或いは濡れた床での重い物の運搬などの機会を減らさなければならない。このような運搬は大きい推進力を必要とし、濡れた床では少しの不注意でも事故につながりやすい。

 管理者は個別の状況に応じて、どの種類のタイルを購入し、どのような方法で手入れするかを決め、事故発生を防がなければならない。


機械の安全操作

 食堂と食品製造工場は、日常の作業中、多種類の機械を使って、仕事の効率と製品の品質を保つ。しかし機械は潜在的に危険要素を持っており、安全対策が十分でなく、工場の整理が足りなかったり、作業手順が間違ったりしたら、機械の使用、掃除及びメンテナンスのとき、従業員に危険が生じ、重大な事故が起こりやすい。

基本的な機械の安全知識

  1. 「職業安全及び健康規則例」及び「工場及び工業経営(機械的防護及び操作)規則」は、機械の危険部品には適切な安全カバーをつけて防護してから使用可能だと決めている。また、作業のときは、補助道具を使わなければならない。

  2. 機械は適当な訓練及び資格のある者が操作しなければならない。また、「工場及び工業経営(機械的防護及び操作)規則例」によれば、麺の圧延機、混合機の作業員は満18歳以上でなければならないし、そうでないときは、適当な訓練を受けるか、他の人の監督の下で行わなければならない。

  3. 運転中の機械の掃除をしてはならないし、機械の掃除とメンテナンスは必ず電源を切って、事故の発生を防がなければならない。だから「職業安全及び健康規定」には、責任者は満18歳未満のものに運転中の機械の掃除をさせてはならないと明文規定してある。

  4. 機械には届くところに「緊急停止ボタン」を設置し、万一事故が発生した場合、すばやく電源を切ることができるようにし、用務員の怪我をできるだけ小さくしなければならない。

  5. 機械が故障したら、すぐ運転を停止し、警告の札を置かなければならない。

  6. 機械は定期的に資格のある者が検査とメンテナンスを行い、機械の性能を維持しなければならない。

  7. 危険度の高い機械(例えば薄切り機械、骨切り機械、ミキサーなど)については、機械の操作に十分な空間を確保し、機械操作のときに人にぶつかったり注意力が分散したりして危険にさらされることがないようにしなければならない。

  8. 機械操作の床は必ず平らで、清潔さを保ち、倒れて事故が起こることを防がなければならない。

  9. 機械は平らな床或いはデスクに置き、作業時に移動或いは揺れが生じて危険が発生することを避けなければならない。

  10. 機械のコンセントは通路に横切るように置いてはならないし、機械にはアースと漏電ブレーカーを設置し、感電を防がなければならない。

  11. 機械操作の場所には充分な照明を与え、機械作業員と機械のそばを通る者の視野を明るくしなければならない。

  12. 安全操作指針は、機械近くの分かりやすいところに貼り、従業員に指摘しなければならない。

  13. 作業服は大きすぎず、装身具(ネックレス、ブレスレット、指輪)を付けてはいけないし、髪の毛が長い場合はピンで留めるか帽子をかぶり、作業時に機械に巻き込まれることを防がなければならない。


機械の防護

 「工場及び工業経営(機械の防護及び操作)規則」には工場(食堂、厨房と食品製造工場を含む)のオーナーは機械及び工業装置の危険な部品に、安全カバーをつけなければならないことになっている。

 安全カバーをつけることは有効的な防護方法で、人の体が機械の危険な部品に直接当たることを防ぎ、異物が運行中の機械の中に入ることを隔離することができる。機械の設計時に安全カバーが取り付けてあったら非常に便利である。機械の使用後に取り付けようとしても、難しい所があるし不可能の場合もあるから、気をつけなければならない。


機械安全カバーの分類

固定式安全カバー

 密閉或いは隔離の方法で、従業員が機械の危険な部分に接触しないようにしなければならない。この種のカバーは部品と機械を連結させないし、機械のコントロールを受けない。カバーはしっかり固定され、取り外し易いものはだめである。

連結固定式カバー

 カバーは移動でき、機械の動力或いはコントロールシステムと連結され、カバーが固定された状態でだけ機械が起動でき、機械の運行中はカバーが動かなくする。或いは、カバーが外れたら機械は直ちに止まるようにする。
 だからカバーは機械との連結により、必ず安全な連結措置を取らなければならない。

自動式カバー

 カバーと機械がつながっていて、機械が起動するときはカバーが同時に移動し、操作員の体が運行中の危険な部分に触れたら、安全カバーは移動して作業員を危険区域から離れさせることである。

感知式カバー

 従業員が危険区域に接近するか入る場合、感知式カバーは機械の操作を止める。従業員が危険区域から離れた後でなければ、機械は再起動できない。

両手コントロール設備

 機械の設計上、操作員が必ず両手で同時にボタンを押しながら操作してから機械が動き、片手か両手がボタンから離れた時は機械が停止する。両手コントロール装置内にはタイマーを設置し、各制御機械は同時にボタンが押された後、操作が可能になる。

 以上、五種類の安全カバーを簡単に紹介したが、次に食堂と厨房及び食品製造工場でよく使う機械の安全対策方法と、安全カバーの注意事項を説明する。これらを通じて機械がもたらす危険を減少させたいと思う。


薄切り機械

防護方法

 固定式カバーを採用し、作業員の手が回っているカッターに接触しないようにする。

  • 刃のカバー===物を切るところの刃の部分を含めて、刃の全部にカバーをつけなければならない。
  • 食物盛載せ盆の隔離板===通常は透明なプラスチックで作られ、作業員の手が不意に刃に触れることを防止する。
  • 食物盛載せ盆の側面カバー===薄切りした後、露出する刃の部分にかぶせる。
  • 薄切り厚さの板===形は刃の形に従い、作業員が刃のカットする部分により怪我することを防ぐ。
  • 食物盛載せ盆のレバー===作業員が直接カットする食品を押して、手が直接鋭い刃物に接触することを防ぐ。

注意事項

  • カバーは作業員の視線を妨げる可能性がある。
  • カバーを一時期取り外して修理、調整するとき、必ず他の安全措置を講じ、機械の突発的起動で事故が起きることを防がなければならない。
  • カバーは容易に取り外しができないように、機械に固定されなければならない。
  • 刃は鋭くなければならない。鈍い刃は作業員の比較的大きな力が要り危険を導きやすい。



肉のミキサー

防護方法

 固定式カバーを取り入れ、作業員の手がプロペラとカッターに触れることを防がなければならない。

  • 首の長いじょうご===原料を入れるとき、作業員の手が直接ミキサーに接触することを防ぐため、原料の入り口は長いじょうごの形の固定式カバーの形をとる。労工処が出版した「機械の防護及び操作マニュアル」にもこのような提案がある。


 このほか、管理者は、作業員或いは厨房の従業員の手の大きさなどを考慮し、長いじょうごの調整を行わなければならない。例えば、部品を加えてじょうごの長さ或いは原料の入り口の幅を調整することなどを通じて、従業員の手が直接、肉のミキサーの危険部分に触れることを防ぐ。

 出口でも、肉のミキサーの危険な部分に触れる危険がある場合、出口の幅を小さくするなど、カバーをつける必要がある。


  • 原料を押入れる棒===肉のミキサーの安全操作性を高めるため、従業員に原料を押入れる棒を渡して、手或いは他のもの(例えば箸)で原料を差し込むことを防がなければならない。原料の押入れ棒の設計は適切で、長さはプロペラーの部分に届かないようにしなければならない。



注意事項

  • 安全カバーは作業員の視線を妨げる可能性がある。
  • 安全カバーを取外して修理するときは、他の安全措置を使って、機械の突然の起動による事故を防がなければならない。
  • 機械の負担が過重にならないようにしなければならない。
  • 安全カバーは機械にしっかり取付け、簡単に取り外せないようにしなければならない。



ミキサー

防護方法

 連結式安全カバーを採用し、作業員の手が皿型容器とプロペラの間に挟まれないようにしなければならない。

  • カバーは、しっかり取り付けられた金属網の構造で、中のかき混ぜ状況が見えるし、安全である。また小型ミキサーのカバーも透明プラスチックの構造を採用する。





注意事項

  • 連結式カバーは高度な手入れと定期検査をしてこそ、保護機能を十分発揮できる。
  • 連結式カバーの構造と取り付けに際して、影響を受けて壊れることを避けなければならない。
  • 損害を受けたときも、連結式装置の設計は安全を確保できなければならない。
  • 装飾物(ネックレス或いはブレスレット)は付けてはいけない。機械の危険な部分に落ちる恐れがあるからである。



骨切り機械

防護方法

 固定式カバーと連結式カバーを採用し、回っている鋭い鋸に触れないようにしなければならない。

連結式カバー

 原料をカットする鋸の部分だけでなく、鋸の他の部分とプロペラもしっかりしたカバー内に閉じ込めなければならない。

固定式カバー

 鋸の刃の部分には固定式カバーを取り付け、鋸の露出する部分をできる限り少なくしなければならない。

原料入れ皿

 原料入れ皿を適正に使用し、操作員の手が回る鋸に触れないようにしなければならない。


注意事項

  • 固定式カバーはカットする原料の厚さに合わせ、高さを調整しやすくし、カットする部分が外に露出することを防がなければならない。
  • 骨切り機械で小さいものをカットしてはならない。作業員の手が鋸部分に接近しすぎる恐れがあるからである。
  • 鋸は鋭さを保ち、引く力も適当でなければならない。
  • 連結式カバーは高度の手入れと定期検査が必要である。
  • 連結式装置は構造上、及び取り付け場所は妨害されず、壊されないような位置にしなければならない。


総括

 筆者は以上の資料を通じて、業界の滑り止めタイルと機械保護安全カバーに対しての認識を深め、適切な運用をし、事故の発生率を下げることができることを期待する。 機械保護安全カバーの設計及び基準の資料に関して、以上の資料より詳しくて多くの資料を希望の方は労工処職業安全及び健康部が発行した「機械の保護及び操作マニュアル」或いはイギリス基準局が発行したPD5304:2000などの文献をご参照ください。