労働衛生の日
香港には300万を超える社会人がおり、毎日多くの時間を仕事に費やしている。もしその作業に健康を脅かす要因が潜んでいるとすれば、彼らの健康は大きな影響を受けるだろう。
労工処の統計によれば、2000年の第3四半期まで確定された職業性疾病は以下のようなものであった。
職業性疾病
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症例数
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職業性難聴
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177
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珪肺
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84
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手あるいは前腕腱鞘炎
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43
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ガス中毒
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26
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結核
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26
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皮膚炎
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11
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アスベスト関連疾病
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8
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潜函病
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2
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手根管症候群
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1
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放射線障害
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1
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総数
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379
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現在、香港の法令には49種類の職業性疾病が定められており、この規定を満たした患者は法に定められた補償を得ることができる。法令ではさらに事業者は労働者の職業性疾病を報告しなければならず、医者も患者にこれらの職業性疾病が発見された、あるいはその疑いのあるときは労工処所長に報告しなければならないと定められている。香港では、労働者の労働衛生を保障する主な法令は《労働安全衛生条例》と《工場および工業経営条例》である。この二つの法令はいずれも事業者が必ず「一般的責任」を負い、労働者の作業時における安全衛生を保たねばならないことを定めている。これらには、指導や訓練、健康や安全を脅かすおそれのない環境と設備の提供が含まれる。
政府は現在新しい法令を制定しようとしており、これにより労働者の健康はより一層保障されるようになる。これには《労働安全衛生(VDT)規則》や《工場および工業経営(体格検査)規則》などが含まれる。
われわれの身体は様々な組織から成り立っており、健康な心身は各組織が正常に働き、互いにコンビネーションを組むことによって保たれる。もし健康に害を及ぼすような職業上の要素の影響を受けると、不快に感じるだけでなく、ひどければ職業性疾病を患うことになる。以下にいくつかの職業性疾病に関連する業界の例を挙げる。
職業性疾病
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関連業界および作業の例
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珪肺
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鉱石業、建築業、工芸品の研磨、石の切断
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手または前腕腱鞘炎
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タイプライター、組立工
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職業性難聴
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紡績、砂の吹き付け、建築
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皮膚炎
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清掃、ペンキ、理髪、機械の修理
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職業性喘息
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イソシアン酸エステル、ホルムアルデヒド、小麦粉などとの接触
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結核
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医療関係者、医学化学実験室
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ベンゼン中毒
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溶剤の使用、石油の処理
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職業性疾病は往々にして患者がその要素に長時間にわたり接触した後に発症するため、ほとんどの人は職業性疾病に対して強い警戒心を持っていない。これに加えて様々な要因が(日常生活で出会うものを含む)同じような症状を引き起こすため、その疾病がどんな要素によるものなのか、あるいは職業によって引き起こされたものなのかを断定するのが非常に困難なときがある。
とにかく、われわれは職業性疾病を軽く見てはならない。なぜなら職業性疾病によっては全く治らないものや、職業性疾病を患った結果作業能力を失ってしまうこともあり、家庭生活に影響を及ぼすばかりか、ひどい場合は死に至ってしまうためである。よってわれわれは労働衛生に十分気を付け、職業性疾病を予防しなければならない。
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仕事が健康に影響を及ぼす:作業員がペンキから揮発する溶剤の蒸気を吸いすぎるとめまいが起こる。
健康が仕事に影響を及ぼす:薬物やアルコールによって精神に影響を受けると、安全かつ正確に仕事ができなくなる。
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労働衛生
「労働衛生」は仕事と健康との相互関係であらわされる。

多くの人が仕事上の安全を重要視しているが、これはおそらく日常的にニュースなどで深刻な事故について聞かされているからだろう。例えば建築作業員が高所から落下したとか、防護カバーのない機器によって作業員の指が切断されたなどである。また関連当局は作業上の安全については様々な工夫を凝らしており、最近では安全呼称制度が行われている。一方で、一般の人は労働衛生については比較的軽視しているようだ。こういった状況は徐々に改善されていくはずだが、現在のところ数多くの人が会議室の悪い空気の中にいたり、過酷な労働や仕事のプレッシャー、コンピュータ、電磁波などによって健康に影響を受けていると思われる。これらはいずれも労働衛生の範疇に含まれる。政府が1997年に実施した《労働安全衛生条例》では、ほとんどの社会人が保障範囲に含まれるようになった。同時に労働者の補償条例では補償を得ることができる職業性疾病を増やし、労働者および事業者に労働衛生についての関心を持たせた。
労働衛生を促進する主な目的は、在職者の健康を促進し、職業が理由で健康が冒されるのを防ぎ、ひいては職業性疾病を予防することにある。この目的を達成するためにはまず職業上の危険要因を認識し、作業員の健康と、作業が健康に及ぼすリスクを評価するとともに、何らかの措置を講じて危害の出現を予防する、もしくは健康を害するリスクを減らさねばならない。このためには事業者と労働者とが協力するほか、医師や弁護士、職業衛生士、疫学者、人類学者、心理学者、エンジニア、毒物専門家の助けを借りることも必要である。
労働衛生に害を及ぼす要素
われわれの健康に影響を及ぼす要素は様々で、物理的、化学的、生物的、心理的、人間工学的な要素に分けられる。
物理的
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― |
騒音、振動、光、電離放射、温度など
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化学的 |
― |
有機溶剤、強酸または強アルカリ、金属性ヒューム、有毒ガス、アレルゲンなど |
生物的
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― |
ウィルス、細菌、真菌など
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心理的
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― |
仕事の過度のプレッシャー、決まり切った仕事など
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人間工学的 |
― |
オフィスやツールの設計、作業の姿勢など |
労働衛生計画
労働衛生を確保するためには、労働衛生計画を整備することが不可欠である。
一、健康への危害を予見し、見つけだす
作業工程や工具、設備は設計段階からできるだけ健康に危害を加える要素を避けることを考慮し、労働者の健康を保障する。仕事においては健康を害する要因をわれわれ自身が認識し、分析する。認識する方法としては、工場の視察、労働安全衛生に関する刊行物、労働者からの聞き取り、化学物質等安全データシートなどがある。
二、健康リスクの評価
健康リスクの評価には、危害を加える要因を量るとともに、その結果を標準状態と比較し、アンケート結果を分析し、現行の制御措置を検査する。
三、制御措置
評価した結果、仕事の健康リスクを防止する水準が低いと見なされた場合は、適当な制御措置を講じなければならない。これには以下のものが挙げられる。
工程制御
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有害性の少ない物質への転換、隔離、作業工程の変更、局所排気、空気濾過、自動化など
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行政的制御
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身体検査、訓練、衛生施設、リスクの観察、衛生に関する教育、防疫注射など
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個人的防護
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マスク、耳栓、手袋など
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労働衛生の日
社会人や多くの市民の労働衛生に対する関心を高めるため、労働安全衛生局は一連の特別キャンペーンを行う予定である。また2001年2月23日を「労働衛生の日」と定め、2001年2月18日には假鑽石山荷里活広場で「労働衛生の日」開幕式とカーニバルを開催し、たくさんの人を招く。このほか、われわれは労働衛生に関する刊行物やポスター、VCD(ビデオCD)などを制作し、無料で発行することにしている。こういった推進広報活動と組合せ、当局に特別専門チームを置いて必要な企業や機構に労働衛生に関するコンサルタントサービスを提供する。
どの業界に従事しているかに関わらず、労働衛生は自分と関係があるため、すべての人が関心を持つべき問題である。作業環境に、適切に処理されていない危険な材料や設備、施工手順などがある場合、最終的には職業性疾病やサボタージュ率の増加、生産力の低下や保険料の上昇など従業員や機構に悪い影響をおよぼす。事業者と労働者が協力して、労働衛生をしっかりと見据えて改善を行いさえすれば、この問題は一刀両断に解決するのだ。