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韓国の労働災害補償保険
(Industrial Accident Compensation Insurance: IACI)

資料出所:韓国労働省ホームページ
(仮訳 国際安全衛生センター)



1.背景(原文はこちら

 労働災害補償保険(Industrial Accident Compensation Insurance: IACI)は社会保険制度の一つであり、このIACIの下で国は事業者に代わって労働者の労働災害および疾病を補償する責任を負い(かかる責任は労働基準法(Labor Standards Act)の下で事業者が負う)、迅速かつ公正な補償を通じて災害の被害者とその家族の生活安定化を支援し、同時に、この制度がなければ事業者が一度に支払う必要がある高額の補償費用の支払いを分散させることで、企業が通常どおり事業運営できることを保証するものである。

 韓国では、労働者の労働災害および疾病を補償する事業者の責任は1953年の労働基準法で初めて明記された。しかしながら同法で義務付けられた内容は、補償能力の乏しい企業で働く労働者を適切に保護するには十分ではなかった。

 このため、政府は1963年に労働災害補償保険法(Industrial Accident Compensation Insurance Act)を制定し、1964年6月からこれを施行した。この労働災害補償保険法では、政府は、事業者が資金を拠出する保険基金を通じて労働災害の被害者に迅速かつ公正な補償を行わなければならず、この目的のために必要な各種施設を設立・運営し、労働災害の防止と労働者の福祉の増進を目的としたさまざまな活動を行わなければならない、とされている。

 政府は労働災害補償保険事業の専門性と効率性を高めるために、1995年5月1日、韓国勤労福祉公団(Korea Labor Welfare Corporation: KLWC)を設立し、以来、労働災害補償保険の管理を同公団に委託している。



2.IACI(原文はこちら

■ 労働災害補償保険のカバー範囲

 労働災害補償保険の導入以来、災害発生率、事業者の保険料支払能力、および事務能力を考慮に入れつつ、そのカバー範囲は拡大を続けてきた。2000年7月1日からは、農業、林業、水産業、および建設業の一部の小規模事業を除き、従業員1人以上のあらゆる事業所に労働災害補償保険が適用されている。

労働災害補償保険のカバー範囲の拡大
年度 対象企業の従業員数 事業所数 労働者数(単位:千人)
1964 500人以上 64 81
1965 200人以上 289 161
1966 150人以上 594 222
1967 100人以上 1,142 336
1969 50人以上 3,696 683
1974 16人以上 17,551 1,517
1982 10人以上 54,159 3,464
1988 5人以上 101,445 5,744
2000 1人以上 706,231 9,486
資料出所:労働災害補償保険プログラム年次報告書
(Annual Report on Industrial Accident Compensation Insurance Programs)

■ 保険料

 労働災害補償保険の財務基盤確保のため、韓国勤労福祉公団(Korea Labor Welfare Corporation: KLWC)は対象事業所の事業者から保険料を徴収している。保険料の総額は、労働者に支払われる総賃金に、災害のリスクと経済活動の類似性に基づいて決定される職種別の保険料率を掛けることで求められる。

年度別にみた職種カテゴリーの数と保険料率(単位:職種、千分の一)
職種数 全職種を通じての平均保険料率(千分の一)
資料出所:労働災害補償保険プログラム年次報告書
(Annual Report on Industrial Accident Compensation Insurance Programs)

労働災害補償保険の給付
給付の種類 給付の水準
医療給付 - 労働者が4日以上治療を受けた場合、健康保険制度(Health Insurance System)の下で定められた医療費の範囲内で医療費の全額にあたる医療給付が支払われる。
休業補償給付 - 労働者が治療のために労働できない期間、平均賃金の70%にあたる病気休暇給付が支払われる。
障害給付 - 治療後も労働者に障害が残っている場合には、障害の等級に応じて一時金または年金として障害給付が支払われる。年金の受給資格を持つ労働者:第1級障害(平均賃金329日分)〜第3級障害(平均賃金257日分)。一時金の受給資格を持つ労働者:第8級障害(平均賃金495日分)〜第14級障害(平均賃金55日分)。年金または一時金のいずれかの選択資格を持つ労働者:第4級障害〜第7級障害。
遺族給付 - 労働者が災害で死亡した場合には、遺族給付が遺族に支払われる。- 原則として支払は年金の形を取るが、必要な場合には50%を年金で、残りの50%を一時金で受け取ることができる(年金受給資格を持つ人物がいない場合には、一時金で支払が行われる)。一時金:平均賃金1,300日分。年金:給付の受取人の数に応じて年間基礎賃金の47%〜67%。
傷病補償 - 2年間治療を受けた後も傷害または疾病が治らず、その傷害または疾病が傷病基準等級に該当する場合には、休業補償の代わりに傷病補償金が支払われる:第1級(平均賃金329日分)、第2級(平均賃金291日分)、第3級(平均賃金257日分)。
看護給付 - 治療後に看護を必要とする場合には、看護給付が支払われる(1日約30,000ウォン)。
葬儀費用 - 葬儀を行う場合には、葬儀費用代として平均賃金120日分が支払われる。葬儀費用が、労働大臣の設定・告知した最低額を下回るか、または最高額を上回る場合には、それぞれ最低額または最高額が葬儀費用として支払われる。

年度別保険給付支払額
年度 合計 医療
給付
休業補償
給付
障害
給付
遺族
給付
傷病
補償
葬儀
費用
看護
給付
1995 1,133,577 279,418 357,982 295,680 160,912 25,557 13,981
1996 1,355,337 342,974 435,729 347,751 179,502 32,782 16,598
1997 1,556,042 396,736 478,645 422,470 198,638 41,182 18,372
1998 1,451,066 379,668 399,881 435,633 168,701 51,794 15,389
1999 1,274,225 358,964 337,391 343,793 157,742 62,082 14,523
2000 1,456,266 425,154 422,464 360,455 159,257 71,678 17,175 83
2001 1,744,560 536,464 526,306 447,005 134,576 80,761 18,255 1,193
2002 2,020,335 609,002 628,739 514,398 151,757 94,135 19.071 3,213
看護給付は2000年7月1日から支払を開始した。
(資料出所:労働災害補償保険プログラム年次報告書
(Annual Report on Industrial Accident Compensation Insurance Programs))


3. 労働災害の被害者に対する補償(原文はこちら

■ 労働災害保険施設の運営

 政府は、労働災害または疾病に苦しむ労働者ができるだけ速やかに職場復帰できるよう支援することを目的に、専門的な医療サービスおよびリハビリテーション・サービスを提供する労働災害保険施設を運営している。

 労働者災害医療公団(Workers Accident Medical Corporation)の管理下に6つの総合病院と3つの専門病院、計9つの労働災害病院があり、これに加えて職業リハビリテーション訓練のための2つのリハビリテーション工学研究センターがある。

 また、治療中の災害被害者に対しては、韓国勤労福祉公団(Korea Labor Welfare Corporation: KLWC)の職業リハビリテーション・カウンセラーが、各人の個性に応じた職業リハビリテーション・プラン作成の手助け、職業訓練と事業開始に関する情報の提供、および心理カウンセリグ・サービスの提供を行い、職場復帰の成功を支援している。

■ 労働災害の被害者の生活安定化の支援

 労働災害の被害者とその家族の生活安定化を支援するために、1世帯あたり最高3,000万ウォンの生活安定化資金の低利での貸付が行われている。災害被害者の子供に対しては、奨学金も提供されている。

 2002年には、1,895人の災害被害者およびその家族に対して総額172億ウォンにのぼる生活安定化資金が提供され、災害被害者の子供5,426人に総額51億ウォンの奨学金が支給された。

■ 保険給付

 労働災害補償保険でカバーされた職場で勤務中に労働災害や疾病を受けた労働者およびその遺族には、各種の保険給付を受ける権利がある。

 保険給付は当該労働者の平均賃金に基づいて計算される。ただし平均賃金が、労働大臣の設定・告知した最低額を下回るか、または最高額を上回る場合には、それぞれ最低額または最高額が当該労働者の平均賃金とみなされる。

 労働者がすでに労働災害補償保険を受け取っているか、または今後受け取ることができる場合、労働基準法(Labor Standards Act)の下で課せられている、災害に対する補償を行う義務は免除される。

 また、支払われた給付金額の範囲内で、民法(Civil Code)およびその他の法で定められている損害賠償の義務も免除される。