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韓国産業安全衛生公団(KOSHA)
主要事業(2000年)


資料出所:KOSHA発行「Annual Report 2000」
(訳 国際安全衛生センター)

目次


2. 事業場の自主的な安全活動の推進

各事業場における自主的な安全活動を推進するために、KOSHAは各事業場で安全管理を支援するシステムから、企業の安全管理マネジメントの機能および事業場における本来あるべき安全の姿を向上させる方向へと戦略上の重点を移した。KOSHAは大企業における自主的なシステムと安全管理能力を向上させる目的で、業務管理を安全管理活動と併せて実行する安全衛生管理マネジメントを策定し提供している。

安全技術の不十分な事業場に対しては、KOSHAは潜在的な危険要因を突き止め、企業の管理計画立案を援助することを目的として現場での技術的支援とセーフティアセスメントを実施している。その一方、KOSHAは危険な機械、工具と安全装置についての安全認証制度を運用することで、製造の段階から機械類の本質的な安全を追求している。またKOSHAは、災害の原因を究明し再発防止策を決定するため労働省が実施する災害調査を支援している。

2-1. 安全衛生管理マネジメント(KOSHA 2000プログラム)認証

安全衛生管理マネジメントとは、事業者が会社の経営方針に安全衛生方針を反映させ、全労働者が守るべき詳細な実行ガイドラインおよび規則を策定する上で枠組みとなるシステムのことである。さらに、経営陣は計画の継続的な改善をはかるため安全衛生管理計画の成果を定期的に自己評価する。

こうした安全衛生管理マネジメントを効果的に普及させるよう、KOSHAはKOSHA 2000プログラムの認証システムのもとにプログラムへの応募を希望する大企業を選定した。同プログラムにおいて、各事業場の安全衛生システムは客観的に評価され、安全衛生システムが一定の基準を満たしていれば認証と認証プレートを発行する。

KOSHA 2000プログラムにおける安全衛生管理マネジメントは、事業場分析、安全衛生管理とその目的に関わる方針確立、安全衛生管理マネジメントの確立と実施、結果の評価と自己調査、管理者による検査で構成されている。各事業場は、事業場の規模、運営環境とその目的、潜在的な危険性の存在を考慮することで、システムの各構成要素を適用し、実施する詳細な方式を自主的に決定する。

2000年を通じて、KOSHAは安全衛生管理マネジメントが欠如している、あるいは不備がある事業場において安全衛生管理マネジメントを構築するのに必要な技術的支援を提供してきた。またKOSHAは、自主的なプログラム参加に応募した311の職場と協力して作業を進めた。KOSHAはこうした事業場のうち71カ所の施設に対してKOSHA 2000プログラム認証を発行(1999年に10カ所、2000年に61カ所というのがその内訳)、また将来的にはその他の職場にもこのシステムの適用を拡げていく意向である。

さらに、安全衛生管理マネジメントを広めていくために、安全衛生専門家とKOSHA職員向けにKOSHA 2000プログラムの評価者育成講座を運営している。世界的な動きに合流していくために、KOSHAは安全衛生、環境、および品質管理システムを統合するのに必要な準備を整えていくことになる。

2-2. 安全衛生技術についての支援

自主的な安全衛生管理の方針と手順が整っていない事業場のセーフティマネジメント能力を高めていくために、KOSHAは安全衛生改善プログラムを確立し、広範囲の災害調査を実施することにより集積した災害データを配布するのに必要な技術的支援を行っている。KOSHAは危険要因を突き止め改善をはかることを目的として、安全衛生診断のような災害防止プロジェクトを実行してもいる。

上記の活動は、同一の産業部門における平均災害発生率よりも高い災害発生率をそれまでに記録している事業場、年間2件の死亡災害を引き起こしている事業場、不十分な労働環境の事業場に対して重点的に行われている。

このプロジェクトに関して、労働省は安全衛生関連の適切な計画をKOSHAが確立するのに合わせて、
適用すべき事業場を選定するものであり、該当する職場が自主的にその安全衛生活動を向上させていけるように事業場に技術的支援を行う。KOSHAは各事業場の実施活動を確認することで労働省のアフターケア的な活動を支援する。KOSHAは職場の潜在的な危険要因を評価することで効果的に事業場の安全衛生を改善できるよう、安全衛生監査を実施する。この監査は、労働安全衛生法第49条の規定に従って、もしくは企業の自主的な要請により実施することができる。

労働者の死亡を含む死亡災害については、KOSHAは災害の原因究明と救済策の策定にあたり労働省の調査を支援してい

る。災害事例およびまとめられた報告書は同様の事業場に対して、その安全衛生活動の動機づけとし、同様の災害の再発を防止するために配布される。

2000 1999 1998
安全衛生改善計画(場所数) 1,175 935 74
重大な業務災害への調査回数 820 919 869
重大な業務災害事例(種類別)の配布 8 8 8
重大な業務災害(種類別)に関する迅速な情報配布 265 352 293


2-3.Sマーク安全認証制度

Sマーク安全認証制度は労働安全衛生法第34条2の規定に準じて1997年11月に導入された。このシステムの目的は機械・工具メーカーが安全な製品を設計・生産するのを支援し、メーカーからの安全な製品の市販流通を可能にして労働災害を防止することにある。

安全認証は主に工業用機械・工具について必要となる。とは言っても、この認証は安全装置、保護具、工具・部品のような単純な機具から高度な半導体製造装置にまであらゆるものに適用される。Sマーク安全認証の試験基準は、国際規格(ISOおよびIEC)やEN規格だけでなく国内の安全基準にも準拠することが義務づけられている。Sマーク安全認証を申請するのに先立ち、申請者は認証の範囲と関連手続きについてKOSHAと充分に協議することも義務づけられている。また、申請者は認証申請を提出するのにあらかじめ製品安全に関する意欲的な目標値を設定しなくてはならない。

認証審査では、製品安全設計評価となる「文書審査」、メーカーの品質管理システム評価のために実施される「現場審査」、そして「製品検査・試験」を受けなくてはならない。申請者から要請があれば、認証審査に前もって備えられるように、申請者は本審査に先だって「予備審査」を受けることができる。安全認証を受けた後に製品に変更があった場合は、メーカーは該当部分について審査を申請することが求められる。安全認証の条件を継続的に遵守しているかを確認するため、KOSHAは認証を受けた事業場を少なくとも年に一度事後審査を実施するために訪問する。

Sマーク安全認証システムが開始されてから、1998年から1999年にかけて数多くの国内企業がこのシステムに関心を示した。そればかりではなく、2000年からは日本、米国、イギリスからもSマークを申請する外国メーカーが現れた。外国からの申請企業数および問い合わせは増え続け、現在までにKOSHAでは57社の外国企業から180件の申請を受けている。Sマーク安全認証システムが開始されてから、KOSHAは307社から1,638件の申請を受けており、645件の事案について119社が認証の発行を受けた。


申請件数(事業場数)

結果

現在審査中(次年度に持ち越し)

認証発行件数(事業場数)

認証見送り件数(事業場数)

合計 1,638(297) 645(119) 427(109) 566
2000 852(178) 372(79) 238(79) (566)
1999 641(107) 162(29) 179(26) (324)
1998 101(19) 71(10) 10(4) (24)
1997 44(3) 40(1) (4)

2-4. 安全衛生基準の形成と普及

安全衛生関連の技術基準は事業場での安全衛生を確保する上で不可欠のものである。1990年1月、基準委員会(Standard Committee)運営に関わる技術ガイドライン、作業環境基準および規定が労働安全衛生法に付加された。同委員会はKOSHAのもとで運営されることとなった。

技術基準委員会は8つの技術委員会からなっており、その内訳は一般安全、電気安全、機械安全、化学安全、建設安全、一般衛生、労働医学・労働衛生学、それに基準の最終案を決める一般基準委員会である。各委員会は、労働者代表、政府関係者、KOSHA、産業界、学会から選ばれた専門家で最大20人で構成される。

技術基準委員会により決定される事項の中でも、遵守が義務づけられるものは、労働大臣の名で公布するため労働省に提出される。その他の項目はKOSHA規約として分類され、産業界での適用を目的としてKOSHA会長により公表される。現在までに29の事項が労働大臣により布告され、2000年に追加された44の規約を含む215項目のKOSHA規約が公表されている。KOSHA規約は広く一般に行き渡るよう印刷物とインターネット(ウェブサイト)を通じて配布される。KOSHA規約の適用は着実に増加しており、KOSHAはその規約のすべてを通常の新規のKOSHA規約制定とは別に、業界の要求と技術の変化に対応するため当初の施行時期から5年以内にすべて見直しすることで規約の質を高めることに力を注いでいる。

KOSHAは高度化した技術を反映するKOSHA規約を形成する過程で国際基準を参考にしている。特に、KOSHAは韓国の各委員会の事務機関となっており、ISO/TC96(クレーン)、ISO/TC108(振動)、ISO/TC146(空気の質)、IEC/TC31(耐圧防爆)、IEC/TC64(建設/電機)の各分野でPメンバー(投票義務がある)として参加している。国際基準は国内基準として採用される傾向が強いので、こうした国際基準関連活動に参加する機会は今後増えるものと見られる。