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労働者の健康を守るための体制化:
WHOの労働安全衛生世界的戦略

G.ゴールドスタイン、 R.ヘルマー、 M.フィンガーハット、WHO

資料出所:ILO/フィンランド労働衛生研究所発行
Asian-Pacific Newsletter on Occupational Health and Safety
2001年第3号(第8巻「Globalization(グローバリゼーション)」)
(抄録 国際安全衛生センター)

WHO(世界保健機関)では、労働条件、特に安全衛生については、世界の多くの場所で、過去数十年の間に多くの改善がなされて来ているが、世界全体を見るといまだ不十分であると述べている。
ここでは、グローバリゼーションに伴う労働衛生にかかわる問題点を指摘し、世界的戦略として取り組むべき8つの優先事項や労働衛生を発展させるためのプログラムを紹介している。概略は以下のとおりである。

労働安全衛生に対する世界的なチャレンジとグローバリゼーションとの関係

労働条件特に安全衛生については、世界の多くの場所で過去数十年間にだいぶ改善されて来たが世界全体でみるとまだ不十分である。

世界大部分の労働者の労働条件は、ILO及びWHOが定めた労働安全衛生と社会保護に関する最低規準を満していない。

全世界における業務上の疾病や負傷による苦しみは、マラリヤによる苦しみと比較して容認できないほど高い。労働安全衛生に関するプログラムは未だにマラリヤとの戦いにあてられている原資に比べほんの一部分しか受け入れられていない。

現在の推定グラフ
図1.世界的な疾病の苦しみ(職業上のケース
*Murray and Lopezによるこれらの推定(1996年)は目下改訂中(2001年)。

古くからある労働衛生問題がまだ克服されていないのに、経済構造の急速な変化による新しい問題もおきている。

又グローバリゼーションの一部として、貿易がより自由化されることがあるが、このことが既に労働衛生に対して数多くの不利な影響を与えている。

そのことは、

グローバリゼーションと労働衛生:いくつかの問題点

  • ある国で禁止されている農薬が、他の国でまだ販売されていて、農業労働者と消費者に害を与えている。
  • いくつかの国で時代遅れとなった機械で劣悪又は危険有害な状態のものが、低収入の国に移動される。
  • 自由貿易地域では発展的状態にあるが、そこでは労働衛生及び環境の法制が多くの場合不十分であり、精力的な生産プロセスに傾注されている。

世界的戦略とは?そのあらまし

世界的戦略は、8つの優先分野が提示されている。

世界的戦略のための優先事項

  1. 労働衛生に対する国際的及び国家的ポリシーの強化
  2. 衛生的な作業環境、衛生的な作業慣行及び労働における健康状態の推進
  3. 労働衛生サービスの強化
  4. 労働衛生に関する適切なサポートサービスの確立
  5. 科学的なリスクアセスメントに基づいた労働衛生基準の開発
  6. 人的資源の開発
  7. 登録及びデータ・システムの確立 ; 並びに
  8. 研究開発の強化

労働衛生の世界戦略を保証するに際して、World Health Assembly(メンバー国の大臣の団体)はいくつかの興味ある勧告をしている。

World Health Assemblyの勧告

  • すべてのことについて労働衛生サービスにアクセスする
  • ハイリスク・グループに焦点を絞る
  • 協力するためのUnited Nations system organaization
  • 改善したトレーニング
  • 協力センタネットワーク(collaborating centre's network)のより強力な役割

労働衛生に対する国際的、国家的ポリシーの強化

WHOは、国際的には成功を確実にする強力な労働衛生のポリシーとプログラムを探求しているが、特に開発途上国及び新興工業国並びに経済の変換期への援助を必要としている。

各国のレベルでは「労働衛生に対する国家プラン」と我々が称しているプロセスを通じて国家のポリシーを強化することを求めている。

国家的プランの戦略的要素

  • 作業環境の質の改善(最も重要な予防策)
  • 規制のポリシーと法律制定
  • 労働者の健康の促進
  • 包括的衛生サービスの便

WHO世界戦略にもとづいた労働衛生を発展させるための国家的プログラムのモデルは下記のとおり

国家的プログラムのモデル

  • 法体系と基準の最新化
  • 権限を有する当局の役割を定義し強化する
  • 安全衛生に関する事業者の基本的責務の強調
  • 政府、事業者、労働組合3者間の協力
  • 事業者及び労働者に利用可能な教育、トレーニング及び情報
  • 労働衛生サービスの進展
  • 分析的助言的サービス
  • 調査研究
  • 労働災害、業務上疾病及び危険・有害への暴露の登録システム
  • 作業場及び企業レベルでの事業者と労働者間の協力

衛生的な作業環境、衛生的な作業慣行、及び労働における健康状態の推進

西太平洋地域の労働衛生推進の良い事例は”ベトナムの中小企業における衛生的な作業場に関するプロジェクト(Project on Healthy Workplaces in Small and Medium-Scale Enterprises in Vietnam)”である。

ベトナム、ハイフォンにおける中小企業の衛生的な作業場

結果

  • 熱遮断の設置
  • より良好な換気
  • 粉じん及び有害ガスの制御対策
  • 適切な個人用保護衣の支給
  • 騒音の削減
  • 照明の改善
  • 重量物持ち上げ装置の追加
  • スタッフ能力のグレードアップ
  • スポーツの推進
  • 周囲環境の向上
  • 自動車とモーターバイク置場の建設
  • 安全衛生に関する表彰の制定

著者

Greg Goldstein, Richard Helmer,
Marilyn Fingerhut
Occupational and Environmental
Health
World Health Organization
20, avenue Appia
CH-1211 Geneva 27
Switzerland

E-mail :goldsteing@who.int

 

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