このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > アジア太平洋地域等の各国のOSHMSについての取組(平成13年6月)

アジア太平洋地域等の各国のOSHMSについての取組 (平成13年6月)

(資料作成&翻訳:厚生労働省衛生部国際室)



1 オーストラリア、ニュージーランド

オーストラリア及びニュージーランドにおいては、Joint Accreditation System of Australia and New Zealand (JAS-ANZ)として知られている国際組織が設立され、1997年に、労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の一般的なガイドラインであるAS/NZS4804が公表され、2000年3月には認証用の規格であるAS/NZS4801が公表されている。
OSHMSの認証の仕組みは、AS/NZS4801に基づくものであり、政府の委員会によって管理されている。 また、このような枠組みの中で、オーストラリアの多くの州や地域は、OSHMSのモデルやガイダンスを開発している。
さらに、オーストラリア労働安全衛生協会によりOSHMSの一種である5スター制度が運用されており、約450事業場がこれに参加している。


2 中国

1999年10月、国家経済貿易委員会により組織された国家OSHMSガイダンス委員会により職業安全衛生管理試行標準(OSHMSの試行基準)が公表されており、同委員会により認定(accreditation)事業、監査者の登録等が監督・管理されるとともに、多くのOSHMS認証機関が組織されている。このような試行標準に基づく研修、優良事業場に対する認証等により、OSHMSの普及が図られつつある。


3 香港

安全衛生評議会が法令に基づく団体として、一定の業種における安全監査の制度を運用するとともに、監査者の認定を行っている。
また、安全衛生評議会は、OSHMSについての教育訓練を行うとともに、中小企業向けのOSHMSの普及や表彰制度の運用を行っている。


4 インド

労働省は、政府がその施行に責任を持つ一般的なOSH基準及びガイドラインを定めており、これには、OSHMSのいくつかの要素が含まれている。


5 インドネシア

1996年12月、OSHMSに関して労働大臣規則が公布・施行されている。この規則の構成は、下表のとおりであり、OSHMSを安全で、効率的かつ生産的な職場の形成を目的として、職場活動に関連するリスクを管理する中で労働安全衛生の施策を維持・発展させていくものとして位置づけている。また、OSHMSを導入すべき事業場は、100人以上の労働者を有する事業場や危険有害な業務を有する事業場としている。
さらに、この規則では、監査機関による監査を少なくとも3年に1回行わなければならないこととしており、監査機関は、労働大臣が指定することとなっている。この監査の結果に応じて、事業場に対して表彰旗と認証書が担当局長から与えられることとなっている。

(表)OSHMSに関する労働大臣規則の構成
第1章 労働大臣規則の目的(第1条)
第2章 OSHMSの目的(第2条)
第3章 OSHMSの適用(第3条、第4条)
第4章 OSHMSの監査(第5条)
第5章 局長の企業の指定に関する権限(第6条)
第6章 監査の実施(第7条、第8条)
第7章 労働安全衛生についての認証(第9条)
第8章 改善と監督(第10条)
第9章 監査の費用(第11条)
第10章 施行(第12条)


6 韓国

1999年、韓国労働部の関係機関である韓国産業安全公団(KISCO)注)において、 OSHMSのガイドラインが開発されている。
労働安全衛生法に基づき、政府は、自主的な取組について支援を行うとともに、OSHMSの普及について韓国産業安全衛生公団(KOSHA)に委託している。
KOSHAは、英国規格協会等の賛同を得て、KOSHA2000プログラムのOSHMSの要件を備えた事業場に対して認証書を発行している。
注)2000年1月にKOSHAに名称変更


7 マレーシア

1994年に労働安全衛生法を制定しており、人的資源省の労働安全衛生局は、同法によりOSHMSの各要素を担保しようとしている。また、一部事業者は、OHSAS 18001等を自主的に導入しようとしている。


8 シンガポール

1994年、工場法に基づく造船業安全規則の制定や建設工事等安全規則の改正により、OSHMSに関する新たな規定が設けられた。具体的には、造船業にあっては造船業安全規則第73条から第75条までの規定に基づき、工事請負金額が一定の額(約7億円)以上の建設業にあっては建設工事等安全規則第27A条及び第27B条の規定に基づき、それぞれ事業者は、OSHMSを導入することが義務づけられた。
また、2000年3月、工場法が改正され、造船業及び建設業以外の業種についても、大臣が指定する事業者はOSHMSを導入しなければならないことが規定された。
OSHMSの項目としては、安全衛生方針に関する事項(責任の所在の明確化を含む)、安全衛生に関する手順の作成、危険有害要因の分析、緊急時の対応等が含まれている。
造船業安全規則及び建設工事等安全規則においては、OSHMSが適切に機能しているかについて確認する監査の規定も設けられており、事業場の規模により、監査者の種類や頻度が規定されている。 これについては、例えば造船業においては、事業場の規模により、監査の形態が次の表に示すようになっている。

(表)造船業におけるOSHMSの監査
事業場規模 監査者と監査の頻度
労働者数200人以上 主任監督官が指示する期間ごとに、外部監査者による監査を実施しなければならない。
労働者数200人未満 一年に一回の内部監査。ただし、主任監督官が必要と認める場合には外部監査者による監査を実施しなければならない。


9 タイ

1999年、労働社会福祉省と工業省との協力により、OSHMSの規格であるTIS(Thai Industrial Standard)18001が工業省の告示として公表されている。TIS18001は、労働社会福祉省(MOLSW)労働保護福祉局、労働安全衛生促進協会(SHWPAT)、工業省産業労働部等の関係機関の局長クラスを委員とする委員会等において取りまとめられたものである。
また、タイ工業規格研究所(TISI)は、OSHMSの認証についての一般ルールを提供しており、2001年中には、100を超える事業場がTISIによる認証を受ける予定である。


10 日本

労働安全衛生規則に基づき、厚生労働省がOSHMSの指針を公表し、OSHMSの普及を図っている。厚生労働省の告示のもとで、中央労働災害防止協会(JISHA)は、OSHMSの担当者研修、リスクアセスメント研修、OSHMS監査者研修等を実施し、修了した者に対して修了証明書を発行している。


11 ポーランド

1999年に労働保護中央研究所(CIOP)によりOSHMSに関する認証用の規格であるPN-N-18001とリスクアセスメントのための一般的なガイドラインのPN-N-18002が作成された。
OSHMSの規格作り等においては、国家労働監督局(NLI)、労働社会政策省 (MLSP)及び労働保護中央研究所が緊密な連携をとって行っている。
OSHMSは、国家規格として制定されたが、事業場がこの規格を導入することは義務づけられておらず、任意の制度である。OSHMSを導入した事業場は、国家労働監督局の監督官と認証機関の審査員による合同審査を受け、規格に適合している旨の確認を受けることができることになっており、この確認を受けた事業場は、労働監督が免除される。


12 ドイツバイエルン州

1998年にOHRISの名称でOSHMSが開発された。OHRISを利用してOSHMSを実施しようとする事業場は、州政府が発行するチェックリストにより内部監査を実施し、その結果を州政府に届け出ることになっている。州政府は、企業に担当官を派遣して審査を行い、一定のレベルが確認できれば証明書を発行することになっている。
2001年2月末で29事業場が認証を受けている。

(注)
・ドイツでは、連邦国家が制定した法律の遵守に関する監督・監視を州政府が行う仕組みになっている。
・バイエルン州は、ドイツ連邦共和国の最も南に位置し、ミュンヘンに州都を置いている。


13 ノルウェー

すべての事業場に対して簡易型のOSHMS(7要素について規定したもの)が適用され、当局により監督指導が行われている。


(注)本資料は、次のものをもとに取りまとめたものである。
・平成13年5月にマレーシアで行われたILO−OSHMSセミナーでの資料
・平成11年度厚生労働省委託調査
・平成12年度厚生労働省委託調査


(参考)アジア太平洋地域の各国のOSHMSに関する取組についての分類
取組の内容 国名
規則等に基づき一定の企業に対し、強制的にOSHMSの実施を求めている国 インドネシア、シンガポール
国全体として認証により自主的にOSHMSの実施を求めている国 オーストラリア、ニュージーランド、中国、タイ、韓国
公的機関を通じて国のOSHMSの普及を図っている国 香港、日本
安全衛生の改善に向けた取組を促進している国 インド、マレーシア


アジア太平洋地域各国のOSHMSの認証システム
政府機関又は公的機関の仕組み 民間の仕組み
オーストラリア
ニュージーランド
オーストラリア・ニュージーランド合同認定システム(JAS-ANZ)が合同認定機関として、マネジメントシステムを認証する機関のために活動している。AS/NZS4801で認証された事業場及び監査者は増加しつつある。 すべての事業場がAS/NZS4801タイプのシステムに移行したわけではなく、商業的なシステムや他の認証システム(NSCA5-Star)も同様にオーストラリアにおいて普及している。
中国 OSHMS認定機関認証委員会がOSHMSの認証を行う機関の認定を行ってる。これについては、国家経済貿易委員会の安全生産局の監督により行われている。 海外の認証機関のBSI、DNV、NQA等がOHSAS18001による認証を進めている。
香港 なし OHSAS18001等による認証がいくつかの事業場で行われている。
インド なし 様々なOSHMSによる認証がいくつかの事業場で行われている。
インドネシア 労働移民省が省令に基づき独立した監査機関により推薦された企業に対し認証書を発行している。
認証基準は、企業の規模により異なっている。
なし
日本 なし JACO、JQA等の認証機関がBS8800、OHSAS18001等に従ってOSHMSの認証を行っている。
韓国 KOSHAがKOSHA2000プログラムのOSHMSの要件を備えた企業に対して、BSI、BVQI及びDNVとの相互認証協定に基づき、認証書を発行している。認証書は3年間有効である。 BSI、BVQI、DNV等の認証機関がBS8800及びOHSAS18001に従ってOSHMSの認証を行っている。
マレーシア なし OHSAS18001に従ってSIRIM BerhadがSIRIM Sdn Bhdを通じて認証を行っている。認証機関によっては、他の認証システムを使用しているところもある。
シンガポール 認証基準が労働省のOSH課により策定されている。これは、造船所、建設現場及び一定の工場に対して強制的なOSHMS監査を行う監査機関用のものである。 シンガポール生産性及び基準委員会及び建設当局がOHSAS18001の認証を行っている。また、BVQI、DNV等が自主的な認証を行っている。
タイ タイ工業規格研究所(TISI)がTIS18001の認証について担当しており、認証の一般ルールを示している。マネジメントシステム認証研究所(MASCI)は、TIS18000の認証書を発行しているが、認証機関は、TISI による認定が必要である。 比較的少数の事業場が他のOSHMSの認証を受けている。


(注)2001年5月22日から24日、マレーシア クアラルンプールにおいて開催されたILO−OSHMSに係わるアジア太平洋地域セミナー(ILO・日本マルチバイ技術協力計画の一環)において発表されたものをまとめたものである。