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労働安全衛生に関するマレーシアのアプローチ

マレーシア安全衛生協会会長 ABDUL RAHMAN DALIB
(国際安全衛生センター海外情報委託調査員)
(訳 国際安全衛生センター)



第一部

1.0 安全衛生管理の概念

労働安全衛生法案の1994年2月24日の議会における可決によって、労働者の労働安全衛生問題に関する論点は「管理」により注意がはらわれるようになることは明確である。

1.1 何故管理なのか、そして安全の重要性は何か?

安全はまさしく常識であり人々の共通的な姿勢である。しかし不幸なことにあらゆる場所で事故により沢山の数の死亡や傷害がおきる。
労働安全衛生局(DOSH)は多くの事故を調査したが、そのほとんどが作業場に於いて安全のために用意すべきことがらが直接的間接的に不十分であった。
災害が起きるのを待つのではなく、労働者の安全衛生の質を改善するために絶えず積極的に管理しなければならない。
以前から安全衛生の管理を促進するために三つの動機づけの因子がある。
これらは、法律、人道的な思いやり、及び経済的因子である。

法律
安全衛生に関する法律は、あらゆる途方もないこと迄すべきであると要求している訳ではない。事実、工場及び機械法(1967年)に於ては合理的に実施可能な表現がくりかえし述べられている。労働安全衛生新法に於いては、必須の安全衛生最低基準が相当に増えるであろう。

人道的な観点
人道的な観点から管理が十分に行われ、安全衛生の職務の推進に心から没頭したら、事故によってひきおこされる深い悲しみや苦しみと健康障害は減少することが出来る。
又、人道的な観点から労働者に適切な配慮がはらわれるならば、上記に加えて職場に於て良い人間関係が生れ、それは次には調和を生み、労働力向上のための良い職場環境づくりに貢献する。

経済条件
経済条件として,事故の金銭コストについては、大部分のリスクは保険でカバーされる。けれども、実際のコストは、常に保険で支払われる金額を越える。何故ならば保険ではカバーされない他の沢山の付随時なコストがあるからである。

1.2 安全衛生管理とは何か?

一見した所、安全衛生管理と他の観点の管理との間の基本的相違は、安全衛生は一般に組織体の一部ではない特別なものであると思われがちなことだ。人々が安全衛生に配慮せずに彼等のビジネスを始めそして続けるのは、それなりの種々の理由や動機がある。
然し良く管理された組織体は通常良い無事故記録ををもっている。
従って安全衛生が良く管理されているということは、効果的なビジネスのバロメーターに使うことが出来る。
安全は“危険のないこと”と言った典型的な辞書の定義よりもっと沢山のものを含んでいる。“安全は危険の反対である”とするのもまちがっている。
安全は“すべてのタイプの危険がない労働環境を保証する”という積極的な意味を含んでいる。
安全管理の理想は、下記のように述べることが出来る。
「安全管理とは、事故防止を含む積極的な安全活動に於て、ライン管理のすべてにかかわりあう積極的かつ興味のあるもの」

ハインリッヒは安全管理の父と言われている。
彼の本の第1版は1931年に発刊されたが、彼は“事故は事業の失敗の一部”と考えた。管理とは生産、開発及び積極的安全が同時に含まれるものでなければならない。安全管理の基礎的な考えを詳細に述べるなかで、ハインリッヒは事故(Accident)と同様に無傷害事故(incident)を防ぐことを強調している。
事故原因に関するハインリッヒの理論は、傷害をひきおこす原因に関する有名な5つの要因の連鎖説を提示している。
(ハインリッヒのドミノ理論が紹介されて)事故の連鎖の5つの要因のうち、その1つを取り除くことによりこの連鎖を断ち切り、傷害を防ぐことが出来る。
(又次にハインリッヒの「1:29:300の法則」を紹介している。すなわち1回の重傷事故が発生したとすれば、その人は同じ原因で29回の軽傷事故を起こし、また同じ性質の無傷害事故を300回伴っているという理論である。)無傷害事故や軽い傷害事故の中に、予防対策をたてるための沢山の手がかりがあり、又、不安全行動をくりかえしたり、不安全状態の中に引続きさらされているようでは、前記の比率で傷害の程度の異る事故(重傷事故又は死亡事故)がいずれ発生する。然し注意すべきは、ハインリッヒによって示された比率はあく迄概算であり、又この割合はこの国では異るかもしれないということだ。
何故なら産業の種類、人、文化、生活様式が違うからである。不安全行動をしたり、不安全状態にさらされている人は、非常にはやく重い傷害や死亡事故にあう可能性がある。彼は傷害を受ける前に100倍も1000倍もの危険にさらされている可能性があるからだ。

2.0 安全衛生管理の基本原理
安全衛生管理を効果的に実施するために一定の基本原理が言われている。
これは
  1. 管理者層による効果的な制御。
  2. 責任者の任命と権限の委任。
  3. 実施状況の監視。
  4. 安全の融合。
  5. 効率的な安全作業。
これらの基本原理は、そこで働く人達の安全のために、作業場を管理する哲理のあらましを述べている。
その基本原理は、企業を運営するための社会、法律及び経済上の風潮とは別のものである。但しこれら基本原理のうちのいくつか、すなわち管理者層による効果的な制御、責任者の任命と権限の委任、実施状況の管理は安全管理に特有のものではない。

1. 安全衛生を制御する(controling)ことの重要性は、事業の他の側面と同様に否定出来ないことである。制御するということは、すべての労働者が会社の決めたルールや手順を守っているか否かをチェックする管理機能である。そのことは又、会社によって決められた安全基準が適しているか否かを社員の実施状況で測るということも意味している。安全プログラムの進歩は、作業場において“何がなされるべきか”ということと“そのうち何が実際に実施されているか”ということの間の相違を見て、それを制御していくことに大きく依存している。

2. 責任者の任命、権限の委任は、どんなタイプのマネージメントにおいても共通のポイントである。従って、権限のライン化と階級組織による制御を確立することが大切である。安全衛生管理の責任はラインにあるが、このことは安全衛生のある側面についてその組織外の専門家の援助を制限するものではない。

3. 実施状況の監視は会社の方針が実際的か、又それによる指示が要求に答えるものであるか否かを正確に決めることを可能にする。一方継続して行われる実施状況の監視は、この監視が適切に行われていれば、早い時期に最近の欠点情報を管理者層に提供出来、後に起きる大きな問題を未然に防ぐことが出来るであろう。

4. もし安全衛生の面が分離されてしまったら、良い安全衛生基準を確保することは非常に難しい。安全衛生は、管理システムと作業実施マニュアル、及びハードウエアとソフトウエアの両方に於て、作業のあらゆる側面にとり込まれなければならない。
例えば会社が新しい機械を買うとしよう。購買の担当者は機械の安全面、恐らく発生するであろう騒音のレベル、機械のメンテナンスのための設備等、安全衛生に関する十分な考慮を発注する前にしなければならない。
安全衛生設備は後から追加すべきものではなく、他のものと一緒に事前に考慮されるべきものである。

5. 安全衛生の基本原理は最優先で実施されなければ意味がない。
そしてこの基本原理の各要素は更に沢山の構成要素にブレークダウンして行わなければならない。各地域毎に該当するトピックは異る。最後にそれぞれの構成要素部分で、必要な活動を遂行するために詳細な計画と実施方法が確立されなければならない。

安全衛生管理の全プロセスを図 1に示す。

基本原理
l
要素
l
構成要素
l
詳細な計画と実施

図 1 安全組織の原理


第二部

3.0 安全管理の要素と構成要素

前記の基本原理が実施されるために安全衛生の種々の要素がより細部にわたり考えられる必要がある。
上記の基本原理から導かれる要素は7つあり、各要素そのそれぞれの構成要素についてハイライトをあててみる。

3.1 管理者層のリーダーシップ

もし労働者の行動や態度を組織の隅々まで変えようとしたら、上級管理者は労働安全衛生活動に自ら活発に参加するようにしなければならない。政府職員のみでなく産業界に於いてもこの"リーダーシップ"が必要である。
もしこれがないと企業の管理者層以外の人達は安全に多くの注意をはらわなくなる。
管理者層が彼等の労働者のために事故の防止や健康と福祉に心から関心をもつことによりこの責任をはたすことが出来る。
又管理者層は、例えば工場の査察、広報及び動機づけなどによるそのポリシーの実施方法を考えなければならない。

3.2 責任の割当て

管理者層のすべてのレベルの人にそれぞれのはたすべき責任を依任する必要がある。ここで安全と衛生はラインの責任であるということを強調しておかねばならない。安全と衛生は、安全管理者やインダストリアルハイジニストのようなスタッフの仕事ではない。安全管理者やインダストリアルハイジニストはライン機能にアドバイスしたり必要な援助をするのが主な仕事である。管理者層すべてのレベルの人、代表取締役にはじまり、中間管理者、ラインの監督者、職長等々は割り当てられた責任を明確にしなければならない。
その他欠くべからざる構成要素として安全衛生委員会と、安全管理者、メディカルアドバイザー及び保全職員のようなスタッフ機能がある。

3.3 安全な作業条件の維持と実施

この要素は効果的な安全作業の原則と企業の任務の中に安全を組みこむことから生ずる。
このことは次にようなやり方で達成される。
  • 調査、安全サンプリング(Safety sampling)、査察、継続的な観察、チェックリスト、危険の報告(Hazard reporting)、作業手順の点検、職員の適正試験を含む安全点検。
  • 時々定期的に行われる工業的技術の改訂は、特にハードウエアの面から作業条件の改善を考慮して行われなければならない。
  • 購買は時として忘れられがちな構成要素であるが、資本投下する工場設備や装置はすべて購入されるものであるから重要である。
    そして一度購入すればおそらく長年そこにあるであろう。長期間の安全基準にてらして購入することは義務であり、その価値がある。
  • 安全な作業条件を維持し実施して行く場合、監督者の役割は非常に重要である。従って安全点検における彼等の積極的な関与は、一番重要である。

3.4 安全トレーニング

"安全を組み込む"という原理に従って言えば、現在あるトレーニングプログラムに、何かをはりつければ良いというものではない。
従って上級管理者、中級管理者、第一線の監督者及び作業現場の労働者それぞれ毎に異る必要条件があること等を留意して、すべてのレベルの人のトレーニングニーズにあうように特別な考慮がなされなければならない。
管理者層のトレーニングは人間の行動、動機づけ、危険の認識、評価とコントロール、安全分析(Safety analysis)、事故調査、人間関係等非常に広い範囲の話題が含まれる。
監督者のトレーニングは、動機づけと対策の実施を確実にするようデザインされる。
労働者に対するトレーニングは、安全の心構えと適切な動機づけを確実にしみこませるようにする。
すべてのトレーニングの場に於て、スターテングポイントは、トレーニングの目標を決めこれらを明確に定義づけすることである。

3.5 事故(Accident)及びヒヤリハット(Incident)の記録システム

効果的な事故及びヒヤリハットの報告と記録のシステムはきわめて重大である。これらは業績の測定として大切である。
しかしながら、もっと重要な機能は、事故を防ぐために資源をいかにして最適な形で配備して行くかということに、この事故分析システムを役立てて行くことである。適切な事故分析はこのことの発展に用いられる。
これは適切な事故記録、事故報告を用いること、事故の原因をはっきりさせること、及び組織内のコミニケーションチャンネルを最大限に生かすことにより達成出来る。
このシステムのその他の構成要素は、事故の記録、事故のクラス分け、結果として生じた休業傷害と経済的ロスを含む事故報告である。
生じた結果の測定法としては、補正として度数率、強度率を使って実施状況の正しく良い比較をすべきである。

3.6 医学及び救急システム

物事がまちがった方向に行った時のバックアップ設備ではないけれど、安全作業原則の重要な側面である。
それは特に安全トレーニングに関連して用いられる時、事故、傷害を防ぐプログラムの一部として効果的であろう。
このシステムにまとめられると思われるいくつかの構成要素がある。
配置前健康診断は恐らく一般的になっているであろう。配置前健康診断によりその人にふさわしい仕事につけ、適さない仕事をしないように指示をする。
定期健康診断は配置前健康診断と同様に用いられる一方、救急法は各人に傷害に対処する知識と技能を与えるのに役立つ。

3.7 労働者の責任

これは効果的な安全作業の必須の構成要素であり、かつ又管理者層からの職権委任の、側面でもある。
労働者は安全衛生遂行のために重要な役割を有しており、かつ彼等が有効な寄与が出来るようにすることは、管理者層の責務の一部である。
労働者は災害や職業性疾病の犠牲者として、そのことに対し最も重要な動機づけを持たねばならないが、いつもそのような状態であってはいけない。
すべての労働者は雇用に先立ち導入プログラムの一部として安全のトレーニングを受けなければならない。これは会社がポリシーを説明し、労働者の責任の一つである規律と勤務態度について述べる適切な時間である。
そして導入の時期に取得させた知識、自覚、興味については、コミュニケーションによる適切な手段を使うこと、法的責任を強調すること、絶えざる動機づけと態度の監視をすることによって、持続させなければならない。
又労働者を安全衛生にひき込む他の効果的な方法は、安全委員会を通じて寄与させることである。


4.0 安全衛生のポリシー

7つの要素すべてとこれ迄に述べて来たそれぞれの構成要素は、組織体の書面の安全衛生ポリシーの中にとり込まれなければならない。このことについては、経営のトップが労働者を危険から守ることについて、個々の作業についてそれほど沢山ふれる必要はないが、最も重要なことはこの労働者保護はいかにあるべきか、又どのようにして提供するかということを示すことである。安全衛生のポリシーは3つの重要な部分に分けることが出来る。

[1] 目的の宣言又は概括的声明。
[2] 目的と意図を実行する組織。
[3] そのポリシーを実施するに際し、管理者層と労働者によってフォローされるべき詳細な計画。

従ってポリシーは図 2に示すように、組織、実行及び制御のためのベースを備えていなければならない。


制御
l
実行
l
組織
l
ポリシー

図 2 安全衛生ポリシーのルール

第三部

4.1 安全衛生ポリシーの重要性

安全衛生ポリシーには、最も新しい見解がすぐわかるように日付をつけるべきである。
安全衛生ポリシーは組織のトップのサインが必要であり、すべての従業員に与え、点検とか協議等あらゆる機会に利用されなければならない。
ポリシーの有用性は下記の如く要約出来るであろう。
  • 法的な要求を満す。
  • 目標を表明する。
  • 達成すべき水準や活動の基準を定める。
  • 組織における安全衛生に関する役割と責任を明確にする。
  • 外部の機関のアドバイス等にたよるだけでなく自己規制を行う。

4.2 概括的なポリシーの表明

これは適度に簡潔であって、組織としての目標は何であり、その意図するところは労働者の安全衛生の保護と、時としては公共的なものに関係していることを示す。
然しながら少くとも4つの基本的なポイントを示すべきである。

[1] 労働者と公共の安全は、最高に重要なことである。
[2] 安全は私利私欲に優先する。
[3] すべての管理者は、安全衛生対策の実施と発展についてあらゆる努力をしなければならない。
[4] 組織として、すべての関連法令を遵守することに最善をつくさなければならない。


5.0 安全衛生組織

これが恐らくポリシーの最重要部分であろう。
会社の安全衛生の組織と、その組織を通じて、高い実施基準を設定し、組織のすべてのレベルの人々によってこれが達成されるのだ、ということが述べられていなければならない。
(ここでは基本的には、組織とは人とその人達の責務を指している)
安全衛生が企業の全員に関係していることは疑う余地のないことだが、主たる責任は、唯一作業の命令をしたり監督する権限をもつ重役や管理者層にある。
安全衛生に関し命令の連鎖の概略を述べると、
  • 誰が誰に対して、何についての責任があるか?
  • 委任された責任がきちんと引受けられるために、実施義務をどのように決めるか?
  • 実施状況を監視するためのポリシーはどのようにあったら良いか?
安全についての内容は、それぞれの仕事の記述毎に必要であり、例えば、特別な安全責任の詳細、安全委員会の役割と機能、責任のラインを明らかに示す管理チャート等である。そして安全衛生管理の責任について、ハインリッヒは管理者層の役割と責任をずいぶんと沢山記している。そのうちのほとんどが現在でも効果的である。彼の考え方を要約し安全衛生のポリシーの評価に用いると良い。


5.1 重役及び上級管理者の責任

管理者層は先ず第一に危険を制御する責任がある。何故ならばこれらの危険は管理者層が作り出し管理する雇用の結果として存在するからである。
安全に関して会社の重役と上級管理者の責任は、基本的に2つの面をもっている。
  1. 管理者層は、それをあずかっている作業場の機械的、物理的状態の安全に対し責任がある。
  2. 管理者層は、その能力とその機会があるために、労働者による不安全行動を防ぐ責任がある。
第1のカテゴリーに入る典型的な危険は、安全装置のない機械、欠陥のある道具の使用、不適切な照明と換気等である。これらは明らかに、購入、設置、操作、保全及び防護について唯一の決定権をもつ管理者のコントロール範囲である。

第2のカテゴリーの危険は、作動部分への油さし、保護装置の取りはずし、通路や作業スペースに物を置く、クレーンでつりさげられている荷の上に乗る等が含まれる。
労働者の不安全行動は、適切な選択、トレーニング、指示及び監督によってコントロールすることが出来るのだ。
その他管理者層がやはりカバーすべき責任として、作業の安全システムを作ることがある。

5.2 安全スペシャリストの責任

安全スペシャリスト又はエンジニアは管理者層に使用され、そして労働者の作業についてアドバイスを行う管理と監督のスタッフの一部である。
従って、安全スペシャリストは前記の管理者層の責任を共有している訳である。
安全スペシャリストは、機械的・物理的危険、及び労働者の不安全行動を確定するために、工場設備、機械、道具及び種々の作業操作を定期的に検査する。
安全スペシャリストは、改善の提案と勧告、監督者のトレーニングと教育への参加、安全ミーティングへの参加又は管理、調整役としての働き、及び上級管理者の連絡取次を行う。
一般的に言って安全スペリャリストの役目は、事故防止の仕事を監督したり促進したりすることである。

5.3 監督者と職長の責任

管理者層の責任は、これ又監督者及び職長にも適用される。
労働者に直接指示を与える彼等は、事故を減らすためのキーポジションにいる訳である。
監督者と職長は、又作業者達と密接に付き合っており、彼等を直接知っていて、彼等の習慣、不平、考え方や個人の資質にくわしい。
職長は一般的に言って技能に熟練しており、働く人達のそばにいたりそばで働いていたりして、彼等にお手本を示したり、影響力を及ぼしたりすることで彼等をコントロールしている。
このコントロールが安全の実施上最も重要な因子である。
腕ききの監督者及び職長の思いやりのあるかつ聡明なサポートは、あらゆる安全プログラムに於て必要である。
事故防止方法について監督者への適切なトレーニングが必須である。


5.4 労働者の責任

監督の立場にはない労働者の主たる責任は、自分自身及び扶養家族のためにけがをしないこと、及び彼等をサポートする人達を傷つけないことである。
労働者は仲間の労働者に指示をする権限をもたないし、又彼等は操作する装置が本来もっている固有の危険に対しても責任はない。
しかし彼等の仕事を安全に行うことは、彼等の事業主に対しての責任である。
  1. すべての労働者は彼等が自分でコントロール出来ない、不安全な作業条件については、監督者に報告しなければならない。
  2. 彼等は仲間の労働者の作業を、危険をおこしやすいような方法で邪魔をしてはいけない。
  3. 彼等は、その他の労働者を同様な方法で邪魔をしてはいけない。
経験はないけれど、労働者は彼等の仲間に安全に関する自分の知識や
経験を伝えることにより、援助する機会をもっても差しつかえない。
そして安全ミーティングに積極的に参加して、自分を活性化しなければならない。
労働組合又は他の組織された労働グループの労働者は、安全ルールや、勧告の作成に直接参加しても良い。(安全点検はその代表者だけれど)
個々の労働者の参加の機会と責任は限定されているが、集団的な形での参加の機会と責任は考慮される。



6.0 安全衛生計画

安全衛生計画はシステムと手順に関連する。
これらはポリシーのボルトのナットになる。
それは実施計画を取扱い、その実施計画によりポリシーは効果的に実施されることになる。
これらは安全トレーニング、作業の安全システム、環境のコントロール、作業手順、関連したルールや規則、作業の安全な場所、機械のガード、整理・整頓、安全な工場と設備、騒音の制御、放射線安全、粉塵の制御、有害物質の安全な使用、内部のコミュニケーション/参加、安全委員会の利用、火災安全と予防、医療設備と福祉、事故の報告と調査、緊急時の手順、作業場の監視等である。
従って、その計画が作業における安全と衛生のために十分かどうかを分析する時、下記の見方が恐らく考慮されるであろう。
  • 事故と職業性疾病の報告方法とその調査。
  • 汚染物質の監視と、作業場における高い労働衛生基準維持のための計画。
  • 安全衛生問題における労働者のトレーニングについての計画。
  • 貯蔵施設は良い整理整頓が必要、工場設備や機械のためには十分なスペースが必要、通路を備えそれをうまく配置する。
  • 高所作業のための特別ルール。
  • 安全な作業習慣のための一般ルール。
  • 機械の使用、安全システム又は機械装置の保全及び健康障害を制御するため等の特別な説明書を備える。
  • 機械の安全性及び物質の安全衛生データーシートを特別に重要視した、新しい機械や物質のチェック体制。
  • 安全点検の手順。
  • 個人用保護具を備え、その使用方法と維持管理。
  • 安全提案。
  • 健康診断とバイオモニタリング。
  • Permit-to-work systemの利用と発展。

7.0 結語

安全衛生組織の原理は、安全衛生のポリシーを通して反映することが出来る。それは単に文書に書いておくべきようなものではなく、効果的な安全衛生管理のすべてのアプローチを通じて実現されるべきものである。
それは基礎であり、安全で衛生的な場所と作業を確実にするために、その基礎の上に効果的な管理組織と献身的な労働力を組みたてるべきである。