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マレーシアで安全衛生プロジェクトがスタート

厚生労働省安全衛生部国際室
(資料出所:働く人の安全と健康Vol.2 No.2 2001 p.82〜85)


はじめに

政府ベースの技術協力は、国際協力事業団(JICA)を通じて行われており、技術協力の基本的な形態であるプロジェクト方式技術協力は、研修員の日本への受け入れ、日本からの専門家派遣および機材供与の三つの形態を有機的に組み合わせ、一つの案件として数年間(通常5年間)にわたって計画的に実施するものである。

安全衛生分野におけるプロジェクト方式技術協力は、実際上は、厚生労働省安全衛生部が担当してきており、現在までに、次の五つのプロジェクトが実施されている。

  1. フィリピン労働安全衛生研究所事業(昭和63年度〜平成6年度)
  2. 韓国勤労者職業病予防事業(平成4年4月〜平成9年4月)
  3. 日本ブラジル労働衛生協力事業(ミニプロジェクト)(平成7年9月〜平成10年9月)
  4. インドネシア安全衛生教育拡充事業(平成7年11月〜平成12年11月)
  5. タイ労働安全衛生研究所拡充事業(平成9年6月〜平成14年5月)

今回新たにマレーシア政府との間でプロジェクト方式技術協力がスタートすることとなったことから、ここでは、本プロジェクトの概要について紹介する。

プロジェクトの背景・経緯

マレーシアは、面積が330,000km(日本の約0.9倍)、人口2,325万人で、マレーシア半島の11州および北ボルネオの2州ならびに二つの連邦直轄区(首都クアラルンプールおよびラブアン島)からなる連邦国家であり、人種構成はマレー系が57. 7%、中華系が25.4%、インド系が7.2%、その他9.7%となっている。
マレーシアは、かつては典型的な一次産品(ゴム、(すず)等)輸出国であったが、積極的な海外資本の導入等により、製造業を中心に工業化が進み,著しい経済成長を遂げた。

このようにマレーシアでは、経済発展・工業化を遂げているが、労働安全衛生対策は全般的に立ち遅れており、特に報告された労働災害による死亡者数は、 1992年に888人であったものが、 1996年には1,308人となり、 5年間で47.3%の増加をみている。

労働安全衛生に関しては、人的資源省労働安全衛生局(DOSH)が所管しており、工場・機械法(1967年)、労働安全衛生法(1994年)等の法令により事業者等に対して規制を行っている。

また、 1992年に政府出資の機関として、労働安全衛生に関する教育訓練等の事業を行う国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が設立されている。

マレーシアからのプロジェクト方式技術協力の要請は、主にこのNIOSHを対象としており、その技術指導機能、人材育成機能、情報収集・提供機能等の向上を目的とするものである。この要請を踏まえ、 1997年1月に基礎調査団、1998年10月に協力分野の調整のための個別短期専門家, 1999年9月に事前調査団がそれぞれ派遣されている。

さらに昨年10月、実施協議調査団が派遣され、マレーシア政府との間でプロジェクト実施に当たっての約束事項が協議議事録(R/D)およびミニッツ(M/M)として取りまとめられ,署名交換された。

NIOSHの概要

NIOSHは、 「労働災害の発生状況を勘案し、事業者の労働安全衛生の取組を支援するため、教育訓練、調査研究、コンサルタントサービスを実施する機関を設立する。」という閣議決定により、 1992年12月に設立が決定し、 1993年7月より事業を開始している。当初はクアラルンプール市内に事務所を置いていたが、 1996年にクアラルンプール市から南へ約30kmのバンギ地区に移転している。
組織としては、所長のもとに、管理部門のほか、七つの部門があり(図1 参照)、現在職員数は、約70名である。

予算は独立採算性であり、年間約400万リンギット(約1.2億円)である。

また、業務内容は、教育訓練関係の業務が70〜80%を占めており、その他のものとして、事業場に対するコンサルタント業務、情報の提供業務、調査研究業務がある。

教育訓練については、 1998年には300コースで6,000人に対して行っており、教育訓練用の施設として講堂(200人収容)、 4教室(各25人収容)、 10討議室(各12人収容)、図書館、宿泊設備(80人収容)等を有している。

プロジェクトの概要

プロジェクトの実施期間は、平成12年11月15日から平成17年11月14日(5年間)であり、目的が国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の機能強化が中心であることから、プロジェクト名は、次のとおりとなっている。

The Project for the Capacity Building of National institute of Occupational Safety and Health in the field of Occupational Safety and Health (労働安全衛生能力向上プロジェクト)

プロジェクト実施のため、長期専門家としてわが国厚生労働省からリーダーおよび健康管理の専門家2名が、中央労働災害防止協会から労働衛生工学の専門家1名が、さらにJICAから調整員1名がそれぞれ派遣され、日本側プロジェクトチームを構成している。

マレーシア側のプロジェクト管理体制としては、 DOSH労働安全衛生局長がプロジェクトの運営・実施に全責任を負うプロジェクトディレクターに、 NIOSH所長が管理的・技術的事項に責任を負うプロジェクトマネージャーにそれぞれ指定されている。

また、両国責任者が意見調整を行う場としてジョイントコミッティーを年間1回以上開催するとともに、両国の直接の担当者が効果的なプロジェクトの実施について意見交換を行う場としてステアリング・コミッティーを月1回以上開催することとなっている。これらのプロジェクト組織については、図2のとおりである。

さらに、技術移転分野は労働衛生分野を中心にのとおり整理されている。

図1 労働安全衛生研究所 (NIOSH)
(注) ( )内はカウンター・パートの人数を示す。
図2 プロジェクト組織図

表 技術移転分野

  1. 作業環境測定、評価および改善
    1. 作業環境測定及び評価
      1. (イ)有機溶剤
      2. (ロ)粉じん
      3. (ハ)重金属
      4. (ニ)特定化学物質
    2. 局所排気装置の設計等
  2. 2 エルゴノミクス(作業管理)
    1. VDT作業
    2. 筋骨格系障害
    3. 暑熱
    4. 騒音
    5. 振動
    6. 呼吸用保護具
      1. (イ) 防毒マスク
      2. (ロ)防じんマスク
  3. 健康管理
    1. 有機溶剤
    2. 粉じん
    3. メンタルヘルス
    4. 疲労
    5. 重金属
    6. 特定化学物質
  4. 生物学的モニタリング
    1. 有機溶剤
    2. 重金属
    3. 特定化学物質
  5. 労働衛生管理に係る者の教育・訓練
    1. 産業医
    2. 衛生管理者
    3. 労働衛生専門官(監督官)
    4. 工学衛生管理者(インダストリアル・ハイジニスト)
  6. 中小企業における安全衛生管理
    1. 労働安全衛生マネジメントシステム
    2. 中小企業における安全衛生対策支援制度
  7. 安全衛生行政全般
    安全衛生行政に対する指導・助言