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監督制度

資料出所:「Occupational Safety and Health Laws in the United states, Mexico and Canada」
(仮訳 国際安全衛生センター)

監督および罰則規則は、メキシコ国内の職場の安全衛生に関する監督と罰則について規定しており、執行権限が連邦機関にある場合にも州および連邦区にある場合にも適用される。規則には、次のような目的がある。規制体制の簡素化、透明性、明確性の促進。規制緩和、事務負担の削減、監督官の裁量の制限。監督と、罰則規定、または連邦行政手続法、基準法、安全規則との調和の確保。民間の検証、試験、認証についての新しい制度の強化。そして、政府の助言的役割の強化である。定期監督の回数が減らされ、6カ月に一度から、1年に一度になった。監督に際しては1日前の事前通知を義務づけ、監督の対象、関連する法令、作成すべき文書を明示するよう定めている。

事業者には、以下の施行手続き上の重要な変更について、通知を受ける権利がある。すなわち修正期限、報告要件、召還、手続き規則、罰則評価、無罪放免、上訴決議、その他の命令と要件。

職場に対して行われる通常の監督には3種類がある。「初期監督」は、職場の開設、拡張、改修時に行われる。「定期監督」は、通常は1年おきに行われるが、過去の実績、企業の特質、リスクの程度、労働者の数、場所に応じて、回数が増減する場合もある。「検証監督」は、それ以前になされた修正命令の実施状況を調査する。

「特別監督」というものもあり、当局が違反、災害、災難、緊急な危険の存在を知り、または事業者の行為、報告書、文書に、不正、虚偽、欺瞞を察知した場合、何時でも実施命令が下される。

違反行為に対しては、労働者、事業者、労働組合のいずれからでも当局に報告できる。危険な業務や不正確な報告書があった場合、または合同委員会(訳注:日本の安全衛生委員会にあたるもの)が危険を把握せず、もしくは修正を確保しなかった場合、労働者は個人的に、または労働組合を通じて苦情を申し立てることができる。当局は、苦情内容と事故報告などの情報を審査し、特別監督が必要かどうかを決定する。その基準は次の点にある。

  1. 起こりうる危険の程度

  2. 法令順守の実績

  3. 労使関係(労使交渉不介入の立場を踏まえる)

その際、危険性の高い大企業、死亡事故、重大災害、特別危険対策の面が重視される。

監督と監督政策を担当するのは、労働社会保障省の特別局である。同局は、監督官の訓練、監督基準と指針の策定、順守状況の監視、監督の実施、修正期限の設定、重大な危険による閉鎖命令、監督記録の保管、合同委員会への助言と監視を行う。監督官は試験による認定を受けなければならない。監督官は文書の検討(災害、疾病報告書など)、労働者への事情聴取、作業資材の検査を行う。

監督官は、勤勉さと品行の面で一定の基準を満たしていなければならず、逸脱があれば罰則が課せられる。具体的には、監督対象の職場に金銭的、個人的利害関係をもっていてはならず、事業者と労働者から贈答品や寄付を受け取ってはならない。労働社会保障省は、報告書の検討、苦情の審査、行動チェックを通じて監督官を監視する。

監督官は、監督の開始にあたって、事業者に文書による監督命令、確認のための電話番号、さらに事業者の権利と義務についての説明書を提示しなければならない。監督には、事業者と労働者の双方の代表が立ち会わなければならない。通常、事業者の記録と合同委員会の報告書が参照される。事業者の主たる権利は、報告された事実に関して意見を述べ、証拠を提出することである。労働者代表も、意見を提出できる。監督官は、専門家または合同委員会に助力を求めることができる。監督の実施に加え、当局は労働者、合同委員会に情報と文書を要求できる。

監督官は、一回の監督ごとに報告書を提出しなければならない。監督報告書は、各当事者の宣誓書と署名が添付できるよう、監督実施の当日に作成されるのが普通である。この他、監督官には次のような重要な任務がある。すなわち、修正期限の明示、修正と命令順守状況の監視、緊急な危険に対する即時修正措置の示唆、必要な場合は職場の全面的または部分的閉鎖提案、労使協力の促進、物質検査の命令、監督と罰則の通知、検察当局への適切な報告書の提出などである。監督官は、基本的な規則順守の確保に加え、法律で義務づけられた職場の許可証、さらに労働者の資格証明書、合同委員会の活動を監督する責任も負っている。また安全衛生に関する助言も行う。監督官は、企業秘密を漏らしてはならない。