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罰則

資料出所:「Occupational Safety and Health Laws in the United states, Mexico and Canada」
(仮訳 国際安全衛生センター)

監督当局は、労働社会保障省の特別局に罰則案を提出し、特別局は、連邦以外の監督機関によるものを含め、罰則を決定する。罰則手続きは、監督および罰則規則で定められている。これに基づき、召喚状には起訴の内容を明示し、その根拠となった情報分析の内容を明示しなければならない。事業者には反対訴答の権利がある。具体的には抗弁、特例の要請、証拠の提出などがあり、さらに代理人を選任する権利もある。決定にあたっては、法的根拠と理由を明示しなければならない。

アメリカの場合とは対照的に、メキシコでは最初の違反に罰則が適用されることはあまりない。罰則が適用されるのは、通常、危険が急迫している場合、以前に監督官や合同委員会が指摘した問題を改善しなかった場合である。罰則には、罰金から施設の全面的または部分的閉鎖まである。罰金の額は、違反の程度、故意性または反復性、さらに企業の財力に応じて、法律で規定されている。基準法は、公認メキシコ規準に対する違反に対し、従来よりはるかにきびしい罰則を適用している。安全規則は、公認メキシコ規準に対する違反は基準法に基づいて処分すると定めている。その結果、よりきびしい罰則の適用が可能になった。NOMsの条項に抵触しない安全規則違反には、安全規則で定められた罰則が適用されるようである。行政罰として罰金を科しても、刑事罰の適用は排除されない。

この罰則手続きにおいては、事業者は罰則の軽減、または修正期限の延長を求めることができる。出廷命令と罰則に異議を申し立てる手続きには、3種類ある。第1は、労働社会保障省の内部で「審査を受ける権利」である。第2は、もっとも重要な事項だが、45日以内にメキシコの連邦下級裁判所に、決定の破棄を求めて上訴できる。第3に、事業者は、みずからに適用された法律の違憲性を連邦上訴裁判所に上訴し、「amparo=保護」と呼ばれる特別の手続きに入ることができる。罰則審査の申請は、出廷命令から15日以内に行わなければならない。違反に対する罰金は、事業者にも労働者にも科せられるが、労働社会保障省が労働者に罰金を科すことはまれである。罰金を科すことで、労働者による違反報告が抑制されるのを懸念してのことと思われる。

罰則方針の決定では、制裁局と連邦下級裁判所が重要な役割を果たす。制裁局は、裁判所の法律的判断の裏づけのもとで、罰則を執行するからである。裁判所は、事業者の財務力の判定にもっとも力を注ぐため、この点で制裁局の罰則方針は大きな影響を受けてきた。現在、制裁局は、法律で定められた事業者の利益配分率に基づいて、財務力を判定している。その際は、一覧表を使い、事業者の利益分配率を基に、当該違反への最高罰金額に対する規定の比率を適用する。導き出された罰金額を、さらに違反の悪質度と特別の軽減要因をはじめとする他の判定要因を加味して調整し、実際の額が決定される。違反の悪質度は、3段階で判定する。「軽微」は技術的な違反で顕著な損害をもたらさない違反、「悪質」は労働者への顕著な損害を与える違反、「きわめて悪質」は、広範囲のコミュニティに損害を与える違反である。公式の罰則要因としては、事業者の故意性、違反の反復性という2点もあるが、実際には判定にほとんど影響しない。違反は故意ではないとの前提に立っており、また記録によって違反の反復性が証明されるケースはほとんどないからである。