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ロシア連邦における労働安全基本法

(資料出所:Federal Law "Fundamentals of Labor Safety in the Russian Federation"(FL-181))

(仮訳 国際安全衛生センター)


ロシア連邦

連邦法
「ロシア連邦における労働安全基本法」
FL-181

1999年6月23日 下院承認
1999年7月2日 上院承認

 本連邦法は、労働安全の分野における事業者と労働者間の関係に関する規制の法律的背景を定めるものであり、労働作業における労働者の健康および生命の保護の要件を満たす労働条件を整備することを目的としている。

第一章 総則

第一条 本連邦法で用いる基本用語および定義


 本連邦法では、以下の用語と定義を用いるものとする。
 「労働安全」(labor safety)とは、法的措置、社会・経済的措置、組織・専門的措置、衛生的措置、治療措置、リハビリテーション措置、およびその他の措置を含めた、労働作業における労働者の健康と生命を保護するシステムのことをいう。
 「労働条件」(labor conditions)とは、労働者の作業能力と健康に影響する生産条件および労働活動の全要素をいう。
 「有害な生産要素」(harmful production factor)とは、その影響によって労働者に疾病を生じる可能性がある生産要素をいう。
 「危険な生産要素」(hazardous production factor)とは、その影響によって労働者が負傷する可能性がある生産要素をいう。
 「安全な労働条件」(safe labor conditions)とは、労働者に対する有害または危険な要素の影響が排除されているか、もしくはその影響の度合いが定められた基準を超えていない労働条件をいう。
 「作業場」(working place)とは、労働者がその職務上いなければならないか、または職務のために赴かなければならない場所であって、直接間接に事業者の管理下にあるものをいう。
 「個人用保護具または共同保護具」(personal or collective protection equipment for employees)とは、労働者に対する有害または危険な要素の影響を防止・抑制し、汚染から保護するために使われる専門器具をいう。
 「労働安全基準に準拠した作業の認定証(安全認定証)」(certificate of work compliance to safety of labor (safety certificate))とは、労働安全に関する組織の活動が労働安全に関して規範となる国の要件を満たしていることを証する文書をいう。
 「生産活動」(production activities)とは、さまざまな原材料の生産と加工・建設・役務の提供を含め、資源を最終製品に転換するのに必要であり、生産手段を用いて行われる種々の人的活動の総体をいう。

第二条 労働安全に関するロシア連邦の法律およびその適用分野

1. 労働安全に関するロシア連邦の法律はロシア連邦憲法に基づくものであり、本連邦法、その他の連邦法およびロシア連邦の規範となる法律、ならびにロシア連邦構成国の法律および規範となる法律から構成される。
2. 本連邦法の効力は以下のものに及ぶものとする。
 事業者
 事業者と雇用関係を結んでいる労働者
 労働への個人的参加をベースとして共同生産またはその他の経済活動に参加している協同組合の組合員
 高等・中等専門教育機関の学生、初等・中等専門教育機関および中等・高等一般教育機関で実習に携わっている学生
 組織に派遣されて働くサービスマン
 服役中の市民(組織で労働する期間が対象)
3. 他国において契約を結んで労働するロシア連邦市民については、事業者の国の労働安全に関する法律が有効であるものとするが、ロシア連邦管轄地域内の組織で労働する外国人および市民権を持たない個人については、ロシア連邦が結んだ国際協定にこれとは別の規定がある場合を除き、[ロシア連邦の]労働安全に関する法律が有効である。
4. ロシア連邦が結んだ国際協定が本連邦法と異なる規則を定めている場合には、国際協定の規則が適用されるものとする。

第三条 労働安全に関する国の規範的要件

1. 作業に携わる労働者の生命と健康の保護を目的とした規則、手順、および基準は、労働安全に関する連邦法とその他の規範となるロシア連邦の法律、およびロシア連邦構成国の法律とその他の規範となる法律に含まれる労働安全に関する国の規範的要件(以下、労働安全上の要件という)によって定めるものとする。
2. 労働安全上の要件は、本連邦法第二条第二項で定められた法人および自然人が実施するあらゆる活動、すなわち設計、建設(改造)および物体の操作、機械・機構およびその他の設備の設計、技術プロセスの開発、生産プロセスおよび労働の組織化を含む活動に対して義務付けられる。
3. 労働安全に関する規範的法令の作成および承認の手順、ならびにその修正のための条件については、ロシア連邦政府がこれを定める。

第四条 労働安全分野における国家政策の基本方針

1.労働安全分野における国家政策の基本方針は次のとおりである。
 労働者の生命と健康の保護を第一とすること。
 労働安全に関する連邦法とその他の規範となるロシア連邦の法律、およびロシア連邦構成国の法律とその他の規範となる法律、ならびに労働条件改善のための連邦レベルでの目的別プログラム、部門レベルでの目的別プログラム、地方レベルでのプログラムを採択し、実施すること。
 国が労働安全を管理すること。
 国が労働安全上の要件の遵守を管理監督すること。
 労働安全に関する労働者の権利および法律上の利益が守られているかどうかを監視するパブリックコントロールを支援すること。
 製造施設における災害と職業病を調査すること。
 製造施設における災害および職業病をカバーする労働者向け強制社会保険に基づいて、製造施設における災害および職業病によって損害を被った労働者ならびにその家族の法律上の権利を保護すること。
 製造施設および労働組織の現行技術水準では避けられ得ない、有害または危険な労働条件のもとでの作業および過酷な作業に対する補償を実施すること。
 労働安全分野における活動と、環境保護、およびその他の経済的・社会的活動とを調整すること。
 労働条件および労働安全の改善のために内外の先進的な作業方法を普及させること。
 労働安全措置に対する資金援助に国が関与すること。
 労働安全の専門家を訓練し、資格要件を改善すること。
 労働条件、業務上の傷害、および職業病の分野における国の統計報告を組織化すること。
 統一的な労働安全システムを機能させること。
 労働安全分野において国際協力を行うこと。
 安全な労働条件、安全技術・手法の開発と採用、および個人用保護具または共同保護具の製造を促すような効果的な税制を実施すること。
 労働者に対し、個人用保護具または共同保護具、衛生・福利厚生スペース、および治療・予防薬を事業者の負担で提供するための手順を確立すること。
2. 労働安全分野における国家政策の基本方針の実現は、ロシア連邦政府当局、ロシア連邦構成国政府当局、地方当局、事業者、事業者の連合組織、労働組合とその連合組織、およびその他の労働安全問題担当代表機関が共同でこれにあたるものとする。

第五条 労働安全分野におけるロシア連邦政府当局の権限

 労働安全分野におけるロシア連邦政府当局の権限には次のものが含まれる。
 ロシア連邦領土内における労働安全分野の統一国家政策基本方針の決定および実施。
 労働安全に関する連邦法とその他のロシア連邦の法律の作成および承認。
 国による労働安全管理の基盤の決定。
 労働条件と労働安全の改善のための連邦レベルでの目的別プログラムおよび部門レベルでの目的別プログラムの作成と実施、およびその実施の監視。
 連邦予算で負担すべき労働安全コストの決定。
 国による労働安全上の要件の遵守の管理監督に関わる連邦諸機関の構成、任務、機能、および権限の決定。
 製造施設における災害および職業病の調査に関する統一手順の確立。
 労働条件に関わる国の専門的判断を担う機関の配置およびこれらの機関の活動の手順の決定。
 組織における労働安全関連作業の組織化および認定。
 労働安全分野における専門家の訓練の組織化、労働安全責任者の知識をテストするための統一要件の策定。
 労働安全分野における国家政策を実現するために、ロシア連邦政府当局、ロシア連邦構成国政府当局、地方当局、事業者、事業者の連合組織、労働組合とその連合組織、および労働者によって承認されたその他の代表機関相互の連携を図ること。
 労働条件および労働安全の改善を目的とした内外の先進的な作業方法の研究協力および普及。
 労働条件、業務上の傷害、職業病、およびこれらの結果に関する国の報告の組織化。
 労働安全分野における国際協力。
 労働安全分野におけるロシア連邦政府当局のその他の権限。

第六条 労働安全分野におけるロシア連邦構成国政府当局の権限

 労働安全分野におけるロシア連邦構成国政府当局の権限には次のものが含まれる。
 ロシア連邦構成国領土内における労働安全分野の国家政策の実現。
 労働安全に関するロシア連邦構成国の法律およびその他の法律の承認。
 ロシア連邦構成国領土内における国による労働安全管理。
 労働条件と労働安全の改善のための連邦レベルでの目的別プログラムの作成・実現への関与。
 ロシア連邦構成国予算で負担すべき労働安全コストの決定。
 労働安全の諸条件を整備するために事業者の経済的利益を考慮する措置の開発・実施。
 労働安全分野における専門家の訓練の組織化、労働安全責任者の知識のチェック。
 労働者の労働条件に関する国の専門的判断の組織化、および組織における労働安全関連作業の認定。
 必要な場合には、市町村の行政区域を対象とした国による労働安全管理の権限の一部を地方機関に委譲すること。
 労働安全分野におけるロシア連邦政府当局の権限に属さないその他の権限。

第七条 労働安全分野における地方当局の権限

 地方機関は、所定の手順に従ってロシア連邦構成国政府当局から委譲された能力および権限の範囲において、労働安全分野における国家政策の基本方針を確実に実施するものとする。


第二章 労働安全上の要件を満たす条件下で作業する労働者の権利および権利の保証

第八条 労働安全上の要件を満たす条件下で作業する労働者の権利


 各労働者は以下のものに対する権利を持つ。
 労働安全上の要件に適合した作業場。
 ロシア連邦の法律に従って製造施設における災害および職業病をカバーする強制社会保険。
 作業場での労働条件および労働安全、健康被害のリスク、有害または危険な生産要素に対する防護措置について、事業者、該当する政府当局、および公的組織から信頼できる情報を受け取ること。
 種々の連邦法で規定がある場合を除き、労働安全上の要件に対する違反によって、みずからの生命と健康が危険にさらされる場合にかかる危険が除去されるまで労働を拒否すること。
 労働安全上の要件に従って事業者の費用負担で個人用保護具または共同保護具を与えられること。
 事業者の負担による安全な作業の方法および技術の訓練。
 労働安全上の要件に対する違反によって作業場が整理一掃された場合に、事業者の負担によって職業再訓練を受けること。
 労働安全上の要件の遵守を監視する連邦の管理監督機関またはパブリックコントロールを行う機関に対し、作業場の労働条件および労働安全のチェックを要求すること。
 ロシア連邦構成国の政府当局、地方当局、事業者、事業者の連合組織、労働組合とその連合組織、および労働者によって承認されたその他の代表機関に対し、労働安全に関する問題を訴えること。
 作業場における安全な労働条件の実現に関する問題の検討、および製造施設において本人にふりかかった災害または職業病の調査に対する本人の参加または代表を通じての参加。
 医学上の勧告に従って特別な健康診断を受け、かかる健康診断を受ける間は作業場(ポスト)および平均賃金が維持されること。
 重激な作業に携わり、有害で危険な労働条件で労働する場合には、ロシア連邦の法律、ロシア連邦構成国の法律、集団契約(協定)、労働契約(契約)で定められた補償を受けること。

第九条 労働安全上の要件に適した条件下で作業する労働者の権利の保証

1. 国は労働者に対し、労働安全上の要件に適した条件下で作業する権利の保護を保証する。
2. 労働契約で定められる労働条件は、労働安全上の要件に従っていなければならない。
3. 労働者に責任のない労働安全上の要件に対する違反がもとで、労働安全上の要件の遵守を監視する国の管理監督機関によって作業が中止される場合には、労働者の作業場(ポスト)および平均賃金は維持される。
4. みずからの生命と健康が危険にさらされる場合に労働者が作業の遂行を拒否した場合には、種々の連邦法に規定がある場合を除き、事業者はかかる危険が除去されるまでの間、労働者に別の作業を与える義務を負う。
 別の作業を与えることが客観的事由によって不可能な場合、労働者の生命と健康を脅かす危険が除去されるまでの労働者の休止期間については、ロシア連邦の法律に従って賃金が支払われる。
5. 個人用保護具または共同保護具が(規則に従って)労働者に提供されない場合、事業者には労働者にその職務の遂行を要求する権利はなく、事業者はかかる事由によって生じた休止期間についてロシア連邦の規則に従って賃金を支払う義務を負う。
6. 労働安全上の要件に対する違反によってみずからの生命と健康が危険にさらされる場合に労働者がその職務の遂行を拒否した場合、あるいは労働契約に定めのない重激な作業および有害または危険な労働条件の下での作業を労働者が拒否した場合には、労働者のかかる行為を懲戒処分の対象としないものとする。
7. 職務遂行時に労働者の生命と健康が損害を受けた場合には、ロシア連邦の法律に従ってかかる損害を補償するものとする。
8. 労働安全上の要件に対する違反を防止および除去するために、国は労働安全上の要件遵守の監督監視を組織・実施し、労働安全上の要件に対する違反に関する事業者および職員の責任について決定する。

第十条 重激な作業の遂行ならびに有害および危険な労働条件下での作業の遂行に関する制限

1. 重激な作業ならびに有害および危険な労働条件下での作業に女性および18歳未満の労働者を雇用することを禁止する。
2. 女性および18歳未満の労働者の雇用[を禁止する]重激な作業ならびに有害および危険な労働条件下での作業のリストは、全ロシア事業者連合および全ロシア労働組合連合との協議内容を考慮してロシア連邦政府が承認するものとする。


第三章 労働安全の確保

第十一条 労働安全の連邦管理

1. 労働安全の連邦管理は、ロシア連邦政府、またはその指示によって労働安全問題担当の連邦執行機関およびその他の連邦執行機関が直接実施する。
2. 労働安全分野における連邦執行機関の権限の配分は、ロシア連邦政府がこれを行う。
3. ロシア連邦の法律に従い、労働安全分野において規範となる規制、特別な許可・規制・監督を行う権限の一部を有する各種連邦執行機関は、これらの機関によって承認された労働安全上の要件に同意するとともに、その活動について他の労働安全問題担当連邦執行機関と調整しなければならない。
4. ロシア連邦構成国領土内における労働安全の連邦管理は、労働安全分野におけるロシア連邦構成国の連邦執行機関がその権限の範囲において実施する。

第十二条 組織における労働安全担当部課

1. 労働者が100人を超える製造施設の運用者たる各組織において労働安全上の要件の遵守を確実にし、要件が遵守されているかどうかを管理するために、労働安全担当部課を設置するか、あるいは当該分野における適切な専門知識または経験を有する労働安全の専門家のポストを設けなければならない。
2. 労働者が100人以下の組織については、労働安全担当部課または労働安全の専門家のポストを設けるかどうかは、事業者が当該組織の活動の具体的内容を考慮して決定するものとする。
 労働安全担当部課(労働安全の専門家)が存在しない場合には、事業者は労働安全分野に関して支援を受けるために専門家または組織と契約を結ぶものとする。
3. 組織における労働安全担当部課の構造および労働安全に携わる労働者の数は、労働安全分野における連邦執行機関の勧告を考慮に入れながら事業者が決定するものとする。

第十三条 労働安全委員会

1. 労働者が10人を超える組織においては、事業者が労働安全委員会を設置しなければならない。労働安全委員会には、事業者の代表、および労働組合または労働者によって承認されたその他の代表組織が等分に含まれるものとする。
2. 労働安全委員会は、集団協定(契約)の労働安全に関する条項の作成、労働安全上の要件の確保を目的とした事業者と労働者の交流、製造施設における外傷および職業病の防止を図るとともに、作業場における労働安全および労働条件のチェック、およびかかるチェックの結果について労働者への情報提供を行う。

第十四条 安全な運用および労働安全に関する事業者の責任

1. 安全な運用および労働安全に関する責任は事業者に帰する。
2. 事業者には以下のものを提供することが義務付けられる。
 建設、工事、装置の利用、技術プロセスの導入、ならびに製造に用いられる原材料および製品の加工における労働者の安全。
 労働者が使用する個人用保護具および共同保護具。
 どの作業場においても労働安全上の要件を満たす労働条件。
 ロシア連邦の法律およびロシア連邦構成国の法律に従った労働者の労働・休業条件。
 有害または危険な労働条件下および特別な温度条件下で労働するかまたは汚染と関連のある作業を遂行する労働者を対象とした所定の規則に従って、特殊な作業服、特殊な作業靴およびその他の個人用保護具、洗浄・中和手段を事業者の負担によって購入・提供すること。
 安全な運用技術・手法に関する指示、労働安全についての事前要点説明(ブリーフィング)、作業場における労働者の実習および労働安全上の要件に関する労働者の知識のチェック、労働安全上の要件に関する指示・事前要点説明(ブリーフィング)・実習・知識のチェックを受けていない労働者が運用に携わることの禁止。
 作業場における労働条件の整備と個人用保護具および共同保護具の適切な使用。
 労働条件面での作業場の評価とこれに基づく労働安全活動の認定。
 労働者に対する強制的な(就業前の)予備健康診断および(就業中の)定期健康診断、医学上の勧告に従い労働者が要求する臨時健康診断、およびかかる健康診断の間の労働者の作業場(ポスト)と平均賃金の維持。
 強制的な健康診断を受けていない場合、および医学上禁止されている場合に、労働者に作業を遂行させることの禁止。
 労働者に対し、作業場における労働条件と保護、ならびに健康を損なう恐れがある既存のリスクとかかるリスクに対する補償および個人用保護具について告知すること。
 労働安全管理担当政府機関および労働安全上の要件に対する監督政府機関に対し、これらの機関がその職務を遂行するのに必要な情報および文書を提示すること。
 災害防止措置、および負傷者に対する応急処置を含めた災害発生時の労働者の生命と健康を保護するための措置。
 ロシア連邦政府の定めた手順に従って製造施設における災害および職業病を調査すること。
 労働安全上の要件に従って労働者に衛生・医療サービスを提供すること。
 労働安全上の要件の遵守を管理監督する国の労働安全関連諸機関およびロシア連邦社会保険基金諸機関の職員、ならびにパブリックコントロールを行う諸機関の代表が、企業における労働条件および労働安全のチェック、製造施設における災害と職業病の調査を目的として任意に立ち入ること。
 法律で定められた期間内に、労働安全上の要件の遵守を管理監督する国の機関の職員の命令を履行し、パブリックコントロールを行う機関の意見を考慮すること。
 労働者を対象とした製造施設における災害と職業病をカバーする強制社会保険。
 労働者に対する労働安全上の要件の徹底。

第十五条 労働安全分野における労働者の責任

 労働者には以下のことが義務付けられる。
 労働安全上の要件に従うこと。
 個人用保護具および共同保護具の適切な使用。
 安全な運用技術・手法に関する訓練を受けること、労働安全に関する指示を守ること、労働安全上の要件に関する知識の作業場における実践およびチェック。
 人の生命と健康を脅かす状況、製造施設における災害、急性職業病(中毒)の兆候をはじめとする健康状態の悪化について、直接の上司またはそれより上の上司にただちに報告すること。
 強制的な(就業前の)予備健康診断および(就業中の)定期健康診断を受けること。

第十六条 労働安全上の要件を満たす製造施設および製品

1. 製造施設の建設および改造の設計、ならびに機械、装置およびその他の設備、プロセスは、労働安全上の要件を満たしていなければならない。
2. 製造施設の建設、改造、技術的な改装、新しい設備の製造と導入、およびハイテクの採用については、労働条件に関する国の専門的判断の結論として、本条第一項で定められたプロジェクトが労働安全上の要件を満たしている旨の記述がない限り、および、労働安全上の要件の遵守を管理監督する国の該当機関の許可がない限り、これを行うことができない。
3. 新規製造施設または改造された製造施設は、労働安全上の要件の遵守を管理監督する国の機関の報告書がない限り、これを引き渡すことができない。
4. 有害あるいは危険な物質、材料、製品、商品、またはサービスは、その計測管理の方法および手段が毒物学的に(衛生的、医学生物学的に)評価済みでない限り、製造プロセスにおいて用いることができない。
5. まったく新しい危険物質または有害物質を使用する場合には、事業者は労働者の生命と健康の安全を図る措置について、労働安全上の要件の遵守を管理監督する国の該当機関とこれを開発・調整しなければならない。
6. 機械、装置およびその他の設備、運搬手段、技術プロセス、材料および化学薬品、個人用保護具および共同保護具は、外国製のものも含め、ロシア連邦において効力を有する労働安全上の要件を満たしていなければならず、適合証を有していなければならない。

第十七条 労働者への個人用保護具の提供

1. 有害または危険な労働条件下での作業、ならびに特定の温度条件下での作業または汚染と関連のある作業においては、ロシア連邦政府の定めた手順に基づいて承認された規則に従って、しかるべき認定を受けた個人用保護具、および洗浄・無害化手段が労働者に提供されなければならない。
2. 個人用保護具の購入、保管、洗浄、手入れ、補修、消毒、および再生は、事業者の負担によって行わなければならない。

第十八条 労働安全の教育および労働安全の職業訓練

1. 組織の全スタッフは、そのトップも含め、ロシア連邦政府の定める手順に従って労働安全の訓練を受けるとともに、労働安全上の要件に関する知識をチェックしなければならない。
2. 会社に入るすべての人、および職務を変える人については、事業者または事業者によってその権限を授けられた人物が、労働安全上の指示を与え、安全な運用技術・手法および負傷者に対する応急処置を習得させなければならない。
3. 労働安全関連法律に則った職業選択が求められるような、有害または危険な労働条件の下で採用される人については、安全な運用技術・手法を習得させるとともに、作業場における実習期間を設けて試験を受けさせなければならず、就業中は労働安全に関する訓練および労働安全上の要件に関する知識のチェックを行わなければならない。
4. 国は初等・中等・高等一般教育機関および初等・中等・高等・大学院専門教育機関における労働安全教育の整備を支援するものとする。
5. 国は中等・高等専門教育機関において労働安全の専門家の職業訓練を行うものとする。

第十九条 労働安全および労働条件の改善を目的とした措置のための資金

1. 労働保護および労働条件の改善を目的とした措置については、労働保護および労働条件の改善のための連邦・部門・地方の特別なプログラムの枠組みの中で、ロシア連邦の法律、ロシア連邦構成国の法律、および地方当局の規範となる法律で定められた手順に従い、連邦予算、ロシア連邦構成国予算、地方予算、予算外資金でこれを負担する。
2. 労働保護および労働条件の改善を目的とした措置については、次のものによってもその資金を負担する。
 ロシアの労働法およびロシアの労働安全法に対する違反に基づいて徴収した罰金。これはロシア連邦政府の定める手順に従って配分する。
 組織および個人の自主的な寄付。
3. 組織内における労働保護および労働条件の改善を目的とした措置の資金については、組織の事業内容およびその法的形態を問わず(ただし連邦公機関・連邦官庁を除く)、製品(運用、サービス)製造コストの最低0.1%を拠出し、運用に従事する組織については運用コストの0.7%を下回らない金額を拠出するものとする。
4. 種々の産業部門、ロシア連邦構成国、地方、および組織においては、ロシア連邦の法律またはロシア連邦構成国の法律に従って、労働保護のための資金について定めることができる。
5. 労働者は、労働保護および労働条件の改善を目的とした措置の資金を負担しない。


第四章 国による労働安全に関する法律の遵守の管理監督

第二十条 国による管理監督


1. 国による労働安全上の要件の遵守の管理監督は、国の諸機関を連邦レベルで統一・集約したものとして機能する連邦労働監督局が実施するものとする。
2. 連邦労働監督局に関する規定は、ロシア連邦政府によって承認されるものとする。
3. 国の労働監督官はその職務の遂行にあたって以下のことを行う権限を持つ。
 事業内容および法的形態を問わずあらゆる種類の組織を監督目的で昼夜任意の時間に支障なく視察すること。
 企業の経営者およびその他の職員、執行機関および地方機関、事業者に対し、監督管理の職務の遂行に必要な文書、説明、および情報について問い合わせ、これを無償で受け取ること。
 使用済および処理済の材料・物質のサンプルを分析のために回収すること。
 所定の手順に従って製造施設における災害を調査すること。
 組織の経営者およびその他の職員に対し、労働安全関連法律に対する違反の除去、所定の手順に従ってかかる違反の責任を負う人物の懲戒または免職を指示する強制命令を与えること。
 労働安全上の要件に対する違反が労働者の健康と生命を脅かす恐れがある場合に、かかる違反が取り除かれるまで、組織・個々の製造施設および設備の運用を中止させること。
 安全な運用技術・手法の教育、労働安全に関する指示、作業場での訓練および労働安全上の要件に関する知識のチェックを受けていない労働者を退去させること。
 適合証がなく、労働安全上の要件を満たさない個人用保護具および共同保護具の使用と製造を禁じること。
 ロシアの法律が定める手順に従って、労働安全上の要件に対する違反の罪を犯した人物に対して行政レベルで責任を問い、場合によって必要であればかかる人物を労働監督局に出頭させ、かかる人物を刑事裁判にかけるための資料を捜査当局に提出すること。
 労働安全関連法律に対する違反についての申し立て、および製造施設における労働者の健康に対する損害の賠償について、法廷で専門家としての役割を果たすこと。
4. 国の労働監督官は連邦職員である。
5. 国の監督官はロシア連邦の法律に従って不法行為または不作為の責務を負う。
6. 労働安全上の要件の遵守に関する国の管理監督は、労働監督局のほかに、管理監督の権限を与えられた種々の連邦執行機関がその権限の範囲内でこれを行うものとする。

第二十一条 労働条件に関する国の専門的判断

1. 労働条件に関する国の専門的判断は、全ロシア労働条件専門家委員会およびロシア連邦構成国の労働条件国家専門家委員会が実施するものとする。
2. 全ロシア労働条件専門家委員会に関する規定は、ロシア連邦政府によって承認されるものとする。
3. 労働条件国家専門家委員会の任務には、労働条件の面での労働過程認証の管理、過酷な作業もしくは有害または危険な労働条件に対する補償の適切性の判断、ならびに企業における労働安全活動の認定結果に基づく職業リスクの等級を記載した提案の作成が含まれる。
 労働条件国家専門家委員会の報告書は、労働安全上の要件に対する違反が認められた場合の組織およびその子会社に対する解散宣告の必須要件である。
4. 労働条件に関する国の専門的判断は、製造施設の設計・建設・改造のプロセス、および特定の活動を対象とした免許付与のプロセスについて、作業場において実施するものとし、これとあわせて労働安全上の要件の遵守を管理監督する国の諸機関と法的機関、労働保護を管理する諸機関、事業者、事業者連合、労働者、労働組合、および代表機関職員に対する聞き取り調査を行うものとする。
5. 労働条件に関する国の専門的判断を実施する職員は、適切な認定証を持っている場合には、あらゆる事業内容および法的形態の組織を任意に視察し、労働条件に関する国の専門的判断に必要となる文書を要求してこれを無償で入手する権限を有する。

第二十二条 労働安全に関するパブリックコントロール

1. 労働安全分野における労働者の権利および法律上の利益が守られているかどうかに関するパブリックコントロールについては、かかる目的のためにみずから監督を実施し、労働安全に関して権限を与えられた(許可された)人物を選任する権限を有する労働組合、および労働者から権限を付与されたその他の代表機関が、これを行わなければならない。
2. 労働組合はその該当機関およびその他の代表組織を通じて以下のことを行う権限を有する。
 事業者が労働保護法を遵守しているかどうかの監視。
 労働条件および労働者の安全確保に関する独自の専門的判断。
 産業災害および職業病の調査への参加、および独自調査の実施。
 組織の経営者およびその他の職員から労働条件と労働安全に関する情報ならびに製造施設におけるすべての災害および職業病に関する情報を得ること。
 労働者の生命と健康が脅かされる場合に作業の中止を要求すること。
 労働安全上の要件に対する違反が認められた場合に、かかる違反の除去に関する意見を、その考慮を義務付ける形で事業者に示すこと。
 労働安全および労働条件のチェック、ならびに集団協定で定められた労働安全に関する義務を事業者が遵守しているかどうかを確認すること。
 製造施設および生産手段の運用に関して試験稼働および検収を担当する委員会の活動に、独立の専門家として関与すること。
 ロシア連邦政府の定める手順に従って、労働安全に関する副次的法案の作成に関与し、法案の調整を図ること。
 労働安全上の要件に対する違反および産業災害の隠匿の罪を犯した人物の責任に関する要求を付して関係機関に訴えること。
 労働安全関連法律に対する違反、集団協定で定められた義務、および労働条件の変更をめぐる労働争議について、その検討に加わること。
3. 労働組合および労働者から権限を与えられたその他の代表組織において労働保護に関して権限を与えられた(許可された)人物は、労働保護に関する要件が遵守されているかどうかを任意に監視し、労働安全上の要件に対する違反が認められた場合に、かかる違反の除去に関する提案を、その考慮を義務付ける形で職員に提示する権限を有する。


第五章 労働安全上の要件に対する違反の責任

第二十三条 労働安全上の要件を満たさない製品を製造・供給する組織の責任


 労働安全上の要件を満たさない製品を製造・供給する組織は、ロシア連邦民事法に従って消費者に損害賠償しなければならない。

第二十四条 労働安全上の要件に対する違反の責任

 労働安全上の要件に対する違反、集団協定で定められた労働安全に関する義務の不履行、または労働保護の要件の遵守を管理監督する国の諸機関およびパブリックコントールを行う機関の代表者の活動を妨害する罪を犯した人物は、ロシア連邦の法律に従ってその責任を問われるものとする。

第二十五条 労働安全上の要件に対する違反に基づく組織またはその施設の活動の中止

1. 組織またはその製造施設の活動あるいは設備の運用が、労働者の健康と生命にとって危険となるような労働安全上の要件に対する違反を伴って行われた場合には、国の労働監督局長または国の労働監督官の命令に基づいて、指摘された違反が除去されるまでかかる活動または運用を中止することができる。
2. 国の労働監督局長および国の労働監督官が下した決定については、裁判所への上訴または行政手続きによる抗議を行うことができる。この抗議を行っても、行政または裁判所が決定を下すまでは命令の執行は中止できない。

第二十六条 労働安全上の要件に対する違反に基づく組織の解散またはその製造施設の放棄

 組織の解散またはその製造施設の放棄に関する決定は、労働保護問題を担当する連邦執行機関の長の要求、または労働条件に関する国の専門的判断の報告書がある場合にはその地方機関の要求に従って、裁判所がこれを下す。


第六章 最終条項

第二十七条 本連邦法の承認によって無効となる規範的法律


 以下の法律は無効とする。
 労働保護法の基礎(Vedomosti S'ezda Narodnykh Deputatov Rossijskoi Federatsii i Verkhovnogo Soveta Rossijskoi Fedratsii, 1993, N 35, Art. 1412)。
 ロシア連邦最高会議命令「ロシア連邦労働安全法の基礎の発効手順」(Vedomosti S'ezda Narodnykh Deputatov Rossijskoi Federatsii i Verkhovnogo Soveta Rossijskoi Fedratsii, 1993, No 35, Art. 1413)。
 連邦法「ロシア連邦最高会議命令『ロシア連邦労働安全法の基礎の発効手順』の第一項の改正」(ロシア連邦法典、1996, N 28, Art. 3346)。
 連邦法第二条「ロシア連邦労働法、ロシア連邦労働安全法の基礎;ロシア連邦行政違反法およびRSFSR刑法」(ロシア連邦法典、1995, N 30, Art. 2865)。
 連邦法第三十条第二項「産業災害および職業病に対する強制社会保険」(ロシア連邦法典、1998, N 31, Art. 3803)。

第二十八条 法的規制の本連邦法への適合

 ロシア連邦大統領およびロシア政府は、本連邦法発効から6か月以内に、その法的規制を本連邦法に適合させなければならない。

第二十九条 本連邦法の発効

 本連邦法は官報掲載の日をもって発効するものとする。

ロシア連邦大統領
B.エリツィン
モスクワ、クレムリン
1999年7月17日
N 181-FL


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