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職場環境の自律管理に関する規則の施行についての
スウェーデン国家安全衛生評議会の一般勧告

(資料出所:Swedish Work Environment Authorityのホームページ
INTERNAL CONTROL OF THE WORKING ENVIRONMENT」より)

(仮訳 国際安全衛生センター)

原文(英語)はこちら


職場環境の自律管理に関する規則の施行についての

スウェーデン国家安全衛生評議会の一般勧告

 以下の一般勧告は、職場環境の自律管理に関する規則( AFS1996:6)の施行に関して、国家安全衛生評議会が公布したものである。

背景

規則の目的

 職場環境法の目的は、就業による健康障害と災害を防止し、健全な職場環境を実現することである(第 3章第1条)。

 職場環境法第3章においては、その第2条に、事業における職場環境の管理に関する責任を事業者にゆだねている。第3章第2条は、一般的な表現によって、その責任はいかにして果たすべきかについて定めている。職場環境の自律管理に関するこの規則は、事業者が従うべき手続きについてより詳しく定義することになった。これによって、予防的措置の実施及び良好な職場環境の実現をより促進することになった。

 自律管理という表現は、1993年1月1日に最初の規則が発効した際に使われた表現である。

 今回の改正は、自律管理の基本的な方法論に変更を与えるものでは決してない。それらの多くは、説明をより詳しく付したものであるが、それらはまた全く新しい規定も含んでいる。職場環境に関するルールをいつでも援用することができかつそれらを適用することを、その新しい規定は要求している。個々の条文は、それぞれその条文の内容に則した条文構成とし、それぞれ異なった表題を付している。

事業活動に関するその他の管理基準

 ISO9000シリーズは、製品及びサービスに関する国際的なシステムを定めたものである。職場環境の管理についても同様のシステムが存在する。その構造及び内容において、これらISOのシステムは職場環境における自律管理を思い起こさせるものであるが、基本的な違いもある。職場環境における自律管理の規則(AFS 1996:6)は、労働者の安全衛生に関するものであるのに対し、1SO9000は顧客を対象とした製品とサービスの品質に関するものだからである。規則は拘束力のあるものであるが、基準(standards)はこれを採用するかどうかは任意である。規則は、事業者と労働者の協力に強調を置いているが、基準のように広範囲な文書化に関する定めを規定しているわけではない。

 事業者が、自律管理の作業を開始しようとするときに、既存の何か他のシステマティックな管理方法を参考とすることは有用である。反対に、例えば品質に関するシステムを導入しようとする場合は、職場環境に関して既存の自律管理の手法があれば、これが重要となる。事業者の中には、職場環境の自律管理を他のシステマティックな管理手法と完全にあるいは部分的にでも結び付けることが実際的にも戦略的にも有用であると考えている者がいるが、そのように相互に調整して結びつけることは、職場環境を考える場合、常に条件付のものとなる。職場環境の問題は、その背景についてまでも同一に考えることはできないからである。事業者は、常に達成すべき職場環境条件が満たされているということ、またそれが達成されるために取られた手法について確信を持っていなければならない。

枠組み指令

 労働安全衛生に関するECの枠組み指令(89/391/EEC)は、労働安全衛生に関する改善を促進するための措置の導入についての規定を定めている。

 その指令は、職場環境法及び国家安全衛生評議会の公布した規則を通じてスウェーデンの規則として焼直されている。職場環境における自律管理に関する規則では、例えば職場環境に関する政策、安全衛生上の役割の割り振り、原因調査とリスクアセスメントに関する文書化された説明書によって、枠組み指令の規定をさらに厳密なものとしている。

略語

 ここにおいて以下に続くページには、「自律管理(Internal Control)」は、しばしば「IC」と、例えば「IC規則」、「ICの作業」などと表記する。

個々の条文についてのガイダンス

規則(AFS 1996:6)の適用範囲

第1条についてのガイダンス

事業者とは

 この規定は事業者の労働者に対する責務を定めたものである。事業者という用語は、正式かつ法的な意味での事業者のことである。すなわち、 1人又はそれ以上の労働者を雇用する自然人及び法人をいう。

 零細な事業体は、事業体名を使用している場合もあるが、使用していない場合もある。その事業者はしばしば自らも直接日々の生産活動を行う 1人あるいは2人以上の自然人であることが多い。零細な事業体はまた会社形式あるいは団体形式で事業を行う場合もあり、そのような場合は法人となる。

 法人には、例えば、有限会社、商業組合(trading partners)、非営利団体、基金、地方自治体、郡の協議会、自治体間で設立した団体、行政区、教会教区間で設立した団体などがある。国は、法人の一種であるが、事業者としては国家権力機構とその付属機関である。

 大規模な企業はいくつかの地域や部門に分かれて組織されている。これらは、広範囲な権限を有した複数の管理者によって統括されているが、事業者としてはその企業そのものである。郡の協議会は、財政的な意思決定に関して包括的な権限を有した上級公務員が配置されかつ大きないくつかの組織からなっているが、事業者としては郡の協議会そのものが事業者である。

労働者とは

 事業者が法人である場合は、その事業体において雇用されている者はすべて労働者である。これは、その中の管理者や監督者も含まれる。例えば、企業の取締役や地方自治体の行政部門の長なども含まれる。実際問題として、彼らは事業者を代表することにもなるので、しばしば二重の機能を持つことになる。

 事業体の中には、常用労働者よりはその事業体との関係がより希薄な者もいる。彼らは、研修生、徒弟、臨時のスタッフ、試用の労働者、あるプロジェクトのために雇用されている者、また特別な職務のために従事している者などである。 IC規則は、これらの者に対しても適用される。学生、徴用された者、全体的防衛計画に基づいて仕事に従事している者、指示に従って仕事を行うサービス会社の人間などもIC規則の適用対象となる。

外部労働者とは

 事業者は、共通の職場において全体の調整を図る責任を有する場合と(職場環境法第 3章第7条)、その職場を管理する場合とがある(第3章第12条)。事業者本人が雇用する労働者以外にも他の者が雇用する労働者が当該職場において労働している場合がある。このような場合、事業者は職場環境を完全に管理することができない。その職場における事業者は、リスクをアセスメントし、必要な対策を決定する際に、これらの外部労働者のことを考慮に入れなければならない。

 事業者が職場環境法第3章第12条の労働者を雇う場合には、これらの労働者は事業者本人が雇用する労働者と全く同様に事業の中に組み入れなければならない。したがって、ICの作業に関することについても事業者は、これらの労働者のことを考慮することが本質的に重要である。

職場環境の自律管理の定義

第2条についてのガイダンス

職場環境の自律管理という用語

 第2条は、職場環境の自律管理の定義をしている。ICは、事業体の中で良好な職場環境を実現する方法論あるいは達成すべき職場環境条件を継続的に満たしていくための仕事の管理方法であるということができる。

 計画策定、実施、フォローアップはすべての活動における標準的な構成要素である。そのそれぞれの段階において、事業が継続する限り達成すべき職場環境条件が満足されているように、職場環境については注意を払わなければならない。これは、日々の仕事また仕事の内容に変化があったときの双方に言えることである。すなわち、作業用施設を選び、購入し、設置し、修理し、メンテナンスするとき、また、契約を結ぶ決定をするとき、サービスを提供するとき、人材育成計画を作成するとき、新しい人材をリクルートし又はその人事情報を取ろうとするときである。

 職場環境を改善する措置は、例えば新規のビルの建設、組織の再編成、新規の作業方法、作業工程の採用時また生産の変更などの時と併せて行われることが多い。

 計画の作成、実施、フォローアップは明確には分離できない。フォローアップは、新しい計画の策定につながり、またこれは新しい条件下で行われる。取られた措置のフォローアップは、新しい措置が検討されているのと同じときに行われる。

 システマティックなIC活動の基礎は、仕事の調査、措置の実施とフォローアップのような活動の行う中で、見えてくるのである。進行中のICは、例えば、職場環境に関する政策、安全衛生上の役割の割り振りそしてアクション・プランにその基礎を置いている。

達成すべき職場環境条件

 計画の作成、実施及びフォローアップの目的は、職場環境法、職場環境法施行規則、国家安全衛生評議会が規則に従って公布する規則が要求する事項を満足させることである。これらの規則類は、評議会の法令集( AFS)に載っている。

 達成すべき職場環境条件は、職場環境に関して物理的、人事的及び組織的な改善を行う際に考慮しなければならない。これらの条件は、就業中の健康障害、災害の防止に関係するとともに、発展的かつ意義のある仕事の創造にも関係するのである。

 国家安全衛生評議会はまた、 AFSシリーズとして、一般勧告、並びに告示及び指令の形で規則や一般的指令を公布している。これらの規則類を充実していくことが重要である。

その他の法的要求事項

 その他の法令にもまた職場環境に関係があるものがある。例えば、労働時間、引火性爆発性の物質、土木建築工事、電気工事、乗り物、機会均等、化学物質管理、民間航空、レスキューサービス、放射線防護、タバコなどに関する法令である。 IC活動が関係する場合には、事業者はこれらについても、法令に関するガイダンスを参照することが重要である。

職場環境の自律管理のための基本的条件

第3条についてのガイダンス

職場環境の自律管理を行う事業者の義務

 職場環境の自律管理を実施することはすべての事業者の責務である。これは、公的、民間、大規模あるいは小規模を問わずすべての事業に適用される。もちろん実際の運用は需要と諸般の条件によって異なってくる。

 ICの活動は、文書の作成で終わりというわけではない。実際に関係してくる職場環境について実際に現れる成果が重要である。IC活動は労働者の大部分がカバーされていればよいというものであってはならない。1人あるいは数人の労働者に対してしか影響を与えていないものでも、影響を与えているのであればこれをカバーしなければならない。

 職場環境法第3章第2条は、事業者に対して、労働者に合わせるように仕事の方を変更すること、そしてリハビリについて組織化された計画を定めることを要求している。この種の計画に関する規定は、評議会の職場順応及びリハビリテーション規則に定められている。

 IC活動を行う事業者の義務は、生産、管理、施設の清掃、修理、メンテナンスなどに及んでいる。この活動は、一箇所であるいは数箇所で、また移動して、さらに異なったときに異なった場所において行われる。労働者の自宅で行われる仕事もまた含まれるのである。計画の作成とフォローアップに関する要求事項は、これら状況の中で特に重要である。

安全代表、安全委員会及び労働衛生サービス

 職場環境に関するアセスメントを実施し決定を下すのは事業者の義務である。安全代表、安全委員会の役割は、活動をフォローアップし、物事を前進させることである。労働衛生サービスは事業者に対して知識と支援を提供する役割がある。事業者は職場環境に関する責任を安全代表、安全委員会あるいは労働衛生サービスのスタッフに転嫁することはできない。

第4条についてのガイダンス

職場環境法に基づく協力

 職場環境法においては、良好な職場環境を実現するために事業者と労働者が協力することが期待されている(第 3章第1条のa)安全代表は、職場環境に関する事項について労働者を代表し、満足できる安全な状況を追い求めなければならない。安全代表は、第3章第2条aに規定されている要求事項について事業者が義務を果たしているかどうかのチェックをしなければならない(第6章第4条)。安全委員会は、職場環境管理の活動に参画しその実施状況をフォローアップしなければならない(第6章第9条)。

 職場環境法は、個々の労働者に対しても焦点を当てている。個々の労働者は、その仕事のデザイン、また仕事に影響を与えるところの変更や開発のデザイニングにも参画しなければならない(第 2章第1条)。

労働者の責務

 職場環境法第3章第4条において、労働者は職場環境に関連する活動に参加し、良好な職場環境の実現のために必要な措置の実施に参加しなければならないとされている。労働者は公布された規則を遵守し、安全のための機器を使用し、健康障害と災害の防止のために必要なその他の注意事項を守らなければならない。

 IC活動は、その実際的な効果という面では、労働者が職場環境における危険や欠陥を報告し、取るべき措置を提言し、さらに取られた措置に対する意見を表明するといったような彼らの義務を果たすかどうかということにかかっている。

職場環境に関する事項における労働者の代表

 職場環境に関する事項については、労働者を代表する者として、地方においては安全代表(safety delegates)、また徒弟安全代表(pupil safety delegates)そして安全委員会では労働者代表(employee representatives)がいる。

 個々の労働者も、当然、ICの活動に参加することができる。安全代表及び安全委員会は、職場環境法の規定によってIC活動における役割が定められている。相互の協力をより進めるために、種々の職場環境に関する合意事項が存在する。


自律管理への参画

 第 4条は、協力活動をいつ行いまた活動の組織化はどのようにするかについては定めていない。基本的には、これらは活動の性質と達成すべき職場環境条件によって決まるものである。すでに存在している既存の協力システムの上に協力関係を築くことは、職場環境に関する事項を自然なかたちで進めていくためにはしばしば良いアイデアとなる。事業者、労働者及び彼らの代表がIC活動への参加について議論を行い、可能な限り共同で決定することが本質的に重要である。

  IC活動は、毎日の接触、個人的な打ち合わせ、共同巡視、発展的な議論、プロジェクトグループや共同グループでの活動を通じて次第に進化していく。

 事業者は、すべての関係者に IC活動への参加のために、例えば時間を与えたり情報を提供したりして、実際的な機会を提供しなければならない。事業者にとって、事業体の中にIC活動への参加のための積極的な雰囲気を植え付けることはきわめて重要である。

 事業者は、労働者が持っている労働条件に関する知識や経験を活用しなければならない。男性と女性はしばしば異なった労働条件下で働き、かれらの仕事に対するやる気も異なっていることが多い。 IC活動が現在のニーズに基づいて行われるよう、異なった意見もそれを見つけ出す必要がある。

第 5条についてのガイダンス

事業活動への自然な組み込み

 職場環境の活動は、生産、財務、品質に関する活動と同じように事業の一部である。したがって、これは「生産ライン」において行う必要があり、一部の関係者だけが行っていくものではない。安全衛生上の役割の割り振りと協力を通じて、職場環境に対する考えが毎日の仕事に織り込まれていくのである。 IC活動に必要な毎日の活動は、すでにある既存の活動に結び付ける必要がある。職場環境を担当する職員、労働衛生サービススタッフは、IC活動の重要な推進者である。 

すべての因子

 労働者は、職場における多くの因子に影響を受ける。また、それらの因子は、労働者全体に関する職場環境を構成する。それらには、例えば、空気の清浄度、騒音、化学物質の健康危険、作業負荷、労働時間、人間関係、その他の種々の要因や問題の発生である。

 事業者は、労働者個人の労働の状況を観察しこれに留意していなければならない。このことは、安全衛生にマイナスの影響を与える因子のみに当てはまるわけではない。良好な職場環境のためには、健康障害と災害を防止すること以上にもするべきことがあるのである。 IC活動には、これ以上のことが含まれる。これはしばしば「良い仕事(the good work)」と言われる。

  IC活動の対象には、事業者が直接管理していないもの、例えば賃貸した工場設備や機器などについても含まれる。

第6条についてのガイダンス

職場環境に関するルール

 職場環境法及び職場環境法施行規則は、すべての職業活動における職場環境について適用される。 AFSの規定は、職場環境、職業の種々の要素に対して適用され、特に弱い労働者集団のことについて適用される。

 国家安全衛生評議会の規則及び一般勧告は、 AFSシリーズに定期的に公表される。評議会の出しているカタログには、職場環境について適用される法令を検索するためのガイダンスも載っている。

労働者が利用できること及びその利用

 事業者は、労働者が職場環境法及び職場環境法施行規則をいつでも読むことができるようにしていなければならない。このことは、法あるいは規則に従って出されたその他の法令についても同様である(職場環境法施行規則第5条)。

  IC活動を意味あるものにする一つの前提条件として、職場環境に適用される法令が、ただ単に利用可能となっているだけでなくそれが実際に使われていることである。実際のIC活動において、それらにアクセスし活用することは、事業者自身、管理者そして監督者にとっては特に重要である。職場環境法とは別個に出された一般勧告、告示、指令についても利用可能にしかつ活用されるべきである。

 国家安全衛生評議会の出した規則類は、常にこれをフォローし、入手、配布そして備えておくことが重要である。

職場環境に関する政策及び安全衛生上の役割の割り振り

第7条についてのガイダンス

職場環境政策の内容

 職場環境に関する政策には、 IC活動の目的とその戦略が定められている。この政策はトップ・マネージメントが定めるものである。

 小さな企業においては、しばしば職場環境はどのようなものであるか、またその目的を達成するためには職場環境に関する問題にどのように対処するかについて事業者自身が説明する。小さな企業では、このことはアクション・プランにおいて示すこともできる(第14条)。

 この目的のために事業者と職場環境に関する労働者代表が議論に参加することが重要である。 

自律管理活動(IC活動)の目的

 目的を設定する際には事業活動のどの部分にリスクがあるかを把握することが出発点となる。目的は、除去すべきあるいは減じるべきリスクを特定するというかたちで設定することができる。また、それは疾病の減少、災害の減少、さらに病気による欠勤の全体的減少というかたちで具体的な数字で示すこともできる。目的を達成することは、意義のあるかつ発展的な仕事を遂行するという意味においても、より大きな満足を与えるものである。それらは、筋骨格系の障害を一定の比率で減少させることでも良いし、労働条件として福祉の水準を改善することでも良い。

 目的は活動のフォローアップがしやすいものであることが重要で、活動に具体的に関連しかつメリハリの利いたものであるべきである。

事業者の戦略

 事業者が良好な職場環境と生産性の効率との関係について認識を持っている場合は、その認識は職場環境の改善には大きな力となる。成功のカギは、事業者が良好な職場環境を実現するように IC活動を推進していく決意を持っているかどうかである。事業者が個人的にあるいはトップ・マネージメントがこの意思を明確に表明するならば、労働者はIC活動のために積極的に参加するという動機付けを与えられることになる。

  IC活動の戦略にはそのための予算を確保し、安全衛生上の役割の割り振り、知識の伝達、労働衛生サービスへの従事さらに文書による報告などを定めた原則が重要である。

第8条についてのガイダンス

安全衛生上の役割の割り振りの目的

 「安全衛生上の役割の割り振り」とは、安全衛生上の役割(責務)、権限そして資源の割り振りのことである。

 多くの事業活動に関する決定は、職場環境に影響を与え、したがってそれらの決定を下す際には、職場環境の見地からも考慮しなければならない。

 通常は、トップ・マネージメントが、今後の見通しを示しつつ安全衛生上の役割の基本的な割り当てをおこなう。達成すべき職場環境条件の達成のためには、安全衛生上の役割はできるだけ組織の中で広く分担することが必要である。

 小さな企業では、事業者が IC活動において誰が何をするのかについて直接説明することができる。

安全衛生上の役割、権限及び資源

*達成すべき職場環境条件を満たすために果たすべき安全衛生上の役割は、日々の自然な活動の一部である必要がある。

 管理者や監督者は意思決定と活動の監視を通じて重要な役割を果たす。彼らは、しばしば IC活動における安全衛生上の役割も与えられる。その他の労働者も、職場での災害防止に重要な役割を果たすであろう。例えば、物を運搬するものは床が滑りやすい状態を発見した時は彼には砂を床に撒くという責任がある。

 安全衛生上の役割が2つの若木の間に落ちたり(訳注:誰が行うのか明確でない)、忘れられたり、多くの人間に同時に安全衛生上の役割が与えられたりするということはないようにしなければならない。

*権限とは、意思決定を行いそれを行動に移す権利のことである。

*資源とは、人員の確保、機器、設備等、さらに資金等のことである。 IC活動を任されたスタッフが十分な知識とそのための十分な時間を有することはもちろん重要である。

安全衛生上の役割の割り振りについてのさらなる説明

 安全衛生上の役割は、経済的に、形式として、そして実際的に可能であるように割り当てなければならない。割り当ては、十分に明確ですべての関係者がいつでも何をすべきかについて知っているようにしなければならない。

 また安全衛生上の役割は一定の職権と一定の地位を有する人間に割り当てなければならない。個々人を指名する必要はないが、部門全体に安全衛生上の役割を割り当てるということでは不十分である。

 安全衛生上の役割を割り当てられた労働者が、その権限、資源、知識あるいは有する時間が不十分であると認識した場合は、その者は上司に改善を申し出なければならない。最後の手段としては、事業者はその者の安全衛生上の役割を減らすことになる。

 人員を変更した場合は、通常、安全衛生上の役割の割り当ての変更も必要とする。これは、長期にわたる病気、休暇、新たに人員を採用すること、配置転換などである。安全衛生上の役割の変更は、権限と資源の変更の必要性を生じさせ、新しい知識とより多くの時間を必要とさせることがある。

 活動が場所の移動を伴う場合あるいはいくつかの場所において行われる場合には、明確な安全衛生上の役割の割り当てが特に必要である。

安全衛生上の役割の割り振りのためのメモ・リスト

1.組織図から開始する。

2.もっとも良く活動できるようにすべてのレベルにおいて安全衛生上の役割を割り当てる。

3.個々の人間に安全衛生上の役割を割り当てる。一つの安全衛生上の役割だけにする。

4.知識、権限、資源がその安全衛生上の役割を行うに十分が確認する。

5.安全衛生上の役割を割り当てられた者がそれを正しく理解しているか確認する。

6.労働者に安全衛生上の役割の割り当ての状況を説明する。

安全衛生上の役割の割り振りと責任

 安全衛生上の役割の割り当ては、事業者がその職場環境に対して持っている責任を遂行するために、事業者以外の他者に安全衛生上の役割を振り分けたということを意味している。その責任は、常に事業者にあり、事業者は常に安全衛生上の役割を割り当てが正しく機能しているかを確認する必要がある。また、必要に応じて安全衛生上の役割の割り当てを再度行わなければならない。

 この割り当ては、災害が発生した場合にだれを処罰するかについて前もって決めておくということを意味しているのではない。その責任は事故が起きてから後に法廷で決められるものである。

 仮に事故が発生しした後、起訴されたり、法廷の審理に進むようなことが合った場合、法廷の判断は被疑者が十分な知識、権限、資源を安全衛生上の役割を遂行するために有していたかどうかが極めて重要な判断材料になるのである。

原因調査

第9条についてのガイダンス

進行中の原因調査とアセスメント

 職場環境に関する責任を果たすために、事業者は仕事の状況を継続的に原因調査し、危険に関するアセスメントを行い、改善のために何が必要かを特定して行かなければならい。概して、労働者は安全衛生上の役割と仕事の状況について良い考えを持っているもので、危険や欠陥、その他改善すべき点を労働者に報告させ、事業者が労働者や労働者代表の視点に対して回答を与えるということが重要である。

就業中の健康障害及び災害のリスク

 職場環境法第3章第2条は、事業者に対して継続的に事業活動の中のリスク、健康障害と災害のリスクを把握することを要求している。リスクは健康障害や災害の起こる可能性と起こった結果の重大さの双方をアセスメントして把握する。

 日々の活動の中で、何かが意図していたようには動かない場合には欠陥が存在する。職場環境は、物理的、人員的そして組織的な欠陥が存在するときにその影響を受ける。

 欠陥があることが必ずしも切迫するリスクがあるということを意味するものではない。パイプから水か漏れてもそれがリスクの原因であることはあまりない、しかし廃棄物を投げ捨てること、カビが生えていることは結果的には健康のリスクになる。問題のある機械は当面使わないようにしなければならない。以前使用していた有害物質が現在は使われてはいないが倉庫にはある、という状況がある。これらの状況は速い速度で変化しリスクもそれにより変わっていく。

 職場環境法には「健康障害と災害」ということが頻繁に出てくる。災害は、予期しないできごとの結果として生じる物理的なけがなどである。ある場合には、ショックのような精神的なダメージも災害とされることがある。災害は死亡災害のこともあるし、軽い負傷程度のこともある。

 「健康障害」は、医学的に目的的に定義された健康障害である。健康障害は、身体の正常な機能が阻害されたり、種々の不快感から分かったりする。この種の不具合は病気につながることがある。職場環境法において健康障害とは何かというのは困難である。これをアセスメントするには、経験、忍耐強さ、そして能力が重要な意味を持っている。

日々気をつけること

 日常の活動において、事業者は継続的に仕事の進行状況について気をつけていなければならない。短期欠勤が多かったり、不満や人間関係の問題がある場合は、職場環境においてリスクがあったり、好ましくない状況があったりする警戒信号である。事業者はまた、残業労働の影響について注意していなければならない。

システマティックな原因調査とリスクアセスメント

 リスクは必ずしも直接的に検出できるものではない。そのアセスメントを可能ならしめるためには、システマティックに調べ評価する必要がある。アセスメントをすることによって、リスクを除去しあるいは減少する措置を提案することができる。安全巡視、環境検査巡視、その他の調査、そして問題点のチェックは定期的に実施しなければならない。日常のチェックについては、その頻度、範囲、そして誰が参加するのかについて定められていなければならない。

 アセスメントのプロセスをすすめるためには、文書を用意することが有効である。例えば、いろいろな作業についての一般的なあるいは詳細なチェックリストなどである。日常のチェックには、どのチェックリストを使用するのか定めている必要がある。

 国家安全衛生評議会の規則及び一般勧告には、リスクの把握とその評価について有用かつ重要な情報が載せられている。一般勧告には、通常、もっとも頻繁に存在する種類のリスクが記載されている。ある分野において規則が存在しない場合には、職場環境法では安全衛生について一般的な規定を適用する。それは、事業活動及び日常活動において得られた一般的な経験に基づいてリスクをアセスメントするということである。

 労働衛生サービスはリスクアセスメントのための有用な資源となる。他の事業者や事業者団体から有用なヒントが得られることがある。

 健康障害、災害や事故は通常それ自身情報を提供してくれるものである。例えば、災害や事故の報告書を参考とすることは重要なことである。

 リスクアセスメントの一環として、医学的なチェックを含めた労働衛生の見地からの測定などが必要になることがある。詳細な調査をいつ、どのように、また誰が行うかを知るためには、また活動を文書化するためには、日常的なチェックを行っておくことが必要である。

 有害な化学物質を取扱いあるいは火災や爆発の危険のある事業を行う事業場では、しばしば特別なリスクアセスメントが必要となる。このことは、また自動化された機械、特に複雑な機械を使用する事業活動にも言えることである。方法の選択は、それらの特別なリスクアセスメントの種類によって決まるのである。それらの特別なリスクアセスメントのためには、しばしばコンサルティング・サービスが必要となる。

 日常のチェックを行うことによって、どの機械、揚重機、圧力容器を検査するか、また検査は誰が行うかが分かるのである。

 労働者の身体的及び精神的な負荷を把握するには、質問調査及び面談調査が必要となることもある。労働者との発展的な会話によって、欠陥のある部分、改善の必要性が分かるのである。筋骨格系のリスクアセスメントには、特別のモデルが存在する。

 職場のリスクは、通常いくつかの環境的要因がからんで発生するものである。すべてのリスクアセスメントにおいて、いろいろな労働条件におけるヒューマン・ファクターを考慮することはきわめて重要である。その環境の中で、人はどのように反応し、考え、行動し、また相互に関係し合うかについて自問しなければならない。

システマティックな原因調査とリスクアセスメントのためのメモ・リスト

 以下のメモ・リストは職場におけるさまざまな条件とリスクをアセスメントするために使われるものである。

1.何を点検するのか。特定的に記述すること。

2.点検の目的は何か。方法とアクション・プランにために必要な措置は何か。すでに取られているフォローアップ措置は何か。

3.点検はどのように行うのか。安全職場巡視のかたちで行うのか。職場全体として行うのか。何か測定するものはあるのか。リスク分析のための特別の方法を採用するのか。質問調査の形式で行うのか。その他の方法を採用するのか。

4.これを行うのは誰か。作業グループが行うのか。

5.以前、アセスメントを行ったことがあるのか。その報告書はあるのか。

6.リスクについて何らかの情報を与えてくれる健康障害、災害に関する調査はされているのか。年次報告書をあたって見ること。

7.その作業あるいはそれ以外で、留意をしておくべき経験をしたことがあるか。

8.国家安全衛生評議会の規則条文のうち、どれが適用されるのか。

9.参考となる書類による情報はあるか。一般的なチェックリストなのか。部門ごとの文書なのか。あるいはその他のものなのか。

10.アセスメントはいつ終了すべきなのか。

11.アセスメントの結果と措置の提言はどのように行うのか。

12.従業員に結果をどのように知らせるのか。

労働者の一定の集団に対するリスクと労働条件

 年少者、移住労働者、心身に障害を持った労働者、妊娠中の女性労働者は、さまざまな理由で高いリスクを受ける労働者の集団の例である。

 機械などが故障した場合の修理の作業などは特に危険な作業である。また、ケアサービスなどは他人との接触の多い仕事で予期しない労働条件が発生する可能性がある。

 運送、配達、建設、メンテナンス、修理、清掃の仕事は、しばしばその労働者を雇用する事業者が、これらに直接かかわっていないことがある。このような場合は、事業者は発生する可能性のあるリスクを把握することが本質的に必要である。同様のことが、労働者が自宅で作業をする場合にあてはまる。

 事業者はその工場等の敷地内で行われる請負業者の仕事について、職場環境の把握、測定がどのように行われているか知っておくことが重要である。請負業者の行う職場環境管理に欠陥がある場合、これが事業者自身の労働者の安全衛生に影響を及ぼすことがある。

作業の変更

 新規に作業を行わせる場合あるいはすでに存在している作業を変更する場合には、計画の段階で職場環境に配慮しなければならない。

 「リスクがシステムに組み込まれてしまう」前に、リスクを発見する必要がある。なぜなら後で是正しようとすることは、しばしば困難でかつ必要なコストも大きいからである。

 作業がなくなったり事業の縮小があったりする場合は、労働者はときに大きな影響を受ける。この調整のプロセスによる影響を少なくすることが重要である。

 入札をするとき、契約に署名するとき、計画や技術的デザインをするとき、物や機器を購入するときは、職場環境にも配慮しなければならない。

 工場の施設や労働者の使用する設備等を建設したり変更したりするときは、その建設の期間中及び建設が完了した時点で、良好な職場環境が実現されていなければならない。このことは、その工場で常用される労働者及びサービス、メンテナンス、その他配達等のサービスを行う労働者の双方に当てはまる。

 機械その他の機器が関係する場合は、製造者と供給者の責任も関連してくる点である。入札をするときは、事業者はその機械等が国家安全衛生評議会の規則に示された安全衛生上の要件を満たしているように機械等の使用を定めなければならない。事業者が自ら操作する機械や機器についても同様の要件が必要である。

 多くの新規の機械、機器類は、「適合証( Certificate of Conformity)」及びCEマークのあるべきことを定めた規則の適用を受けている。このことは、リースした場合の元の機械や機器についても、またそれらが工場内で使われる際の両方について適用される。

第10条についてのガイダンス

知識

 労働者の有している知識を把握していなければならないという事業者の義務は、すべての職員、管理者、そして監督者に適用される。「知識」とは、理論的な知識、実際的な技術、そして個人としての能力のことである。

 ある労働者を採用するとき、事業者はその労働者が職場環境の見地からみて十分知識があるかどうかを知る必要がある。労働者が長期間欠勤した場合、また、作業の内容、機器類、作業方法又は組織に変更があった場合も、その労働者が十分な知識を有しているか確認することが重要である。

安全衛生上の役割

 労働者が、自らの仕事に十分な知識を有していることはもちろん極めて重要である。仕事そのものは非常に危険であるというものではないにしても、エラーや不適切な取扱いは災害や健康障害の原因となり、労働者本人や他の労働者に影響を与える。自分自身が安全衛生について十分な知識を持っていないと感じる労働者は、このことを事業者に知らせ、知識を補充するようにしなければならない。

仕事上のリスク

 労働者は、自身の仕事に関連してどのようなリスクがあるかを知っておかなければならない。また、また労働者は、仕事上どのようなリスクに遭遇するかも知っておくことが同様に重要である。

その他の労働条件

 労働者は、リスクに直接関係していなくても、例えば仕事に対する満足度あるいは発展的な仕事のために重要なことは知っておかなければならない。

第11条についてのガイダンス

職場環境法に基づく質問

 職場環境法第 3章第2条は、事業者に対して仕事に関連した災害の調査を行うことを義務付けている。仕事に関連した災害とは、仕事中にその存在が明確に判明しあるいは発生した健康障害や災害のことを意味する。

重大な災害

 健康障害や災害に至る出来事は望ましいものではない。

 重大な災害とは、それ自身重大な危険を有する健康障害や災害のことである。一方、例えば災害時に誰もいなかった工場での爆発災害などは、人的な危険がない災害である。

第 11条に基づく質問

 災害の原因調査は、その災害によって法的な賠償義務が生ずるものかあるいは労働協約で処理することができるものかを問わず、これを実施しなければならない。これは、労働者あるいは労働者と同等に安全衛生を配慮すべき者、例えば学生や徴用された者などに影響を与えるすべての健康障害や災害について行わなければならない。しばしば、このことは災害の結果、傷害にいたったかどうかを知る唯一のチャンスとなる。したがって、事業者は小さな事故に対しても調査しなければならない。

 原因調査とは、事業者が実際上可能な範囲において、すべての発生原因を探ることである。原因が一つであることはまれである。技術的な要因、人間の行動、組織的な条件が絡み合って発生することがしばしばである。したがって、原因調査はシステマティックでありかつ災害や健康障害の発生に寄与したすべての要因を含めなければならない。

 原因調査の結果は文書で書き残すことが適当である。このことはその後の IC活動を促進し、年次報告書に書き入れる材料を提供する。

 病気による欠勤は職場環境におけるいろいろな条件によって発生した災害や健康障害によって起こっていることがあり得る。欠勤がある場合には、事業者はその理由や職場環境との関係を把握することが重要である。

質問の方法

 仕事上の健康障害や災害は適切な人間に報告することが重要である。重要だと思われる観察事項を報告することは労働者の義務である。

 質問は、職場で観察したこと、図面の確認、安全衛生上の役割の割り振りの見直し、関連労働者への指示、日常活動の手順またインタビューなどを含んでいなければならない。

 健康障害や災害は、 IC活動に欠陥があることから生じている可能性がある。報告とリスクアセスメントによる日常活動を改善して行くことによって健康障害や災害をさらに減少していくことができる。

 災害に関する質問調査は災害の発生とそれに至らしめた原因に焦点を置いて行うべきである。健康障害の質問調査は、労働者の健康障害の原因となっている条件に焦点を置く。これらの再発を予防するために行うのであって、責任追及に拘泥してはならない。一方、安全衛生上の役割の割り振りや仕事の指示が正しくなかったかどうかを確認することも行う。

質問に関するメモ・リスト

1.災害、健康障害を記述する。

2.災害や健康障害が、どこで、いつ、どのように発生したか、あるいは明らかになったか。

3.それらが発生した原因は何か。

4.発生しあるいは明らかになった災害や健康障害は、どのような措置を取っていれば防止できたか。

5.今、どのような措置を取ればよいのか。

6.同様の災害や健康障害が発生する類似の職場は存在するか。

年次の要約報告

 職場環境施行規則第2条は、事業者に対して死亡災害、重篤な負傷を生じた災害あるいは複数の労働者に影響を与えた災害や有害な影響が発生した場合は、これらを労働監督局に遅滞なく届け出ることを定めている。事業者は、この際、報告とともに発生した健康障害、災害について自ら示した文書を提出することが望ましい。これらの文書は、年次の要約報告の材料になる。これらの文書はまた災害や健康障害に関する法律や労働協約に定められた報告と整合性が図られていることが望ましい。

 災害の報告は長い間特別なキャンペーンなどの傷害の予防的な目的に活用されてきた。 IC活動においてすべての災害をシステマティックに報告することは、貴重である。災害の統計は、議論や経験の交換、また意識の啓発の手段として活用することができる。

要約の内容

 要約の目的は、リスクアセスメントを促進することである。災害や健康障害については、男性と女性とに分けて記述することが望ましい。要約には、学生や徴用された者に発生したことも記述することとする。健康障害や災害は、異なる年度や異なる部署間での比較ができるようなかたちにしておく必要がある。

 災害や健康障害を引き起こした要因や条件を要約に記述することはきわめて重要である。

 疾病による欠勤の全体的な状況は、職場環境の状況をしばしば反映しているものである。このことは、要約には、疾病による欠勤状況も記述していなければならないことを意味している。この要約は人事や財務に関することがらを進めるにも役に立つものとなり得る。内部的に存在する危険、欠陥その他の不満足な労働条件については、定められた手続きがなければならない。

 また、健康障害や災害の原因及び疾病による欠勤の状況を文書化するための日常活動の手順が必要である。個々の労働者に影響を与える労働者の個人的な事項はこれを漏らしてはならない。

対策

第12条についてのガイダンス

様々の対策

 健康障害や災害の防止は、職場環境に関するかぎり事業者の最も重要な仕事である。時として、事業者が仕事をより発展的かつ意義あるものとするために措置を取ることも重要である。職場環境に関して第一に確保されるべき条件は、職場環境法及び国家安全衛生評議会の出した規則に示されている。事業者はその事業活動に適した措置を取ることによって、これらの条件を確保していかなければならない。

その場での実施あるいは時期を定めてのスケジュール化

 この条文は、純粋に実際的な意味で可能ならば、健康障害や災害のリスクが把握された場合直ちに措置を取るべきであることを意味している。事業者は、リスクをその発生源で除去しあるいは減少するべきである。リスクが完全に除去できない場合は、事業者は労働者が他の手段、例えば、明確な指示や個人用保護具などによって保護されることを確保しなければならない。リスクを完全に除去することに努力を払うことは事業者の本質的義務である。

 直ちに措置を取ることができない場合は、その措置は時期を定めてスケジュール化しなければならない。例えば、アクション・プランを作成したり改定したりしなければならない。達成可能な結果に対して、不合理な経費を費やすということは意図していないが、事業者は、経済的な資源が不十分であることを理由に予防的措置をためらってはならない。また、すぐに措置を取ることができるのにこれは将来のアクション・プランに含めるべきであるという理由で先送りすることもしてはならない。

 直ちに措置を取ることが難しい場合もある。例えば、複雑な意思決定過程、入札の手続き、納入のための要する長い時間などである。このような場合において重要なことは、手続きが動き出すように直ちにアクションを起こすことである。

 時として、多くの異なった手続きが必要である。できるだけ多くの労働者に対して最高の安全衛生を提供するために、リスクの状況に従い取るべき措置の優先順位を付けておく必要がある。優先順位は、関係する労働者及び職場環境に関する労働者代表と協力してこれを定めておく必要がある。

 新たにリスクが発見された場合は、優先順位の変更や新たな予算措置が必要である。すでに行うことが決まっていたものでも、他のことをただちに行う必要がある場合にはこれを後回しにする必要があるときもある。

 機械、道具その他の機器、原材料の購入は一定の手続きを定めておく必要がある。修理とメンテナンスのための日常の活動も必要である。

第13条についてのガイダンス

知識

 労働者が知っておくべき知識には、作業それ自体、リスクその他の労働条件がある(第10条参照)。安全衛生上の役割の割り振りが行われた時には、権限と資源のほかに知識を与えられる必要がある。

 知識は通常、配置時の作業説明、指示、訓練及び継続的な情報提供によって伝達される。

配置時の作業説明

 事業者は、労働者に対して作業についての説明をできるだけ早い時期に行わなければならない。通常は、これは一回教えるだけでは不十分で、またしばしば文書による紹介のためのプログラムも必要となる。この配置時の説明は、労働者に対してその職務と他の労働者との関係、他の労働者との相互接触、さらに作業の全体的な流れと一般的なリスクの状況を見極めることについて教えなければならない。この説明には、 IC活動の一般的な内容、すなわち職場環境に関する政策、安全衛生上の役割の割り振りと協力について含めなければならない。

指示と訓練

 指示と訓練は、労働者の職務に直接関係した知識に関連のあるものである。知識は、作業が始まる前にこれを与えかつその後継続的に提供し続けなければならない。

 事業者は、必ずしも自動的に労働者に対してある一定の訓練をしなければならないというものではない。一方、事業者は必要な訓練は行う責任がある(職場環境法第3章第3条)。国家安全衛生評議会の規則の中には、労働者に対する特別な訓練を規定しているものがある。すなわちアスベスト、温度を設定したプラスティック(thermosetting plastics)、トラックの扱い、暴力のリスク及び暴力による威嚇などである。

 指示と訓練は、かならず仕事と労働条件に適用される職場環境に関する規定を含んでいなければならない。仕事上のリスクと健康障害と災害をいかに防止するかに関する注意深い情報提供は特に重要である。

 必要な場合、個人用保護具や技術的補助具の使用などを含める必要がある。事業者が、労働者が個人用保護具や補助具を使用するよう動機付けを行うための十分な時間を割り当てることが必要である。

さまざまな指示

 口頭による指示は文書による指示と組み合わせて行われる。労働者は、実地の訓練も行う必要がある。

 国家安全衛生評議会の規則のうちのいくつかには、取扱いや安全に関する指示、使用上の指示、安全情報シート、記号やマークなどに関する文書による指示を定めている。

 故障、作業の突発的停止や災害の際に何をすべきかということについての文書による指示を作成しておくことは重要である。修理、メンテナンス、その他のサービスの作業には通常文書による指示が必要である。文書による指示は、例えば顧客や患者(patients)といるときに発生するなど、難しい条件の元に生じる場合などのためにも必要である。

 十分な知識を有することは、労働者が単独で作業を行う場合、労働者が自分の家で作業する場合、また事業者自身の労働者が担当していない場合などには特に重要である。

 これらの指示事項は、職場においていつでも見ることができ、理解がしやすく、常にアップ・ツーデートであり、かつすべての労働者が理解できる方法で書かれたものでなければならない。

継続的な情報提供

 紹介の段階で労働者に与えた知識は、継続的に以後これを補充して行く必要がある。このことは、

達成すべき職場環境条件やリスクの状況及び災害発生状況の変化さらに IC活動の変化などにしたがって補充していく必要がある。

 労働者は、作業に関する変更について知らされており、その変更の作業に参加できるようにしなければならない。このことは、事業の縮小や閉鎖がある場合には特に重要である。

知識の伝達

 事業者が労働者の年齢や経験、仕事への習熟度、言語能力、文化的背景、さらに障害の程度などに適したかたちで作業説明、指示、訓練及び継続的な情報提供を行うことはきわめて重要である。例えば、労働者が自ら何をしていいか分からないということがないように、指示を完全に理解しているということを確保しなければならない。

 労働者はまた、監督者あるいはその他の労働者から毎日指示と情報を得ることができる必要がある。職場では、ディスカッションと経験の交換を行うことのできる機会を提供しなければならない。別の職場での経験や OJTは労働者の知識を増大させる。

 知識を、管理者や監督者からトップダウン方式で与えることに代えて、すべての労働者が職場環境の管理、すなわち職場環境に責任を有する者に対して特記事項を報告するということも重要である。

能力の開発

 労働者に対する計画的かつ開発的な面談を行うことによって、事業者は労働者の能力開発に対する態度を確認すると同時にその必要性を把握することができる。能力開発計画は文書によって書き記されたものであることが適当である。

管理者及び監督者

 職場環境に関する事業者の責任を果たすために、事業者は職場環境法、職場環境法施行規則及び国家安全衛生評議会によって出された関連法規の内容について十分な知識を有していなければならない。また管理者や監督者は職場環境に適用されるルールについて詳しい知識を有していなければならない。

 管理者、監督者は職場環境について重要な責任を持っている。したがって、彼らは仕事について十分な知識を持ち、仕事に内在するリスクを把握し、健康障害と災害の予防の方法を理解し、かつ仕事に対する満足の達成のための方法を知っていなければならない。

 管理者と監督者は、異なった状況における人間の反応について洞察力を有し、労働者が必要とする助言を与えることができなくてはならない。

第14条についてのガイダンス

アクション・プランの目的

 職場環境の改善は通常継続的に計画しかつ実施していくものである。事業者と労働者は少なくとも1年に1回は職場環境の改善の必要性を把握しなければならない。予算化することやその他活動を計画化することによって、このことがより的確に行えるようになる。

対策計画の作成

 アクション・プランに記述する対策は事業者と労働者の協力のもとに書かれたものであることが重要である。提案は共同で議論されたものであるべきである。事業者の決定はできるかぎり労働者の承認を得たものである必要がある。法律はアクション・プランの作成において労働者の代表が参画することを要求している(職場環境法第6章第4条)。これらの計画は安全委員会において議論されたものでなければならない(第6章第9条)。

 取るべき対策を計画するに際しては、現実の労働の場における条件やそこでの災害のリスクに関する知識が本質的に重要である。原因調査の結果を文書で記述したもの、またリスクアセスメントを文書で記述したものがなければならない。

 アクション・プランは、新たなリスクや欠陥が発見されまた国家安全衛生評議会が規則を新たに出したあるいは改正した場合には、書き換える必要がある。新しい対策は文書で書き記すこととし、以前定められていた対策は修正するかあるいは新しい時間的スケジュールを定める必要がある。

アクション・プランにおける対策

 事業者が決定したすべての対策は、アクション・プランに記載しなければならない。それらは、健康障害や災害の予防措置であることもあり、仕事をより発展的かつ意義のあるものにする措置であることもある。これらの措置は、 IC活動の目的と整合性の取れたものである必要がある。直ちに取るべき措置は記載する必要はない。アクション・プランに記載する措置は現在の年度及びその後の年度に行うべきものとして計画的にスケジュールに乗せる。

アクション・プランの構造

 年次計画を立てることによって、一つあるいはそれ以上のアクション・プランが作成される。一つのアクション・プランにすべての取るべき措置を盛り込む必要はない。もしいくつかのアクション・プランを作成する場合には、それらが職場環境の見地から、かつ事業全体において必要とされる措置として一貫性のあるものでなければならない。

 アクション・プランには、それぞれの取るべき措置について、記述を指定し、誰がどの部署が行うのかを明記していなければならない。

 アクション・プランがどのようにして作成されたのか、またアクション・プランが一つなのか複数あるのかについて記述がなければならない。

第15条についてのガイダンス

取られた措置のフォローアップ

 フォローアップとしては、職場における健康障害と災害の予防のための措置及び労働者の知識の向上について触れていなければならない。措置は日々の活動に基づきあるいは毎年の計画の一部として決定されている必要がある。

 もし措置が十分でない場合には、健康障害や災害のリスクは存在し続けることになる。これらのリスクに対処するためには、あるいは実際的に可能な範囲で、ただちにフォローアップを行わなければならない。

 フォローアップの目的のために、措置を行うことによって影響を受ける労働者は措置の結果についての意見を述べる必要がある。

 事業者の管理下にない場所において取られた措置もこれをフォローする必要がある。すなわち、建設の事業、サービス業におけるサービス、メンテナンスなどの作業である。これらの措置によって得られる経験は、別の機会において同様の事業を計画する場合には非常に参考となる。

補完的な措置

 取られた措置がそれで十分であったかどうかを決定することは必ずしも簡単ではない。労働者個々人は、職場環境のほかにも多くのものに影響を受けているため、安全衛生の水準が改善されたかあるいは福祉が大きく向上したかどうかということと、事業者が取った措置とを直接に比べることが困難な場合がある。このことは、長期的に効果が現れる場合は特にそうである。そこで、フォローアップは、問題となっている措置が当初意図していたとおりのかたち及び時間で取られたかどうかということを調べることに限られることになる。

 まだ措置が必要であるかどうかは、しばしば明確である。しかし時として、新たなシステマティックな原因調査とリスクアセスメントが必要な場合もある。新しい措置を取ることは新しいリスクを生み出すということも銘記しておかなければならない。したがって、これらの措置もまたフォローアップをしなければならないのである。

自律管理活動(IC)のフォローアップ

第16条についてのガイダンス

自律管理活動のフォローアップの目的

 作業や仕事での環境はすでに変化しているため、事業者は定期的に IC活動がベストの状況にあるかをチェックする必要があり、必要な場合、その効率性を計測する必要がある。

 年度ごとに行う事業者のフォローアップは基本的に管理者の一番の関心事である。小規模企業では、事業者は IC活動を自分でモニターする必要がある。例えば、原因調査やリスクアセスメント、とるべき措置やそのフォローアップのための日々の活動などである。

フォローアップの意義

 フォローアップは、職場環境の自律的管理に関する施行規則に定められたすべての IC活動を含んでいなければならない。このことは、IC活動の中のさまざまな活動の内容をシステマティックに比較することを意味している。

 フォローアップは1年に1回以上必要である。事業活動や組織に大きな変更があった場合、また重大な災害が発生した場合などもこれを行う必要がある。さらに、事業者は IC活動が実際的に機能していること、特に安全衛生上の役割の割り振りがきちんと機能していることを、継続的な観察によって確認していなければならない。

  IC活動のフォローアップは、アクション・プランに定められているところのいろいろな事項がきちんと実施されているかということのチェックを含める必要がある。きちんと対処されていないリスクがあるということはIC活動が効率的でないということを意味している。

フォローアップの方法

 フォローアップを誰が行うかどのくらいの人数で行うかについては定められていない。 IC活動では一般的に、「ラインの人間」がこれを行うべきである。労働衛生サービススタッフやその他の職場環境に関する専門家は、フォローアップでの特別な局面に従事するべきである。

 職場環境に関する政策、安全衛生上の役割の割り振り、原因調査、リスクアセスメント、以前の IC活動のフォローアップさらに日々の活動を文書化することによって、現在のフォローアップの出発点が分かる。

 文書化された情報は、実際の職場環境の状態に照らしてチェックする必要がある。管理者、監督者及びその他の労働者、さらに職場環境に関する労働者代表にインタビューする必要がある。

フォローアップのためのトピックの例

1.すべての労働者が職場環境に関する政策を知っているか。

2.割り振られた安全衛生上の役割は満足のいく程度になされたか。

3.安全衛生上の役割、権限、資源及び知識の間には正しいバランスがあるか。

4.システマティックな原因調査とリスクアセスメントは十分頻繁に行われたか。

5.作業の変更の際に、職場環境の見地からの配慮がなされたか。

6.健康障害及び災害の事例は十分に調査されたか。

7.健康及び災害リスクには十分対処したか。

8.管理者及び監督者は職場環境に関する規則を十分知っているか。

9.アクション・プランはスケジュールどおりに実行されたか。

10. IC活動の中の日常的活動は最新のものになっているか。

全体的なアセスメントのトピック

1.職場環境に関する事項に関する活動は、全体事業の一部として組み込まれているか。

2. IC活動は、事業者、労働者及び職場環境に関する労働者代表の協力に基づいて行われているか。

3. IC活動は、職場環境のすべての側面をカバーしているか。

4. IC活動に関する書類は、誰も見ることのできないファイルにしまわれているか。

改善

 所定の目的がどのくらい達成されたかに応じて、事業者は新たな安全衛生の改善と開発のための目的を設定することができる。労働者は改善のための提案に対して意見を述べ又彼ら自身の提案を行う機会を与えられなければならない。目的は、これまでの成果を無駄にすることなく新たな改善を行い続けることである。

日常活動の手順及び文書化

第17条についてのガイダンス

日常活動の手順の目的

 日常活動の手順は、定められた物事を行うための手順のことである。これは、 IC活動を促進し、かつ誤った行動が取られないように、ICに関する規則の要求するものにいかに合致させていくかということを示すために存在する。職場環境の条件を満たすためには定められた日常の活動を行っていくことがきわめて重要である。

日常活動の手順の内容

  IC活動のうちでも頻繁に行われる行為には、日常活動の手順が特に重要である。これは、行うべき人やデータを記録するかどうかなどの日々のIC活動に関して、それを行う時間や方法を示している。

 日常活動の手順は必ずしも文書化しておく必要はないが、時には文書化することが必要になる(第18条)。大事なことは、職場環境の条件が満たされるように、手順を明確にそして十分詳しく記述してあることである。この手順は、実際の状況を反映したものであるべきであり、それに応じて改正していかなければならない。

  IC活動における日常活動の手順は、仕事に関する指示の中に含まれていなければならない。例えば、物品の購入の際における手順である。その他の手順としては、主として職場環境に関すること、例えばリスクアセスメントや原因調査のための手順がある。

第18条についてのガイダンス

文書化の目的

 文書化の目的は、事業者及び労働者が日々の IC活動に対するインプットを明確にし、活動をしやすくするためである。

 必要な文書は、事業者と労働者の双方で作成する。特別なプログラム、ファイルあるいはノートは定められていない。大事なのは実際の職場環境管理であって、文書化そのものが大事なのではない。

 大きな事業体では、関係者がやるべきことを覚えているための助けとして、しばしばかなり包括的な文書化が必要となる。安全衛生上の役割の割り振りに関しては、文書化しておくことが特に重要である。

文書化のためのデザイン

 各人の安全衛生上の役割は、個別にあるいは包括的に文書化しておく。職場環境に関するデータは、容易に検索でき、分かりやすく誤解のないようにしておかなければならない。文書化の形式には法律的に定めたものはないが、作業の実際の状況や必要性に合ったものでなければならない。情報は紙の上であるいはデータ・ネットワーク上で見ることができる必要がある。それらは、明確に簡潔に、かつ最新のものである必要があること、さらに必要な場合はその論拠が付けられている必要がある。

IC活動において労働者が彼らの役割を果たしていくためには、労働者が必要な情報にたやすくアプローチすることができなければならない。文書は、職場環境に関して必要と思われる期間は保存している必要がある。

常に文書化するべきもの

 すべての事業者にとって、健康障害と災害の要約さらにアクション・プランは文書化しておかなければならないということは原則である。1年の間に健康障害や災害が発生しなかった場合には、報告する必要はなく、したがって要約も必要ない。もし計画を作成する時の作業環境が非常に良好であって測定は必要ないとされた場合にも、アクション・プランは必要ない。

必要な場合に文書化するもの

 職場環境に関する政策、安全衛生上の役割の割り振り、原因調査とリスクアセスメントの記述、 IC活動のフォローアップ及び日常活動の手順についてこれらを文書化する必要があるかどうかについては、アセスメントが必要である。これらは必ずしもすべて文書化しておかなければならないものではない。例えば、原因調査とリスクアセスメントに関する日常活動の手順は、文書化されていれば、これに超したことはないという意味である。作業の部分部分はそれ自身狭い範囲のことなので文書化する必要はない。

 原因調査とリスクアセスメントに関する記述は、リスク、欠陥、その他職場環境上の不満足な点、さらにリスクを除去し改善を行うために提案された方法についての記述がなければならない。これらの文書は、安全巡回点検、衛生工学的測定、点検の報告、健康診断の記録、質問に対する回答の要約、インタビューのデータ、規則等に違反していることの報告、リスク解析の報告を盛り込むことができる。

  IC活動のフォローアップに関する記述は、事業全体におけるIC活動の状況、IC活動の稼動状況、さらに改善のための提案を盛り込んでおかなければならない。

必要性に関するアセスメント

 文書化の必要性に関するアセスメントは、3つの条件に基づいている。すなわち、事業のリスク、事業の規模そして地理的な広がりである。これらの3つの条件のうちの一つだけでも文書化の必要性があるとされるならば、文書化は行わなければならない。事業者、労働者、職場環境に関する労働者代表は、可能な限り、文書化の必要性に関して合意していなければならない。

1.事業のリスク

 システマティックな原因調査とリスクアセスメントは、文書化なしでは通常行うことはできない。

原因調査とリスクアセスメントについては通常これを文書化して行う。リスクが大きな場合は、例えば、安全衛生上の役割の割り振りと日常活動の手順は文書化しておく必要がある。

2.事業の規模

 規則では、どのくらいの規模であれば文書化が必要であるかは示していない。この点について、文書化が必要な事業の最低限の労働者数も示していない。なぜなら小さな事業体であっても、大きなリスクのあるものは、例えば文書による原因調査やリスクアセスメントが必要であるからである。

 特にリスクも高くなく同一の場所で事業を行っている小さな事業体は、通常、文書化は必要ないが、年次報告書とアクション・プランは例外である。

 多くの労働者を雇用している事業体では、職場環境に関する政策、安全衛生上の役割の割り振り、原因調査とリスクアセスメント、 IC活動及び日常活動の手順については通常文書化が必要である。

3.地理的な広がり

 事業が、国の中の異なった場所において行われているときは、例えば安全衛生上の役割の割り振りや日常活動の手順について文書化が必要になる。これは、同一の場所であるいは異なった場所で、事業者の指揮監督を受けないで行う事業、あるいは事業そのものが移動して行うものについて述べているものである。このような場合には、小規模の事業でも文書化が必要である。

その他の関連法令

職場環境法 (SFS 1977:1160)

職場環境法施行規則 (SFS 1977:1166)

国家安全衛生評議会法令集 (AFS)

1996年1月1日付けで出された、国家安全衛生評議会が採択した規則及び一般勧告リスト(AFSシリーズとして刊行)

小規模企業のための自律的管理開始のためのチェックリスト

 すべての事業者は、職場環境に関する自律的管理( IC)を行わなければならない。もしこれをまだ行っていない場合は、以下のリストがその開始のための参考になる。このリストは労働者が数名の場合に適用できるものである。

1.事業者とともに労働者各人の作業の状況を観察すること。けがや疾病、その他好ましくないことが起きるリスクはあるか。仕事は労働者の福祉と仕事に対する満足度の多いものか。

開始前のヒント

(第9条)

−労働者は彼ら自身の職場環境については明確な意見を持っているものである。

−国家安全衛生評議会が出した規則とこれを自らの事業に適用することは、重要な出発点である。無料で手に入れることのできる評議会が出版したカタログで、現行の規則類を知ることができる。

−安全巡回点検のチェックリスト、例えば合同産業安全評議会の出したものは、有用なガイダンスである。これまでに起こった災害や疾病は職場における危険を示してくれる。

−労働衛生サービススタッフは、職場環境に関する専門家である。

2.発生するリスクにはただちに対応しなければならない。自分自身で対応するか労働者の誰かが対応するか決めること(第 12条及び第8条)。

3.取った措置はこれをフォローしなければならない。だれがこれをするのか決めること(第 15条及び第8条)

4.措置を取る者及びこれをフォローする者が必要な知識を持っているかどうか確認すること(第 13条)

5.職業上の危険は完全には避けられないものである。労働者に知識と装備を与えだれも負傷したり病気にならないようにすること(第 13条及び第12条)。

6.良好な職場環境を達成するために何ができるか労働者と相談すること。このために IC活動がどのように機能することをのぞむのか。アクション・プランを作成し、いつ措置を取るのか誰が責任者なのかを書き入れること(第7条及び第14条)。

−今後 IC活動のためにどのような日常活動の手順が必要なのか決定する(17条)。

−労働者が負傷したり疾病にかかった時、あるいは重大な事故が起きたときは、その原因を究明し、年次報告に盛り込むこと (第11条)。

−条件の変更があった場合は、職場環境にも変化が生じるということを銘記すべきである(第 9条)。

−少なくとも 1年に1回はIC活動に関するフォローアップを行うこと(第16条)。