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運転手・精錬工・溶解炉従事者等の肺ガンリスク
Risk of lung cancer for drivers and smelters and others

資料出所:Swedish Council for Working Life and Social Research発行
「Newsletter」 October, 2002 No.3 p.4
(仮訳 国際安全衛生センター)

原文はこちら


 疫学的調査によると、肺ガンの危険性はディーゼルの排気ガス、又は熱分解ガスに含まれる多環式芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbons:PAH)に暴露することにより、運転手・精錬工・溶解炉従事者などの一定の職種により高いことが判明した。これらエアロゾル状の比較的低い濃度のPAHは、動物実験に使用されるものに比べて、危険を推定する事がより困難である。

 カロリンスカ大学の助教授Per Gerde と彼の研究チームは、高投与量から低投与量までのPAHを推定する時、低容量を間隔をおいて投与する場合の肺ガンのリスクは、過小評価されることがあると考えている。吸入されたPAHは、身体自身の酵素により発ガン性の形状に変化して代謝し、活性化する。しかしながら、どこに蓄積されるかによって、この代謝・活性のしかたは一様ではない。肺胞内にたまった大きな断片は、急速に血液に吸収されて肝臓内に代謝される。より小さなしかし重要な断片は、気管支樹に蓄積し急速に気道上皮に吸収されるが、血液中にはゆっくりと吸収されていく。

 その結果、代謝され局所的に活性化されたPAHが、気道上皮に、高濃度で蓄積する。この局所的な呼吸器における暴露量を本来のPAHの暴露量と比較する事は、PAHに対処する為のさらに優れた危険評価を得る上で重要である。

 新しく始まったプロジェクトにおいて、研究チームは、気道上皮内におけるPAHの局所的代謝活性化が、代謝の飽和の原因となる高投与量の時よりも低投与量でより代謝活性化するかどうかも研究する。肺への暴露は、エアロゾル状でのPAH暴露を可能にする新しいタイプのエアロゾル発生器を使用して行われる。代謝されるPAHの割合は、異なる暴露レベルで測定される。PAHの代謝/非代謝の割合が、暴露レベルの増加とともにどのように変化するのかが特に興味深い。

 プロジェクトは、3年の予定で計画されている。投与量と反応との関係がより明らかになることで、仮説検証と限界設定が容易になることから、研究結果は疫学的調査及び基準値の設定にとって重要なものとなるだろう。

詳細は下記まで
Associate Professor Per Gerde, Karolinska Institute, Institute of Environmental Medicine
E-Mail <per.gerde@imm.ki.se>