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スイスの労働安全衛生

Occupational health and safety in Switzerland

Alfred Sutter (アルフレッド・サッター)
Suva 行動指針部門

資料出所:KOMMISSION ARBEITSSCHUTZ UND NORMUNG
(KAN−ドイツ労働基準委員会(www.kan.de))発行
KANBRIEF」2005年第1号p.16

(仮訳 国際安全衛生センター)


スイスは近年、健康と安全の保護を強化する革新的なアプローチを採用した。それに関連したプロセスの導入は現在もまだ進行中であり、これが現在の労働安全衛生活動となっている。また、市場に出す器具や装置についての欧州連合の規定は、スイスでも導入されている。

スイスで労働安全衛生を規定する法的枠組みは、事故保険法(Accident Insurance Act、Labour Act - UVG)と、労働法(Labour Act - ArG)、そして技術機器および装置の安全規定法(Act governing the Safety of Technical Equipment and Devices - STEG)である。UVGは事故や職業病の防止を規定し、ArGは健康の保護にかかわる労働に関する法律の要件を規定している。

ASA規定

ASA(1)ガイドラインの制定は、UVGとArGにおける大革新と言える。このガイドラインには、以下の目的がある。

  1. 必要な専門知識を現場で得ることができない工場が、労働安全衛生の専門家(安全の専門家、安全工学者、産業医、産業ハイジニスト)に相談できるようにする(2)。これにより、工場内の安全に関する専門的知識の水準が向上する。
  2. 組織および事業のプロセスに健康と安全性を体系的に統合する工場内の安全システムを確立する。

企業は、安全についての包括的な概念を立案しなければならず、これにはリスクアセスメントから、安全システムの設定と維持、そして対策実施の監視までが含まれる。この点をとっても、ASAガイドラインが、単に専門家に相談することを義務付けるだけではない、より包括的なものであることがわかる。最終的な目的は、安全と健康を企業の管理システムのなかに組み込むこと、そして工場が必要な専門知識を自由に利用できるようにすることにある。これらの変化は、企業の健康や安全の質の大幅な改善につながっている。

ヨーロッパとの協調

1992年、スイス国民が欧州経済地域に参加しないことを決定した後、スイス政府は経済改革のプログラムを導入した。このプログラムが優先的に取り組んだのが、技術機器および装置の安全規定法(Act Governing the Safety of Technical Equipment and Devices - STEG)の改定である。その改定のひとつが、機械指令(Machinery Directive)、ガス器具指令(Gas Appliances Directive)、そしてPPE指令(PPE Directive)を優先的にスイスの法律に導入する、というものであった。これに続き、エレベーター、圧力機器およびATEXを規定するEU指令の導入も行われた。

市場監視

STEGにより、市場監視当局は、市場の技術的施設や装置が安全衛生の要件を満たしているかを監視する。この監視にとりわけ深く関係しているのが、以下の機関である。

経済省経済事務局(State Seretariat for Economic Affairs)は、監視の実施を管理、調整し、EUの部局との連絡を担当している。スイス事故保険機関(Swiss accident insurance body)Suvaは、工場内の監視を行っている(適合宣言の検討、目視検査、および機能テストを行い、必要に応じて対策や技術テストの命令も行う)。工場外部でのこれらの仕事はスイス事故予防議会(Swiss Council for Accident Prevention - bfu)や多くの専門職協会が担当している。

労働安全衛生の標準化

これらの機関は、多くの標準化団体にも関わっている。たとえば、約十五人のスタッフが、50以上の標準委員会でSuvaを代表している。また国内委員会には、当局だけでなく、製造業者も代表として参加している。しかし残念ながら、事業者や労働者の代表はこの活動にあまり参加していない。欧州の標準機構が制定した統一規準は、スイス国内基準機関に採用されており、その資料は官報でも発表されている。したがって、それらの基準は、スイスでもEUと同様の座を占めている。

アルフレッド・サッター
alfred.sutter@suva.ch


(1) EKAS特別ガイドラインNO.6508は、産業医やそのほかの労働安全衛生専門家への相談を規定している(ASA)。
(2) 労働者の保護と安全が求められる場合。事故の防止と職業病を規定する規則(VUV)、11a条。