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労働安全衛生法(現地呼称 労工安全衛生法)の保護の拡大

洪根強

資料出所:中華民国工業安全衛生協会発行 「工業安全衛生」2001年4月号(142)
(訳 国際安全衛生センター)


■著作と解説■

労働安全衛生法(現地呼称 労工安全衛生法)の保護の拡大

労働安全衛生法(現地呼称 労工安全衛生法)は1991年5月17日に修正、公布された。労働委員会はその後、1991年8月28日、1993年12月20日、1996年2月14日の3度、労働安全衛生法第4条第1項第15号および同条第2項の規定に基づいて労働安全衛生法の適用範囲を拡大してきた。現在、適用者は約391万人(適用範囲の拡大指定は表1を参照のこと)となっている。
 
今回は危険および公共安全事業に関わる労働者の安全衛生作業の保障を強化するため、労働委員会は本年(2001年)3月22日に開催した委員会討論を経て、銀行、建築および工事技術サービス業、保守点検サービス業、遊園地業、環境検査サービス業、教育訓練サービス業の高級中学、高級職業学校の実験室、試験室、実習工場もしくは試験工場(試験船、訓練船を含む)、卸売業および小売業のうち冷凍(冷蔵)設備、労働者が荷重1トン以上の積み上げ機の操作に従事する場合、ならびに貯蔵する品物の高さが3メートル以上におよぶ作業現場などを、労働安全衛生法を適用する範囲に指定することを決定した(今回の拡大で適用される労働安全衛生法の範囲は表2の通り)。上述した業界を拡大指定することにより、約19万人あまりが労働安全衛生法の保障を受けることになる(事業機構数や労働者数の増加分は表3の通り)。その着眼点は以下の通り。

表1:労働安全衛生法が1991年5月17日に修正されてからの適用範囲と拡大指定された適用範囲

親法および指定適用事業 適用の根拠 適用の根拠

労働安全衛生法は左記の各業界に適用する:

  1. 農、林、漁、牧畜業。

  2. 工業および土石採取業。

  3. 製造業。

  4. 建設業。

  5. 水道・電気・ガス。

  6. 運輸、倉庫および通信業。

  7. 料理、旅行業。

  8. 機械設備リース業。

  9. 環境衛生サービス業。

  10. 大衆伝達業。

  11. 医療保険サービス業。

  12. 修理サービス業。

  13. クリーニング、染め物業。

  14. 国防事業。

  15. その他中央主管機関が指定する事業。


    前項第15条の事業については、中央主管機関がその作業場所や特殊な機械、設備に対して指定し、本法を適用するものとする。

労働安全衛生法第4条(1991年5月17日修正、公布)
労働安全衛生法の適用指定事業、一部の作業場所について適用される事業、もしくは特殊な機械、設備について適用される事業
  1. 摘要指定事業:広告業。

  2. 一部の作業場所に適用される事業

    1. 公共行政サービス業のうち、ゴミ、汚水、工業廃水、水肥などの輸送、処理に従事する作業場所。
    2. 工事顧問業のうち非破壊検査に従事する作業場所。
  1. 特殊な機械、設備について適用される事業:すでに労働安全衛生法が適用されているもののほか、すべての事業の危険な機械(エレベータを除く)または設備。

行政院労工委員会が1991年8月28日、台80労安三字第21955号で公告。
労働安全衛生法第4条第1項第15および同上第2項の規定にしたがい、労働安全衛生法を適用する事業、一部の作業場所について適用する事業は左記の通り。

  1. 職業訓練事業、コンサルタントサービス業、学術研究およびサービス業、教育訓練サービス業の大学、専門学校などの実験室、試験室、実習工場または試験工場。

  2. 化学原料製品の輸入、輸出もしくは卸売り事業。

  3. 車用燃料油(ガス)、化学原料を小売りする事業、労働者が上述した物質を積み卸し、運搬、仕分け、梱包、保管を行う場所。

行政院労工委員会が1993年12月20日に台82労安三字第76289号で公告
労働安全衛生法第4条第1項第15および同条第2項の規定にしたがい、労働安全衛生法を適用する事業、一部の作業場所を適用する事業は左記の通り。
  1. 政府機関(機構)の実験室、試験室、実習工場もしくは試験工場(試験船、訓練船を含む)
  2. タンク詰めガスを小売りする事業、これを労働者が積み卸し、運搬、仕分け、梱包、保管する作業場所。
  3. 自動車レンタル業、船舶リース業、コンテナリース業よびそのほか輸送工具設備のリース業。
  4. 映画事業のうちフィルム制作業、フィルム発行業およびフィルム上演業。
  5. 個人サービス業のうち駐車場。

行政院労工委員会が1996年2月14日に台85三字第105410号で公告


表2:今回拡大指定した、労働安全衛生法適用範囲

親法および指定適用事業 適用の根拠
労働安全衛生法第4条第1項第15および第2項の規定にしたがい、労働安全衛生法を適用する事業、一部の作業場所について適用する事業は左記の通り。

  1. 銀行業

  2. 建築および工事技術サービス業

  3. 保全サービス業

  4. 遊園地業

  5. 環境検査サービス業

  6. 教育訓練サービス業のうち高級中学、高級職業学校の実験室、試験室、実習工場もしくは試験工場(試験船、訓練船を含む)

  7. 卸売業、小売業のうち冷凍(冷蔵)設備、労働者が荷重1トン以上の積み上げ機を操作する、ならびに積み上げた品物の高さが3メートル以上になる作業場所。
行政院労工委員会が2001年3月28日に台90労安一字第0012982号で公告


1. 適用が指定された事業

  1. 銀行業:銀行の職員はコンピュータを大量に使用するため危害が及ぶ可能性があり、また暴力に遭う危険もあるため、我が国はWTOに加盟するためには国際的な安全衛生水準が必要であることも考慮に入れ、適用を決定した。

  2. 建築および工事技術サービス業:建築や各種工事の測量、ボーリング、実地調査、工事監督などに関わる従業員はすべて現場に赴かなくてはならないため、危険度が高い。よって労働者の安全を保障するため適用を決定した。

  3. 保守点検サービス業:これらは盗難防止、防火、防災設備システムの設計や保守点検、もしくはオフィスビル、工場、倉庫金融機構、ショッピングセンターなどおよびその他営業、展示、保存場所に従業員を派遣して守衛や巡回などの作業に当たらなければならず、または現金やその他貴重品輸送時の安全保護も依頼される。このため労働者の安全を保障する必要があるので適用を決定した。

  4. 遊園地業:機械設備の保守点検の程度により災害が起こりやすく、また民衆のレジャーや公共の安全波及する。その設備の安全衛生および労働者の安全衛生は保障する必要があるので適用を決定した。

  5. 環境検査サービス業:環境検査測定は化学薬品、効果、騒音、振動などに関わる作業であり、落ちたり水におぼれたり、化学薬品中毒などの危険がつきまとうため労働者の安全と衛生を保障する必要がある。このため適用を決定した。

表3:行政院労工委員会が今回労働安全衛生法の適用範囲を拡大したために保障される事業数および労働者数

適用指定範囲 事業数(社) 労働者数
銀行業 84 97,763
建築および工事技術サービス業 4,003 36,031
保全サービス業 250 19,857
遊園地業 589 9,381
高級中学、高級職業学校などの実験室、試験室、実習工場もしくは試験工場(試験船、訓練船を含む) 452 48,519
卸売業、小売業のうち冷凍(冷蔵)設備を使う場所、労働者が荷重1トン以上の積み上げ機を操作する、ならびに積み上げた品物の高さが3メートル以上になる作業場所 60 8,595
総計 5,438 193,681


2. 一部の作業場所に適用が指定された事業
  1. 教育訓練サービス業のうち高級中学、高級職業学校の実験室、試験室、実習工場もしくは試験工場(試験船、訓練船を含む):大学専門学校などの実験室、試験室、実習工場もしくは試験工場は、1993年12月20日台八十二労安三字第七六二八九号公告によりすでに労働安全衛生法が適用されている。これと高級中学(職業学校)の実験室などは同じ性質の作業場所であるため、学校などの危険が高い場所の管理を徹底し、学生の実習(試験)の安全と衛生を確保するため適用を決定した。

  2. 卸売業および小売業のうち冷凍(冷蔵)設備、労働者が荷重1トン以上の積み上げ機を操作する場所ならびに積み上げた品物の高さが3メートル以上になる作業場所:各種の量販店、大型ショッピングセンターには大量の物品が貯蔵されており、大量の運搬機械や冷蔵設備などを使用するため、積み上げ機などの災害が発生しやすい。労働者の安全と衛生を保障する必要があるため、適用を決定した。

 労働安全衛生法の適用を指定された事業は、雇い主が優先的に下記の事項を実施し、労働委員会会もこれを重点検査項目に組み入れ、現場の安全衛生施設と安全・衛生管理を強化して労働者の生命の安全と健康をよりよく保障する。
  1. 標準を満たした、必要な安全衛生設備、措置を労働者に提供し使用させる。

  2. 労働安全衛生組織、人員を設け安全衛生管理を実行させる。

  3. 労働者に対し、作業場所に必要な安全衛生教育と訓練を施す。

  4. 労働者の代表とともに、必要に応じた安全衛生作業規則を制定し、検査機構に報告して審査を受けてから公告、実施し、労働者が遵守できるようにする。

  5. 労働者を雇用するときは体格検査を行い、在職労働者に対しては健康検査を行う。

  6. 危険物および有害物はその旨表示し、必要な安全衛生に関わる注意事項を明記して労働者の知る権利を満たす。

  7. 労働安全衛生法および安全衛生に関する規定を宣伝し、労働者に広く知らせる。
 このほか、労働者が、事業が労働安全衛生法や安全衛生に関する規定に違反していることを発見した場合は雇用主、主管機関もしくは検査機構に申し出ることができる。本会の専用電話は0802-1459。
 
現在、我が国ではWTOに加盟すべく積極的に活動しているところである。国際標準組織が安全、衛生、環境保護を品質管理や品質保証の中に組み入れ、全世界で安全、衛生、環境保護を一体化していくというのが現在の潮流となっているからである。よって、効果的な安全衛生方針を遂行していくことは、企業が生存し、発展していくために不可欠の重要業務の一つになっている。すべての従業員が人間的な労働条件を享受し、安全な作業環境で働けるようにし、知的で経済的な産業を作り上げ、世界的な競争力を常に引き上げつつ永続的に発展するためには、今回拡大指定されたもののほかにも労働安全衛生法を適用する範囲の拡大を検討し続け、すべての労働者が等しく労働安全衛生法によって保障されるようにすべきである。





1.本資料は行政院主計処の1996年商工業およびサービス業一斉調査報告および2000年教育統計を参考に推測した。
2.環境検査サービス業は、もともと環境衛生サービス業に含まれていなかったが、1996年の主計処による業界分類標準において環境衛生および汚染予防、整備サービス業の中に組み込まれたため、公告、指定後、この業界がすべて現行の環境衛生サービス業の定義に適合することとなった。このため適用機構数および人数は環境衛生サービス業の合計のままである。