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タイ 労働災害と職業性疾病の概要
資料出所:ILO発行「Programme of action for occupational safety and health
in Thailand towards the 21st century : an advisory report」
(訳 国際安全衛生センター)
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労働災害
タイは1997年から金融危機に見舞われたが、各種の産業活動は引き続きタイの社会、経済の発展に大きな役割を果たしてきた。金融危機以前の高度成長の時期には、産業活動の発展に伴って労働者に不利益な影響が強まり、労働災害の公式統計も上昇した。労働者災害補償制度(Workmen's
Compensation Scheme)によって補償された事例は、休業を伴わない事例を含め、1990年の82,375件から1996年の245,616件に増えている(表1)。ただし、労働者災害補償制度の対象は1993年に拡大され、従来の従業員20人以上の企業から10人以上の企業になったこと、それと平行して対象となる労働者数も一貫して増加していることに留意すべきである。従って労働者1000人当たりの事故発生率は約40件のままで推移している。労働災害件数の増加は労働環境の悪化を反映しているというよりも、産業活動の拡大と、労働者災害補償制度の対象範囲の拡大の結果と見るべきであろう。
注:この表は労働者災害補償基金(Workmen's Compensation Fund)が対象とする請求に基づいたもので、従業員10人未満の小企業は含まれていない。従って多くの事故が報告から漏れている。基金の対象は1993年に労働者20人以上の企業から10人以上の企業に拡大された。
報道機関で報じられない事業場での日常の事故に加えて、タイは大規模な事業場での事故を経験している。恐らく最もよく知られている事故は、1993年のカデル玩具工場の火災で、この事故では180人を超えるの労働者が死亡している。また大量の危険な化学物質を保管、使用している事業場も多く、それらは1992年のクロントエイ化学品倉庫の火災のように、重大な災害を引き起こす危険性を抱えている。
労働災害補償局には多くの事故が報告されているが、事故データをさらに分析し、リスクの高い産業および職種に重点を置いて、労働安全衛生制度の効果を高めて行く必要がある。また事故補償請求に記載されているデータをつねに改善して行くことも重要である。1996年のILO諮問委員会報告書「労働者災害補償基金のための労働災害、職業性疾病に関するデータベースの設計」はこの点で有益な指針を与えている。
職業性疾病
1997年に労働者災害補償制度で補償を受けた職業性疾病の事例は約90件で、そのうち36件は鉛中毒、22件は騒音性聴力損失、7件はじん肺であった。しかし職業性疾病による補償の大部分(77件)は一時的な障害で、休業日数も3日以下にとどまっている。
表2は保健省(Ministry of Public Health)の医療ネットワークを通じて明らかにされた職業性疾病事例である。これらの大部分は農薬中毒を起こした農民である。保健省の数字は、農業部門だけでなく、中小企業や自営業も含んでいるために高くなっている。さらにこれらの労働者が労働災害補償基金の対象に含まれていても、すべての事例が労働者災害補償を受けたわけではない。
表2:タイの職業性疾病事例数(1992−1996年, カッコ内は死亡者数)
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1992年 |
1993年 |
1994年 |
1995年 |
1996年 |
農薬中毒 |
3,599(31) |
3,299(44) |
3,143(41) |
3,398(21) |
3,196(31) |
鉛中毒 |
12 |
17 |
19 |
28 |
29(1) |
重金属中毒 |
8 |
16 |
16 |
36(1) |
29(1) |
石油中毒 |
50 |
52 |
52 |
65(1) |
54 |
ガス蒸気中毒 |
56 |
26 |
21(1) |
32 |
44 |
潜函病 |
3(1) |
138 |
172(5) |
8 |
8 |
珪肺 |
3 |
24 |
10 |
11 |
32 |
合計 |
3,731(32) |
3,572(46) |
3,433(47) |
3,578(23) |
3,436(32) |
出所:保健省疫学課
産業界では多くの労働者が健康上の危険にさらされているが、農薬中毒を除いて職業性疾病の報告はいずれのシステムの場合も不十分である。健康上の危険にさらされている労働者が健康診断をうける十分な機会を与えられていないこと、熟練した医師が不足していること、職業性疾病の診断基準が確立されていないこと、労働環境のモニタリングがほとんど行われていないこと、経営者、労働者の双方に意識が十分でないことなど、職業性疾病の発見のためのシステムには、まだ多くの欠陥がある。
問題点
・ 多数の労働者が労働災害で死傷しており、大きな経済的損失を生んでいる。
・ 労働者災害補償制度の対象の拡大
・ 労働災害および職業性疾病に関するデータの収集と分析が不十分
・ 職業性疾病の発見のために確実な基盤が必要
この記事の出典 ILO発行「Programme of action for occupational safety and
health in Thailand towards the 21st century : an advisory report」は国際安全衛生センターの図書館が閉鎖となりましたのでご覧いただけません。 |
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