RIDDOR95(1995年負傷・疾病・危険事態報告規則)について
ここではイギリスで定められているRIDDOR95(1995年負傷・疾病・危険事態報告規則)の内容、その報告方法、負傷や危険事態の定義等を紹介しています。
資料出所:HSE ホームページ"Everyone's guide to RIDDOR 95"
(訳 国際安全衛生センター)
◇RIDDOR95とはどんなものでしょうか
皆さんは多分、RIDDOR95についてお聞きになったことがあるでしょう。しかし、RIDDOR95とは正確に言ってどんなものなのでしょうか。それは1995年負傷・疾病・危険事態報告規則(Reporting
of Injuries, Diseases and Dangerous Occurences Regulations 1995)を略した言葉で、この規則は1996年4月1日から施行されました。
◇なぜRIDDOR95のことを知る必要があるのでしょうか
RIDDOR95は労働関連の事故や疾病、危険事態の報告に関する義務を定めた規則です。この規則はすべての業務に適用されますが、すべての事象に適用されるわけではありません。
この規則の下で義務を負う人々は、この解説書によって必要なすべての事項を知ることができます。たとえRIDDOR95によって改められた各種の規則について知らなかった場合でも、この解説書を読めば十分です。しかし、皆さんが規則の全文や指針となる注記事項を知りたいという場合には、別の詳細な指針をご覧ください。
◇なぜ規則が増えるのでしょうか
この場合は規則が増えるのではなく、減るのです。RIDDOR95はこれまでにあった5つの規則の代わりに制定されました。RIDDOR95はいくつかの面において手続きを簡単にしています。報告すべき事項や報告の方法も簡素化されています。
◇どんなことを報告すべきなのでしょうか
事故や健康障害を報告するのは法律上の義務です。報告された情報に基づいて、所管の行政機関が、どこで、どのようにしてリスクが生じるかを知るとともに、重大な事故の調査をすることができます。そして死傷事故、職業性疾病、事故による損害(その多くは保険でカバーできない)を減らすための対策について、皆さんに助言することもできます。無料のパンフレット「安全に、コストを減らそう!」は、事故がどれほどコストのかかるものであるかを教えてくれます。
◇規則は自分にも関係があるのでしょうか
もし皆さんが事業者、自営業者、または作業場を管理する立場の方であれば、RIDDOR95の下で報告の義務があります。
◇どんなことをしなければならないのでしょうか
そう大変なことをお願いするわけではありません。ほとんどの企業にとって、報告が必要な事故、危険事態、または職業病などはまれなケースです。このパンフレットを読んで、報告することが必要になったら参照してください。
◇どんなことをすればよいのでしょうか
もし仕事に関連して事故が発生し、
あなたの職場で従業員、または自営業者が死亡し、または重傷を負った場合(物理的な暴力の結果としての死傷を含む)、または一般市民が死亡または入院した場合、
重傷の定義については、後にご説明します。
もし仕事に関連して事故が発生し、あなたの職場で従業員、または自営業者が休業4日以上の負傷をした場合(物理的な暴力の結果としての死傷を含む)、または一般市民が死亡または入院した場合、事故発生から10日以内に事故報告書(F2508に記入)を提出しなければなりません。休業4日以上の負傷とは、重傷ではないが、負傷者が4日以上(休日を含む)にわたって出勤できないか、または通常の作業ができない負傷を言います。
もし医師から、従業員が報告を要する職業性疾病にかかっているとの通知を受けた場合、疾病報告書(F2508Aに記入)を所管の行政機関に提出しなければなりません。報告を要する疾病の種類については後に説明します。完全な病名リストは報告書式やRIDDOR95の解説書にも記載されています。HSEに電話して、病気が報告を必要とするかどうかを問い合わせることもできます。
なにか事件が起きて、報告を要する事故には至らなくとも、明らかにその危険があった場合には、それは危険事態に該当しますので、直ちに(電話などで)報告しなければなりません。報告を要する危険事態の概要については後にご説明します。完全なリストは報告書式やRIDDOR95の解説書にも記載されています。HSEに電話して、事態が報告を必要とするかどうかを問い合わせることもできます。
さらに10日以内に事故報告書(F2508に記入)を提出しなければなりません。
◇自営業者の場合にはどんなことをすればよいのでしょうか
もし自営業者が別の企業の施設内で仕事をしている間に、重傷を負ったり、休業4日以上の負傷をした場合、その企業が報告の義務を負います。従って、可能な限りその企業に負傷の事実を知らせておく必要があります。
もし自営業者が自分の施設内で作業中に、自分または一般市民が負傷した場合、またはその施設内で危険事態が発生したり、医師から職業性疾病、疾患にかかっていると通知があった場合、自営業者はそれらのことを報告しなければなりません。しかし、自営業者は自分の施設内で重傷を負った場合でも、直ちに報告する必要はありません。自営業者自身または代理の者に10日以内に報告書を送付させてください。
◇誰に報告すればよいのでしょうか
もし企業が以下の種類に該当する場合には、地方自治体の環境衛生部に報告しなくてはなりません。
- 事務所
- 小売または卸売
倉庫
- ホテルおよび外食
- スポーツまたはレジャー
- 住宅(介護施設を除く)
- 礼拝場関連
環境衛生部の所在地、電話番号は電話帳の地方自治体の項目の中に載っています。
その他のすべての種類の事業については、HSE地域事務所に報告してください。所在地、電話番号は電話帳のHSEの中に載っています。もし何か問題があれば、HSEのインフォライン(InfoLine)に連絡してください。
◇記録を残す
報告を要する死傷事故、疾病または危険事態については、記録を残さなくてはなりません。記録には報告の日時や方法、事件の日時や場所、関係者の氏名や職責、事故や疾病の簡単な内容などを記載します。記録を作成する方法は自由です。
記録はたとえば、次のような方法で残すことができます。
-
報告書式のコピーをファイルに綴じる
-
コンピュータに詳細を記録する
-
書面の記録を作成する
それで全部なのですか
そうです。RIDDOR95の下で義務を課せられているほとんどの人々には、このパンフレットに知っておくべきことがすべて記載されています。
もし何か質問があれば、たとえば報告を要する危険事態や疾病などについての質問には、HSEがお答えします。もっと詳しい説明書が必要であれば、規則の詳細な解説書があります。それには規則の全文、解釈についての説明、報告を要する疾病や危険事態のリストも掲載されています。
鉄道、軌道などへのRIDDOR95の適用については別の解説書があります。
◇重傷、危険事態、疾病の定義
報告を要する重傷とは次のものを意味します。
- 親指を含む手指、足指以外の骨折
- 四肢の切断
- 肩、膝、背骨の脱臼
- 視力の喪失(一時的または永久的)
- 化学品または高熱金属による眼の火傷、または眼への刺傷
- 感電による負傷または電気による火傷で、意識不明になり、または蘇生を必要とし、または24時間以上の入院を必要とする場合
- その他のあらゆる負傷で、体温の低下、熱による疾病や意識喪失、または蘇生または24時間以上の入院を必要とする場合
- 窒息または有害物質または生物学的作用(biological agent)との接触による意識喪失
- 医学的治療を要する急性疾患、または吸入、摂取、皮膚経由の吸収などによって何らかの物質を吸収したことによる意識喪失
- 医学的治療を要する急性疾患で、それが生物学的作用(biological agent)またはその毒物、または感染物質との接触の結果であると考える理由がある場合
◇報告を要する危険事態とは次のものを意味します。
このリストは各危険事態の概要を述べたものです。
- リフトまたは昇降機の荷重支持部分の崩壊、倒壊、または破損
- 密閉容器または付随するパイプ設備の爆発、破損、または破裂
- 貨物コンテナの荷重支持部分の破損
- 機械または機器の架空送電線との接触
- 漏電または電気の過負荷による火災または爆発
- 意図的ではないあらゆる爆発、点火の失敗、意図的な倒壊を引き起こすための解体の失敗、施設境界を超える物質の射出、爆発による負傷
- 人間に対し重大な疾病を引き起こす可能性のある生物学的作用(biological agent)の、事故による漏洩
- 産業用レントゲン写真設備または照射機器(irradiation equipment)が、予定の照射時間を過ぎても電源が切れず、または安全位置に戻らない
- 呼吸装置の使用中または使用直前のテストにおける機能不全
- 潜水装置の故障または危険な状況、またはダイバーのはさまれ事故、ダイバーの近くでの爆発、または制御できない上昇
- 高さ5メートル以上の足場、または転落によりおぼれる危険のある水域近くに立てられた足場の倒壊または部分的倒壊
- 列車の他の乗物との偶発的な衝突
- 井戸(well)(水の井戸を除く)における危険事態
- パイプラインにおける危険事態
- 催し物会場(fairground)でのあらゆる荷重支持装置の故障、または車両または列車の脱線または偶発的な衝突
- 危険物質を輸送中のタンクローリーの転倒、重大な損傷、火災による炎上、または物質の流出
- 道路を輸送中の危険物質の火災、または物質の放出
- 以下の危険事態は、海上の作業場の場合を除いて、報告が必要
- 建設中、改造中、または解体中の建物または構造物、作業場の壁や床、あらゆる仮設物の偶発的な倒壊で重量5トン以上の材料が落下した場合
- 爆発または火災で24時間以上にわたって通常の作業が停止した場合
- 100kg以上の可燃性液体、沸点以上の温度の10kgの可燃性液体が建物から突然流出し、制御できない場合
- 10kg以上の可燃性ガス、または500kgのこれらの物質が大気中へ放出した場合
- 健康に有害なあらゆる物質の偶発的な流出
注:鉱山、採石場、関連輸送システム(鉄道など)、沖合い海上の作業場には、別の区分の危険事態が適用されます。
報告を要する疾病には次のようなものがあります。
- ある種の中毒
- 業性皮膚炎、皮膚がん、クロム潰瘍、オイル毛包炎(oil folliculitis)/アクネ(acne)などのある種の皮膚疾患
- 職業性喘息、農夫肺(farmer's lung)、じん肺、石綿症、中皮腫(mesothelioma)などを含む肺疾患
- レプトスピラ症(leptospirosis)、肝炎、結核、炭そ病、在郷軍人病(legionellosis)、破傷風などの感染症
- その他の疾患:職業性がん、ある種の筋骨格疾患、潜水病、腕手振動症候群(hand
arm vibration syndroum)など
報告を要する疾病の完全なリストはRIDDOR95解説書、報告書式に記載されています。HSEに問い合わせることもできます。それらは特定の作業活動に関連した病気です。
このパンフレットはHSEBooksから10部ずつまとめて有料で頒布しています(ISB
N0 7176 1077 2)。無料の場合は1部づつHSEBooksから提供されます。HSEの有料、無料の頒布を希望される方は下記に郵便でご注文下さい。有名書店でも販売しています。
HSE Books, PO Box 1999
Sudbury, Suffolk CO10 6FS
Tel: 01787 81165 Fax: 01787 313995
その他の質問はHSEのInfoLine(0541-545500)に問い合わせるか、HSE情報センター(HSE
Information Center, Broad Lane, Sheffield S3 7HQ に郵便で送ってください。
このパンフレットには、正しい実践についての解説が記載されています。実践は義務的なものではありませんが、何をする必要があるのかを知る上で役に立ちます。
このパンフレットの内容は自由に複製することができますが、広告、推薦(endorsement)、商業的目的のための場合を除きます。情報は1996年5月現在のものです。引用する際には出典をHSEと明記してください。
インターネット上で出版(1996年12月)
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