英国安全衛生庁(HSE) |
英国労働災害統計
2000年の国際比較
(仮訳 国際安全衛生センター)
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Eurostatおよび各種情報源
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EU統計局(Eurostat)およびEU加盟諸国は、EU内の労働災害統計に一貫性を与える作業を進めている。これまでの作業の進展の結果として、Eurostatは共通定義に基づく労働災害統計を発表している (1)。
本ファクトシートには、Eurostatの刊行物および英国安全衛生庁(HSE)の「2001/02年度安全衛生統計ハイライト(Health and Safety Statistics Highlights 2001/02)」と「2002/03年度死亡災害統計(Statistics of Fatal Injuries 2002/03)」から、死亡災害発生率と休業4日以上のその他の傷害発生率を掲載している。米国の労働災害発生率は、全米安全評議会(National Safety Council: NSC)発行の「Injury Facts 2001」(2)によっている。
2000年の結果の概要
-
標準化されたEUの死亡災害発生率は、1996年以来22%減少した。英国の死亡災害発生率は同期間中、11%減少した。Eurostatの結果とHSEの調査から、英国の死亡労働災害発生率は欧州でも最も低いものの一つであり、米国のそれより低いことが示されている。
-
2000年のEUにおける作業関連の死亡者は5,237人であった(作業中に発生した道路交通・輸送災害(road traffic and transport accidents: RTTA)を含む)。
-
EU全加盟国が採用している死傷者報告制度の対象である9産業部門での作業関連死亡者は4,605人であった。内訳は建設業1,279人、製造業976人、輸送業885人、農業651人、卸売・小売業461人、金融・ビジネスサービス業(2部門)271人、公益事業42人、ホテル・レストラン業73人である。
-
これらの死亡者のうち2,631人は、道路交通・輸送災害によるものではない。したがって、道路交通・輸送災害での死亡者数は1,974人である。
-
EU平均での死亡労働災害発生率は、道路交通・輸送災害を除くと、労働者10万人あたり2.8人である。Eurostatによって標準化された英国の死亡労働災害発生率は1.7人である(表1)。
2000年の英国の死亡労働災害発生率は、EU加盟諸国の中では2番目に低く、米国のそれより低い。
-
主要産業部門で見た場合、英国の死亡労働災害発生率はEU平均よりはるかに低い。
-
今回の調査では、統計制度に違いがあるにもかかわらず、英国の死亡災害発生率と傷害発生率は、全産業を通じて(およびほとんどの主要産業部門において)他の主要加盟国より低いという結論が得られた。
-
英国の全産業における休業4日以上の(非死亡)傷害発生率は、スウェーデンとアイルランドを除く他の加盟国より低い。
-
EUおよび英国で最も死亡災害発生率が高いのは建設業、農業、輸送業であり、個別産業では非金属鉱物製造業、金属製品製造業、および木製品製造業である。
(1) 「1998〜1999年のEUにおける労働災害(Accidents at work in the EU in 1998 - 1999)」 - 重要統計(Statistics in FOCUS) - テーマ3 - 16/2001、およびEurostat E3/ESAW別表3と5。
(2) 「Injury Facts 2001」、全米安全評議会(National Safety Council: NSC)
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英国およびEU加盟諸国における死亡災害
図1:英国およびEU加盟諸国における2000年の標準化された死亡労働災害発生率

資料出所:Eurostat E3/ESAW - 表5:2000年の欧州における加盟国ごとの死亡労働災害および通勤中の災害(Fatal accidents at work and commuting accidents in Europe by Member State 2000)
これらの統計は、作業関連災害の定義の調和を目指したEU加盟諸国の作業の結果として、Eurostatから発表されたものである。
- EU全体を通じたデータが発表された最も直近の年である2000年には、EUにおける作業関連死亡者数は4,605人で、このうち1,974人が作業関連の道路交通・輸送災害による死亡者であった。
- EU平均での死亡労働災害発生率は、輸送事故を除くと労働者10万人あたり2.8人である。Eurostatによって標準化された英国の同発生率は1.7人である。
- 2000年の英国の死亡労働災害発生率は、EU加盟諸国の中では2番目に低い。
- 近年のEUにおいて最も死亡災害発生率が高いのは建設業、農業、輸送業であり、個別産業では非金属鉱物、金属製品、および木製品の製造である。
死亡労働災害に関する情報を収集するにあたって、EU加盟各国はそれぞれ異なる方法を用いている。たとえば国によっては、交通事故と通勤中の災害(すなわち職場への/からの移動中に発生した災害)を死亡労働災害の統計に含めている。上に示した統計からはこうした災害を除外しているが、各国が用いる基準には今後もいくらかの違いが残るであろう。
いくつかの部門、とりわけ公共部門、漁業と採取産業(注:石油、ガス、鉱物資源産業のこと)、および自営業、被雇用者、家内労働者に関しては、加盟国によって災害の把握が完全ではない場合がある。
(*) 各加盟国の発生率は、EUの産業別雇用構成の共通基準にあわせて標準化されている。
死亡労働災害件数が比較的少数であるため、ルクセンブルグの死亡労働災害発生率は公表されていない。
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表1 欧州における2000年の加盟国ごとの死亡労働災害
加盟国 |
死亡労働災害(a) |
道路交通・輸送災害を除く合計(b) |
致命的な道路交通・輸送災害(b) |
道路交通・輸送災害を含めた合計(b) |
件数 |
標準化された発生率(c) |
件数 |
死亡者全体に占める割合(%) |
件数 |
オーストリア |
146 |
5.1 |
70 |
32% |
216 |
ベルギー |
56 |
3.1 |
43 |
43% |
99 |
デンマーク |
31 |
1.9 |
24 |
44% |
55 |
フィンランド |
31 |
2.1 |
7 |
18% |
38 |
フランス |
375 |
3.4 |
389 |
51% |
764 |
ドイツ |
455 |
2.1 |
455 |
50% |
910 |
英国 (d) |
228 |
1.7 |
データなし |
データなし |
228 |
ギリシア |
36 |
2.7 |
11 |
23% |
47 |
アイルランド (d) |
21 |
2.3 |
データなし |
データなし |
21 |
イタリア |
469 |
3.3 |
610 |
57% |
1079 |
ルクセンブルグ (e) |
11 |
未公表 |
2 |
15% |
13 |
オランダ (f) |
76 |
2.3 |
12 |
未計算 |
88 |
ポルトガル |
256 |
8 |
53 |
17% |
309 |
スペイン |
415 |
4.7 |
273 |
40% |
688 |
スウェーデン |
25 |
1.1 |
25 |
50% |
50 |
EU |
2631 |
2.8 |
1974 |
43% |
4605 |
資料出所:Eurostat E3/ESAW - 表5:欧州における2000年の加盟国別死亡労働災害および通勤災害(Fatal accidents at work and commuting accidents in Europe by Member State 2000)
- これらの統計は、作業関連災害の定義の調和を目指したEU加盟諸国の作業の結果として、Eurostatから発表されたものである。労働災害(accidents at work)とは、「労働の過程(in the course of work)において、個々に発生した肉体的または精神的危害をひきおこすもの」と定義されている。これには職場以外の場所での労働の過程において発生した災害および急性中毒も含まれる。純粋に医学的なものを原因とする事故(勤務中に起きた心臓発作など)や職業性疾病は含まれない。収集データがカバーしているのは、すべての加盟国に共通する9つの産業部門である;9つの産業部門とは、農業、製造業、公益事業、建設業、小売・卸売流通業、ホテル・レストラン業、輸送業、金融サービス業、不動産業である。各加盟国ではこれら以外の産業部門についてもデータを収集している可能性があるので、上に掲げた各加盟国の個々の数字は、各国レベルで公表されている数字と異なる場合がある。
- 勤務中の道路交通・輸送災害は、輸送部門における災害、およびその他のあらゆる経済部門における交通災害または勤務中の交通手段において発生した災害と定義されている。
- 産業部門ごとの雇用プロフィールは加盟諸国間で異なる可能性があり、したがって加盟諸国間での比較もその影響を受ける。各加盟国の標準化された死亡労働災害発生率は、当該加盟国の部門別発生率をEUレベルの雇用プロフィールに適用した値に基づいて計算されている。要するに、加盟諸国の死亡労働災害発生率は、産業別雇用の同一基準、すなわちEUのプロフィールにあわせて標準化されている。
- 英国とアイルランドについては道路交通・輸送災害に関するデータがない(交通および交通手段以外の輸送部門における災害は除く)。
- 死亡労働災害件数が比較的少数であるため、ルクセンブルグの死亡労働災害発生率は公表されていない。
- オランダの致命的な道路交通・輸送災害については一部のデータのみ掲載した。
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英国とEU加盟諸国における休業4日以上の傷害
図2:英国およびEU加盟諸国における2000年の標準化された休業4日以上の労働災害発生率

資料出所:Eurostat E3/ESAW - 表3:2000年の欧州における加盟国ごとの非死亡労働者災害および通勤中の災害(Non-fatal accidents at work and commuting accidents in Europe by Member State 2000)
- EU全体を通じたデータが発表された最も直近の年である2000年には、EUにおいて報告/申告された休業4日以上の作業関連傷害は3,613,150件であった。
- Eurostatでは過少報告を考慮し、EUにおける休業4日以上の傷害は408万件あったと推定している。これは、標準化された発生率では労働者10万人あたり4,016人になる。Eurostatによって標準化された英国の同発生率は1,607人である。
- 2000年の英国の非死亡労働災害発生率は、EU加盟諸国の中では3番目に低い。
- 近年のEUにおいて非死亡労働災害発生率が最も高いのは建設業、農業、輸送業であり、個別産業では食料品、飲料、たばこ、非金属鉱物、金属製品、および木製品の製造であった。
(*) 各加盟国の発生率は、EUの産業別雇用構成の共通基準にあわせて標準化されている。
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表2 2000年の欧州における加盟国ごとの休業4日以上の労働災害
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加盟国 |
休業4日以上の労働災害(a) |
申告/報告された傷害 |
災害 |
件数 |
平均申告/報告率(%) |
補正した件数 |
標準化された発生率(b) |
オーストリア |
72,626 |
(c) |
89,967 |
3,056 |
ベルギー |
81,420 |
100% |
81,420 |
4,213 |
デンマーク |
22,538 |
46% |
48,969 |
2,866 |
フィンランド |
48,325 |
100% |
48,325 |
3,046 |
フランス |
631,135 |
100% |
631,135 |
5,030 |
ドイツ |
1,163,825 |
100% |
1,163,825 |
4,757 |
英国 |
112,901 |
39% |
288,178 |
1,607 |
ギリシア |
11,307 |
32% |
35,765 |
2,595 |
アイルランド |
5,154 |
55% |
9,399 |
1,028 |
イタリア |
572,437 |
(d) |
628,156 |
4,049 |
ルクセンブルグ |
9,331 |
100% |
9,331 |
4,891 |
オランダ |
25,503 |
(e) |
174,973 |
4,095 |
ポルトガル |
152,032 |
(f) |
164,359 |
4,863 |
スペイン |
667,596 |
100% |
667,596 |
7,052 |
スウェーデン |
19,003 |
51% |
37,056 |
1,475 |
EU |
3,613,150 |
89% |
4,078,455 |
4,016 |
資料出所:Eurostat E3/ESAW - 別表3:2000年の欧州における加盟国ごと重篤度ごとの非死亡労働災害および通勤災害(Non-Fatal accidents at work and commuting accidents in Europe by Member State and severity 2000)
- これらの統計は、作業関連災害の定義の調和を目指したEU加盟諸国の作業の結果として、Eurostatから発表されたものである。労働災害(accidents at work)とは、「労働の過程(in the course of work)において、個々に発生した肉体的または精神的危害をひきおこすもの」と定義されている。これには、職場以外の場所での労働の過程において発生した災害および急性中毒も含まれる。純粋に医学的なものを原因とする事故(勤務中の心臓発作など)や職業性疾病は含まれない。収集データがカバーしているのは、すべての加盟国に共通する9つの産業部門である;9つの産業部門とは、農業、製造業、公益事業、建設業、小売・卸売流通業、ホテル・レストラン業、輸送業、金融サービス業、不動産業である。各加盟国ではこれら以外の産業部門についてもデータを収集している可能性があるので、上に掲げた各加盟国の個々の数字は、各国レベルで公表されている数字と異なる場合がある。
- 産業部門ごとの雇用プロフィールは加盟諸国間で異なる可能性があり、したがって加盟諸国間での比較もその影響を受ける。各加盟国の傷害発生率は、当該加盟国の部門別発生率をEUレベルの雇用プロフィールに適用した値に基づいて計算されている。要するに、加盟諸国の傷害発生率は、産業別雇用の同一基準、すなわちEUのプロフィールにあわせて標準化されている。
- オーストリア:農業および行政機関を除けば申告/報告は完全である。
- イタリア:自営の職人を除けば申告/報告は完全である。
- オランダ:部門によって申告/報告率は30%以下から70%までさまざまである。
- ポルトガル:ほぼ完全であると思われる
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表3 欧州および米国の2000年の労働災害:労働者または被雇用者10万人あたりの死亡労働災害発生率および休業4日以上の傷害発生率
国 |
死亡労働災害発生率 |
休業4日以上の傷害発生率 |
対象者 |
スウェーデン |
1.1 |
1475 |
労働者 |
英国 |
1.7 |
1607 |
労働者 |
デンマーク |
1.9 |
2866 |
労働者 |
フィンランド |
2.1 |
3046 |
被雇用者 |
ドイツ |
2.1 |
4757 |
労働者 |
アイルランド |
2.3 |
1028 |
労働者 |
オランダ(a)(b) |
2.3 |
4095 |
被雇用者 |
ギリシア |
2.7 |
2595 |
被雇用者 |
EU平均 |
2.8 |
4016 |
|
ベルギー |
3.1 |
4213 |
被雇用者 |
イタリア |
3.3 |
4049 |
労働者 |
フランス |
3.4 |
5030 |
被雇用者 |
スペイン |
4.7 |
7052 |
被雇用者 |
オーストリア |
5.1 |
3056 |
被雇用者 |
ポルトガル |
8 |
4863 |
被雇用者 |
ルクセンブルグ(c) |
- |
4891 |
労働者 |
米国(b) |
2.2 |
2780 |
労働者 |
資料出所:Eurostat E3/ESAW 別表5:欧州における2000年の加盟国ごと重篤度ごとの非死亡労働災害および通勤災害(Supplementary Table 5 Fatal accidents at work and commuting accidents in Europe by member state and severity 2000)、および表3:欧州における2000年の加盟国ごと重篤度ごとの非死亡労働災害および通勤災害(Table 3 Non-fatal accidents at work and commuting accidents in Europe by member state and severity 2000);Eurostat刊行物「1998〜1999年度のEUにおける労働災害(Accidents at Work in the EU in 1998-1999)」 - 重要統計(Statistics in FOCUS)、テーマ3 - 16/2001。米国のデータは英国安全衛生庁(HSE)の調査による。
Eurostatは通勤災害を除外している。Eurostatは輸送業の災害と道路交通災害を死亡労働災害発生率から除外しているが、これらの災害を含めても比較的影響が少ない場合には、これらの災害を休業4日以上の労働災害発生率に含めている。傷害発生率はいずれも、農業(狩猟業と林業を含む)、製造業、公益事業、建設業、小売・卸売流通業、ホテル・レストラン業、輸送業、金融サービス業、および不動産業の9つの産業部門に基づいている。
加盟国では、労働中または労働活動に関連するすべての死亡者を把握しているので、死亡労働災害件数は完全であると推定している。
英国、スウェーデン、オランダ、デンマーク、アイルランドの5つの加盟国の傷害統計は、事業者またはその他の者から労働監督当局に対してなされた傷害報告に基づいている。Eurostatの休業4日以上の傷害発生率では、これら5か国の非死亡災害の過少報告が考慮されている。その他の加盟諸国の傷害統計は、保険請求および/または社会保障制度に基づいており、比較的完全であると推定されている。
表3に関する各国別注記
- 死亡とは「即死」のことであり、1年以内の死亡者は含まれていない。発生率の算出にあたっては、オランダの1994年の雇用推計値を修正したものを用いた。
- 米国とオランダの非死亡災害発生率には、1〜3日の休業を伴う傷害が含まれている。両国の非死亡災害発生率は、実際には休業2日以上の傷害発生率である。英国の休業2日以上の非死亡災害発生率は、労働力調査によると2,550人である。
- 死亡労働災害件数が比較的少数であるため、Eurostatはルクセンブルグの死亡労働災害発生率を公表していない。
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表4 2000年の産業部門ごとの労働者10万人あたりの死亡労働災害発生率および休業4日以上の傷害発生率:EU平均および英国
産業(SIC 92の分類) |
EU平均 |
英国(2000/01) |
死亡 |
休業4日以上 |
死亡 |
休業4日以上 |
|
建設業(F) |
11.4 |
7548 |
5.9 |
2580 |
農業(A) |
12.6 |
6625 |
10.2 |
2760 |
輸送、倉庫、通信(I) |
10.9 |
5512 |
2.3 |
2220 |
電気、ガス、水道(E) |
3.7 |
1513 |
- |
データなし |
製造業(D) |
3.2 |
4421 |
1.2 |
2080 |
|
製造業内訳 |
- 食料品、飲料、たばこ(DA) |
4 |
6223 |
0.8 |
3570 |
- 非金属鉱産物(DI) |
9.7 |
6620 |
3.8 |
2810 |
- 卑金属および金属製品(DJ) |
6.4 |
8360 |
3.4 |
2480 |
- 木材および木製品(DD) |
7.4 |
9805 |
3.8 |
データなし |
|
卸売・小売業、修理(G) |
2.1 |
2524 |
0.3 |
1490 |
金融仲介、不動産、賃貸、事業活動(JおよびK) |
1.4 |
1815 |
0.1 |
580 |
ホテル・レストラン業(H) |
1.3 |
3790 |
0.2 |
1400 |
表4に関する全般的注記
死亡および休業4日以上の傷害の発生率のEU平均の出所はEurostatである。Eurostatは輸送業の災害と道路交通災害を産業部門ごとの死亡労働災害発生率に含めており、これを考慮するとEU平均は4.6となる。この点は、輸送業におけるEUと英国の比較に影響を与える。
英国の各産業部門の死亡および休業4日以上の傷害の発生率の出所は、「2001/02年度安全衛生統計ハイライト(Health and Safety Statistics Highlights 2001/02)」別表である。死亡労働災害発生率は、事業者およびその他の者からの報告に基づいており、休業4日以上の傷害発生率は労働力調査によっている。
輸送業の災害報告範囲は加盟各国によっていくぶん異なっている。したがって輸送業、倉庫業におけるEurostatの傷害発生率からは、フランス・イタリア・英国の鉄道輸送、デンマーク・ギリシア・フランス・英国の海上輸送、およびデンマーク・イタリア・オランダ・英国の航空輸送が除外されている。
英国の製造業における死亡労働災害発生率は、被雇用者10万人あたりの値である。英国の休業4日以上の傷害発生率の中にはデータなしとなっているものがあるが、これは調査によって得られた値が非常に低い推定値で、公表に値するだけの信頼性がなかったためである。
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表5 1996〜2000年の英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、およびEU平均の傷害発生率
年 |
英国 |
ドイツ |
フランス |
イタリア |
スペイン |
EU平均 |
死亡 |
非死亡 |
死亡 |
非死亡 |
死亡 |
非死亡 |
死亡 |
非死亡 |
死亡 |
非死亡 |
死亡 |
非死亡 |
1996 |
1.9 |
1550 |
3.5 |
5098 |
3.6 |
4964 |
4.1 |
4179 |
5.9 |
6736 |
3.6 |
4229 |
1997 |
1.6 |
1535 |
2.7 |
5021 |
4.1 |
4992 |
4.2 |
4089 |
6.3 |
6225 |
3.4 |
4106 |
1998 |
1.6 |
1512 |
3 |
4958 |
4 |
4920 |
5 |
4105 |
5.5 |
7073 |
3.4 |
4089 |
1999 |
1.4 |
1606 |
2.4 |
4908 |
3.4 |
4991 |
3.4 |
4067 |
5 |
7027 |
2.9 |
4088 |
2000 |
1.7 |
1607 |
2.1 |
4757 |
3.4 |
5030 |
3.3 |
4049 |
4.7 |
7052 |
2.8 |
4016 |
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- 1996年以来、EU平均の死亡率は22%減少した。
- 同期間中、英国の死亡率は11%、ドイツの死亡率は40%減少した。
表5に関する全般的注記
死亡率は、フランスが被雇用者、英国は労働者、イタリアは労働者、ドイツは被保険就業者の10万人あたりの値である。
資料出所:Eurostat別表「E3/ESAW」、Eurostat Cronosデータベース、およびEurostat「重要統計(Statistics in Focus)」刊行物。英国の数字は、年度別の「安全衛生統計ハイライト(Health and Safety Statistics Highlights)」別表による。
作業関連道路交通災害は、英国の非死亡災害発生率からは除外されているが、その他の加盟国の値には含まれている。1996年のEU平均については、死亡率に道路交通・輸送災害が含まれている。
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労働災害統計の情報源に関する背景事情
比較に関する全般的な問題
- 労働災害の定義と報告の方法は各国により異なる。こうした事情から、一部の国では、事業者(およびその他の者)から当該国の労働監督当局への報告の副産物として傷害統計が得られている。このようなケースに該当する国として、英国、アイルランド、およびデンマークがある。フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、ポルトガル、およびギリシアでは、統計の主たる情報源は保険や社会保障制度を通じてなされた請求である。オランダの統計は、事業者の報告と社会保障請求を組み合わせたものから得ている。保険および社会保障制度の特徴は請求漏れが比較的少ないことであり、したがって災害統計もほぼ完全である。一方、事業者の報告に基づく統計の場合、非死亡傷害については過少報告の程度は非常に高くなる。
- ほとんどの国の労働災害の公表数には、労働中の災害、道路交通災害、および道路上の車両によって被った災害が含まれている。英国とアイルランドの統計からはこれらの災害は除外されている。ほかの加盟諸国では、こうした災害は死亡労働災害の20〜40%にも達することがある。
- 大半の加盟国については、休業4日以上または2日以上の傷害を非死亡災害とみなすことができる。こうした傷害には、特に「重大」とされるあらゆる傷害が含まれている。たとえば、表に掲載した英国の休業4日以上の傷害発生率には、報告に関する英国の各種規則で重傷と定義された傷害が含まれている。
調和を目指したEurostatのプロジェクト
- Eurostatおよび加盟諸国は、比較可能な欧州の労働災害統計を作成、公表するためのプロジェクトに取り組んでいる。このプロジェクトでは、英国安全衛生庁(HSE)の調査とその方法論の一部を共有しつつ、労働災害の定義の一貫性を向上させている。プロジェクトでこれまでに行われた主な提案では、次の条件を満たす労働災害のデータを加盟諸国からEurostatに提供することになっている。すなわち、通勤中の災害を除外すること;休業4日以上を基準とすること;道路交通災害を区別すること;加盟諸国間で同一の産業部門を対象とすること;あらゆるタイプの雇用を対象とすること;である。災害の報告制度が事業者からの報告に基づいている場合や、過少報告が存在することがわかっている場合には、加盟諸国は災害報告のレベルを推定し、これもEurostatに提供する。英国の労働災害統計は、事業者の報告と労働力調査の結果に基づくものであり、Eurostatのプロジェクトの主な提案の条件を満たしている。
- 表1と2に掲げたEurostat公表の死亡災害発生率と傷害発生率は、すべての加盟諸国の災害報告制度でカバーされている9つの産業部門を対象としている。9つの産業部門とは、農業(狩猟業と林業を含む)、製造業、公益事業、建設業、小売・卸売流通業、ホテル・レストラン業、輸送業、金融サービス業、および不動産業である。これらの産業部門は、1992年産業分類(Standard Industrial Classification 1992: SIC 92)のカテゴリーA、D、E、F、G、H、J、およびKに対応する。
- 表された死亡災害発生率と傷害発生率は、本ファクトシートに掲載するにあたり、便宜上丸めてある。Eurostatでは、スウェーデン、オランダ、アイルランド、デンマーク、および英国の災害発生率の過少報告を考慮して値を調整している。英国とアイルランドについては、全国労働力調査の結果に基づいて調整が行われている。
- 産業部門の雇用構造は国によってさまざまである。このため、全産業を通じた死亡災害発生率と傷害発生率を加盟諸国間で比較することはできない。なぜなら国によっては、比率上、より多くの労働者を高リスク産業に抱えることになるからである。Eurostatではこの点を考慮するために、各加盟国の死亡災害発生率と傷害発生率をEUの産業別雇用構成の共通基準にあわせて標準化している。
- Eurostatの結果からは、リスクの最も高い産業部門と最も低い産業部門もわかる。表4には、Eurostatのデータに基づく一部の産業部門の死亡災害発生率と休業4日以上の傷害発生率のEU平均を掲載し、比較のために英国の死亡災害発生率と休業4日以上の傷害発生率をあわせて示した。Eurostatでは、労働災害の全リスクを示すために道路交通災害を含めている。この点を考慮しても、EU平均が英国のそれより著しく高いことに変わりはない。Eurostatでは、値が公表されている産業部門ごとに加盟各国の死亡災害発生率を比較したものを発表していない。
HSEの調査 - 英国、フランス、ドイツ、スペイン、およびイタリア
- 英国安全衛生庁(HSE)は1991年、主要加盟国、すなわちフランス、ドイツ、イタリア、およびスペインの災害統計について独自に分析を試みた。この調査では、これらの国の災害統計に調整を加え、英国のそれと幅広く比較できるようにした。具体的には、道路交通・車両災害を除外し、5か国の発生率を同じ方法で算出できるよう、各国の統計を調整した。調査では、各国保険制度における過大または過少請求に起因する偏りなど、主として定量的ではない要因も考慮した。調査では、統計制度に違いがあるにもかかわらず、英国の死亡災害発生率と傷害発生率は、全産業を通じて(およびほとんどの主要産業部門において)他の主要加盟国より低いという結論が得られた。
米国
- 2000年の米国の労働者数は1億3600万人をわずかに超えており、英国の労働者数の5倍に近い。米国ではこうした膨大な労働者を対象に、さまざまな機関と制度によって死亡労働災害件数と負傷件数の推定値が提供されている。表3に示した値は、全米安全評議会(NSC)の刊行物である「Injury Facts 2001」掲載の統計によっている。米国の死亡災害発生率は、労働統計局(Bureau of Labor Statistics: BLS)が実施した職場調査と英国安全衛生庁(HSE)の調査に基づいている。NSC提供の死亡災害件数は、労働統計局(BLS)、国立衛生統計センター(National Center for Health Statistics: NCHS)、各州人口統計局、および各州産業委員会のデータに基づく推定値である。これには道路交通災害は含まれていない。
- NSCでは、2000年に約(390)380万人が交通事故を除く労働災害で能力損失傷害を負ったと推定している。このNSCの推定は、国立衛生統計センター(NCHS)提供のデータに基づいている。能力損失傷害(disabling injury)は、死亡ないしあらゆる程度の永久的不能をもたらす傷害、または災害発生の翌日以降の丸一日間、通常の業務や活動を実質的に遂行できない状態にさせる傷害と定義されている。米国の非死亡傷害発生率は、この390万人の負傷者が推定労働者数に占める割合である。要するに、米国の傷害発生率は休業2日以上の傷害発生率である。2000年の同発生率は、被雇用者および自営業者10万人あたり2,780人である。英国の休業2日以上の傷害発生率は、労働力調査から推定したもので、2000年には2,550人であった。
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