このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > イギリスにおける労働災害による死亡者数は減少(2001/2002年度)

イギリスにおける労働災害による死亡者数は減少(2001/2002年度)

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2002年9月号 p.2
(仮訳 国際安全衛生センター)


 英国安全衛生庁(HSE)の試算によれば、2001/2002年度の一年間に、業務上の事故で死亡した労働者数(被雇用者及び自営業者)は、前年度比で15%減少するものと推定される。「労働災害死亡者数に関する統計・2001/2002年度版」に掲載されているこの試算が示すとおり、2001年4月1日から2002年3月31日までの一年間に、就業中死亡した労働者の数は、前年度の292人から249人へと減少している。


急激な増加

 この数字は、前年度(2000/2001)に生じた死亡災害の急増に、ある程度歯止めがかかったことを示している。労働者の死亡災害の発生件数は、1999/2000年度の220人から2000/2001年度の292人へと33%も上昇し、1990年代半ば以降最も高い水準に達していた。
 英国安全衛生委員会(HSC)会長、ビル・キャラガンは2001/2002年度の試算について次のように述べている。
「昨年度のイギリスは、労働災害による死亡者数が急激に増加しました。本年度もあのような高い水準にとどまっているようだったら、どれほど失望していたことでしょう 」


受け入れがたい水準

 「しかしながら、2001/2002年度の数字が長期的な下落傾向を示すものかどうか、結論を出すにはまだ早すぎます。今年度の数字は前年度に比べて減少したとはいえ、それでもなお2年前よりは13%高いのです。死亡災害の犠牲者は一人といえども大きすぎる損失です。すべての死は、犠牲者やその家族、そして友人たちに耐え難い痛みと苦しみをもたらします。このように考えると、その水準でよしとすることなど到底できないのです」

 労働者のうち、被雇用者、自営業者別には、被雇用者の死亡事故の発生件数は、2000/2001年度の213人から2001/2002年度の204人へと減少した。また、自営業者の場合も同様で、同時期において79人から45人へと減少している。そして、労働者に生じる死亡事故の発生率は、10万人に対して1だった2000/2001年度から、2001/2002年度では10万人に対して0.9まで減少している。


最多の死亡者数

 産業界のなかで最多の犠牲者を出したのが、2001/2002年度に死亡災害総数の32%にあたる79人を記録した建設業界であることも、試算から判明した。
 しかし、建設業界における労災死亡者数は、105人を出した前年度に比べ、2001/2002年度期では25%減少している。

 キャリガンの発言は続く。
「われわれが今取り組むべき課題は、継続的な改善を図っていくことです。これを実現するには、事業者、労働者、労働組合、労働安全代表(safety representatives) の4者の緊密な協力が不可欠です。政府および英国安全衛生委員会(HSC)の労働安全衛生目標を達成するために、4者とわれわれが協働していくことが重要です」

 そしてキャリガンは具体的な提案を行う。
 「私は、3つの主要な領域に焦点を絞って取り組んでいきたいと考えています。まず第一点目。事業者が、リスク管理の実施や、作業上のリスクを極小化する適切な処置を怠ったことにより死亡災害が発生していることが、調査で判明しました。これは任意で行われるような類の内容ではありません。事業者は必ずリスク管理を行わなければならず、それを怠れば法的にも道義的にも重大な責任を負うことになります」
 「第二点目。より多くの企業が、独自の改善目標を設定し、アニュアルレポートのなかに労働安全衛生の成果に関する項目を設けることを希望します。企業の評判が何よりも大切な時代で、どんな企業だって、業務上の死亡災害、傷害事故、健康障害を発生させてしまったという悪評をたてられたくはないでしょう。そのようなものが企業の営業活動にどれだけ悪影響を及ぼすか、わざわざ説明するまでもないでしょう」


監督者の義務

 「第三点目。あらゆる企業が、われわれが提示している、監督者の義務に関するガイダンスに従うことを希望します。これは、労働安全衛生に関する問題を重役会が真剣に受けとめ、企業活動を最低限、法的、道義的責任に従って行なっていくことを確保するものです」

■「労働災害死亡者数に関する統計・2001/2002年度版」は安全衛生庁(HSE)のホームページ(www.hse.gov.uk/statistics/injury.htm)より、無料でダウンロードが可能です。


注)イギリスでは、業務上の交通事故は上記の数字と別にカウントしています。