この「Occupational Health Statistics Bulletin」(以下「Bulletin」)は、英国における作業関連疾病の最新の状況を示したものである。この「Bulletin」では、次のようなさまざまな出所の最新の統計情報を使用している:労働衛生報告(The Health and Occupation Reporting: THOR)ネットワークの専門医の報告;労災補償制度(Industrial Injuries Scheme: IIS)の下での補償給付請求;中皮腫およびその他の致命的な職業性疾病の死亡診断書。詳細については、www.hse.gov.uk/statisticsを参照のこと。
この「Bulletin」には、「安全衛生の再活性化(Revitalising Health and Safety: RHS)」で定められた安全衛生目標に対する進捗状況は含まれていない。HSEの統計担当者らによる最新の評価はwww.hse.gov.uk/statistics/targets.htmに掲載されている。新たな判断が可能になるのは、ほかの情報、とりわけ2003/04年冬に実施された自己申告制作業関連疾病(Self-reported Work-related Illness: SWI)調査の情報が利用可能になってからである。疾病、傷害、休業に関する「安全衛生の再活性化」の目標についての最新の進捗状況報告は、2004年11月に「2003/04年度安全衛生統計ハイライト(Health and Safety Statistics Highlights 2003/04)」において公表される予定である。
図1:自己申告制作業関連疾病の推定罹患者数と発病者数
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自己申告制世帯調査(SWI01/02)によると、英国では2001/02年度、現在の業務または過去の業務によって生じたか、あるいは増悪したと本人が考える疾病を患っている人の数は230万人であった。この罹患者数の推定には、長期にわたって症状のある人と新たに罹患した人の両方が含まれている。
筋骨格系障害(骨、関節、または筋肉のトラブル)は最も報告の多い疾病であって、全体の半数近くを占めており、これに全体の4分の1を占めるストレス・うつ・不安が続いた。
新規発病者、すなわち過去12か月の間に初めて自分の疾病に気付いた人は約70万人であった。これらの人のうち、筋骨格系障害とストレス・うつ・不安を患った人は、それぞれ全体の3分の1をわずかに超えていた。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/swi0102.pdfを参照のこと。
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図2:専門医から報告があった作業関連疾病の推定発病者数(年平均、2001〜2003年)
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2001年から2003年までの毎年、推定平均23,000人の職業性または作業関連の疾病の新規発病者が専門医と産業医の診断を受けており、これらの医師は労働衛生報告(THOR)サーベイランス制度への報告を行っている。
自己申告の事例の場合と同様、最も多いのは心の病筋骨格系障害で、それぞれ全体の3分の1弱を占めた。
皮膚疾患(特に皮膚炎)と呼吸器疾患(喘息を含む)は、専門医から報告のあった症例のうち残りの大部分を占めていた。
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図3:労災補償制度(Industrial Injuries Scheme: IIS)の補償給付対象となる疾病の発病者数(年平均、2001〜2003年)
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最新の(2003年または2002/03年度までの)3年間では、毎年平均8,000件近くの事例が労災補償制度(Industrial Injuries Scheme: IIS)の補償給付対象となった。労災補償制度(IIS)は、指定された職業性疾病によって障害を負った労働者に補償を行う制度である。
事例として最も多かったのは、電動工具の恒常的使用による白ろう病(Vibration White Finger: VWF)で、全体の3分の1近くを占めた。
残りのほとんどは、アスベストや石炭塵といった物質への過去のばく露に起因する呼吸器疾患であった。
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アスベスト関連およびその他の致命的疾病
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図4:中皮腫
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英国における中皮腫(アスベストに起因するがん)による年間死者数は、1968年の153人から2002年には1,862人に増加した。
最新の予測によれば、中皮腫による年間の総死者数は、2011年から2015年までのある時点において約1,950〜2,450人のレベルでピークに達すると予想されている。現在発生している死者は、過去の労働条件を反映したものであり、45歳未満の男性の死者数は、1990年代初頭以来、下降線をたどっている。
中皮腫のリスクが最も高い職業および地理的地域は、主に、造船、鉄道工事、アスベスト製品製造といった産業における過去のアスベスト使用と関連のある職業や地域である。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/meso.htmを参照のこと。
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図5:石綿肺
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アスベスト関連の肺がんによる年間死者数は、少なくとも中皮腫と同程度あるものと思われる。したがって、2002年には少なくとも1,800人の死者が出た可能性がある。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/lungcan.htmを参照のこと。
合計すると、毎年推定6,000人(不確定要素があるので幅は3,000〜12,000人)が、過去の職業性ばく露によるがんで死亡している。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/cancer.htmを参照のこと。
石綿肺の患者を対象とした補償給付を受け取っている事例は1980年代初頭以来上昇しており、2003年には最多の655件に達した。
石綿肺を原死因に掲げた死亡診断書に基づくと、2002年には石綿肺による死者数は112人であった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/asbestos.htmを参照のこと。 |
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図6:じん肺(石綿肺を除く)
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2003年には労災補償制度(Industrial Injuries Scheme: IIS)で新たに審査対象となったじん肺(石綿肺を除く)の事例は1,130件で、2002年と同程度であり、それ以前の年と比べて大幅増となった。この増加はおそらく、広報キャンペーンと、2002年に導入されたより正確を期したデータ収集方法によるものであろう。
新たに補償給付の対象となったじん肺(石綿肺を除く)の事例のほとんどは、主に石炭鉱業の退職者である。その他の該当産業としては採石業、鋳物業、および製陶業があり、これらの産業ではシリカがじん肺の主要原因である。
じん肺を原死因とする死者数は、2000年と2001年にはそれぞれ279人、240人と減少したが、2002年には271人に増えた。直近では微増しているが、死者数は長期的には低下傾向にある
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/coal.htmを参照のこと。 |
筋骨格系障害
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図7:作業関連筋骨格系障害の推定発病者数
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自己申告制(SWI)調査によると、英国では2001/02年度、現在の業務または過去の業務によって生じたか、あるいは増悪したと本人が考える筋骨格系障害の推定罹患者数は1,126,000人であった。
SWI01/02による推定では、罹患者の21%にあたる240,000人の就業経験者が、過去12か月の間に初めて作業関連の筋骨格系障害に気付いている。
労働衛生報告(THOR)のデータによると、推定で5,700人が2003年に初めて受診した。これは、毎年推定約8,000人が受診していたそれまでの5年間と比べて低い値である。この変化が筋骨格系障害の実際の罹患率低下を反映したものかどうかは、まだ時期尚早で判断できない。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/musc.htmを参照のこと。
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図8:リウマチ専門医の報告による作業関連筋骨格系障害の多い職業上位10(2001〜2003年)
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2001〜2003年にリウマチ専門医が労働衛生報告(THOR)に報告したもののうち、年間平均発病率が最も高い職業は、金属板を扱う労働者・造船工・リベット工で、これらの職業の年間平均発病率は全職業平均の約40倍であった。これに続くのは、タイピストと道路建設作業員であった。
SWI01/02調査で罹患率が平均より高い職業は、熟練を要する職業(塗装工と装飾工、大工と指物師など)と加工工場作業員および機械操作員(重量物運搬車の運転手など)であった。熟練を要する職業では、発病率も平均より高かった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/musc.htmを照のこと。
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図9:専門医の報告による作業関連筋骨格系障害の年齢分布(男女別、2001〜2003年)
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2001年から2003年までの3年間にリウマチ専門医と産業医が診断した新規発症者の80%は、25〜54歳の年齢層に属していた。構成は男女でほぼ同じであった。
リウマチ専門医が診た年齢グループで最も多いのは45〜54歳で、産業医の診た年齢グループでは35〜44歳が最も多かった。
SWI01/02調査では、男女どちらの場合も、最も高齢の年齢グループ(男性では55〜64歳、女性では55〜59歳)の罹患率が最も高かった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/musc.htmを参照のこと。
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ストレスと職場の暴力
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図10: 作業関連のストレス・うつ・不安の推定発病者数
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自己申告制作業関連疾病調査(2001/2002)(SWI01/02)によると、英国では2001/02年度、50万人を超える人々が、病気になるほどの作業関連のストレスを経験した。このうち推定47%にあたる265,000人の就業経験者が、過去12か月の間に初めて自分の病気に気付いている。
2001〜2003年には、労働衛生報告(THOR)に報告のあった職業性の心の病の新規罹患者数は年間7,000人をやや上回った。
作業関連のストレスおよびこれに関連する障害が最近増えていることを示唆する証拠がある一方で、最新の労働衛生報告(THOR)データでは該当件数は減っている。これらの傾向を適切に評価するには、さらにデータが必要である。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/stress.htmを参照のこと。
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図11: 精神科医の報告による作業関連の心の病の多い職業上位10(2001〜2003年)
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SWI調査および「職場のストレスと健康(Stress and Health At Work: SHAW)」調査では、教師と看護師を含む職業グループおよび産業グループ、さらに保安要員と一部の管理者のグループが、作業関連のストレスに関して高い罹患率を示している。
労働衛生報告(THOR)のデータでも、これらの職業グループ、さらに警官、ソーシャルワーカー、看守、英国国防軍兵士、開業医といったその他の公的部門の労働者で、作業関連の心の病の発病率が高いことが示されている。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/stress.htmを参照のこと。
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図12: 英国犯罪調査(BSC)への報告による職場の暴力の多い職業上位10(2001/02年度および2002/03年度)
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2002/03年度の英国犯罪調査(British Crime Survey: BCS)の推定によると、調査対象者の面接に先立つ12か月の間に、英国の労働者に対する一般公衆の成員からの暴力の脅威は約453,000件、身体的攻撃は467,000件あった。
推定では、個々の労働者が過去12か月の間に少なくとも一度被害者となるリスクは、脅威では労働者10万人あたり900人、攻撃では労働者10万人あたり900人、何らかの暴力事件(脅威または攻撃)では労働者10万人あたり1,700人であった。
英国犯罪調査(BCS)によると、攻撃されるリスクが最も高い主要職業グループは保安要員で、これに医療および社会福祉関連従事者が続き、リスクの値は10万人あたりそれぞれ12,600人と3,300人であった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/violence.htmを参照のこと。
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喘息
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図13: 職業性喘息
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2001年から2003年までの間に産業医と呼吸器専門医が初めて診察し、労働衛生報告(THOR)サーベイランス制度への報告を行った職業性喘息の年間平均発病数は約650人であった。
利用可能なデータソースから職業性喘息の傾向を判断するのは困難である。過去10年間にわたり、THORの推定発病数は、年間発病者数で1,000人のあたりを上下している。しかしながら過去4年間の推定発病者数はこれより低く、職業性喘息の発病者数が減少していることを示唆している。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/asthma.htmを参照のこと。
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図14: 呼吸器専門医の報告による職業性喘息の多い職業上位10(2001〜2003年)
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2001年から2003年までに呼吸器専門医から報告のあったもののうち、職業性喘息の発病率が最も高い職業は、車両のスプレー塗装工(10万人あたり165人)、製パン・製菓業従事者(10万人あたり105人)、および鋳型・鋳物の中子製作・ダイカスト製造従事者(10万人あたり51人)であった。
労働衛生報告(THOR)のデータによると、呼吸器専門医の報告で職業性喘息の発病率が最も高い産業は、卑金属製造業(労働者10万人あたり36人)と車両・トレーラー・セミトレーラー製造業(労働者10万人あたり13人)であった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/asthma.htmを参照のこと。
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図15: 職業性喘息の原因上位10(2001〜2003年)
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2001年から2003年までの3年間に原因として指摘されることが最も多かったのは、労働衛生報告(THOR)と労災補償制度(Industrial Injuries Scheme: IIS)のどちらにおいても、イソシアネート(一部の塗料やフォームの製造などで使われている)および小麦粉/穀物であった。
労働衛生報告(THOR)のデータによると、職業性喘息の新規発症者が最も多い年齢グループは、男性では45〜54歳と35〜44歳(それぞれ全体の約3分の1と4分の1)、女性では25〜34歳と35〜44歳、さらに45〜54歳(いずれも全体の約4分の1)であった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/asthma.htmを参照のこと。
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皮膚炎
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図16: 職業性接触性皮膚炎
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2001年から2003年までに専門医が診断した作業関連の皮膚疾患の新規発病者は年間推定平均3,600人で、このうち約80%が接触性皮膚炎であった。
労災補償制度(Industrial Injuries Scheme: IIS)の下で何らかの障害を負うと判断される職業性皮膚炎を患った年間労働者数は、1990年代初頭の400人をわずかに超える値から2002/03年度には200人に減少した。
皮膚炎発病率の傾向を見極めるのは困難であるが、1996年から2000年まで年間3,000人から4,000人の間を上下した後、過去3年間では労働衛生報告(THOR)サーベイランス制度の推定発病数は3,000人を切っており、純粋に減少傾向にあると考えられる。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/skin.htmを参照のこと。
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図17: 皮膚科医の報告による職業性接触性皮膚炎の多い職業上位10(2001〜2003年)
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労働衛生報告(THOR)のデータによると、2001〜2003年に最もリスクが高いと推定された職業は、フラワーアレンジャー/花屋(労働者10万人あたり年間101人)、美容師および関連職(10万人あたり100人)、および理容師・理髪師(10万人あたり99人)であった。
労働衛生報告(THOR)の皮膚科医によると、2001〜2003年に労働者のリスクが最も高いと推定された産業は、その他のサービス業(労働者10万人あたり年間58人)、研究開発(10万人あたり23人)、および車両・トレーラー・セミトレーラー製造業(10万人あたり21人)であった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/skin.htmを参照のこと。
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図18: 職業性接触性皮膚炎の原因上位10(2001〜2003年):専門医(THOR)による推定平均発病者数(2001〜2003年)
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2001〜2003年に労働衛生報告(THOR)の皮膚科医と産業医が接触性皮膚炎の原因として挙げた中で最も多かったのはゴム薬品・原料で、これにせっけん・洗浄剤、湿式加工が続いた。
労働衛生報告(THOR)のデータによると、接触性皮膚炎患者の大部分は3つの年齢グループに属しており、男性で該当する年齢グループは35〜44歳、45〜54歳、25〜34歳、女性では25〜34歳、16〜24歳、35〜44歳であった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/skin.htmを参照のこと。
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感染症
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図19: 職業性感染症
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英国における2003年の作業関連感染症の年間発病者数は、労働衛生報告(THOR)サーベイランス制度の推定によれば、約1,100人であった。専門医の報告に基づけば、これは2002年と比べて50%超の減少である(ただし、2002年の新規発症者数は度重なる下痢の流行によって大きく増えていた)。この推定は、おそらく英国における職業性感染症の実際の罹患状況を大幅に過小評価していると考えられる。なぜなら、報告されなかったり、診断の対象とならない事例が、実際には数多く生じると予想されるからである。
RIDDORおよびIISのデータは、一般により重篤な感染症を患う限られた集団を対象とするものであるが、そこに表れた近年の傾向には、職業性感染症の患者数に明らかな変化の徴候は認められない。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/infect.htmを参照のこと。
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図20: 伝染病医の報告による職業性感染症の多い職業上位10(2001〜2003年)
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2001〜2003年の労働衛生報告(THOR)の専門医のデータによれば、職業性感染症のリスクが最も高いと推定された職業は、介護人/ホームケアラー(労働者10万人あたり年間132人)、魚・家禽処理業(10万人あたり131人)、およびレジャー施設・テーマパークの接客業(10万人あたり123人)であった。
業界分析では、2001〜2003年に労働衛生報告(THOR)に報告のあった職業性感染症の大部分は、医療・福祉部門で発生していた(労働者10万人あたり年間37人)。このほかに平均よりリスクが高かったのは、金融仲介業(10万人あたり12人)、およびその一部門である郵便・通信業(10万人あたり22人)であった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/swi0102.pdf参照のこと。
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図21: 作業関連の下痢の原因:専門医(THOR)、推定平均事例(2001〜2003年)
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労働衛生報告(THOR)の専門医から報告のあった職業性感染症で最も多かったのは下痢で、これが2001〜2003年の事例の90%近くを占めていた。2001年から2003年までの感染症の原因で最も多かったのは小型球形ウイルス(Small Round Structure Virus: SRSV)(30%超)、ついでロタウイルス(25%)であった。
2001〜2003年に労働衛生報告(THOR)に報告のあった職業性感染症のうち、性別の記載があったものについては、約4分の3が女性に発症していた。年齢グループでは35〜44歳と25〜34歳がそれぞれ全体の4分の1を占めた(ただし、年齢と性別が記録されているのは少数の事例のみである…)。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/infect.htmを参照のこと。
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その他の職業性疾病およびばく露
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図22: 職業性聴力損失
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1997〜1998年の医学研究審議会(Medical Research Council: MRC)の調査によると、職場の騒音にばく露した結果、聴力に問題を抱えている罹患者数は推定で509,000人であった。これは、SWI01/02の推定(87,000人)よりも多い。
労災補償制度(Industrial Injuries Scheme: IIS)の補償給付対象となった、騒音による聴力損失の新規発症者数は、1980年代半ばから一定して減少しており、2000年には226人にまで下がった。しかし、1998年以降はほとんど変化がなく、2003年には発症者数は2002年の264人から335人へとわずかに増えている。
2001〜2003年の聴覚医の報告に基づけば、最も発病率の高い職業は鋳物業の労働者、英国国防軍の下士官その他の階級、および製造・加工・機械工具作業員であった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/noise.htmを参照のこと。 |
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図23: 白ろう病(Vibration White Finger: VWF)
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労災補償制度(IIS)の補償給付対象となった白ろう病(Vibration White Finger: VWF)の新規発症者数は2002/03年度には1,775人で、ほとんど全員が男性であった。これらの数字は、それ以前の7年間の値より小さくなっている。
労働衛生報告(THOR)制度によれば、2003年には推定303人の手腕振動症候群(Hand-Arm Vibration Syndrome: HAVS)の発病者が産業医およびリウマチ専門医の診断を受けているが、2002年の同発病者数は1,181人であった。
1997〜1998年の医学研究審議会(Medical Research Council: MRC)の調査によると、英国における白ろう病(VWF)の罹患者数は推定288,000人であった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/vibrate.htmを参照のこと。
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図24: 医療サーベイランスの対象となっている男性労働者の血中鉛濃度
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医療サーベイランスの対象となる鉛を扱う労働者の総数は5年前から減少しており、2002/03年度には12,773人となった。
2002/03年度には休職者数が減って男性68人、女性5人となり、対前年比ではそれぞれ32人、5人の減少であった。
血中鉛濃度が60μg/100ml以上で医療サーベイランスの対象となる男性労働者の比率は、過去3年間と同じ1.1%にとどまっている。
血中鉛濃度が60μg/100ml以上の男性の比率が最も多い職業は、精錬・精製業、鉛蓄電池製造業、塗装業(建物および車両)であった。
www.hse.gov.uk/statistics/causdis/lead.htmを参照のこと。 |
「職業性(occupational)」疾病または「作業関連(work-related)」疾病という用語は、業務と関連する可能性のある幅広い障害をカバーしている。一部のもの、たとえば鉛中毒や石綿肺などは、明らかに職業性のものである。なぜならこれらの疾病を引き起こすばく露は、業務外ではまず見い出すことができないからである。しかしながら、腰痛やストレスといった多くの症状は、業務上においても業務外においても、さまざまな要因によって生じうる。
職業性疾病のもうひとつの特徴は、職場での傷害と異なり、通常はハザードへのばく露の直後に起こるものではない点にある。ばく露から疾病の発症までには、数時間(一部の感染症の場合)から数十年(多くのがんの場合)までの時間の経過がある。
こうした事情が意味しているのは、疾病の個々の事例を一義的かつ単純な方法で作業関連と判断することができないということであり、事実、この判断は、医師や事業者、労働者個人など、人によってさまざまに異なる形で行われている。したがって、英国では作業関連疾病の種類と程度に関して利用可能な単一の統計ソースは存在せず、英国安全衛生庁(HSE)もさまざまなデータソースを最大限に活かし、必要な場合には新たにデータソースを作成するという立場をとっている。本文書で示した統計情報は5つの主なデータソースに基づいており、本文中ではそれぞれ以下に掲げるような頭字語を用いている。
血中鉛濃度:鉛作業管理規則(Control of Lead at Work Regulations)で義務付けられている医療サーベイランスの一環として労働者の血液サンプル中の鉛のレベルを測定したもの。毎年統計情報が作成されており、2002/03年度のデータが最新である。
一部のデータソースは標本調査であり、推定値は母集団全体ではなくサンプルに基づくものなので、サンプリング誤差を含んでいる可能性がある。SWI調査の推定では、こうした不確定要素によって生じる幅を示すために、「95%信頼区間(Confidence Intervals: CI)」と注記している。「95%信頼区間」とされている値は、それぞれ正確な値を含んでいるものと95%信じることができる幅を示している。信頼区間はTHORのデータでは利用できないが、サンプリングのばらつきを考慮するため、具体的な職業と産業の数字を掲げるのは、その数字が10以上の実際の事例に基づく場合のみに限っている。
上記のウェブサイトには英国安全衛生庁(HSE)が作成した統計情報もあり、職場における死亡と傷害、危険事態、ガスの安全、さらにHSEおよび地方当局による執行活動に関するものが掲載されている。