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健康が損なわれることによる労働損失日数、急増
Sharp rise in number of working days lost through ill health
資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2003年1月号 p.2
(仮訳 国際安全衛生センター)
英国政府は、労働組合から「安全衛生庁(Health and Safety Executive:HSE)にもっと財源を割り当てるべきだ」という要求を受けている。これは傷害や疾病により年間の労働損失日数が急増したという数字が公表されたことによるものである。
疾病による損失
英国安全衛生委員会(Health and Safety Commission:HSC)の新しい報告によれば、疾病や傷害の結果2001/02年度で4,020万日の損失が生じている。その報告書、「2001/02安全衛生統計要旨(Health and Safety Statistics Highlights 2001/02)」によれば、この損失日数のうち3,300万近くは、業務によって発症あるいは悪化した疾病によるものである。
これはHSCが行った以前の推定、すなわち業務上で健康を損なうことによる年間の労働損失日数1,800万日と比較されるべき数字である。これは1995年に行われた自己申告制の業務関連疾病調査SWI95からとったものである。しかし報告書によればこの1,500万日の損失日数増加のうちのある程度は、データを集める方法の技術的な違いによるものだということである。
HSCによれば、損失日数の増加は、健康を損なうことにより休業する期間が長くなったことも起因している。1995年には休業日数の平均が13.9日であったのに比べて、2001/02年度には22.9日となっている。2001/02年度の休業日数では、仕事からくるストレスに悩む労働者のものが29.2日と最大である。
仕事で悪化
さらに、2001/02年度には、英国の全労働者の5%が、その前の1年間で、仕事のために疾病が発症あるいは悪化したと考えている。これは1998/99年度には4.7%だった。
HSCは、2001/02年度には230万人もの人が業務に関連した(と患者は考えている)疾病で苦しんでおり、職業性疾病の問題の規模は以前の推定よりも大きいと認めている。例えばストレスおよびストレス関連の有病率は1990年の約2倍と推定される。
さらに報告書によれば、1995年には英国の全労働者で仕事に起因するストレス、不安、うつの有病率は1.1%であったのが、2001/02年度には1.7%に増加している。全体では2001/02年度に、業務に関連するストレスのため563,000人の従業員が苦しみ(うち推定265,000人が新規発症)、1,340万日の損失の原因となっている。
筋骨格系障害
一方、報告書によれば、2001/02年度に100万人以上が筋骨格系障害に苦しみ、損失日数は1,230万日となっている。全労働者のうち筋骨格系障害を訴える者は1995年の3.6%から2001/02年度には2.2%と低下したが、1998/99年度よりは0.2%増加している。
報告書には2001/02年度の職場における傷害のレベルについての情報もある。特に従業員の死亡については2000/01年度の292人から249人へと15%減少した。しかし重傷を負った労働者は2001/02年度に27,477人と、前年度の27,524人と比較してほぼ横這いであった。
重傷
実際、報告書によれば1996/97年度に新しい報告に関する規則が導入されて以来、重傷者の数はあまり変わっていない。HSCによれば、10万人あたりの死亡者プラス重傷者の比率は1999/00年度の263.2から、2001/02年度には268.9と約2%増加している。
さらにHSCは、政府の「安全衛生活性化運動(Revitalising Health and Safety initiative)」の目標を達成するためには大きな改善が必要であるとする、もう一つの報告書を出版した。その報告書「安全衛生目標−現時点での評価(Health and Safety Targets : How are we doing?)」でも、2001/02年度の傷害・疾病の数字を調べている。これは英国労働者の業務上の災害・疾病を大幅に減少させようとする、10年戦略の目標に向けてどのような進歩が今なされているかをチェックするためのものである。その10年戦略は以下のようなものである:
- 死亡者と重傷者の数を2010年までに10%減らす
- 業務上の疾病の割合を2010年までに20%減らす
- 業務上の傷害・疾病による損失日数を2010年までに30%減らす
- 2004年までにこれらの改善の半分を達成する
特に、この報告書は、業務上の疾病は以前に考えられていたより大きい問題で、2001/02年度には業務上の疾病のためほぼ3,300万日の損失があり、全労働者の2.2%が仕事に起因して新たに発症したか、あるいは仕事のため悪化した疾病に苦しんでいる。
一段あがる
このような統計についてBill Callaghanは次のように言っている。「安全衛生の改善で一段階段をあがるためには、まだまだやることがある。まだ10年計画の2年目に過ぎないが、今後数年ではずみがつくものと期待している。」
「業務に関連した健康問題は改善すべき重要な分野であり、おそらく我々にとってもっとも難しいものだろう。自己申告ストレスと筋骨格系障害は、自己申告の疾病による損失日数の3分の2を占めていて、これはすでにわれわれも優先課題としているものである。」
はるかに悪い状態
この数字へのコメントとしてTUC(労働組合会議)の書記長John Monksは次のように語っている。「仕事に起因するストレス、RSI(repetition
strain injury : 反復的負荷傷害)、腰痛、あるいは他の負傷・疾病で4,000万日の損失が生じていて、今や安全衛生は皆が考えるよりずっとはるかに悪い状態であるということが判明している。今はHSEの予算を削減するときではないのに、驚くべきことに大臣たちはそれをやろうとしているのだ。我々は安全衛生に投資しなければならない、なぜなら労働者も、事業主も、政府も報われるのだから。」
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