このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > イギリス 労働者が重量物の下敷きとなった死亡災害で、解体業者に4万ポンドの罰金

労働者が重量物の下敷きとなった死亡災害で、解体業者に4万ポンドの罰金
Demolition company fined £40,000 after worker crushed to death

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2003年3月号 p.12

(仮訳 国際安全衛生センター)



 労働者が不安全な解体作業で重量物の下敷きとなって死亡した災害について、裁判所は審理の後に、解体業者に対し総額4万ポンド(約730万円)の罰金を課した。

使用されていない発電所

 英国安全衛生庁(Health and Safety Executive:HSE)を代表して訴追を行っているDavid Rowlandsは、Newcastle刑事裁判所に対し次のような陳述を行った。

 2001年5月21日の事故発生当時、Brown and Mason社は、Northumberland州Blythにある、使われていない発電所の解体をInnogy社と契約していた。

 事故の当日、21歳の労働者James Hallは、現地のポンプ室で、同僚が頑丈なケーブルを鋸で切断するのを手伝っていた。このケーブルは、当初水ポンプに取り付けられていた配電盤に接続されていたが、この水ポンプは事故が発生する前に撤去されていた。

 この400kgの配電盤は、床から250cmの高さにある鋼製フレームの上に置かれていた。

 しかしHallも同僚も、このケーブルが実際は配電盤の平衡を支えていることに気がつかなかった。その結果、Hallと同僚がフレームに接続されていたケーブルを切断したとき、配電盤が平衡を失ってHallの頭上に落下した。Hallはその下敷きとなり、その後病院で死亡を宣告された。

 Rowlandsの主張によれば、事故が起こったのは、会社がポンプ室の頑丈なケーブルを撤去することに関し適切なリスクアセスメントを行わなかったためである。リスクアセスメントを行っていれば、配電盤が鋼製フレームで十分支えられていなかったこと、従ってこのようなやり方でケーブルを撤去するのは不安全であることが判明したはずだという主張である。

ポンプ室の解体

 会社は当初、ポンプ室を機械で解体し、その後例えば配電盤といった備品を回収しようと考えていた。しかし現場に入る人による備品の盗難が相次いだので、会社はポンプ室を解体する前にケーブルを撤去しようと決めた。しかし、この方法について新たにリスクアセスメントを行わなかった。

 さらに、この作業を監督していたマネジャーは、十分な訓練を受けておらず、配電盤が鋼製フレームで支えられていないということが分かるだけの十分な知識もなかった。また、会社は作業を始める前に、Innogy社が用意した専門のエンジニアに助言を求めるべきであった。

単発的な事故

 有罪を認めているBrown and Mason社に対する情状として、John Evansは「この事故は単発的なものであり、会社が利益追求のため手抜きをしたものではない。」と述べた。

 Brown and Mason社は、雇用している者の安全と健康を確保できなかったとして、1974年労働安全衛生法(Health and Safety at Work Act)第2条(1)に基づき、35,000ポンドの罰金に処せられた。また、適切なリスクアセスメントを行っていなかったとして、1999年労働安全衛生管理規則(Management of Health and Safety at Work Regulation)第3条(1)に基づき5,000ポンドの罰金を課せられ、訴訟費用の全額3,750ポンドを支払うよう命令された。

■ 裁判のあと、HSEの主席監督官Bill McKayは本誌(Safety Management)に対し次のように語った。「解体作業を計画、管理、指揮、監督、実行する者は、実施する作業について必要な知識と経験をすべて持っていなければならない。そして作業を始める前に設備や構造についてよく状況を確かめておかなければならない。この悲劇でもそうだったように、物事は一見して思ったとおりにはなっていないことがしばしばあり、リスクが適切に認識されていなければ、結果は深刻なものになるだろう。」