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HSC、災害調査に対する新しい法的義務の導入見送り
HSC rules out introduction of new legal duty to investigate accidents

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2003年3月号 p.2

(仮訳 国際安全衛生センター)



 HSC(Health and Safety Commission:英国安全衛生委員会)は、事業者に対して労働災害の原因調査を求める新しい法的義務の導入を見送ることを発表した。

 その代わりにHSCは、HSE(Health and Safety Executive:英国安全衛生庁)に対し、企業が労働災害の調査を効率的に行えるよう支援するガイダンス(指針)を制作するよう要請した。同庁によれば、ガイダンスは2003年後半に発行される予定で、小冊子、小企業向けのリーフレット、災害調査のホームページなどが作られることになっている。

教訓を学ぶ

 この決定についてHSCの委員長であるBill Callaghanは次のように語っている。「けがや病気につながる職場の事故から教訓を学んで、将来同じようなことが起こるのを予防して欲しい。なかには、この問題に取り組むために支援を必要としている事業者もいると認識しているので、各種のガイダンスを準備しているところだ。このガイダンスの効果をよくフォローして、もし災害調査に改善が認められなければ、新しい立法措置を勧告することを考えるかもしれない。」

 HSCは、2001年5月に発行した諮問文書(Consultative Document:CD)で、事業者に対して労働災害の調査を義務づける新しい法的義務を導入する計画をはじめて発表した。この案によれば、事業者は、すべての報告すべき労働災害、疾病、危険事象の原因を調査し、同様の現象が将来発生しないようにするためにはどうしたらよいかを決定するための合理的な手段を実施することが要求されることになっていた。

 しかし、HSCによれば、この文書への反応として、災害調査の原則的なことに対しては関係者から広い支持が得られたものの、どうしたらこれを最もよく達成出来るかについては様々な意見があった。その結果、HSCは、災害調査の新しい法的義務の導入を大臣に勧告するのではなく、HSEに新しいガイダンスを作るよう要請することに決定したということである。

 しかし、新しい法的義務の導入を見送るというHSCの決定は労働組合から批判を受けている。TUC(英国労働組合会議)の次期事務局長であるBrendan Barberは、次のように語っている。「事業者が労働災害の調査を義務づけられないというニュースには失望した。ベストの事業所ではすでにやっていることだし、なにが悪かったかを見出して、将来、間違いあるいは時には悲劇が繰り返されないようにするのがいいことであるのは明らかだ。」

最悪のケース

 「事業者が当然のこととして災害やニアミスを調査するようになるまでは、その仕事は安全代表者や、HSEの監督官や、最悪のケースでは公的調査に委ねられることになる。労働安全衛生の責任者である事業者が災害調査を行う方がずっといいのではないか?」

 しかしながら、英国産業連盟(CBI)のスポークスマンは本誌(Safety Management)に対し次のように語っている。「労働災害を調査するという義務が拡大されなくてよかった。単に労働者を保護しなければならないからというだけでなく、職場の安全を確保することは経営的にも重要であるから、重大な災害の調査は事業者・労働者双方にとって大事なことだ。しかし、すべての災害を調査するという案は、企業に対し過大な財政的、事務的な負担を強いることになっていただろう」。