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廃棄物処理業者、有毒ガスによる死亡事故で25万ポンドの罰金
Waste treatment company fined £250,000 after toxic gas death

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2003年3月号 p.5

(仮訳 国際安全衛生センター)



 有毒ガスで中毒した労働者がその後死亡したことで、裁判所は化学物質廃棄物処理業者に対し、総額25万ポンド(約4,500万円)の罰金を課した。

 Philip Marshall氏は英国安全衛生庁(Health and Safety Executive:HSE)を代表して、Cardiff刑事裁判所に対し28歳の化学者であるJohn Lane博士が、South Wales州NewportにあるPark Environmental Services社の有毒廃棄物処理工場で働いていて、2001年7月16日に事故に遭ったことを陳述した。

 Lane氏の業務は、化学物質の廃棄物処理を監督することであった。事故が発生した日には、大きなタンクで酸性物質とアルカリ性物質を混合して中和し、廃棄が可能となるようにする作業が行われていた。

 しかしながら、アルカリ廃棄物は多硫化物(ポリサルファイド)に汚染されており、これは廃棄物中の酸と反応して硫化水素ガスを発生させるものであった。事故当日の3時ごろタンクのそばに立っていた労働者のGavin Thomas氏がこのガスにおそわれ、階段を何段か転落した(Marshall氏の陳述)。

処理作業

 Thomas氏はこの事故をLane氏に報告し、Lane氏はこれを記録して処理作業を続けた。しかし硫化水素を吸入した結果、3時間後にLane氏は意識を失った。同僚がLane氏をその区域外に運んだが、病院到着時に死亡を宣告された。

 Marshall氏によれば、事故が起こったのは同社の安全管理システムが機能していなかったためである。保全のチェックで、タンクの蓋にガスを大気中に漏洩させるような腐食があることが発見されていた。

 またMarshall氏は、環境庁(この事業場を定期的に監督していた)も事故の2週間前に、損傷したタンクの蓋による危険を文書で指摘していたことも付け加えた。

安全委員会

 しかしながら、2000年に同社の安全委員会でこの件がとりあげられていたにも拘わらず、同社は、事故発生まで、タンクの使用を中止する、あるいは適切な蓋に取り替えるなどの措置をしなかった。

 また、タンクには用後処理装置が備わっていたが、ガスが腐食した蓋から漏洩するため、役にたたなかった。さらにこの用後処理装置の保守が悪く、能力どおり働いていなかった。

 一方、同社は、工場に送る有毒な廃棄物について十分なリスクアセスメントを実施していなかった。Marshall氏によれば、装入物が混合されたときに発生する可能性のあるガスの量や性質について何の試験もしていなかった。適切なリスクアセスメントを行っていれば、アルカリ廃棄物が多硫化物で汚染されているため酸性廃棄物と反応して硫化水素ガスが発生するので、開放されたタンクで混合してはならないということが分かっていただろう。

 すでに罪を認めているPark Environmental Services社への情状として、Jonathan Harvey氏は、同社がそれ以来、工場のマネジメントを変更し、また安全監査を行うために複数のコンサルタントと契約したことを述べた。

 また現在同社では、保全連絡書(maintenance reports)については直ちに措置を行い、有毒廃棄物の装入物について適切なリスクアセスメントを行うことが確実になされていると付け加えた。

適切に働く

 Park Environmental Services社は、タンクの蓋を修理すること及び用後処理装置を適切に運転することを怠ったとして、1974年労働安全衛生法(Health and Safety at Work Act)の第2条(1)に対する違反により15万ポンドの罰金を課せられた。
 
 同社は同じく廃棄物のサンプルによるリスクアセスメントを行わなかったとして1974年安全衛生法の第2条(1)に基づき10万ポンドの罰金を課せられ、また訴追費用2万ポンドを支払うよう命令された。