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5段階法によるリスクアセスメントの実施
資料出所:英国安全衛生庁(HSE)発行リーフレット
「Five steps to risk assessment」
HSEホームページhttp://www.hse.gov.uk/pubns/indg163.pdf
(仮訳 国際安全衛生センター)
この小冊子は、事業者及び自営業者が職場でリスクアセスメントを実施する際の手助けとする目的で作成されたもので、商業、サービス業及び軽工業の部門の事業場を対象としたものである。
リスクアセスメントとは
リスクアセスメントとは、要するに職場の中で災害の原因になりそうなものをチェックし、対策が十分であるか、或いは更に対策を実施しなければならないかどうかを判断できるようにすることで、その目的は、けがをしたり病気になったりする者が出ないようにすることである。災害や疾病は生活を破壊してしまうが、それと同時に生産量の低下、機械の損傷、保険コストの増加、裁判所への出頭などという形で経営に影響を与えることになる。事業者は、法により職場のリスクアセスメントを実施することが定められている。
重要なことは、あるハザードが重大なのかどうか、そのハザードに対して、リスクが小さくなるように十分な対策をとったかどうかを決定することである。リスクアセスメントを行う場合はこのことをチェックしなければならない。例えば、電気は簡単に人を死に到らしめるが、通電している部品が絶縁され、かつ金属箱が適切にアースされていれば、事務所の作業環境下では感電災害のリスクは小さいといえる。
職場のリスク評価を行う方法
この小冊子に紹介している次の5段階法に従って行うこと。。
第1段階:ハザードを探し出す。 |
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第2段階:だれがどのようにして危害を受けるおそれがあるかを決定する。 |
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第3段階:リスクを評価し、今ある防止対策が適切であるか、更に対策が必要かどうかを決定する。 |
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第4段階:調査結果を記録する。 |
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第5段階:アセスメントを見直し、必要に応じ、アセスメントを修正する。 |
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複雑にしないこと
商業、サービス業、及び軽工業の部門の事業場ではハザードは殆どないか、あっても単純なものである。これらをチェックすることは常識的ではあるが、やはり必要である。例えば危害の原因となるような機械が職場にあるかどうか、又、けがをする恐れがあるような具合の悪い出入口や階段があるかどうかはたぶんわかっているだろう。このような場合、災害防止のために合理的に可能な対策をとっていることを確認すること。
会社が小さくてどんなリスクがあるかについて十分理解しているような時は、事業者自身がリスクアセスメントを実施してもよい(例え事業者が安全衛生専門家でなくとも)。会社が大きい場合は、担当の労働者、安全代表、又は安全管理者に手伝ってもらうことができる。確信がなければ必要な能力をもつ外部者の協力を求めると良い(外部からの協力を得ることについては後述)。しかし、適切なリスクアセスメントの実施はあくまでも事業者の責任であるということを忘れてはならない。
ハザードとリスク - このガイドで使われているこの言葉を難しく考えないこと!
ハザードとは危害を引き起こす原因となる何らかのものを意味している(例えば化学物質、電気、はしご作業等)。
リスクとは誰かがハザードによって危害を受ける可能性(高いにせよ低いにせよ)である。
ハザードを探し出す
事業者自身がアセスメントを実施する場合、職場を巡回して、常識的に考えて危害の原因となりそうなものを改めてチェックする。この場合、些細な事は無視して、重大な危害を引き起こすおそれがあるか、又は複数の人に影響を与えるおそれがあるような重大なハザードに注意を注ぐようにする。
労働者又は労働者代表が感じていることを質問するようにする。直接目にふれない事についても、彼らが気付いている場合がある。メーカーの取扱説明書及びデータは、ハザードを見つけて正しく判断するのに役立つものである。また災害や疾病の記録も同様に役立つ。
だれがどのように危害を受けそうかを決定する。
次のような人たちのことも念頭に置くこと。
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若年労働者、訓練生、出産直後の者、妊婦等特別なリスクがあると思われる者 |
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清掃者、来訪者、外注業者、メンテナンス労働者等常時作業現場にいるとは限らない者 |
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一般公衆や同じ職場で作業している他の会社の者も、その事業者の活動によって危害を受ける可能性がある。 |
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リスクを評価し、今ある防止対策が適切であるか、更に対策が必要かどうかを決定する。
個々のハザードがどれぐらい危害を起こしそうかよく検討する。これによって、リスク低減のために更に行わなければならないことがあるかどうかが決まる。すべての防止対策が実施された後でもいくつかのリスクは通常残っている。個々の重大なハザードについて決定しなければならないことは、この残留リスクが高いものか中程度のものか低いものかということである。
最初は、法律が定めている全ての事項を実施したかどうかを確認する。例えば、機械の危険部分への接近防止に関しては法的要件が定められている。引き続いて、広く受け入れられている業界規格が適用されているかどうかを確認する。しかし、ここで終えるのではなく、再度自分で考えてみなければならない。なぜならば、法律では、職場を安全に保つために合理的に実施可能な範囲で対策を実施しなければならないと定められているからである。真の目的は、必要に応じ、防止対策を追加することによって全てのリスクを小さくすることにある。
なにか実施しなければならないことが見つかったときは、アクションリストを作成し、残留リスクが高い、多くの人に影響を与えるおそれのあるリスクに重点を置くことである。アクションを起こす時には次の点を自問する:
a) |
ハザードを完全に除去できないか |
b) |
できない場合、危害が生じないようにリスク対策をどうするか
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リスクの対策に当たっては、以下の原則を、可能であればその順番で当てはめてみる。
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リスクがより少ない方法を選ぶ |
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ハザードへの接近を防止する(ガード使用等) |
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ハザードへのばく露を少なくするように作業を計画する |
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個人用保護具を支給する |
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福利厚生設備の設置(汚染物質を洗い流すための洗浄設備、救急設備等) |
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安全衛生の改善にはそんなに多くの費用がかかるわけではない。例えば、車輌災害を防止するために見通しの悪い危険なコーナーに鏡を設置したり、滑り易い階段に滑り止め材を使用したりといったことは、リスクを考えれば安いものである。簡単な防止対策をしないで災害が発生したとしたら、高くつくことになる。
作業内容がよく変わる場合とか、作業現場が次から次へと移動するような場合はどうするか? 常識的に予測されるハザードを洗い出し、それによるリスクを評価する。その後、現場で更なるハザードを見つけたときは作業現場の者から情報を集めて、必要と思われるアクションをとる。
共同の現場で働いている場合はどうするか? 他の事業者、自営業者にあなたの業務が及ぼすリスク及びその防止対策について伝えること。共同で作業している者から自社の労働者が受けるリスクについても検討すること。
いくつかのリスクについて既に評価している場合はどうするか? 例えば、危険な化学物質を使用する時に、健康へのリスク評価を実施し、COSHH(有害物質管理)規則で定められている防止対策の検討が済んでいる場合、「検討済み」として、先へ進むことができる。
法的要件及び基準に関する情報は、次のようなHSEの出版物から得ることができる。「安全衛生への手引き(An
Introduction to Health and Safety)」、「労働安全衛生の要点(Essentials of
Health and Safety)」、及び「公認実施基準:労働安全衛生マネジメント(Management
of Health and Safety: Approved Code of Practice)」など。詳細は後述する。
調査結果を記録する。
労働者の数が5人未満の場合は、実施事項を記録しておくことは有益だが、義務ではない。しかし、5人以上の労働者がいる場合は、リスクアセスメントで得られた重要な結果を記録しておかなければならない。つまり、重大なハザード及びそれについての結論を記録することである。例としては、「電気設備:絶縁及びアースを点検、異常なし」、「溶接ヒューム:局所排気装置が設置され定期的に点検されている」等である。
この調査結果は、労働者にも知らせなければならない。
適切かつ十分ということであって完全を求めているわけではない。
リスクアセスメントは、適切かつ十分なものでなければならない。次の事を示さなければならない。
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正しいチェックが実施された。 |
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影響を受けそうな者に質問した。 |
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明白な重要ハザードについては、関係しそうな人数も念頭において、すべてについて対象とした。 |
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防止対策は合理的でかつ残留リスクは低い。 |
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将来の参考とするため、あるいは使用するためにこの記録を保存しておく。このことは、実施した防止対策について監督官から質問を受けた時に、あるいは何らかの民事訴訟に巻き込まれた場合に、役立つことになる。また、これによって特別なハザードや防止対策に注意深くなるようになる。法が定めていることを実施したということを示すことにも役にたつ。このガイドの終わりに、参考となるような例を挙げておくが、自分で好きなように様式を作成することもできる。
簡単にするため「次の文書を参照」とすることもできる。マニュアル、安全衛生方針文書に記載されている仕組み、社内規則、メーカーの取扱説明書、安全衛生手順、一般的な防火体制などである。これらの文書には、既にハザード、防止対策等が記載されているだろう。従って、それらを全て繰り返す必要はなく、これらの文書を統合してもよいし、別々にしておいてもよい。
アセスメントを見直し、必要に応じて修正すること
遅かれ早かれ、新たなハザードにつながる新しい機械、新しい化学物質、新しい作業方法を導入することがあるだろう。重要な変化がある場合は、新たなハザードを考慮に入れたアセスメントを追加実施する。些細な変更や、更には新しい仕事が出るたびにアセスメントを修正する必要はないが、新しい仕事が重要な新たなハザードをもたらす場合、適切な検討を加えてリスクが低い状態をキープしなければならない。いずれにせよ、防止対策が、依然として効果的に機能しているということを確認するためには、時にアセスメントを見直すというのは良いことである。
参考
参考になる実用的なガイダンスをつぎに挙げる。アセスメントで困っているならば、現地の安全衛生監督官が必要事項をアドバイスすることもできる。
必要な基準や法的要件は大部分、以下のものから見つけることができるだろう。
- 安全衛生への手引き(An introduction to health and safety, INDG259 1997)
- 労働安全衛生の要点(Essentials of health and safety at work, ISBN 0 7176
0716 X 1995)
しかし次のものも役に立つだろう。
- 公認実施基準及び指針:安全衛生マネジメント(Management of health and safety
at work: Approved code of practice and guidance, ISBN 0 7176 2488 9 2000)
- 成功する安全衛生マネジメントHSG 65 (Successful health and safety management
HSG65, ISBN 0 7176 1276 7 1997
- 小企業向のための安全衛生方針文書作成ガイド (Guide to preparing a health
and safety policy statement for a small business, ISBN 0 7176 0424 1 1989)
- よくある安全衛生相談(Selecting a health and safety consultancy, INDG 133
1992)
- 事業者のためのCOSHH簡単ガイド (COSHH: the new brief guide for employers,
INDG 136 1996)
- 職場での個人用保護具に関する規則のガイダンス (Personal Protective Equipment
at Work: Guidance on Regulations L25, ISBN 0 7176 0415 2 1992)
- マニュアルハンドリングを理解する (Getting to grips with manual handling,
INDG143 2000)
- 電気安全 (Electrical safety and you, INDG 231 1996)
- 作業現場での車輌安全管理 (Managing vehicle safety at the workplace, INDG
199 1995)
- 作業現場での輸送の安全 (Workplace transport safety, HSG 136 ISBN 0 7176
0935 9 1995)
- VDU作業 (Working with VDUs, INDG 36 1998)
- VDT作業に関する規則のガイド (Display screen equipment work: guidance on
regulations, L26 ISBN 0 7176 0410 1 1992)
- だれのリスクですか (Whose risk is it anyway)ビデオ
HSE出版物は、有料と無料のものがあり、HSE Booksから入手できる。
HSE Books:
PO Box 1999, Sudbury, Suffolk CO10 2WA Tel: 01787 881165 Fax: 01787 313995
Website: www.hsebooks.co.uk
(有料のものは書店でも入手可能)
HESのオフィス
(省略)
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ハザード
その職場の条件も考えて、合理的に考えて重大な危害をもたらすと判断されるハザードだけを探し出す。
次に挙げる例を参考にする。
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滑ったり躓いたりする(メンテナンスの悪い床や階段等) |
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火災(可燃物による等) |
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化学物質(バッテリー液等) |
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機械の可動部分(刃等) |
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高所作業(中二階の床等) |
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物質の噴出(プラスチックの射出成形等) |
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圧力システム(ボイラ等) |
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車輌(フォークリフト等) |
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電気(配線に問題がある等)
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ダスト(グラインダー作業等) |
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ヒューム(溶接作業等) |
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マニュアルハンドリング |
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騒音 |
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照明不良 |
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低温 |
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だれが危害を受けそうか?
個々人の名前を挙げる必要はないが、同様の作業をしている者の集団あるいは影響を受けそうな者について考える。
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事務所スタッフ
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メンテナンス要員 |
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外注業者 |
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同じ場所で作業している者 |
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オペレーター |
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清掃者 |
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一般公衆 |
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特別な注意が必要な者
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障害者
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来訪者 |
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経験の浅いスタッフ |
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単独作業者 |
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これらの者は危害を受けやすい場合がある
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リスクの対策のためにもっとやるべきことがあるか?
記載された危険に対して、とられた防止対策は:
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法律要求事項として設定されている基準に達しているか |
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一般に受け入れられている業界基準に適合しているか |
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グッドプラクティスといえるか |
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合理的に実施可能な範囲でリスクを低減しているか |
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次のものを与えているか
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適切な情報、指示、訓練
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適切なシステムあるいは作業方法 |
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もしそうであればリスクは適切に対策されている。しかし、とられている防止対策を示す必要はある(手順書、社内規則参照としてもよい)。
リスクが適切に対策されていない場合は、さらに行うべき事を示さなければならない(「アクションリスト」)。
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見直しと修正
アセスメントの見直し日を設定する。
見直しにあたっては、個々のハザードに対する防止対策が、依然としてリスク対策となっているかどうかをチェックする。そうなっていない場合は必要なアクションを示す。必要に応じ、新しいページを使ってリスクアセスメントを完全なものにする。
職場に変更があった場合、たとえば次のものを新規導入した場合は重大な新しいハザードを伴うかもしれない。
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滑ったり躓いたりする(メンテナンスの悪い床や階段等) |
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火災(可燃物による等) |
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化学物質(バッテリー液等) |
新しいハザードを探し、5段階法に従って処理する。
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洗い出した重大なハザードによってリスクを受けるグループのリストアップ
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既存の対策のリストアップ、あるいは情報が入手できそうな場所を記す。適切に対策されていないリスク及び必要な措置を記す。 |
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この記事の出典(英語)は国際安全衛生センターの図書室でご覧いただけます
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