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エルゴノミクスにおける企業のイニシアチブ
Corporate initiatives in ergonomics - an introduction

Göran M. Hägg

資料出所:Elsevier Science発行「APPLIED ERGONOMICS」 Vol 34, No 1, 2003, p.3-15
(抄訳  国際安全衛生センター)


要約

  エルゴノミクスにおける企業のイニシアチブを文献から調査した。時限的な「介入」から継続的なプロセスまでの幅広い目的をもった種々のタイプのプログラムを探し出し調査した。共通の要素は、健康調査、作業場のデザイン、ツールの選択、製品デザイン、品質面、参加型アプローチ、教育、訓練及び情報である。エルゴノミクス・プログラムの実施は、業種、会社の方針、組織によって大幅に異なっている。

  最も進んだエルゴノミクス・プログラムのうちのいくつかは、自動車産業から出たものである。その他の業種で、確立されたプログラムを多く持つのは、エレクトロニクス産業、食品産業、及びオフィス環境関連産業である。参加型アプローチはエルゴノミクス専門知識同様、プログラムが成功するための必須の要素である。特に経済的な面でのエルゴノミクス・プログラムの科学的評価が不十分であるか欠落しているケースがあまりにも多い。さらに、品質改善などの会社の中心的価値への関係付けが欠けているのがしばしばである。エルゴノミクスのプログラムは依然として単に安全衛生問題と見られていることが多い。エルゴノミクスが企業全体の戦略の重要部分を構成する域に到達している企業はごく少数である。

キーワード
  Intervention(介入):Participation(参加): Education(教育): Training(訓練): Process(プロセス)



1. 序論 *)

  エルゴノミクスは、1940年代後半に始まったかなり新しい科学である。時間の経過とともに、エルゴノミクスの定義は徐々に広がってきた。多くの研究が行われた結果、道具や作業場のデザイン、労働者の不快感、疾病、欠勤を防止し、さらには生産性や製品品質を改善するための管理的な仕組みなど多くの知識が得られた。この知識は職場に早期に広まったが、長い間、これらの問題は主に人事部門により処理される倫理的問題と考えられていた。産業におけるエルゴノミクスの主な推進者は、米国OSHAのような国内当局とこの分野の研究者であるのが通例であった。1990年代になると、企業内でこの問題が生産性、品質、必然的な変化プロセスなどと同様に企業の中心的価値として重要であるという意識が高まり、広い意味でのエルゴノミクス問題に対する関心が高まった(Wilson、1999)。

  この結果の一つが、会社全体あるいは事務職、現場職員、製品設計者といった会社内のグループのための、自前のエルゴノミクス・プログラムが策定されるようになったことである。それらのプログラムは、例えば作業姿勢や動作、持ち上げといった作業負荷の観点からのガイドライン、また設備、製品デザイン、騒音レベル、振動、照明、温度、プロセス情報、安全、業務組織についてのガイドラインといったもので構成されている場合もある。従業員は、健康、幸福、生産性及び製品品質の向上を促進するために、優れたエルゴノミクスを適用するように訓練される。プログラムは独立したエルゴノミクス・プログラムである場合もあるし、会社の他の方針と統合されたものである場合もある。

  多くの科学的論文が、大なり小なりそのようなプログラムを紹介している。これらの報告は、ある特定の仮説に取り組んでいる研究者による「介入」に関するものであることが多い。しかしながら、これらプログラム文書は往々にして断片的であり、例えば会社の関与の程度、組織における長期的な影響、訓練の努力といった情報が欠落している。

  この論文は、このApplied Ergonomics誌の「エルゴノミクスにおける企業のイニシアチブ」特集号に掲載される技術文書の序論として、そのような企業プログラムの批判的調査を目的としたものである。主として最近10年間の主要な国際的エルゴノミクス誌、会議議事録、及び書籍に発表された産業界のプログラムを調べた。調査したプログラムの選択基準は、それらが主として職場での身体的ファクターに取り組んでいるものであること、会社の真剣な関与が文書から読み取れることである。


*) 何故このような検討を行ったか、ということを理解するためと、エルゴノミクスの企業における現状理解の参考のために序論を追記します。

この記事は論文のabstractとintroductionの一部のみを紹介していますが、出典(英語:全文)は国際安全衛生センターの図書館が閉鎖となりましたのでご覧いただけません。