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最後の手段
A LAST RESORT

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2003年6月号 p.42-43

(仮訳 国際安全衛生センター)


 英国安全衛生庁(Health and Safety Executive: HSE)は最近、1992年職場における個人用保護具規則(Personal Protective Equipment at Work Regulations 1992)が産業界のニーズに合ったものかどうかを調べるため、その評価に着手したが、見直しにより、事業者に課される法的責務に関する財政負担は減少するということにはならないようである。(弁護士アンドリュー・キニール(Andrew Kinnier))。

 過去10年にわたり、欧州地域は英国の安全衛生体制の根本的変更に影響を与えてきた。1961年工場法(Factories Act 1961)のようなよく知られた法などは、リスクアセスメントの概念に基づいた広範囲に渡る欧州指令の採用の結果として、廃止されたり、あるいは大幅に修正されている。職場における個人用保護具(PPE)の支給及び使用に関するEU準拠の法令は、労働者の安全衛生にとって基本的に重要なことであるので、根本的な見直しを必要としている。

見直された英国法令

 1992年職場における個人用保護具規則(以下1992規則)及び2002年個人用保護具規則(Personal Protective Equipment Regulations 2002)(以下2002規則)はいずれも、個人用保護具指令89/656/EEC(Personal Protective Equpment Directive 89/656/EEC)(以下指令)の規定に従うため、作業場におけるPPEの供給及び使用に関する英国法を大幅に改正した。
 1992規則は、事業者にリスクに暴露されるおそれのある労働者に適切なPPEを提供する責務を課している。但し、リスクがその他の効果的な手段(規則4(1))によってコントロールされている場合は除かれる。
 実際には多くの問題が発生している。遭遇した最も重大な問題は、厳格な法に関する問題ではなく、1992規則の下で要求されたリスクアセスメントを実施する費用に関する問題である。信頼できる数字がなく不確かであるが、リスクアセスメントの実施が、業界及び企業、特に中小企業において、かなりの財政負担を強いているとのことである。1つは、このような関心に応えるため、そしてEU法の下での責務を果たすため、HSEは2003年3月19日、1992規則の見直しを次のように行っていることを発表した。それは、費用効果が大いにあり、企業のニーズと労働者の保護とのバランスがとれるようにするための見直しである。
 見直しにより事業者のコスト面で大きな削減になることはないようである。HSEは全ての関係者の意見を聞くことに関心があり、1992規則に関するコメント提供を求められることは、法的要件を遵守しようとする事業者の経験をHSEに知らせるため、全ての関係団体にとって有益な機会となる。
 見直し内容の詳細はHSEのウェブサイトで見ることができる。

オリジナル・バージョンの法令

 第2番目の問題は、指令は、1人あるいは多くの労働者によって使用されたPPEが健康あるいは衛生問題を発生させないようにすることを事業者に求めているが、この要件は オリジナル・バージョンである1992規則には反映されなかった点である。
 このことは職場での安全衛生の責任者ではなく、弁護士の間で興味を持たれていたが、2002年安全衛生(雑則修正)規則(Health and Safety (Miscellaneous Amendments) Regulations 2002)(2002年9月17日に施行されたもの)の導入によって現在は修正されている。
 第3番目の問題は、1992規則は、現在、事業者及び労働者に対してだけ適用される点である。臨時労働者については、派遣元事業者は、支給されたPPEの法遵守状況を確認する責任がある。
 英国の労働力のかなりの割合を臨時労働者が占めている現在、法遵守状況に気付かず、そして事実その職務を履行することが不適当であると思われる派遣元事業者にとって、これはかなりの重荷となっている。派遣元事業者は、例えば化学工場での臨時労働者に対するリスク及び必要なPPEの評価を実施するスタッフ、資源あるいは知識を持っていないと思われる。更にこの状況は派遣元事業者ではなく、最終的な事業者に明白にPPEに対する責任を課している臨時労働者指令(Temporary Workers Directive)の2条(1)及び2条(2)と矛盾する。この不調和は、HSEによって1992規則の見直しの一部として改善されることになりそうである。
 一方2002年個人用保護具規則は、個人用保護具関連法の統一化に関する指令89/686/EEC (Approximation of Personal Protective Equipment Laws Directive 89/686/EEC)の要件を満たしている。この規則の下でPPEは、1つあるいはそれ以上の危害に対する保護のため、個人によって装着あるいは保持されるためにデザインされた装置あるいは器具として定義づけられている。つまり、台所や庭仕事で使う手袋のような極めて限定されたものだけが、2002規則のPPE領域から除外されている。

一般的な責務

 1992年7月1日以降市場に出されたPPEの場合、2002規則は、それぞれのPPEに適用される基本的安全衛生要件及び適切な適合性手順を満足しなければならないということを製造業者の一般的な責務としている。
 2002規則の全体的な目的は、欧州地域で製造されたPPEの全ての品目において安全保護の共通水準を達成することにあり、それ故、各品目がとくに基本的安全衛生要件に適合していることを確認する統一手順がある。

HSEの見直し領域

 2002規則は2002年5月に施行されたばかりということで、HSEの見直し領域の中には含まれていない。しかしながら、今のところ、この規則が過去12ヶ月に渡って職場にどのような影響を与えたかについて評価することは困難である。
 適合性手順という行政要件は、時間がかかることであるが、市場への不安全な商品の出荷、適合性手順を厳守しなかったといった点で、2002規則違反で送検されたという報告は今のところない。
 この平穏がどの位続くのかは別問題である。製品の安全性に対する消費者の期待が高まり、地方監督事務所が債務不履行者を送検しようという意欲が高まるにしたがって、PPE製造業者に課せられた要求が高まるように思われる。地方監督事務所が市場に不安全なPPEを出荷するPPE製造者の送検にのりだすのも、時間の問題である。