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アスベスト法とCOSHHが変わる

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2002年12月号 p.6

(仮訳 国際安全衛生センター)



職場の建物に含まれるアスベストから生じるリスクを管理し、また職場の有害物質と鉛への暴露から従業員を保護するために、事業主に、より厳しい法的義務を課す法改正が長く待たれていたが、2002年11月21日に発効した。David Axbeyが報告する。

 アスベスト、有害化学物質及び鉛を対象としている安全衛生関係法令の大幅な改正が英国安全衛生委員会(HSC)により行われた。

 特に、「2002年 職場のアスベスト管理規則(CAW:Control of Asbestos at Work Regulations)」は、職場の建物のアスベストを安全に管理するために事業主がとるべき手段を詳細に定めたものであるが、これが2002年11月21日に法律となった。

 一方、「2002年 有害物質管理規則(COSHH:Control of Substances Hazardous to Health Regulations)」と「2002年 鉛作業管理規則(CLAW:Control of Lead at Work Regulations)」も11月21日に発効し、労働者を職場の有害物質や鉛に対する暴露から保護するための、より厳しい法的義務が事業主に課せられることになった。さらに、2002年12月に、HSCは新しい公認実施準則(ACoP:Approved Code of Practice)を発行することになっている。これは業務関連喘息の原因となる物質の暴露防止に関するもので、新しい2002年COSHH規則の附属書となる。

アスベスト繊維への暴露

 HSCによれば、CAW規則は建設・保全労働者がアスベスト繊維に暴露されるリスクを低減するために総点検されたものである。アスベスト繊維は英国安全衛生庁(HSE)の推定によると英国で毎年3000人にものぼる死亡の原因となっている。HSCの警告によれば、アスベストは良好な状態で正しく管理されていれば人間の健康に対するリスクとはならないはずであるが、配管工、大工、電気作業者といった人たちは、アスベストを含んだ材料を扱う作業中に、死につながる繊維を吸い込む可能性がある。

 しかし、改正後の規則では事業主及び職場の建物について責任をもつ者(例えば建物の所有者や管理会社)は、将来、職場でアスベストのある場所を特定するための合理的な手段(例えば、構内にアスベストが存在するか、存在しそうかを知るために適切なアセスメントを行う等)をとるという具体的な法的義務を負うことになる。アスベストの所在を特定する義務は、家庭以外のすべての職場と住居(例えばマンション等)の共通部分に適用される。
 
 しかしながらHSEはアスベストのアセスメントを行う義務は必ずしもすべての職場のアスベスト調査が行われなければならないということではないと明確に述べている。

最新の記録

 HSEによれば、その代わりにアスベストが建物内にあるかどうかを調べるために建物の図面をみることもリスクアセスメントに含まれるということである。また、事業主は、その建物に詳しく、アスベストを含有している材料の所在について情報を提供してくれそうな建築設計者、安全担当者、又は従業員に相談することもできる。
 
 この規則は事業主に対して次のことも要求している:
アスベスト材料の所在に関する最新の記録を保管し、建物に相当の変更があった場合これを必ず見直す
そうでないという証拠がある場合以外はすべての材料がアスベストを含んでいることを前提とする
アスベスト材料の状態を監視し、それが劣化していないことを確認する
これらのリスクへの対策に関するマネジメント計画を策定し、実施する。そしてアスベストの所在と状態に関する情報が、アスベストに接触しそうなすべての人間に確実に伝わるよう措置する。

 改正された2002年CAW規則は2002年11月21日に可決された、18ヶ月間の導入期間を置くため、アスベスト管理についての新しい義務は、2004年5月21日まで発生しない。

新しい管理用ガイダンス

 事業主が新しい規則を遵守しやすくするため、HSEは建物内のアスベストを管理する義務に関する新しい公認実施準則(ACoP)と新しい管理用ガイダンスの冊子「建物内のアスベストを管理するための包括的ガイダンス」を発行した。

 これに加えてHSEは無料のリーフレット「建物内のアスベストを管理するための簡易ガイド」の改訂版と、二つの公認実施準則「通常は免許不要であるアスベスト作業」と「アスベスト断熱材、アスベストコーティング及びアスベスト断熱板を使う作業」を発行した。
 
 CAW規則の変更についてのコメントとしてHSEのトップであるTimothy Walkerは次のように語っている:「もし、商業用の建物に存在するアスベストに対する暴露が正しく対策されなければ、約4、700人の人がアスベストに起因する疾病で亡くなるだろう。」

不必要な被害を予防する

 (訳注:Walker氏の話の続き)「我々は次のメッセージを至るところに行き渡らせるつもりだ。ここ数年でアスベストに起因する疾病からの無用の被害を予防しようとするなら、建物内のアスベストを管理しなければならない。」

 一方HSCは2002年11月に、2002年COSHH規則と2002年CLAW規則における事業主の義務をより明確にするために、これらの改正を行った。特に、新しい規則では、事業主に対し有害物質や鉛に対してリスクアセスメントを行うという具体的な義務を課している。以前は、事業主は有害物質や鉛に暴露されている労働者に関してリスクアセスメントを行い、例えば換気装置の使用といった予防手段をとることが要求されていた。
 
 しかし新しい規則のもとでは、事業主はCOSHHやCLAWに関してリスクアセスメントを行う場合、詳細な要因のリストを考慮しなければならないし、また、従業員5人以上の事業所では、リスクアセスメントの重要所見を、リスクアセスメント終了後合理的な範囲で出来るだけ早く記録することが要求される。

対策の新しい階層

 改正されたCOSHH規則とCLAW規則は、なにかの代替だけでは従業員が有害物質又は鉛に暴露するのを防止することが出来ない場合のために、事業主が行うべき新しい対策の階層を定めている。これは事業主が暴露に対し次の対策を行うことを要求している:
適切な作業工程、作業システム、工学的対策を使用し、適切な作業用機器、材料を提供する。
有害物質への暴露管理対策を発生源で行う。例えば職場の十分な換気システムと適切な管理的手段。
他の方法で十分な暴露管理対策ができない場合には、適切な個人保護具を提供する。

 これらの規則はこの他にも事業主の義務を定めている。例えば職場の有害物質が関係した災害・事故・緊急事態への詳細対応方法を定めておくこと(これには定期的な安全訓練を実施することや緊急事態の場合は認められた者だけが危険地域に立ち入ることができることなども含まれる)である。
 
 さらに、改正されたCOSHH規則とCLAW規則は、この規則に従って健康調査を受ける個々の労働者の最新記録を事業主が保管しておくことを要求している。

 しかしながらHSCによると、改正されたCOSHH規則とCLAW規則で新しく課される義務は、既に広い範囲の事業主が実際上実施しているものである。

 2002年12月にHSCは、改正されたCOSHHとCLAWをどのようにして遵守するかのガイダンスを事業所に提供するため、両者についての改正公認実施準則(ACoPs)を発行することになっている。発がん性物質、塩化ビニル、生物因子に対する以前の3つの公認実施準則もCOSHH ACopに統合される。

 さらにCOSHH規則は、すべての生物因子への暴露(例えば実験室の作業者のように計画的なものであろうが、下水作業者のように偶然のものであろうが)に適用されることを強調するための改正もなされている。

新しい喘息公認実施準則

 一方、HSCは、業務上で喘息を起こす物質に暴露されることがないように、事業主が従業員を保護することを助けるための公認実施準則を、2002年COSHH規則公認実施準則の付属書の形で出版しようとしている。

 新しい公認実施準則はなんら新しい義務を事業主に課すものではなく、喘息を起こす物質への暴露対策に関する権威のある実用的なガイダンスを提供するものである。この中で、事業主は従業員の幸福を守るため十分なリスクアセスメントと定期的な健康調査を行うべきであることを強調している。

アセスメントの実施

 特にこの公認実施準則は、COSHHに基づいてリスクアセスメントを行うときに事業主が考慮すべき広範囲の要素を規定している。それらは次のようなものである:
喘息の原因となる物質に暴露される可能性のある全従業員、例えば短時間ではあるが高レベルのものに暴露される可能性のある保全作業者などを含む
既に職業性の喘息を発症しているものでも、症状は非常に軽いかもしれないし、発見も難しいかもしれない
もし1人でも業務上の暴露が原因で喘息が発症した従業員がいたらそのリスクアセスメントは見直しが必要となるだろう。

 さらにこの公認実施準則は、従業員に対して喘息の症状と健康影響に関する適切な教育と情報を提供しなければならないとしている。最後にこの公認実施準則は、もしリスクアセスメントの結果、労働者が喘息を起こす物質に暴露されることが明らかになったら、事業主は適切な健康調査を実施しなければならないということを明確にしている。


次のものはHSE Books (電話) 01787 881165で入手可能。

『The management of asbestos in non-domestic premises. Regulation 4 of the Control of Asbestos at Work Regulations 2002. Approved Code of Practice.(非住居建築物におけるアスベスト管理。2002年職場のアスベスト管理規則の4。公認実施準則。)』(L127、ISBN 07176-2382-3、価格 £9.50)

『A comprehensive guide to managing asbestos in premises(建物内のアスベストを管理するための包括的ガイド)』(HSG227、ISBN 0-7 1762381-5、価格£9.50)

『A short guide to managing asbestos in premises.(建物内のアスベストを管理するための簡易ガイド)』(INDG223、ISBN 0-7176-2092-1 一部であれば無料)

『Work with asbestos which does not normally require a licence. Control of Asbestos at Work Regulations 2002. Approved Code of Practice.(通常は免許不要であるアスベスト作業。2002年職場のアスベスト管理規則。公認実施準則。)』(L27、ISBN 0-7176-25621、価格 £9.50)

『Work with asbestos insulation, asbestos coating and asbestos insulating board. Control of Asbestos at Work Regulations 2002. Approved Code of Practice.(アスベスト断熱材、アスベストコーティング及びアスベスト断熱板を使う作業。2002年職場のアスベスト管理規則。 公認実施準則。)』(L28、ISBN 0-7176-2563-X、価格 £9.50)


次のものは2002年12月中旬からHSE Booksで入手可能。

『The Control of Substances Hazardous to Health Regulations 2002. Approved Code of Practice (2002年有害物質管理規則。公認実施準則。)』(L5、ISBN 0-7176-2534-6、価格 £10.50)、

『Control of lead at work. Approved Code of Practice.(鉛作業管理規則。公認実施準則。)』(L132、07 176-2565-6、価格 £10.50)