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アスベストばく露で会社と役員に罰金32万ポンド
Firm and directors ordered to pay out £320,000 after asbestos scare

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2004年9月号 p.4

(仮訳 国際安全衛生センター)



 労働者が建物の解体作業中にアスベスト繊維の吸入リスクにどのようにばく露されたかについての裁判が開かれ、建設会社と2人の役員は、32万ポンドを超える罰金と費用の支払いを命じられた。
 英国安全衛生庁(HSE)に代わって、マーク・ハリス検事はバーミンガム刑事裁判所で次のように述べた。当事件は、バーミンガムで、使用されていない工場を住宅に転換するため、2001年8月から9月にかけて実施された作業の際に発生したものである。建設会社デールブリック社(Dalebrick Limited)は、建物から断熱ボード等の設備付属品を除去する作業を請け負った。

健康リスク

 作業実施に当たって、デールブリック社は、10人の現場労働者を地元の職業紹介所から採用し、2001年8月22日に作業を開始した。しかしハリス検事によると、労働者が建物から設備付属品を取り外し始めた時、彼らはアスベスト含有物と疑われる物質を見つけた。労働者がその旨をデールブリック社の現場監督者に申し立てたところ、当監督者は、白色アスベストしか含有されておらず、何ら健康リスクを引き起こすことはないと説明した。
 労働者は、アスベスト繊維を吸入するリスクがあると知り、実施している作業に適切な呼吸用保護具を調べた。しかし、デールブリック社の役員であるモリス・ウィリアムズとジョアン・キャロルに対し、労働者が呼吸用保護具を購入してほしいと求めたところ、その保護具は高価すぎると言われ、代わりに不適切な防じんマスクが与えられた。
 改装作業開始後5週間が経ってから、契約労働者のひとりが、アスベスト含有物質のばく露の恐れがある旨、職業紹介所に申し立てた。その結果、紹介所側は直ちに現場から労働者を引き揚げた。しかし、デールブリック社は、別の職業紹介所から4人の労働者を採用し、除去作業を続行した。
 裁判でのハリス検事によると、2日後の2001年9月24日、最初に採用された労働者のひとりからのHSEへの申し立てにより、HSEの監督官による現場監督が実施された。これに続く調査により、茶色アスベスト及び白色アスベストが含まれた断熱材が見つかり、除去作業の結果、建物の外部にアスベスト繊維を含有する大量の材料が山積みにされるなど、現場全体にアスベスト汚染が拡散していたことが明らかになった。

無資格作業

 HSEの調査によって、デールブリック社とウィリアムズは、HSEのアスベスト除去ライセンスを修得していなかったことが露見した。つまり、彼らはアスベスト含有材の除去が含まれる作業を実施してはならなかったのだ。
 ハリス検事によると、監督官はさらに、会社とウィリアムズが、労働者の衣服がアスベストに汚染されないようにするための適切な洗浄設備あるいは独立した衣服着替え場所を現場に確保していなかったことも発見した。罪状を認めたモリス・ウィリアムズの刑の軽減事由として、ブライアン・ディーン弁護士は、ウィリアムズは当事件を深く反省していると述べた。

情状酌量の余地はなし

 同じく罪状を認めたジョアン・キャロルの減刑事由として、アラステア・ヤング弁護士は、彼女は当事件について深く後悔していると述べた。裁判では、デールブリック社に弁護士はつかなかった。
 モリス・ウィリアムズに判決を言い渡しながら、ジョン・ロス判事は次のように述べた。「彼(ウィリアムズ)は、明白な法令違反により、刑務所へ送られる寸前まできており、もし彼が労働者の生命を危険に陥れるようなことに関係して再び法廷に現れたとしたら、もはや情状酌量の余地はないだろう」
 デールブリック社は、労働安全衛生法(Health and Safety at Work Act: HSWA)第2条(1)および3条(1)、1983年アスベスト(ライセンス)規則(Asbestos (Licensing) Regulations 1983: ALR)第3条(1)、1987年職場のアスベスト管理規則(Control of Asbestos at Work Regulations 1987: CAW)第17条(1)(a)(ライセンスなしにアスベストが関係する作業を実施したこと及びアスベストにばく露された労働者に対して洗浄設備を提供しなかったことに関するもの)の各法令にもとづく4件の違反により、20万ドルの罰金および6万5千ポンドの訴訟費用の支払いを命じられた。
 モリス・ウィリアムズは、HSWA第2条(1)および3条(1)、ALR第3条(1)、CAW第17条(1)(a)にもとづく4件の法令違反で5万ポンドの罰金と1万ポンドの訴訟費用支払を命じられ、加えて、2年間は企業の役員をつとめることを禁じられた。
 ジョアン・キャロルは、HSWA第2条(1)および3条(1)の2つの法令違反で3千ポンドの罰金と500ポンドの訴訟費用の支払を命じられ、企業の役員をつとめることを1年間禁止された。