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HSEの統計によれば、2003/04年度の労働死亡災害に改善は見られず
HSE figures show no improvement in workplace deaths for 2003/04

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2004年9月号 p.12

(仮訳 国際安全衛生センター)



 英国の各種労働組合は、先ごろ下院議員が政府に対しておこなった、安全監督のための人員を増員すべきであるとの要望に対し、同調の声を上げている。これは、英国安全衛生庁(HSE)が、労働災害による死亡者数に何ら改善が見られず、地方の監督当局による安全監督件数も引き続き減少しているとの統計結果を発表したことを受けてのものだった。
 下院の雇用年金専門委員会(Work and Pensions Select Committee)がHSEの監督官の人数を2倍に増員すべきことを求める報告書を提出した2週間後に発表されたHSEの「2003/04年度死亡災害統計(Statistics of Fatal Injuries 2003/04)」によると、2003/04年度には、労働者及び自営業者を含めた合計235人が労働災害で死亡し、これは前年度の227人に比べて4%の増加であった。

モーカム湾の惨事

 HSEの死亡災害統計の暫定値によると、2003/04年度の全死亡災害の半数は建設業及び農業部門によるもので、その死亡災害の9%は、トリ貝採取中に21人が溺死した2004年2月のモーカム湾の惨事によるものである。
 報告によると、死亡災害原因で最も多いのは、相変わらず高所からの墜落・転落であり、2003/04年度は、全死亡災害中29%を占めている。昨年度は墜落・転落による死亡災害が2000/01年度以降初めて増加し、2002/03年度の50件から2003/04年度は67件となった。
 安全衛生委員会(HSC)議長のビル・キャラハン(Bill Callaghan, Chairman)は、この統計に関し次のように述べた。「今年度、報告された死亡災害にまったく改善が見られなかったのは残念です。この死亡災害の総数の陰には、235人それぞれの悲劇があるのです。こうした災害は防止することが可能なのです。しかし、ちょっとした簡単な防止対策が――災害を避けることができる対策が――実施されていないことがあります」
 さらに彼は次のように付け加えた。「死亡災害統計は、様々な要素からなる指標の一部分であり、英国産業界の安全衛生パフォーマンスの全体像を示すものです。今年後半に発表される災害統計は、英国産業界がいかに安全衛生に取り組んでいるかを示すさらなる指標となるでしょう」
 さらに、統計は次の点を示している。
  • 総合的な死亡災害率はわずかに増加し、労働者10万人あたりの死亡者数は2002/03年度の0.79人から2003/04年度には0.81人となり、これは2000/01年度以降、初めての増加となった。
  • 死亡災害の第2の原因は、移動する車両に激突されたもので、死亡者数は44人。次いで、動いている物や、落下する物に激突された災害で29人が死亡している。
  • 建設業では合計70人が死亡しているが(これは2002/03年度と同数)、建設業における従業員および自営業者の死亡災害率は、労働者10万人あたり3.8人から3.5人へと減少し、史上最低を記録した。
監督実施状況

 一方、2003/04年度の死亡災害統計は、地方の監督当局による安全監督件数が引き続き減少したというHSCのもうひとつの報告書の発表と時を同じくして発表された。HSCの報告書「HELA安全衛生活動報告2004(HELA Health and Safety Activity Bulletin 2004)」によると、地方の監督官は、2002/03年度に260,000件の監督を行ったが、2001/02年度には266,000件であった。
 さらに、監督率も減少傾向が続いており、1,000事業場当たりの監督件数は、2001/02年度には229件だったのに対し、2002/03年度は221件であった。全体的に見て、1998/99年度以降、地方の監督官による1,000事業場当たりの監督件数は5分の一減少している。
 しかし報告書によると、正規の地方安全衛生監督官数は、2001/02年度の1,060人から2002/03年度の1,130人へと7パーセント増加している。それ以前、地方の安全監督官数は、1998/99年度の1,210人から2001/02年度の1,060人へと減少した。

監督官の増員

 死亡災害の増加と地方の監督官数の減少は労働組合の非難をあび、組合側は、そうした状況は安全監督のために政府がもっと人材を投入する必要があることを明確に示していると述べている。
 英国労働組合会議(TUC)書記長ブレンダン・バーバーは次のように述べた。「政府は2000年から2004年の間で労働災害による死亡者数を5%減少させるという姿勢を示しているが、死亡災害は今年も再び増加した」
 「もし政府が労働災害による死傷者数の水準を本気で引き下げるつもりならば、労働安全衛生法の実施のために、地方の監督当局およびHSCの人材を増やさなければならない」
 さらに彼はこう述べた。「労働災害による死亡件数が増加していると聞いたその同じ日に、一方では地方の監督水準及び送検件数が引き続き低下しているという数字を目にしなければならないのは、大変遺憾なことだ」