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2メートル規制を撤廃する新規則の施行
Regs to drop 'two-metre rule'

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2005年4月号 p.14-15

(仮訳 国際安全衛生センター)



 政府は、長い間待望した高所作業規則(この4月についに施行)に、2メートル規制を盛り込まないことを決定した。

 新しい高所作業規則(Work at Height Regulations: WAHR)は2005年4月6日に施行されるが、これは2メートル規制(two-metre rule)の置き換えも含まれる。今までは、1996年建設(安全衛生及び福祉)規則(Construction (Health, Safety and Welfare) Regulations 1996)の下で、事業者は作業が2メートル以上の高さの所で実施される場合には、手すりの設置などの具体的な墜落防止対策を採用しなければなかった。しかし関係大臣たちは、2メートル規制に代わって新しいガイダンスを導入すべきであるという最近の安全衛生委員会(Health and Safety Commission: HSC)の勧告を受け入れた。ガイダンスは、規則の遵守方法についての詳細なアドバイスも含めたものである。
 HSCによると、この変更によって、目標を設定する高所作業規則(WAHR)を制定するという目的が満たされる。このWAHRは全産業に適用されるもので、各産業部門別向の具体的なガイダンスによってバックアップされる。この決定は、2メートル規制があるために、建設業者が低所からの墜落に注意を払わない、あるいは2メートル以上の場所だけに墜落防止対策を講じれば良いと信じている、というHSEの勧告を受けてなされたものである。統計によると、重傷災害の60%は、2メートル未満の高さからの墜落が原因である。
 HSEの災害減少計画課長エリザベス・ギビー(Elizabeth Gibby, Head of the HSE's Injuries Reduction Programme)はこう述べている。「2003/04年度には、高所からの墜落災害で、67人が死亡し、約4,000人が重傷を負っている。墜落は、死亡労働災害原因のだんとつ一位で、重傷においても大きな原因の1つとなっている。高所からの墜落防止は、HSEの災害減少計画の中心部を成すものである」さらに彼女は語る。「規則は広い範囲に渡る産業とその活動をカバーするものである。しかし、全ての産業界に伝えたい簡単なメッセージをいくつか作成した。そのメッセージとは、次のようなものである」
  • 高所作業向けの優れた作業方法を実施している人々は、既にこれらの規則を十分に遵守する作業を実行していること
  • 高所作業のために実施したリスクアセスメントに従って、全ての高所作業が有資格者によって確実に計画、組織、実施されるようにすること
  • 高所作業によるリスクを管理する階層別対策に従い、リスクを回避、防止、低減する対策を実施すること
  • 正しい作業機器を選ぶこと、さらに、墜落の距離や墜落した場合の結果の重大性を緩和するだけの対策(ネットやエアバックのような)、あるいは墜落防止のための個人用保護具を用意するだけといった対策を取る前に、墜落防止のための全体的な対策(手すりや作業床といった)を選択すること
 2メートル規制を置き換えるという決定は、建設産業部門の一部を落胆させた。2メートル規則を維持するためにロビー活動を行った建設業協会の安全衛生部長アンディ・スネドン(Andy Sneddon, Director of Health and Safety at the Construction Confederation)は、こう述べる。「建設業協会の見解は強い支持を受けた。それは、現行の規則が2メートル以上の作業について定めている明確で曖昧さのない境界線を取り除いてしまうことで、我々の建設業界は、全産業にまたがる整然とした規則を作るというわずかな利益とひきかえに、多くの人命をおびやかされかねない」
 建設業協会のスポークスマンは、こう付け加えた。「我々はいま、闘いに敗れたということを受け止めなければならない。そして、現行規則に代わるガイダンスが確固として、かたつ厳格に実施されることを願っている。高所作業は大きな問題であり、規則が失敗に終わるのを目にしたくない。今や、産業界は共に協力し合わなければならない」
 しかし、WAHRは洞窟や登山といった高所を含む冒険的な活動を教える人々には適用されない。HSCでは現在、この部門に対する一連の分離した規則を計画中であり、2005年秋までに準備する予定になっている。