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眼の保護具についての適切な選定、調達および保守

資料出所 : Job Safety Management
April 2006
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2006.11.06

※編注
眼の保護具の現状に関する一般的な解説である。
眼の防護と応急時対策に関する情報については、新しいウィンドウに表示しますNIOSHのEye Safetyのサイトの情報が極めて充実していると考えられる。
新しいウィンドウに表示しますOSHAのHPのトピックス別ウエブサイトにも、Eye and Face Protectionがあり、選定に関するeToolもある。

規格品の眼の保護具(prescription safety eyewear)は、作業で眼鏡の着用が必要な従業員の個人用保護具(PPE)として重要である。従業員に規格品の保護眼鏡を支給する際に考慮すべき事項について、スペックセイバーズ社(英国メガネ・コンタクト販売チェーン)コーポレート・ヘルスケア ディレクターのエイドリアン・テイラーが解説する。

規格品の眼の保護具の支給にあたり第一にすべきことは、職場の的確な要件を明確にするための安全衛生オージットとリスクアセスメントの実施である。

事業者はその事業活動に対する全般的なリスクアセスメントを実施して職場環境のハザードを特定し、次いで、技術的対策や安全作業システムなどの必要な安全措置を講じることが法令で規定されている。しかし、安全対策を実施してもリスクを排除できない場合、事業者は従業員に適切なPPEを支給する必要が生じる。

通常の作業条件

どのようなPPEでも、支給する前に、リスクに対する有効性、通常の作業条件、着用期間を確認することが重要となる。これらを判断できるのは、その職場に特定のリスクを評価する立場にある人間だけである。

実際には、オージットの資格を有する人が、PPE着用の必要性や、規格品保護眼鏡のような眼の保護具着用の必要性の有無を判断する必要があることを意味する。

眼の保護具が必要な場合、リスクアセスメントを行う人が職場のハザードを防止するためにプラスチックレンズ、ガラスレンズ、ポリカーボネートレンズのいずれを必要とするのか、 着色ガラスは適切であるのか、特別なレンズコーティングが必要であるのか、などを判断する必要もある。

重要なことは、規格品の保護眼鏡を調整するであろう一般向けのオプティシャン(メガネ業者)は、このようなリスクを判断して予防策を提案する適任者ではないということである。

残念なことに、少数派ではあるがいまだにかなりの数にのぼる安全衛生マネージャは、リスク判断を一般のオプティシャンに委ねるのが適切であると誤解している。

眼の保護具購入にあたって、規格品保護眼鏡の供給に豊富な経験を有するオプティシャンが用いる体系化された発注プロセスに従うことは、事業者がリスクの判断を一般のオプティシャンに委ねるために生ずる不都合を減らすために大いに効果がある。

眼の保護具の種類:眼鏡タイプ、ゴーグル、シールド

英国で販売される眼の保護具は、多様なレベルの耐衝撃性を規定した欧州規格EN166:2002にすべて適合しなければならない。

保護眼鏡を使えば、ほぼすべてのハザードを予防できるという誤解が一般的に見られるが、断じてそのようなことはない。衝撃によるリスクが低い場合を除くあらゆるリスク予防のためには、さまざまなPPEを選択して、組み合わせた使用を考慮することが重要となる。メガネ、ゴーグルそれぞれのレンズとバイザーにマークされている欧州規格記号が選定の目安となる。

各々の記号が示す特性は以下のとおりである。

特性
記号

強度の堅牢性
S
低度の耐衝撃性
F
中度の耐衝撃性
B
高度の耐衝撃性
A
溶融金属の非付着性、熱固体溶け込みへの抵抗性
9
微粒子への耐損傷性
K
防曇性
N

 重要なのは、“EN166B”という記号が示す中度の耐衝撃性が必要な場合、あるいは、腐食性物質、電気アーク、溶接物への耐性が必要な場合は、規格品保護眼鏡は不適切なことである。代わりに、EN規格の規定に適切に適合するゴーグルまたはシールドを確保する必要がある。また“EN166A”で示された高度の衝撃を防ぐためにもシールドやフェイスシールドが必要となる。

耐損傷性

 同様に、眼よりも広範囲の保護が必要な場合に適切な防護策は、フルフェイスシールドである。フルフェイスシールドではガラス面が曇るため、安全衛生マネージャの多くは実用的ではないと苦言を呈しているが、ガラス面の曇りは呼吸用保護具の併用で予防できる。

 保護眼鏡のレンズやフレームに損傷を与える腐食性物質は、着用者の顔にはそれ以上の損傷を与えるおそれがあることは自明である。使用目的として化学的腐食性物質への耐性を想定していない保護眼鏡に、そのような耐性が欠けているとする苦情がオプティシャンに非常に多く寄せられている事実が顕著になっている。

 保護眼鏡が有する最大の耐衝撃性は、“EN166F”で示された低度の耐衝撃性であり、径6mm、質量0.86gのボールの秒速45mの衝撃への耐性と規定されている。

視野の制限

 保護眼鏡では通常、サイドシールドで横からの異物を防護しているが、サイドシールドは不要に視野を制限しないようにする必要がある。

 一般的には、ポリカーボネートレンズが最軽量の上、最大の耐衝撃性を有している。

 多くの職場では、メガネ着用者には適切なオーバーゴーグル(あるいはアイシールド)を簡単に支給するだけでよい場合もある。しかし、オーバーゴーグル(あるいはアイシールド)の常用は長期的な解決策とはならない。オーバーゴーグル(あるいはアイシールド)では、通常のメガネの上にレンズを重ねるため、2枚のレンズを通過する光の屈折の影響で視界の快適さは適正レベルを満たさず、2種類のフレームを着用するため、身体上の不快感も高まるからである。

フレームとレンズ

 保護眼鏡のフレームは、メタル製あるいはプラスチック製である。メタルの素材でもっとも一般的なものはニッケル合金で、プラスチック素材でもっとも一般的なものはポリアミド、ポリカーボネート、アセチルセルロースである。

 保護眼鏡のスタイルはその機能により制限されることは仕方がないが、それでも限られた範囲の中で、バラエティに富んだカラーや仕上げを施した男性用、女性用、ユニセックスの商品を選ぶことは可能である。

選択の制限

 また、食品調理場ではメタルフレームは不適切であるなど、産業により個別の配慮が必要となる。またこのために事業者による選択の幅がますます制限されることも考えられる。

 また来客や訪問客に対しては、ハザードへのばく露がいかに短時間であろうと、適正な保護眼鏡を提供することの重要性をつねに留意しておくことが大切となる。

 眼鏡を着用している従業員に、規格品保護眼鏡を支給するにあたっては、そのレンズは、該当する従業員が通常使用している種類のレンズを支給すべきである。遠近両用レンズを着用している従業員に、突然可変焦点レンズの保護眼鏡を支給することは不適切である。また、多焦点レンズを常用している従業員に単焦点レンズの保護眼鏡を支給する事業者も責任感を欠いているといえよう。

視力検査の費用

 規格品保護眼鏡支給の前に、事業者が視力検査を実施し、その費用を負担することは法令で義務付けられてはいない。しかし、検査の処方が最新のものであるのを確認しておくのは賢明なことである。再検査に新しい処方が必要となると、保護眼鏡の商品寿命は短くなるだろう。

保護眼鏡の保守

 保護眼鏡の着用者は、それを適正に使用する義務を負っているため、眼鏡保守の全責任を事業者が負うというわけではない。

 サイドシールドは保護眼鏡と一体となり保護性能を発揮するものであるため、サイドシールドを取り外さないことも保守義務の範囲内である。従業員が取り外す可能性を減らすために事業者は、サイドシールドを簡単に取り外すことのできるスクリューイン(ねじ込み式)やクリップオン(跳ね上げ式)ではなく、シールドをリベット止めするメガネを選定すべきである。

 破損、損傷した保護眼鏡は作業現場では修理できない。通常はオプティシャンの手続きに従い、EN166の認可を受けている、修理や交換を行えるメーカーに返却する。

 保護眼鏡のレンズの使用期限は3年以下、フレームは最長で5年である。視力検査の一般的な実施間隔は、大半のユーザーが新品に買い換えるのに適した2年である。

激烈な反応

 ポリカーボネートレンズはアセトンや塩化メチルなどの溶剤に触れると激烈な反応を起こすため、洗浄、殺菌消毒には特別の注意を払わねばならない。極端な熱や湿度を避けることも、安全メガネの耐用寿命を維持することにつながる。もっとも簡単にできることは、使用していないときには保護ケースにもどし、こすり傷がつくのを最小限に抑えることである。

眼の保護具の調達方法

 規格品の眼の保護具が着用者に提供されるまでには、以下のようにさまざまなステップがある。

  • 認定済みの安全フレームの製造と供給
  • 適正な規格品を決定するための視力検査
  • 認定を受けているラボでの適切なレンズの装着(レンズの取り付け)
  • 着用者へのフィッティングと調整

 それぞれのステップを個別の業者が行う場合もあり、単一の業者がすべてのステップを実施する場合もある。従って、眼の保護具は多様な方法で購入することができる。

安全フレームのメーカーからの購入
    多くのメーカーでは、任意の企業と直接取引のできる販売代理店を各地域に置いている。販売価格は発注量により決定される。眼鏡価格にはレンズ装着費も含んでいるが、オプティシャン(眼鏡技術者)による調整費は別途請求される。
PPEのカタログによる注文
    PPEカタログには、標準品および規格品の眼の保護具が多数掲載されている場合が多い。値引きは発注量により可能となる。眼鏡価格にはレンズ装着費も含んでいるが、オプティシャン(メガネ技術者)による調整費は別途請求される。
第三者であるネットワークコーディネータからの購入
    全工程を処理する単一のメーカーからの固定価格での購入となる。通常、眼鏡価格には複数のオプティシャン(メガネ技術者)によるレンズ装着費も含んでいる。
オプティシャン(メガネ技術者)の調整を通して購入
    価格は、眼鏡製作工程へのオプティシャンの関与程度に応じて決定される。もっとも極端な例では、オプティシャンがフレームメーカーから個別に購入したフレームを、認定を受けているラボに渡し、ラボでレンズ装着をさせてから、オプティシャンが調整する。

別の例では、オプティシャンも独自のフレームをさまざまにラインアップし、独自の認定済みレンズ装着ラボを有しているため、レンズ装着費を含むあらゆるコストを大幅に削減することができる、という場合もある。

価格設定の構造

どのような購入方法を選定しても、重要なことは、購入手続きができるだけ簡単であり、価格設定の構造が分かりやすく、一定であり、提供者が保護眼鏡の品質に万全の責任を負う、つまり包括的な顧客サービスが確実に提供されることである。

本稿で述べたあらゆるポイントが体系的に対処されるのであれば、複雑で気が滅入ってしまいかねない保護眼鏡調達までのプロセスも、実際には経済的に効率よく、単純に遂行できるようになる。それはすなわち、人類の属性の中でももっとも大切な、視力という賜物を保護することにつながるのである。