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HSE、ストレスレベルを測定する標準(案)を公表
Executive issues draft standards on measuring levels of stress

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」July/August 2003 p.12-13

(仮訳 国際安全衛生センター)


 英国安全衛生庁(HSE)はストレスレベルを測定するための管理標準案を公表した。これは、その企業が職業性ストレスの原因解明に効果的に取り組んでいるかどうかにかかわらず、事業者がストレスレベルを測定することを可能にするものである。2004年夏に完成する予定のこの標準で、事業者は、労働者の職業性ストレスのレベルの低減にどれぐらい成功しているかを測定する基準が与えられる。

フィードバックの提供

 標準案はHSEのホームページから入手可能で、事業者が自らの組織で標準を実施するための多くのアドバイスも付け加えられている。HSEは、この標準が実際どれだけ使いやすいか、効果があるかを事業者がフィードバックしてくれることを希望している。

 HSEによると、ストレス管理標準は自主的なもので、それに従っていないからといって事業者が訴追されることはない。しかし、監督に際して監督官がこの標準をどのように利用するかは未定であるとHSEは語っている。

 標準案を論評して英国安全衛生委員会(HSC)のBill Callaghan委員長は次のように語っている。「新しいアプローチを開発するときにはできるだけ多くの人の積極的な参加・賛成を得て、フィードバックして貰うことが重要だ。答えを求めている革新的な企業にこのしくみを試して貰おうと考えた理由はそれだ。この重要な時に、すべての業種、すべての規模の企業がこれを試してみて、仕事のストレスと戦うための実用的・革新的な方法の開発に意見を言ってくれればよいと思っている。」

自主的な標準

 HSCは「一緒に健康確保(Securing Health Together)」運動の下で、2010年までに職業性ストレスの発生を20パーセント減らすという目標を設定した。2000年6月にHSCは、HSEに対しこの目標を達成する助けとなる自主的なストレス管理標準を開発するよう求めた。これは、職業性ストレス管理に関する公認実施準則(ACoP)を近い将来に導入することはしないというHSCの決定に引き続いて行われたものである。HSCによると、職業性ストレスの防止に関するACoPは、企業が職業性ストレスの原因を効果的に管理しているかどうかの測定に使える合意された管理標準がなければ、実施が不可能である。

スタートしたパイロット研究

 2003年4月に、HSEは管理標準の原案作成と評価を目的とした、現在も進行中のパイロット研究をスタートした。この研究は2003年12月まで行われることになっており、公的部門と民間部門から24の組織(労働・年金省から小売のSainsbury's、金融のLloyds TSBに及んでいる)が参加している。

 初期のパイロット研究から好意的なフィードバックを受けて、HSEは標準案をホームページで入手可能にして、どの企業でもその効果をテストできるようにすることとした。

 標準案は、職場における6種の重要なストレッサーを減らす目標を設定している。
  • 要求 - 労働者が仕事から要求されるものに対処することができるか
  • コントロール - 労働者が、仕事のやり方について発言できるか
  • 支援 - 労働者が同僚や上司から適切な情報と支援を受けているか
  • 役割 - 労働者が組織における自分の役割と責任を理解しているか
  • 人間関係 - 労働者が仕事でいじめなどの不当な扱いを受けることがないか;
  • 変化 - 組織変更を行うときに労働者の意見を尊重しているか。
 事業者が、要求、コントロール、及び支援の項目で標準を達成するためには、85パーセントの労働者が、ストレッサーが管理されている方法に満足していることを示す必要がある。HSEの数字が示すように、一般に20パーセントの労働者が、仕事によって「非常に」または「極度に」ストレスをうけているとされているので、85パーセントを達成すれば、職場でストレスに苦しんでいる人々の数が減少したことを意味することになるとHSEは述べている。

健康問題

 しかし、他の3つのストレッサー(人間関係、役割、変化)の目標レベルは65パーセントと低く設定されている。HSEによれば、3分の1の労働者がこれらの項目で苦しんでいるのを見過ごすと言うのではなく、現在、これらの健康問題と関係付ける入手可能な証拠が十分でないということである。しかしHSEによれば、将来の研究でこのパーセンテージは改善できるだろうということである。

 標準案は「導入(intervention)」として知られているアクションの範囲も設定している。これは、標準を達成するための目標を満足していない場合、事業者が取ることのできるアクションである。例えば、事業者は、職場でいじめなど不当な行いに対処するための方針を必ず持っていなければならない。また、労働者に新しい仕事を引き受けるように頼む時には、労働者に適正なサポートを提供しなければならない。そして労働者が安全問題について不安を感じればそれを提起できるようになっていなければならない。

 さらに、その組織が自身の「導入」を開発するために労働者の特定グループと共同作業することもできるし、HSEが2003年末に発行する原本に、その「導入」についての提案がいくつか掲載されることになっているとHSEは述べている。

 HSEは、パイロット研究で判明したこと及び標準案を広範囲で試行した結果の評価を終えた後、2004年1月に標準案に関する協議文書又は検討文書を公表する予定である。

 最終的な標準自体は2004年夏の終わりごろに発行される予定であり、事業者が組織内の主要な職業性ストレス問題を発見し、これに対処するための実用的なガイダンスとなるように作られた情報パックが付属することになっている。

HSEの兵器庫

 Thompsons 法律事務所安全衛生担当ヘッドのMichael Appleby氏は、本誌に対し次のように語っている。「この標準は、職場のストレスについて事業者に責任を持たせるのに役立つだろう。この標準案が職業性ストレスに関して組織を訴追するためのものだとしたら、HSEの武器の一部になるという理屈もあるが、民事の補償訴訟で労働者側弁護士に使われることになりそうだ。」