このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > イギリス 食料・飲料製造業における高所からの墜落・転落災害の防止

食料・飲料製造業における高所からの墜落・転落災害の防止

資料出所:HSEホームページ
http://www.hse.gov.uk/pubns/fis30.pdf

(抄訳 国際安全衛生センター)



はじめに

このガイダンスは、食料・飲料製造業での高所からの墜落・転落災害(同一平面での転倒と対比されるような)の原因と防止方法、 特に、以下の情報を提供する。
  • 墜落・転落箇所の分析
  • なぜ、墜落・転落したか
  • どうすれば、高所からの墜落・転落を防止できるか
  • 参考となる災害事例
  • 参考となる情報源

墜落・転落災害の分析

概要

食料・飲料製造業では、毎年約750件の高所からの墜落・転落災害をHSEに報告している。これは、同産業の全災害の8%を占めている。また、そのうち15%は、2mを超える高さからの墜落である。

負傷の重篤度

食料・飲料製造業における高所からの墜落・転落災害は:
  • 死亡及び重傷(骨折など)災害の約4分の1を占めている
  • 死亡災害では2番目に高い原因であり、21%を占めている
  • 重傷災害の中で2番目に高い原因であり、17%を占めている
  • 休業4日以上の災害の主要なものの一つとなっている
  • 転落の高さが2m未満である時でさえ、重大なまたは死亡災害が生じている
分析によると、食料・飲料製造業での高所からの墜落・転落災害の頻度と重篤度は製造業一般と同様であった。しかし、多くの具体例を分析すると、この産業に特徴的な状況が明らかになった。

墜落・転落が起こった場所

1996/97-1998/99の3年間でHSEが調査した150件の墜落・転落災害を分析した結果、食料・飲料製造業の労働者が墜落・転落した場所は次のとおりである。

落下の場所  墜落・転落数
はしご   40%
車両、フォークリフト 17%
機械、プラント類    10%
作業台(platform)  10%
階段   8%
屋根、天井  7%
足場、ガントリークレーン       4%
倉庫のラック  4%

車両からの墜落・転落で労働者が墜落・転落した車両の部分は次のとおり

車両からの墜落・転落 墜落・転落数
トラックの後部(荷台など)  35%
フォークリフトのフォーク   31%
運転台のステップ    13%
屋根    9%
タンク車のステップ  4%
その他    8%


墜落・転落したときに行っていた作業

墜落・転落時の作業は墜落・転落した場所との関連が深い。

清掃やメンテナンスの作業は、足場/ガントリークレーン、はしご、屋根、天井などからの墜落・転落に多く見られた。

車両からの墜落・転落では、通常の積み卸し作業が多かった。主要な例外はフォークリフトトラックのフォークからの墜落・転落で、労働者がフォークに立っていたり、または例えば、ライトの取り替え、清掃またはメンテナンスのため高い場所へ接近しようとして、フォークに取り付けられた台に乗っていた場合であった。

機械やプラントからの墜落・転落の:

  • 三分の一は清掃作業中
  • 三分の一は点検や製品等のサンプリングの作業中
  • 三分の一は補修作業中であった。

倉庫のラックからの墜落・転落は、労働者が通常備えてある車輪つきの脚立などを使わずに、ラックに登って高い所の物を取ろうとした時に発生している。

高所からの墜落・転落の防止

墜落・転落災害の多くでは、高所へのアクセス手段が用意されていなかった。HSEが調査した64食肉加工工場では、その50%が、高所作業のための安全なアクセス手段を持っていなかった。

資金とプロジェクト計画のためのリスクアセスメントでは、墜落・転落災害のリスクを考慮して、適切な常設の、またはポータブルな機器の設置を考慮すべきである。あとになってアクセス手段を設けることは、ポータブルなものでさえ実現しにくい。

ポータブルな機器で、高所作業をするときには、たまたま手近にある機器で間に合わせてはならない。自走式の作業台(例えばシザーリフト(scissor lift)やチェリーピッカー(cherry picker))の購入やリースが、作業の安全化のため考慮されなければならない。

フォークリフトトラックに取り付けられたパレットを使用して、高所に接近しようとする場合に、多くの死亡災害や重篤な災害が発生している。この方法は禁止されるべきで、フォークリフトに適切なケージを取り付けて正しく使用するとか、移動式の作業台を使用するなどの安全な方法が準備されるべきである。

屋根の端、もろい屋根、はしご、足場、移動式作業台、フォークリフトトラックのケージなどでの安全な高所作業の方法については、HSEからいろいろな出版物が発行されている。

食料・飲料製造業では、以下のような災害防止対策が講じられるべきである。

清掃

  • 効果的な粉じんやヒュームの除去装置を設けるなど、プラントの改修や整備をおこない、高所での清掃作業を減らす。
  • 粉じんなどが蓄積する桟と表面を減らすために、高い構造物を改修する。
  • 例えば泡噴射クリーナーで、地上レベルから高い構造物を清掃する。
  • 高所作業が必要なときには、安全な作業システムが必要である。この中には、移動式作業台などの安全なアクセスシステムが含まれる。
  • サイロ掃除のための張り出し可能な作業台(inflatable platforms)などの特殊なアクセス機器を考える。

サンプリングまたは点検

  • フロアレベルからリモートでサンプリングや点検が出来るようにする。
  • 測定、監視、管理などのための計器をフロアレベルに配置換えする。
  • サンプリングまたは点検は通常の作業であるから、高所で作業を行わなければならない場合には手すりを備えた常設の階段や作業台が必要である。

メンテナンス

  • プラントや機器の高所に頻繁にアクセスする必要があるときには、常設の階段、はしご、手すりなどが必要である。
  • プラントや機器の高所にときどきアクセスすることが必要なときは、移動式作業台などの安全なアクセスシステムが使用されることが必要である。
  • 労働者が、簡便なエレベーターとしてフォークリフトトラックのフォークや、フォークに取り付けられたパレットを使用していないことを確認する。 そのような目的での使用は、フォークリフトトラックに、HSEが刊行する「Working platforms on fork-lift trucks」に記載されるように適切にケージが設置された場合のみに限定されるべきである。

スリップによる墜落・転落

同一平面上でのスリップ災害は食料・飲料製造業における全災害の4分の1である。 スリップはまた、食品や水などで、はしご、作業台等が汚れている場合、高所からの墜落・転落の一因となっている。

従って、労働者が墜落・転落するかもしれない場所や機器をよく清掃することが必須である。また、適切な滑り止めがある履き物が必要である。はしごでは、かかとの付いた履き物が使われるべきである。

階段での墜落・転落

食料・飲料製造業での4日以上の労働災害の3分の1は、階段で発生している。前のパラグラフで説明したように、これは、しばしば、食品または水がこぼれた階段や不適当な履き物の使用のためである。 階段を清掃すること、手すりや適切な履き物を供給することは、これらの災害を減少するために必須である。

倉庫のラックからの墜落・転落

高所に保管されている製品を取ったり点検するために、労働者が倉庫のラックに登って墜落・転落することで、本来ならば起こらずに済むはずの災害が発生している。車輪のついた脚立などの安全なアクセス方法が常に備えられるべきである。

災害事例

(以下省略)