このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次)イギリス:トピック > 検視制度改革により安全関連送検が減少する

記事検視制度改革により安全関連送検が減少する
Coroners Reform Could Lead to Fewer Safety Prosecutions

資料出所:Safety Management (BSC)
August 2006
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2007.05.02

検視制度の近代化を目的とした今回の提案書に基づくと、安全衛生対策の不備により死亡労働災害を起こした企業は、ほとんど送検されなくなるであろうと評論家たちは警告している。

現在、“届出義務のある災害、中毒または疾病”による全ての死亡災害、あるいは公衆の安全衛生に害を及ぼす恐れのある死亡災害を発生させる状況を繰り返す場合は、陪審員による審問を受けなければならない。

しかし、政府の検視制度改革法案の草稿に基づけば、死亡労働災害の審問は陪審員の前で行われる必要はないことを検視官が決めることが認められている。

社会運動家らは、検視官よりも公衆のほうが検察局(Crown Prosecution Service)とHSE(英国労働安全衛生庁)の訴追を促進する審問評決を出す傾向にあると主張している。

マギー・ロビンズ(Maggie Robbins)氏(英国法人責任センター(The Center for Corporate Accountability : CCA)の労働者安全救済部長)は次のように語った。

“陪審員は、審問はこの法案を作成した憲法局(Department for Constitutional Affairs)と議会が押し込めようとしている狭い法律万能主義の陪審席より大きな役割を持つと考えている。”多くの場合、陪審員は直接的な死亡災害原因に限らず多くのことを調査するため、検視官とは異なった評決を出すことがある。審問は、多くの死亡災害が調査される唯一の公的な裁きの場であり、ここでは公衆はどのように事件が起きたのか、どうしたら再発しないようにできるのかを理解することができるのである。

“社会にとって重要なことは、公衆が審問の役割を担うということであり、陪審制度はこの点で重要な要素である。”

TUC(英国労働組合)もまたこの改革を次のように非難している。

陪審員数を7〜11人から5〜7人へ減員する計画に加えて、陪審員が傍観者的見地をとる可能性を懸念している。

TUCの安全衛生部長ヒュー・ロバートソン(Hugh Robertson)氏は次のように語った。

安全の問題がある限り、すべての死亡労働災害が陪審員によって精査されることは重要である。

“これは、労働災害防止対策の観点からだけではなく、審問により遺族に保障を与えるためにも重要である。”

しかし、憲法局の報道官は、当誌に次のように語った。

陪審制の審問目的は、死亡災害に対して責められるべき者を決めることではない。従って、陪審員の役割は限定されている。

報道官は、更に次のように付け加えている。

関係大臣らは、関係者からのコメント聴取に関心を示したので、当法案草稿は議会通過前に間違いなく修正されるだろう。

社会運動家らは、調査が実施されるか、審問が陪審員の前で実施されるかどうかに関する検視官の判断そして、評決自体に訴える権利を遺族に付与することなどを始めとする他の法案部分については歓迎している。