このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > イギリス NHS職員の6人に1人が昨年業務中に暴行を受けたとの調査結果

NHS職員の6人に1人が昨年業務中に暴行を受けたとの調査結果
One in six NHS staff attacked at work last year, says survey

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2004年4月号 p.14-16



 国民保健サービス(National Health Service: NHS)職員に関する最近の調査で、英国保健制度における暴力行為の程度が明らかになった。デービッド・アクスベイ(David Axbey)が報告する。

 健康増進委員会(Commission for Health Improvement: CHI)が実施した最近の調査によると、イングランドとウェールズのNHS職員のうち15%を超えるスタッフが、業務中に暴行を受けたことがあるという。
 職場調査としては世界最大規模といってよい今回の調査において、NHSの監視と臨床ケアの改善のために設立された独立団体であるCHIは、2003年10月に全国572のNHSトラストの20万人を超える職員を対象にアンケートを行った。
 2004年3月に公表された仮集計結果によると、NHSに従事するヘルスケア労働者の6人に1人が昨年中に業務中に肉体的暴行を受けたという。調査では、暴行を受けた被害者のうち事件を上司に報告したのはわずか67%であることも明らかになった。

脅しやいじめ

 アンケート対象の3分の1を超える職員が、職場でハラスメント、脅し、またはいじめを受けたと回答した。こうしたケースの多くでは、患者または見舞いに来た身内が加害者となっているが、18%の職員は上司や同僚が加害者であると回答した。
 CHIのジョスリン・コーンウェル(Jocelyn Cornwell)委員長代理は、この調査について次のようにコメントしている。「ほぼ6人に1人の職員が業務中に肉体的暴行を受けているというのは憂慮すべきことです。この惨憺たる数字は、ほかの北欧諸国の医療機関のそれに並ぶものですが、職員が暴行を受ける恐れを抱かずに働くことができるよう、より多くのことがなされる必要があります」
 さらに今回の調査では、昨年業務中に負傷したり具合が悪くなったりしたと回答しているNHS職員が、全体の半数近くにのぼっていることも明らかになった。特に、ヘルスケア職員の39%は、業務に関連してストレスを抱えたと答えた。CHIによれば、この結果は、仕事を全部こなすだけの時間的余裕がないと考えている職員が48%いる事実と符合するという。
 調査では、安全でないマニュアル・ハンドリング作業、すべり・つまずき・転倒、注射針や鋭利な器物による刺傷、あるいは危険有害物質への暴露によって、およそ5人に1人の職員が負傷したり、具合が悪くなったりしていることがわかった。
 また、NHS職員の47%は、アンケート実施の前月、患者や職員の負傷につながりかねないミスまたはニアミスを少なくとも1件目撃したと回答している。CHIはこの点について、NHSでは「ミスがよく起きていることを示唆する」ものだと結論付けている。
 一方、アンケート対象のヘルスケア職員の4分の3は、契約で定められた時間よりも実際の勤務時間が長い状態が日常化しており、12%の職員は週平均10時間を超える超過勤務を行っていると回答している。
 ただし、このような結果にもかかわらず、職員の73%がおおむね仕事に満足しており、半数を超える職員が---現在就いている職を離れたとしても---NHSのために働き続けたいと考えていることも今回の調査で明らかになった。
 また、NHS職員の60%は、過去12か月の間に、安全衛生に関する研修を受けたと回答している。
 NHSのナイジェル・クリスプ(Nigel Crisp)事務局長(Chief Executive)は、CHIの調査結果の公表を歓迎して次のように述べている。「NHSのサービスの質は職員によって決まります。ですから、患者の皆さんに最良のケアを提供できるよう、職員が教育訓練、保護、そしてサポートを適切に受けることが非常に重要です。職員数は年ごとに大幅に増えています。優れた教育訓練プログラムと人材育成プログラムも用意されています。職員に対する暴力行為については、ゼロ・トレランス・アプローチで臨んでいます」
 公共部門労組Unisonのカレン・ジェニングス(Karen Jennings)医療部門代表(Head of Health)は言う。「今回の調査は、Unisonが長年にわたるキャンペーンを通じて取り上げてきた課題の多くと一致する結果になっています。Unisonが独自に調査したところでは、昨年、看護師の27%と救急隊員の40%近くが、ほとんど職場風土病とも言うべき言語攻撃を伴う暴力行為にさらされたことがわかっています」
 こうした問題に対処するため、ジェニングス医療部門代表は政府に対し、NHS職員への暴力的攻撃を重大な暴行とみなし、加害者をより厳しく罰するよう求めている。「NHS職員が献身的に職務に取り組んでいるのに、ほとんど日常的に暴力やいじめにさらされるのは、不公平きわまりないことです」

労働条件の改善

 英国安全衛生庁(Health and Safety Executive: HSE)のクリス・テイラー保健サービス局長(Head of Health Services Unit)は言う。「HSEは保健サービス諸機関と協力して、NHS職員の労働条件の改善と、患者に対するサービスの改善に取り組んでいます」
 「保健サービスはHSEの最重要課題の一つであり、CHIの調査で浮かび上がった主なリスクについては、NHSトラストの監督ですでに重点的に扱っています」、テイラー保健サービス局長はこのように述べている。

「NHS national staff survey 2003」は、CHIのウェブサイトwww.chi.nhs.uk/eng/surveys/nss2003/index.shtmlで閲覧できる。


NHS職員に対する暴力、ハラスメント、いじめ、または脅しの加害者
資料出所:CHI