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欧州委員会、新しい化学物質規制制度を提案
European Commission proposes new chemical regulatory system

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2004年5月号 p.2

(仮訳 国際安全衛生センター)


 潜在的に危険有害な化学物質への暴露から労働者・一般公衆・環境を保護することを目的とした欧州レベルの規制制度案が、政府の公表した諮問文書(Consultation Document: CD)で明らかにされた。

論議を呼ぶ提案

 諮問文書では、論議を呼んでいる欧州委員会(EC)の提案、すなわち化学物質の登録・評価・認可(Registration Evaluation Authorisation of Chemicals: REACH)の枠組みを導入するという提案について、関係者に意見を求めている。REACHの枠組みでは、欧州連合(EU)で製造または輸入された化学物質が人の健康および環境に及ぼす潜在的リスクを評価し、抑制するための新しい規制制度が導入されることになっている。
 政府によれば、EU内で入手可能な化学物質を対象とした現行法規では、既存の化学物質(1981年の現行規制制度導入以前に入手可能だった化学物質)と、1981年以降に開発された新しい化学物質とを分けて扱っている。このため、約30,000の既存化学物質が、年間1トンを超えて大量に製造または輸入されながら、安全に関する情報がきわめて乏しい状態になっている。

登録機関の設立

 2003年10月にECが採択したREACHに関する提案では、EU内で製造または輸入されるすべての既存化学物質をデータベースに登録するために、欧州化学物質庁(European Chemicals Agency: ECA)を設置するとしている。
 物質の登録にあたっては、人の安全と健康を無用なリスクにさらすことなく化学物質を使用できるよう、当該化学物質の各製造元または輸入元に対し、化学物質の性質に関する情報とデータを含む詳細な資料の提出が義務付けられることになる。
 またECの提案では、登録化学物質についてさらに分析や試験を行う必要があるかどうかをEU加盟諸国が判断できるよう、新しい評価プロセスを確立するとしている。具体的には、このプロセスが適用されるのは、生産量が年間100トンを超える化学物質か、または化学物質の製造元ないし輸入元の提供した情報がECAの登録制度に適合していない場合である。
 政府によれば、REACHには、発がん性物質や突然変異誘発物質といったリスクの高い化学物質を対象とした認可プロセスも含まれるという。プロセスの制度化案では、これらの物質は厳重な管理下に置かれることになっており、当該物質の使用に伴うリスクを適切に抑制できること、または当該物質の社会的経済的利益がそのリスクを上回ることを、当該物質の製造元または輸入元が証明できる場合に限って、当該物質の使用をECAが認可することになっている。

段階的導入期間

 政府によれば、英国産業界がREACHに関する提案を11年の段階的導入期間にわたって導入する際の直接費用は5億1500万ポンドになるという。
 したがって政府は、企業の財務負担を軽減し、化学物質製造元に課せられた、製造物質すべての登録という要件を取り除くために、ECに対してREACHの見直しを求めるロビー活動を行って、各物質の登録は1度でよいという原則を盛り込む必要があるとしている。
 諮問文書によると、REACHの諸規制の段階的導入は2008/09年度から始まる予定で、それ以降は、生産量または輸入量が年間1,000トンを超える化学物質とリスクの高い化学物質を登録しなければならない。

「EUの化学物質新戦略REACHをめぐる意見の募集について(Consultation paper on the new EU chemicals strategy - REACH)」は、www.defra.gov.uk/corporate/consult/reach/index.htmで入手できる。