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2005年度の労働安全衛生法(OSHA)施行状況


(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日:2006.10.02

OSHAの効果的、重点的、一貫性ある施行

OSHAの責務は、職場の安全衛生を推進し、職場における死亡、傷害、疾病を確実に減少させることにある。OSHAは、新しい産業、新しい技術および常に変化する労働力に絶えず直面しているが、その責務に変わりはない。職場別重点設定(SST)および重点施行プログラム(EEP)などは、OSHAが効果的、重点的でかつ一貫性ある施行を行い、責務を達成するための重要な構成要素である。

OSHAによる施行は、引き続き、強力で効果的である。2005年度において、OSHAは石油精製工場の爆発に対し、最大規模な原因調査を行った結果、これまでにおいて最大の2000万ドルを超える罰金を課した。さらに、2005年度における故意違反の摘発の件数は、今までの最大であった。OSHAによる努力の効果を確保するためには、多くの構成要素と多数の中間的な手段がある。しかしながら、OSHAによる効果の究極的な成果は、職場における傷害、疾病および死亡の低減である。これまで以上に多くの労働者が、毎日仕事が終わった後、彼らの家族のもとに、安全で無事に帰るという事実である。

OSHAの重点施行プログラムの2005年度における顕著な成果

この重点施行プログラム(EEP)は、OSHAの施行とアウトリーチの努力にもかかわらず、労働安全衛生法による義務を繰り返し無視し、その従業員を危険な状態に置く事業者に重点を置くものである。これは、死亡または、複数の故意違反または繰り返し違反に関連する極めて重大な違反を対象としている。2005年度において、OSHAは、EEPの対象として615件の検査を行ったが、これは、前年に対して200パーセントの増加である。EEPの目的は、これらの事業場における法の遵守を確実なものとすることである。EEPの対象とされたとき、フォローアップ検査、その事業場の他の場所の検査およびより厳しい条項の適用などが行われる。

7つの重点産業に対するOSHA施行活動の従来通りの続行

2003年にOSHAは、5年間の戦略管理計画(SMP)を策定し、そのリソースを3つの目標に向けることにした。業務上の傷害、疾病および死亡の低減がそのひとつである。戦略管理計画(SMP)における傷害、疾病および死亡低減の目標を達成するために、OSHAは、傷害/疾病の発生率および重大な傷害/疾病の比率が高い7つの産業を、アウトリーチ、教育および施行活動の重点対象として選定した。これらの産業とは、以下である。

  • 造園、園芸業
  • 石油、ガスの現場作業
  • 果物と野菜加工
  • 溶鉱炉と鉄鋼基礎製品
  • 船艇建造および修理
  • 営業倉庫業務と貯蔵
  • コンクリートおよびコンクリート製品

OSHAは2005年度において、これら7つの産業に対して、2,924件の検査を行った。これらの検査の多くは、OSHAの地域事務所が、それぞれの地域に特有のハザードに対応するために作成した地域重点計画(LEPs)によるものであった。われわれの努力の目的は、これらの産業における、いちじるしく高い傷害および疾病の発生率を大幅に低下させることにある。

傷害および疾病の発生率の着実な低下

全届け出対象件数の発生率は、着実に低下を続けている。2004年(入手可能な最新データ)の発生率は、2002年にOSHAが記録保管規則を改正して以来最も低かった。傷害および疾病の全届け出対象件数の発生率の低下に加え、休業を生じた件数の発生率もまた低下した。休業を生じた件数の発生率の継続的な低下は、重大な傷害や疾病をもたらす安全または健康へのハザードに遭遇するアメリカ人労働者の減少を意味する。

傷害・疾病の発生率(注1・2
  2000 2001 2002 2003 2004 2002-2004
の減少 %
報告対象全件数発生率 6.1 5.7 5.3 5.0 4.8 9.4%
休業災害発生率 3.0 2.8 2.8 2.6 2.5 10.7%

フルタイム労働者100人あたりの傷害、疾病発生率 グラフ
注)記録保管規則が改正されたため、2002年以降の調査結果は、以前のものと比較できない。このため、グラフは連続していない。記録保管規則が改正されたのち、BLSによって評価の行われた最初の年は、2002年であった。

引き続き低い死亡率

 前年の労働者10万人あたりの死亡が4.0であったのが、4.1となった。前年よりわずかに増加しているが、2001年と比較するとおよそ5%下がった最も低い状態が続いている。OSHAは、職場における死者数の低減を、戦略管理計画(SMP)の実施により、積極的に追求し続けている。職場別重点設定(SST)、重点施行プログラム(EEP)および地域重点計画(LEPs)の実施により、職場における死亡率の低下のための努力において、高いレベルの直接介入を続行する。

 ヒスパニック系労働者の死亡率は、2001年以来12.5%下がっているが、昨年においてはわずかに増加した。OSHAは、これらのリスクの高い労働者に対して届くよう、努力を拡大し続けている。イニシアチブには、他の遵守支援情報と共に、スペイン語による印刷物とOSHAウエブサイト上の情報提供を含んでいる。それに加え、OSHAの地域事務所は、建設業のようにヒスパニック系の労働者が多い産業を対象とした地域重点計画(LEPs)を実施している。

死亡統計
2000 2001 2002 2003 2004 2002-2004
の減少 %
全死亡者数 5,920 5,915 5,534 5,575 5,703 3.7%
死亡率(注3 4.3 4.3 4.0 4.0 4.1 4.9%
ヒスパニック系死亡率(注3 5.6 6.0 5.0 4.5 4.9 12.5%

死亡統計 / 全死亡者数グラフ
死亡統計/死亡率とヒスパニック計死亡率グラフ

OSHAによる引き続き活発な検査活動

 OSHAの年間検査活動は、高いレベルを維持している。2005年度の全検査件数は、目標の3万7700件を超える3万8714件であった。計画外検査の件数は、前年度より増加した。

 前年と比較し、労働者の苦情への対応および他の政府機関からの要請による検査件数が増加した。計画内検査の重点を休業災害発生率が高く、ハザードの大きい産業に引き続き置いている。

OSHA検査統計
2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2001-2005
の変化 %
全検査件数 35,974 37,614 39,817 39,167 38,714 + 7.6%
全計画内検査件数 17,946 20,539 22,436 21,576 21,404 + 19.3%
全計画外検査件数 18,027 17,075 17,381 17,590 17,310 - 4.0%
死亡災害調査 1,130 1,134 1,021 1,060 1,114 - 1.4%
労働者の苦情 8,374 7,896 7,969 8,062 7,716 - 7.9%
他政府機関の要請 4,434 4,447 4,472 4,585 4,787 + 8.0%
その他 4,089 3,598 3,880 3,829 4,807 + 17.6

引き続き高いレベルにある全違反件数

 故意違反の件数は、いちじるしい増加を示している。2005年度においては、国内職場におけるOSHAの規格、規則に対する8万5307の違反が指摘された。これは、2001年以来9.5パーセントの増加である。故意違反の数は、2004年度において62パーセント増加した。

 違反の総件数には、若干の減少があったが、これはハリケーンのカトリーナとリタによる損害の復旧作業により、OSHAのリソースが割かれたことに起因している。故意違反の増加は、故意に法律を無視した事業者を特定し、労働者が重大なハザードから防護されることを確実とするOSHAの強い姿勢が続行していることを示す。これは、OSHAがおよび疾病の発生する率が最も高い事業者および労働者の傷害および疾病が生じるおそれの大きい作業場所に対して、リソースを重点的に配分していることを示す。

OSHA 違反件数統計
2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2001-2005
の変化%
全違反件数 77,893 77,633 83,539 86,708 85,307 + 9.5%
全重大違反件数 52,180 53,845 59,861 61,666 61,018 + 16.9%
全故意違反件数 537 331 404 462 747 + 39%
全繰り返し違反件数 1,872 1,867 2,147 2,360 2350 + 26%
全重大違反以外の件数 22,776 21,128 20,552 21,705 20,819 - 8.6%

 最も危険な作業場所、傷害および疾病の発生率の高い事業者に集中し、強力、公正、効果的な施行を狙うOSHAの姿勢に変わりはないのである。OSHAは、傷害、疾病および死亡の減少を重点に努力をし続ける。安全衛生は、経営、職場および生活の価値を高めるのである。

注1 ) フルタイム労働者100人あたりの率
注2 ) 民間産業事業場についての率
注3 ) フルタイム労働者10万人あたりの率