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OSHAスタンダード(基準)の制定手順について
(資料出所:国際安全衛生センター海外調査)


1)概 要

・基準制定の権限:労働安全衛生法(OSH)に基づいて、議会は、労働長官に労働安全衛生の
 基準と規則を策定する権限を与えている。
・基準の定義:安全で健康的な雇用と雇用の場を与えるのに必要な条件、手順、方法、など言う。
・策定チーム:通常、OSHAに所属する法律専門家・科学者・弁護士・等から成る10人程度で構成
 され、各人は同時に1-2本の案件を受け持つ。


2)策定手順

・労働長官は基準策定において、下記のような種々の行政的要求と裁判の先例に従う義務が
 ある。
・行政手続法
・行政命令
・官報公示の法律
・最高裁判決
・労働省と担当機関は次のような策定手順も行っている:
・種々の内部再調査手順
・現場と連邦計画の意見


3)基準策定のはじまり

・法制化の要求事項は様々な源から得る
・請願・陳情
・NIOSHからの勧告
・新しい研究成果
・OSHA自身の情報


4)基準策定法制化の承認

・基準策定スタッフは何のために何故基準作りをするのか書類を準備する
・上記書類は、OSHA内部、労働省政策再調査委員会(PRB)、および行政予算管理局 (OMB) で
 承認されなくてはならない。
・承認されると情報収集作業に入る。


5)プロジェクトチーム

プロジェクト委員 (project officer)と支援スタッフ及び経済専門家が入る。


6)プロジェクトチームの仕事

・科学論文の調査
・それを読み、要約し、関連の研究と比較検討する(リスク評価)
・企業施設訪問
・現場で専門家と会う
・得たあらゆるコメントをレヴューし要約する
・他の関連機関と調整する


7)助言委員会 (Advisory Committee)を設け、特定の問題に勧告を受けることもある。


8)官報告知 (Federal Resister Notice)

OSHAは提案した基準について広く一般からコメントや情報を得てより良いものとしていく。


9)法律化した時の影響の事前調査

基準を適用した場合に、関連企業が受ける費用と便益を調査する


10)基準策定交渉

・提案基準について広く一般の同意を得るための作業。
・この同意により訴訟を受ける機会が少なくなり、制定が容易となる。


11)基準策定交渉で考慮すべき点

・問題解決の問題と方法が限られていないか
・同意を得るのに重大な障害がないか
・基準策定のための立法、司法上の締め切り時間が十分あるか
・交渉すべき問題点に参加者が共通の基盤を有するか
・特定の問題に関する基準の費用が便益と一致するか
・関心を持ち影響を受ける団体の数が限られていないか
・参加者が公正に交渉する意志があるか


12)基準策定に必要なデータ(有害物質に関する基準の例)

・急性健康影響データ
・疫学データ
・毒性データ
・慢性健康影響
・再現性のある影響
・催奇形成影響
・変異原性影響
・発がん性影響
・産業暴露条件
・経済的費用
・技術的実現可能性
・化学分析


13)シリカ基準策定準備の例

2000年3月現在において、遊離ケイ酸が発がん性物質であるというWHOの認定を受けて、以下の事項について、遊離ケイ酸に関する基準の策定準備を進めている
・許容暴露限界 (PEL)
・暴露モニタリング
・規制区域
・代替製品
・工学的および作業手順の管理方法
・呼吸保護具
・防護作業服と保護具
・労働衛生工学的手順
・整理整頓
・健康診断
・ハザードの伝達手法


14)OSHA、PRB、OMBの再調査を通過した基準の一般参加

・官報に提案基準を掲載
・一般コメント受付け期間は、最低30日(通常はさらに長い)
・非公式公聴会
・総ての基準について行う
・場所と期間は一般の関心の深さと問題の内容を考慮して決める


15)最終基準を準備

・提案基準の修正は、記録として残っている情報を基に行う。
・OSHA、DOL、OMBによるレヴューを受ける。


16)まとめ

・基準制定には、長く複雑な経過をたどる
・資源の集約という考えが必要である
・必要な再調査、一般からの意見受入れがあり、完成を早めるのが困難である。