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業務関連交通事故 事業者のための予防戦略
Work-related Roadway Crashes Prevention Strategies for Employers

資料出所:NIOSH発行「Fact Sheet」DHHS(NIOSH)発行番号 No.2004-136 March 2004
(仮訳:国際安全衛生センター)



交通事故は米国の労災死亡の主要原因

 米国では1992年から2001年までの間に13,337人の民間労働者が交通事故で死亡しており、平均すると1日4人が亡くなっていることになる。交通事故は労災死亡原因のトップを占めており、職場での死亡原因の22%が交通事故、13%は殺人、10%は墜落・転落となっている(労働統計局(Bureau of Labor Statistics)「労働災害による死亡者の調査(Census of Fatal Occupational Injuries)」による)。

 2000年には、事故の被害者(業務関連および業務外)の逸失賃金と逸失利益は610億ドルであった。このうち、職場から従業員が失われたり不在になったりすることで事業者が負担した費用は、46億ドルを超えている(全米幹線道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration)による)。経済面、医療面、および法律面で交通事故が事業者と被害者に及ぼす影響は、非常に甚大なものとなりうる。

危険にさらされているのは誰か

 業務の一環として自動車両を運転する誰もが交通事故に巻き込まれる可能性がある。

 2001年にはおよそ420万人の米国労働者が自動車両を運転しており、このうち73%がトラック運転手であった。交通事故は運送業に従事する労働者の死亡原因の第1位で、ほかの原因よりずば抜けて高い。フルタイムの職業ドライバー以外にも、配達、セールスや修理、顧客訪問など、さまざまな業務で社用車または自家用車を運転する労働者は数百万人にのぼる。交通事故は、事務職や専門職労働者の死亡原因でも第1位であり、幹部、セールス要員、および技師では死亡原因の第2位を占める(労働統計局「最新人口調査(Current Population Survey)」および「労働災害による死亡者の調査」による)。

ほかのドライバーの行為によって業務関連事故が起きる場合もある
対向二車線の道路を時速70マイル(約110キロ)以上で反対車線にはみ出して走ってきたピックアップトラックが、非緊急医療搬送中の救急車と正面衝突し、救急車に乗っていた26才の救急隊員(Emergency Medical Technician: EMT)が死亡した。事故発生時、救急隊員は患者に付き添っていて、身体を支えるものがなかった。車両前部の隔壁にぶつかった救急隊員は頭部と胸部を負傷し、病院への搬送中に死亡した。
NIOSH FACE Report 2001-11


事業者にできることは何か

 ほかの職場とは異なり、道路は閉鎖された場所ではない。業務関連交通事故を防止するには、交通安全の原則と種々の健全な安全管理活動とを組み合わせた戦略が必要になる。道路の状態を事業者が管理することはできないが、安全に関する情報を労働者に提供し、安全運転の方針を作成してこれを遵守させることによって、安全運転を推進することはできる。事故は、ビジネス活動の避けられない一部分ではない。事業者は次に示すようなさまざまなステップを踏むことによって、従業員と企業を守ることができる。

方針

  • 経営陣の中から中心となる人物を一人選び、包括的な安全運転の方針を作成してこれを遵守させるための責任と権限を与える。
  • 義務付けられているシートベルト着用を徹底する。
  • 時間外または通常の労働時間を著しく超える長時間の運転を労働者に強制しない。
  • 運転中に携帯電話を使った業務の遂行を労働者に義務付けない。
  • 速度制限と該当する労働時間規則を従業員が遵守できるような作業スケジュールを作成する。

車両管理

  • きちんとしたスケジュールに基づく車両管理プログラムを導入する。
  • 乗員の保護レベルが可能な限り高い車両を用意する。

安全プログラム

  • 運転中の疲労を認識・管理し、車内で気分転換するための戦略を労働者に教える。
  • 特殊車両または装置の運転のための訓練を労働者に受けさせる。
  • 仕事中も仕事を離れても安全運転の慣行に従う必要があることを労働者に強調する。

ドライバーの能力

  • 仕事で運転する労働者が有効な免許証を持っており、この免許証が、運転する車両の種類に合った適切なものであることを確認する。
  • 従業員となる可能性のある人物の運転記録をチェックし、雇用後も定期的に再チェックを行う。
  • 労働者の運転能力に関する正確で漏れのない記録を維持する。

業務関連交通事故、1992〜2001年

被害者の乗っていた車両の種別:

  • トレーラートラック(28%)
  • 乗用車(24%)
  • ピックアップトラック(12%)

事故と労働者の内訳:

  • 49%が車両同士の衝突
  • 53%が午前7時から午後4時までの間に発生
  • 38%が連邦または州指定幹線道路上で発生
  • 致命傷を負った労働者の89%が男性
  • 55才以上では死亡リスクが上昇

被害者が雇用されていた業種:

  • 運輸(33%)
  • サービス(14%)
  • 建設(11%)

危険な運転をしているのに事業者が安全方針の徹底を怠ると、業務関連死亡事故につながる可能性がある
顧客を訪問するために移動中だった45才のセールス要員が自動車事故で死亡した。被害者は勤続6年で、自家用車を業務関連の運転に使用していたことから、走行距離に応じた経費および関連する諸費用を会社から払い戻してもらっていた。州間幹線道路を時速90マイル(約145キロ)を超えるスピードで走行していたクルマは操縦不能になり、車体が宙に舞って2回転半した際、被害者は車外に投げ出された。被害者はシートベルトを着用しておらず、即死だった。事故までの14か月間に、被害者は自動車事故1件とスピード違反3件を起こしていた。
FACE Report 93WY006


道路安全情報

NIOSHハザード・レビュー:業務関連交通事故


DHHS[NIOSH]発行番号No.2003-119

www.cdc.gov/niosh/docs/2003-119/pdfs/2003-119.pdf
 「業務関連交通事故(Work-related Roadway Crashes)」は、職場での事故に関する詳細な統計情報、職場での運転に関係する安全規則の再検討、ドライバーの疲労・携帯電話の使用・年齢的要因といった個別のトピックに関する情報、業務関連事故を防止するための勧告を掲載している。
 NIOSHハザード・レビューや本ファクトシートのコピー、またはその他の追加情報を入手するには、NIOSHのウェブサイトwww.cdc.gov/niosh/にアクセスするか、または下記まで電話のこと。

1-800-35-NIOSH (1-800-356-4674)



業務関連道路安全情報の関連リンク(*)

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