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郵便物の照射中に発生する揮発性有機化合物
Volatile Organic Compounds Produced During Irradiation of Mail

資料出所:American Industrial Hygiene Association(AIHA)発行
AIHA Journal」 2003年 3・4月号 Vol. 64 No. 2 p.189

(抄訳 国際安全衛生センター)

原文はこちらからご覧いただけます



2001年に炭疽菌(Bacillus anthracis)の胞子が、バイオテロリズムによりアメリカ合衆国の郵便システムを利用して配達されたことがある。この脅迫に対して提案された制御方法として、高エネルギー電子による胞子の殺菌方法がある。(註:Bacillus anthracis の胞子は熱に対して強く、高圧蒸気殺菌でも120℃ 20分以上行う必要があり、この方法であると郵便物そのものをだめにしてしまうし、ガス殺菌では、郵便物中のBacillus anthracisの胞子までガスが届かなかったり、又、その殺菌力は弱い。)そこで、このような照射設備で高エネルギー電子による照射を行った直後に、郵便物の包装材料である繊維物質、プラスチックのようなポリマー製品から、有害な揮発性物質が発生しないかどうかを固相マイクロ抽出法(Solid-phase Microextraction, SPME)によりサンプリングを行い、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)を用いて分析した。高エネルギー電子照射により、郵便の包装材料より、どのような化学物質が揮発するかが検討されている。
結果は照射を受けた郵便物やその封筒から、炭化水素のプロパン・ブタン・ペンタン・へキサン・ヘプタン・メチルペンタン・ベンゼン、及びアセトアルデヒド・アクロレイン・プロピオンアルデヒド・フラン・2-メチルフラン・メタノール・アセトン・2-ブタノン・エタノールのような酸素を含有する化合物が発生した。
照射された空のプラスチックバッグからは炭化水素に加えて、硝酸メチル・硝酸エチルが検出された。これは、空気の照射により、ヒドロキシル化合物と反応して、ニトロエステルを生ずる反応性窒素類の生成の可能性を示唆している。
繊維の熱分解を研究している研究者により観察された揮発性化合物と、紙を含めた照射システムにおいて発生した揮発性化合物には類似点があり、共通の解重合と分解のメカニズムを示唆している。
この類似点については、ここで使われた分析方法によって検出できない化学化合物に対しても、照射された郵便物を検査して、さらに研究を勧進める必要がある。

キーワード:anthrax(炭疽 ), bioterrorism(バイオテロリズム), gas chromatography(ガスクロマトグラフィー), irradiation(照射.), mass spectrometry(質量分析), solid phase microextraction(固相マイクロ抽出法)

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