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切断事故を防ぐ

OSHA国家重点プログラムにより
職場における手足の切断事故は減少している


(資料出所:Job Safety and Health Quarterly(JSHQ) Vol.13 No.3 Spring 2002 p.34-36)
(仮訳:国際安全衛生センター)

原文(英語)はこちら

フレッド・ウォルターズ(OSHAワシントン本部広報部)

 昨年の夏、ジョージア州にあるエアゾール製造工場で事故が発生した。 ある作業員が圧縮機を作動させたまま、自分の足先でボール紙を充填チャンバー(loading chamber)に押し込む作業をしていた。積み込まれた物体を板状に圧縮する水平ラムが迫ってきたとき、不運にもこの作業員はボール紙に足をとられ、身動きできないまま機械に巻き込まれ、両足に致命的な大けがを負った。

 この会社では、作業員が受けチャンバー(receiving chamber)に巻き込まれる前に圧縮機が作動しなくなるロックアウト方式(lockout procedure)を採用していなかったことが労働安全衛生庁(OSHA)の調べでわかった。そのうえ、作業員たちが勝手に両手操作式安全装置の一方のスイッチをテープで固定し、常にオンにした状態で機械を作動させていることを知っていたにもかかわらず、会社側は黙認していた。切断事故は起こるべくして起こったのだ。

 機械等による手足の切断事故は、アメリカ国内の重度の職業性傷害および職業性疾病の上位3位に数えられるほど発生している。切断事故による傷害は重く、外科的治療を施しても永久障害につながるケースがほとんどである。業種別に見ると切断事故が最も多く発生しているのは製造業で、ついで建設業、小売業の順である。受傷者の半数以上が療養のため18日以上の休業を余儀なくされている。

 労働安全衛生庁(OSHA)、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)、労働統計局(BLS)の統計によると、切断事故はプレス機械、のこぎり、シャー、裁断機(スリッタ)、スライサーの作動中に多発している。また、こうした機械の保全作業や修理中にも事故は発生する。

 「切断事故は身体障害に直結する最も重篤な労働災害であり、防護物がなかったり、安全装置が不十分な機械を作動中に発生する危険性が高い」とOSHA技術サポート管理部門の安全技師、ロング・ローは述べている。

 どのような機械でも作動中の危険性はあるが、なかでも回転、往復、切断、穴あけ、剪断、屈曲などの運動をする機械は切断事故を起こしやすい。切断事故は機械が部材を加工する作業点でも起きる。また、動力伝導装置のプーリー、ベルト、チェーン、ギア、そしてそれ以外の作動部分でも事故は発生しうる。

 このように業務上の切断事故の危険性は潜在的に存在するが、最近の労働統計局のデータによると、非致死切断事故の発生件数は民間企業の場合、1994年から1999年の間に約18パーセント、12,222件から9, 985件へと減少している。また民間部門、公的部門両方をあわせ、致死切断事故の発生件数も1992年から2000年の間におよそ33パーセント、27件から18件と減少している。

 「データが示すとおり切断事故は防げます」とOSHA長官ジョン・L・ヘンショーは述べている。昨年11月に着手された、切断事故の防止に重点をおいたOSHAの新しいプログラムは、切断事故の減少をさらに推進させようとするものである。新しいプログラムは既存プログラムよりも対象となる機械の範囲を広げ、のこぎり、シャー、スライサー、裁断機だけでなく、あらゆる種類の動力プレスも視野にいれている。「これらの機械の操作には大きな危険がともないます。こうした機械の作動中に事故が起きれば、それは致命傷か永久障害につながりかねません。新しいプログラムは、切断事故をひきおこしかねない危険有害要因を確認し、作業員たちをそれから守るために役立つでしょう」とヘンショーは語る。

一寸した安全のヒント
  • 危険な部分及び機械部品には物理的障壁となる機械ガードを用いる。
  • 作動部分と接触するのを防止するために安全装置を用いる。
  • 予測しない装置の起動又は活性化から従業員を守るためにロックアウト・タグアウトを実施する。

 職場の切断事故を減らす最も効果的な方法は、機械にカバーや柵などの防護物(ガード)をとりつけ、安全装置を作動させ、ロックアウト・タグアウト(lockout/tagout)を確認しつつ操作することである。防護物があれば、作業員は危険領域や機械部分に自ずと近づかなくなる。防護物は作業員の安全を確保し、誤操作を防ぎ、強度を増す一方、操作する人間の視界を遮ってはならない。安全装置は、機械が作業工程の中で危険な部分にさしかかったとき、作業員が作業点に接触しないように作動し、防護物の代わりとなるか、もしくは防護物の働きを補う役目をする。こうした装置は、作業員の身体の一部が危険限界に入らないように作業員を守り、万一作業員の手が危険限界に入ってしまった場合、自動的に機械を停止させるように作動する。

 NIOSH安全研究部門の研究安全技師、ジョン・R・エサートン博士は次のように語った。「切断事故は防止できます。そして、各人が皆事故の発生を防ぐように心がけなければなりません。経営側はもちろんですが、作業員一人ひとりが責任をもたなくてはいけません。経営側は、危険度の高い機械を操作している作業員の身にどれだけ危険が迫っているか認識すべきです。また、危険性を低減する安全装置(safeguard)を開発するために、経営側は操作方法、とくに作業工程のなかで注意を要する部分について分析する必要があります。経営側は安全装置および防護物の開発段階、そしてそれらを実際に作動させる時に、日頃から機械に接し、機械の状態を熟知しているオペレーターや保全担当者を参画させることが肝要です。なぜなら、彼らは機械のこともよくわかっていますし、作業の内容も理解しているからです。安全対策を適切に講じられように計画的に取り組んでいけば、業務上の傷害事故の減少に好影響を与えるでしょう」

 エサートン博士は、さらに次のように付け加えた。「実際上、安全対策や方法論はリスクをともなうあらゆる業務に役立ちます。安全対策用の防護物と安全装置が確実に機械にとりつけられ、作業員がそれらをきちんと利用しているかを確認することは、監督者の最大の責務です。結局のところ、機械の安全を実現するためにあらゆる手段を講じ、切断事故の危険と無縁でいられるような職場環境を作り上げることが経営側の義務なのです」

 切断事故について詳しく知りたいときには、労働安全衛生庁のウェブサイト、www.osha.govにアクセスしてください。まず「Newsroom」をクリックしてから「Publications」をクリックしてください。「Publications」のコーナーにはOSHA発刊の新刊図書『Safeguarding Equipment and Protecting Workers from Amputations(安全装置と切断事故から従業員を守る方法)』(OSHA3170)、新しいデータ表『Amputations(切断事故)』、参考文献『Control of Hazardous Energy (Lockout/Tagout)(有害なエネルギーのコントロール(ロックアウト/タグアウト))』(OSHA3120)、『Concepts and Techniques of Machine Safeguarding(機械の安全対策に関する考え方とテクニック)』(OSHA3067)が掲載されています。今年の後半には法令遵守のための新しい電子ツール(Compliance Assistance Tool)も公開予定。