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OSHAのエルゴノミクス戦略推進

OSHAは、エルゴノミクス傷害から労働者を保護するための
4つの活動領域を着実に推進している。

(資料出所:Job Safety and Health Quarterly(JSHQ) Vol.14 No.3 Spring 2003
(仮訳:国際安全衛生センター)

原文(英語)はこちら


 チャオ労働長官が昨年職場におけるエルゴノミクス傷害を低減かつ防止するための包括的な4つのアプローチを明らかにして以来、OSHAはエルゴノミクス戦略のこの4つの要素のそれぞれにおいて重要な推進を実施してきた。

 この計画は、ガイドライン、アウトリーチ、監督指導、諮問委員会という組み合わせから成り、ジョン・ヘンショーOSHA長官が「すぐ結果を出せる最良のアプローチ」と呼んでいるものである。

ガイドライン(Guidelines)
 最近発表された介護施設(ナーシングホーム)のための最終的ガイドラインは、ヘンショーが述べた産業別及び作業別ガイドラインの防止対策を柔軟かつ確実に実施するための大きなステップとなるものである。

 加えてOSHAは、間もなく、食品雑貨小売店向けガイドライン草案を発表し、鳥肉加工業向ガイドラインを開発するため、関係者と作業中である。

 また、OSHAは、造船業向けガイドラインを作成する計画を発表した。一方OSHAは、この他の業種でもそれぞれのニーズに合ったエルゴノミクスガイドラインを開発することを奨励している。例えば、ノースカロライナ州及び全米家具製造協会(American Furniture Manufacturers Association)は共同で家具製造業向けのエルゴノミクスガイドラインを開発中である。OSHAと提携したものとしては、多くの印刷業協会があり、この中には米国グラフィックアート技術印刷業財団(Printing Industries of America/Graphic Art Technical Foundation)、国際スクリーンプリンティング・グラフィックイメージング協会(Screenprinting & Graphic Imaging Association International) 、フレキソ印刷技術協会(Flexographic Technical Association)、封筒製造協会(Envelope Manufacturers Association)及びプラスチック工業会(Society for the Plastic Industry, Inc.)が含まれていて、各々の業界にあったエルゴノミクスガイドラインを開発している。

監督指導(Enforcement)
 OSHAエルゴノミクス監督指導計画には起訴を行なうという法的戦略と組みあわされた監督が含まれている。OSHAは、重大なエルゴノミクス傷害を発生している業種に特別に力点を置いている。

 この戦略を支えるため、OSHAは、500近いエルゴノミクス関係---介護施設388、その他の業種103---の監督指導を実施した。この結果、OSHAは労働安全衛生法の一般義務条項に基づいてエルゴノミクス関連の危険に対するいくつかの是正勧告を出し、最近処理をしたところであり、更に事案の処理を進めている。

 内部管理者によるエルゴノミクス対応チーム(inter-directorate ergonomics response team)は、事案をを評価し、OSHAが是正勧告書(citations)あるいは危険警告文書(hazard alert letters)を出す前に全ての事案をふるいにかける。昨年7月、OSHAはエルゴノミクスに重点をおいた介護施設業界向けの国家重点プログラムを発表した。388箇所の監督指導に加え、OSHAは事業者に対し、それぞれの施設におけるエルゴノミクス問題の通告に関する55の危険警告文書を送付した。

 OSHAはこの文書を受け取った事業場の改善を評価するため、再監督をする。更に14の地域重点プログラム(regional emphasis programs)及び3つの地方重点プログラム(local emphasis programs)が全国で展開中であり、エルゴノミクス関連の危険に焦点を合わせた業種としては病院、食肉包装業、自動車部品業及び倉庫業となっている。エルゴノミクス問題を抱えているスタッフ、事業者、労働者及びこの外の関係者を援助するため、OSHAは10の地域事務所にエルゴノミクス・コーディネーターと呼ばれる人材を配置した。シカゴ地域事務所では、エルゴノミスト1名を雇用した。他の地域では、エルゴノミクス関連の監督指導結果の評価を手助けするエルゴノミストを雇用する手続きが進められている。

アウトリーチ及び援助(Outreach and Assistance)
 OSHAは労働者及び経営者が職場のエルゴノミクスに取り組むのを支援するための共同プログラムを推進している。この記事の掲載時点で、OSHAはエルゴノミクスに焦点を当てた11の戦略的パートナーシップ及び13の国家エルゴノミクス連携(アライアンス)を有していた。

 この連携したパートナーは、種々の優良事例情報の作成においてOSHAと作業している。例えば、米国食肉協会(American Meat Institute)は食肉加工業における種々の作業に対するエルゴノミクスeツール(eTools)の作成、電気請負自営業者(Independent Electrical Contractors)は電気工事労働者のための材料取扱(material-handling)eツールを開発中である。

 航空産業を代表する連携会員は、乗客の荷物を取扱う労働者向けのeツール開発に参加している。加えてOSHAは、幅広い管轄地域を通じてエルゴノミクス関連の訓練を推進している。OSHAの地域教育センターは、昨年エルゴノミクスで29教室を開催し、2003年は47教室を開催することにしている。またOSHAは、2002会計年度にエルゴノミクス問題に取り組んでいる企業に対し、スーザン・ハーウッド訓練プログラム基金(Susan Harwood Training Program Grants)から160万ドル以上を与えた。

 OSHAのアウトリーチを強化するため、OSHAはエルゴノミクスに対する包括的な4つのアプローチについてのエルゴノミクス・ウェブページを再設計した。このウェブページには、最近のエルゴノミクス関連の監督指導状況、エルゴノミクス国家諮問委員会(National Advisory Committee on Ergonomics)、eツール、共同開発プログラム及び種々の業種におけるエルゴノミクス成功事例に関する情報が含まれている。

 OSHAは多くの他のエルゴノミクス関係においてイニシアチブをとっている。OSHAスタッフは、全米産業衛生協会(AIHA)のエルゴノミクス委員会で、オブザーバーとして参加している。また、OSHAは、エルゴノミクス政策を採用、実行しようとする経営者のやる気と能力に焦点を当てたウェブ放送(webcast)の開発を全米商工会議所と共に行なっている。

 また、OSHAのアウトリーチは他の州政府機関にも広がっている。OSHAは内国歳入庁(Internal Revenue Service)、国防契約監査庁(Defense Contract Audit Agency)及びその他の機関に対し、エルゴノミクスに配慮したワークステーションの訓練及び評価援助を行なった。また、OSHAは、中小企業に対し、エルゴノミクスプログラム情報を提供するため、米国中小企業庁(U.S. Small Business Administration)の施策広報局(Office of Advocacy)および同庁の中小企業・農業取締監督オンブズマン(Small Business and Agriculture Regulatory Enforcement Ombudsman)との協定覚書にサインした。

 OSHAは、アウトリーチ及び教育を行なう新しくより良い方法を推進する。OSHAは、エルゴノミクスに対する模範的で目新しいアプローチをしている優れた作業現場を強調するために、大成功をおさめているOSHAの自主的保護プログラム(VPP)を模範とした新しい認可プログラムを開発中である。

 またOSHAは、患者を取り扱う機械的なリフトの使用に関する最新の情報を盛り込むため、介護施設用のビデオの改訂をしている。加えてOSHAは、エルゴノミクスに焦点を当てたいくつかのeツールを開発している。

諮問委員会(Advisory Committee)
 OSHAは、産業界、学会、労働組合及び法律および医学の専門家の代表15人からなるエルゴノミクス国家諮問委員会を設立した。この委員会は、2003年1月に第1回会合を行なった(エルゴノミクス委員会会合記事参照 http://www.osha.gov/Publications/JSHQ/spring2003/ergo_meets.htm)。

 加えてOSHAは、必要な分野におけるエルゴノミクス調査研究を行なう全国職業研究行動計画(National Occupational Research Agenda)を通じて、NIOSHと共に密接に作業を推進している。



註) OSHAのエルゴノミクス戦略関連のホームページはこちら
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