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従業員への一酸化炭素(CO)暴露の減少対策

資料出所:American Industrial Hygiene Association (AIHA)発行
「The Synergist」 2002年 9月号 p.27-28

(仮訳:国際安全衛生センター)



ロバート・ウェザリー(ROBERT WEATHERLY)

CO暴露を解決するためには、いくつかの創造的考え方を必要とする。ロバート・ウェザリー氏が以下について紹介する。
  • CO問題の根本原因を見つけるために取られた対策
  • 採用された種々の管理方法
  • 排気ガス制御システム(エミッション・コントロールシステム)から得られた結果。

  室内空気の良し悪しは、科学的分野からだけでなく、メディアからも注目を浴びつつある問題となっている。今日、労働者は以前よりもずっと室内空気汚染及び汚染が作り出している健康問題に敏感になっている。労働者にとって好ましい室内環境を提供する経営側の仕事は、ますます複雑なものとなっている。

  室内空気汚染物質の最もありふれたものの1つが、臭気等刺激臭を有しないガス、CO(一酸化炭素)である。炭化水素の不完全燃焼は、それによってCOが作り出される一般的な現象である。COは、ヘモグロビンと極めて高い親和力を有し、かつ、呼気内のCOの量に比例して、酸素を運搬する血液の能力を減少させるものである。COの暴露症状としては、頭痛、眠気、疲労、中枢神経系への影響が含まれている。環境におけるCO暴露のOSHA基準は、8時間の時間荷重平均値(TWA)で、50ppmである。ACGIH(米国産業衛生専門家会議)の基準は、8時間TWAで、わずか25ppmである。

  LPガス(プロパン)燃焼によるエンジンは、製造プラントにおいて、特にフォークリフトでよく使われている。よく調整されていないLPガスによるエンジンは、その排気ガスにより10%以上のCOを生じている。よくメンテナンスされたLPGエンジンは、自動車の排気管の末端部で、0.3〜1.0%のCOを生じている。クリーン走行LPGエンジンでさえ、特にドライバーに対しては、CO暴露問題を引き起こしている。


暴露問題

  アラバマ州ウェアーハウザー社(Weyerhaeuser)パインヒル工場の出荷倉庫において、CO暴露の問題が深刻化したため、その解決策が検討された。そして暴露が急激に減少するまで、様々な改善が試みられた。

  パインヒル工場は、毎年80万トン以上の段ボール紙を生産していて、LPガスを燃料としたリフトトラックが、顧客向けの大きな段ボール紙のロールを倉庫内で運搬し、積み込むために使われていた。4台のリフトトラックが9万平方フィートの倉庫内で、1日24時間同時に運転されているのである。倉庫内の換気は、建物の両側面の壁についているよろい窓(ルーバー・パネル)及び、建物の両端にある巻き上げドアを通して自然の風によって行われている。このドア等は、寒い時には、よく閉められている。

  数年前、この工場の産業看護師が、出荷部門の労働者が一種の頭痛及び他の症状を訴えているのに気づき始めた。著者は、NIOSH方式6604を使って、リフトトラックドライバーのCO暴露を測定した。この方式は、データ自動計測器(1分間に一度、瞬間読取値を記録するもの)付の較正電気化学モニターを使うものである。これらの瞬間読取値から、TWA及び短期間暴露限界値(STEL)が産出される。モニターは長時間にわたってガス測定グラフを作成することができるものである。

  暴露モニタリングの結果は、即座にCOが労働者が訴える症状の原因であるらしいことを示していた。いくつかの暴露値は、OSHA基準を超えていて、更にほとんどの暴露値が、よりきびしいACGIH基準を超えていた。そこで、工場経営側は、暴露低減方法を探し始めたのである。最初の行動の1つは建物の切妻の中に大きなファンを設置することだった。理にかなった処置をしたかに思えたが、このことは、ドライバーのCO暴露減少に対し、わずかの効果しかないことが判明した。この投資によっても、わずかしか改善されない理由としては、リフトトラックドライバーは風通しの良い倉庫床から列車及びトレーラーに段ボールロールをひっきりなしに運搬しているということが挙げられる。ファンを設置しても列車及びトレーラー内においては、空気の動きがなく、これらの内に多くのCOが蓄積されたままとなっていたのである。 換気が悪い場所に入って行った時に、データ自動計測器のグラフのCOの値がここでピークとなっていることで説明がつくのである。(図1)

  CO暴露を下げるために換気装置を用いた結果が思わしくなかったので、次に他の方法が試みられた。全てのリフトトラックのチューン・アップは、工場代表者の指揮の下で行われていた。我々は、そこでエンジンをより効率的に動かす酸化剤及び乳化剤を含んだ市販のプロパン燃料混合剤を使用した。そこで我々には、これらの方式を使っていくらかの改善を行うことができたのである。しかし、経営側は常に25ppmより低い暴露値をゴールとして考えていたので、この方法ではこの目標は達成されなかったのである。




勇気付けられる結果

  その後、リフトトラックの納入業者から、排気管末端部に排気ガス制御システムを使用することを推められた。このシステムは、ターミノックス(Terminox)という名前で市販されている触媒コンバーターである。ターミノックスの製造会社によると、スリーウェイ・クローズドループ・エミッション・コントロール・システム(three-way closed-loop emission control system)は、燃料消費を抑えると同時に一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物の排出量を大幅に減少させるものであるとのことである。そこで我々は、1999年6月に最初のキットを1,000ドルで注文した。工場メンテナンス部門は、機器納入業者の指導に従ってその装置を取り付けた。我々は同じリフトトラックのドライバーに対し、この装置を取り付け前のCO暴露値を測定し、ついで、この装置の取り付け後の暴露値を測定したのである。図2のように、一酸化炭素TWA暴露値は驚く程ドラマチックに改善され、取り付け前の25.9ppmから、取り付け後は6.6ppmとなった。



  この勇気づけられる結果を手に入れたことで、経営者は出荷倉庫で使われている全てのリフトトラックにターミノックスの排気ガス制御システムを装備したリフトトラックをリースする契約を結んだのである。

  この計画を始めてからまもなく3年になるが、今や全部のリフトトラックにターミノックスが付けられている。 このシステムにより、ドライバーのCO暴露が80%以上減少したのである。平均CO暴露は、以前は27.5ppmだったが、今やそれは5.1ppmである。このシステムに関しては、メンテナンスや信頼性の問題は発生しておらず、トラックの操作性が損なわれることもない。システムの耐用年数は、6,000時間以上とのことで、今のところ、問題は発生していない。

  出荷部門の労働者達は、経営側がこの問題を解決するために行った多くの作業に示されたように、彼等の作業環境に関心を持ったことに対し、賞賛しているのである。そして、このプロジェクトは、可能な限り、生産工程に安全を組み込むといった、"スタートから安全"というウェアーハウザー社の基本方針によくフィットしたものとなったのであった。
ロバート・ウィズリー氏は、アラバマ州パインヒルにあるウェアーハウザー社のインダストリアル・ハイジニストである。)